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【対談】代官山T-SITEにてフリーライブに登場!Azumi×高岩遼、二人の共通点“Jazz”を語る!

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この週末に東京・代官山T-SITE内GARDEN GALLERYにてフリーライブ<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>が開催! 10月13日(土)、14日(日)の2日間の予定で、1日目のテーマ<Swingin’ Night>には高岩遼とAzumiの二組、2日目のテーマ<Hit The Town>にはThe ManRay、Rei、Kan Sano(acoustic set)、の三組が出演が決定しており、プレミアムなライブをお届けする予定だ。 このイベントは先日発表されたハーレーダビッドソンの最新モデルFXDR™ 114と過ごす特別な週末<FREE[ER] WEEKEND>として9月22日から毎週末、全国各地で行われてきている。そして今週末に迫ったイベント開催を前に、初日に共演する高岩遼Azumiの二人によるスペシャルな対談が実現! wyolicaのヴォーカルとしてデビューし、2011年のソロ・デビュー以降はDJ、デザイナー、役者など多岐にわたる活動と並行して、ジャズ・シンガーとしても精力的な活動を行っているAzumi。SANABAGUN.、THE THROTTLE、SWINGERZの中心人物であり、10月17日にはビッグ・バンドを起用したソロ・デビュー・アルバム『10』をリリース予定の高岩遼。二人のヴォーカリストに、「ジャズ」をテーマに語ってもらった。 ジャズを愛する二人の話を聞けば、<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>をより堪能できるはずだ。

Interview:Azumi×高岩遼

——Azumiさんと高岩さんは10月13日(土)に行われるハーレーダビッドソンの<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>で、久々の共演となります。まずは、お二人の最初の出会いについて教えてください。 Azumi 昨年の4月に六本木でやったライブが初めましてだよね? 高岩遼(以下、高岩) そうですね。六本木のVARITというライブハウスでイベントをすることになって、ぜひ誰か女性のジャズ・シンガーを招きたいねという話をしていたんです。そこでライブハウスのスタッフさんから「Azumiさんがいいんじゃないか」という提案があって、自分も「Azumiさんだ!」ということでお声がけしました。 ——その時もジャズのイベントで、お二人でデュエットも披露したそうですね。 高岩 やりましたね。“Fly Me To The Moon”歌いました。キーをどうしようか、みたいな相談をしたのを覚えてます。 Azumi あと“You'd Be So Nice To Come Home To”も一緒にやったよね。 Azumi×高岩遼 ——どちらもジャズのスタンダードですね。デュエットする楽曲はすんなりと決まったんですか? 高岩 事前にメールで、「何やります? てか、遼くんは何を歌うの?」みたいなやり取りを少しして、あとは現場で少し合わせたくらいでした。でも、どっちかというと、「何着る?」みたいな衣装の話をしてましたね。「僕、セットアップは緑ですよ」って。 Azumi そうかも(笑)。今日も何を着てくるのかすごい気になったもん。 高岩 俺もどんな感じか、結構気になってました(笑)。 ——実際に共演してみて、お互いの印象はいかがでしたか? Azumi まずは声が素晴らしいと思いましたね。日本人で、フランク・シナトラのような唱法のクルーナーってなかなかいないじゃないですか。上の世代の大先輩には多いですけど、若い方ではあまりいない。私はその時初めてジャズを歌ってるのを聴いたんですけど、素晴らしかったです。 ——Azumiさんの印象はどのように変わりましたか? 高岩 それまではお会いしたことがなかったので、もっとフワフワした、フェミニンな方なのかなと思ってたんですよ。でも、実際に共演してみると男気があって。歌手として北海道の方から出てこられて、タフにやられてる。精神力の強さを感じましたね。 Azumi いやいや、ありがとうございます(笑)。 Azumi×高岩遼 ——今回の<FREE[ER] WEEKEND>は、それ以来久しぶりの共演になります。お二人が出演される10月13日(土)のステージは<Swingin’Night>ということで、ジャズ・セットを予定されていると思いますが、まずはお二人のジャズとの出会いについて教えていただけますか? Azumi 私はもともと10代の頃からブラック・ミュージックばかり聴いていて、70年代ソウルやファンク、90年代のアシッドジャズ、ヒップホップ、R&B、その辺にどっぷりハマった人なんです。例に漏れずローリン・ヒルになりたかったB-GIRLみたいな。 高岩 いやー、最高っすよね。 Azumi 私はローリンのつもりだったけど、アムラーって言われてた(笑)。 ——(笑)。確かに、そういう時代かもしれませんね。 Azumi その辺を聴いてるうちに、その影響元でもあるジャズとフュージョンの方に向いていって。一番初めに聴いたのがディジー・ガレスピーだったのかな。エラ・フィッツジェラルドや、ヴォーカリストも聴いてはいたんですけど、それよりも実はインストものが好きだったんです。中でもハービー・ハンコックが大好きで、LAでレコーディングがあった時にハービーの家を見に行ったり(笑)。 Azumi×高岩遼 高岩 マジっすか!(笑)。ヴォーカリストじゃないのは意外ですね。 Azumi そうなんですよ。自分はヴォーカリストなんだけど、聴くのはインストの方が多い。ドラムとベースとバッキング。リズムやコード感ばかりに耳が行ってました。 ——高岩さんはどのようにジャズと出会ったんですか? 高岩 俺は小学校3年生くらいの時に、スティーヴィー・ワンダーの『The Definitive Collection』っていうアルバムをずっと聴いてて。それこそ歌詞カードがグシャグシャになるくらい聴き込むほど大好きだったんです。その後、小学校6年生くらいでレイ・チャールズに出会って。 Azumi えー! 早熟! 高岩 “We Are The World”の一番最後のパートを歌ってるので、感激しちゃって。中学校に入るとヒップホップがやってきて、ヒップホップ、R&B、ソウル、ブルースみたいな。本当に黒人音楽至上主義みたいな脳みそのB-BOYでしたね。 ——十代の頃の音楽ヒストリーは、お二人ともどこか似てますね。 高岩 B-GIRLとB-BOYだったっていう。共通してますね(笑)。 Azumi そうですね(笑)。皆、やっぱり入りは「ブラック・ミュージック!」みたいなところあるよね。『ブルース・ブラザーズ』とか観るといまだに興奮します。 高岩 高校2年生くらいでブルースとかジャズを聴くようになるんですけど、その時はジャズとブルースの境目がまだ分からなかったんですよ。それで、ある時に手に入れたジャズ・ヴォーカリストの廉価盤コンピレーションに、一人めちゃくちゃ歌が上手い人がいて、感激して号泣しちゃったんですよ。それがフランク・シナトラだったんですよね。心に届くものがあると。最高で、そこからジャズのヴォーカルはずっと聴いてましたね。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんは、10月17日にソロ・デビュー・アルバム『10』のリリースを予定されています。このアルバムはどのような作品になっていますか? 高岩 シナトラのカバー3曲で、後は全部オリジナルです。フルでビッグ・バンドでレコーディングしたんですけど、僕の中のジャズ最先端になってます。僕のジャズ愛だけだったらシナトラの焼き直しとかレイ・チャールズみたいになってしまいそうだったんですけど、〈Tokyo Recordings〉のYaffleがプロデューサーで入ってくれて、今までチャレンジしたことがなかったような作品になりました。 ——今回ソロ・アルバムを作ったのは、どういうきっかけがあったんですか? 高岩 もともと岩手の田舎から「絶対スターになりたい」って思いで上京してくるときに、母ちゃんとか仲間に「俺が絶対にソロで出すときはビッグ・バンドでしかやらない」って話をしていたんです。それから音大で四年間ジャズを学んで、卒業してからSANABAGUN.とかTHE THROTTLEとか、SWINGERZって仲間たちが増えていく中でも、ソロの思いはずっと頭にあって。でも、僕が首謀者でバンドを作ってるんで、男としての責任があるじゃないですか。だから、まずはバンドを盛り上げていたんですけど、去年の4月くらいに、〈ユニバーサル〉のユウスケくんが、「遼くんソロやらない?」っていうのを恵比寿BATICAで言われて、「よし、じゃあビッグバンドでやろう!」って話したんです。 Azumi いい話ですね! Azumi×高岩遼 ——Azumiさんもソロでは、ジャズ・アルバムのリリースやジャズ・フェスの出演など、ジャズ・シンガーとしての自分を大切にされている印象があります。 Azumi 私もwyolicaをやってる頃から、ずっとジャズ・アルバムを出すのが夢だったんですよ。でもwyolicaの時は、創ることができなくて我慢してたんですけど、ある時自分で企画を立てたんです。 ——その企画はどのように発案したんですか? Azumi ジャズってなんで若い女の子たちが聴かないのかな? という疑問がずっと自分の中にあったんです。ジャズは敷居が高いし、難しい音楽みたいな印象があるから、私はその入り口を作りたいなと思って。それで、ジャズ・スタンダードやクラシックのメロディに自分で日本語詞を乗せるというコンセプトにしました。あとは、ジャズ・シンガーって夜のイメージが強いけれど、朝聴けるジャズにしようと。ジャズの間口が広くなって、ジャズを知るきっかけになれば良いなと、思っています。 ——ハーレーダビッドソンとの関連でいうと、毎年開催されているハーレー乗りの祭典<BLUE SKY HEAVEN>に、お二人とも出演されてますよね。全国から集まったハーレー・オーナーの前でのライブはいかがでしたか? Azumi 多分私のことを知っている人はほとんどいなかったと思うんですけど、なんか優しかったし、温かかったです。「良かったよ、ねーちゃん!」みたいな感じで(笑)。 高岩 みんな優しいですよね。 Azumi 見た目はみんなゴツいのに、優しい。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんはどうでしたか? 高岩 僕は二つのバンドTHE THROTTLEとSANABAGUN.で出演させて頂いて。ロックとヒップホップでリアクションも全然違って、面白かったですよ。ハーレーとロックは何か繋がるものがあるし、ハーレーとヒップホップは意外性が楽しめるということで、そういうのがお客さんの顔見てわかるというか。「懐かしいことやってるねぇ! サイン書いてくれよこのGジャンの後ろに!」みたいなおじいちゃんいたし(笑)。 Azumi (笑)。遼くんは、ヤンチャだったおじいちゃんとかに好かれそうだね。 ——今回の<FREE[ER] WEEKEND>は、ハーレーダビッドソンの最新モデルFXDR™ 114と過ごす特別な週末というイベントです。このFXDR™ 114を実際にご覧になった感想を教えてください。 Azumi すっごいオシャレ。フォルムが美しい。 高岩 確かに。ちょっとトランスフォームしそうですよね。形が変わって、喋りかけてきそうな雰囲気がある(笑)。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんは昨年、大型自動二輪免許を取られて、今は実際にハーレーに乗ってらっしゃるんですよね。 高岩 そうです。僕とSANABAGUN.のギターの隅垣元佐が免許取らせてもらいました。 Azumi そうなんだー、すごい! でも、むちゃくちゃ似合いますね。 高岩 去年の夏に、かっこいいところを地元の奴に見せたいから、1800cc近い、デカいハーレーで地元の岩手県宮古市に凱旋帰省したんですよ。僕のママも拍手してましたよ。「あんた、頑張ってるね」って(笑)。 Azumi かっこいい! 車とかバイクって、親への効力は大きいですよね。「こんなバイク買えるなんて、頑張ったんだね」みたいな。 高岩 間違いないですね。 Azumi×高岩遼 ——今回のライブは、どういったセットを予定されていますか? Azumi 私はピアノ・デュオで、SWING-Oさんにピアノを弾いてもらいます。曲は自分のソロの楽曲やカバー、昔のユニットの曲をやるつもりでいます。 高岩 おー! それはバキバキの二人で、楽しみですね! 僕は若手ジャズマンのコンボで歌いますよ! ——―曲目はソロ・アルバムからやる予定ですか? 高岩 いや、多分スタンダードしかやらないですね。 Azumi スタンダード楽しみですね。私もスタンダードで何かやろうかな。対抗して。 高岩 やめてくださいよ!(笑)。 Azumi×高岩遼

Text:青山晃大 Photos:真弓 悟史

EVENT INFORMATION

FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE

2018.10.13(土)、14(日) 代官山T-SITE GARDEN GALLERY 出演 13日 高岩遼、Azumi 14日 The ManRay、Rei、Kan Sano (acoustic set) 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

Azumi presents Love Lounge

2018.12.17(月) Blues Alley Japan 詳細はこちら

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映画『ここは退屈迎えに来て』橋本愛×渡辺大知インタビュー |ほんとうは何者でもないわたしたちのために

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山内マリコが2012年に発表した処女小説『ここは退屈迎えに来て』がついに映画化される。主演は橋本愛。東京に出たが、夢を諦めて地元に戻った27歳のフリーライター「私」を演じる。共演には門脇麦、成田凌、渡辺大知、柳ゆり菜、村上淳など。 本作には、「何者かになりたい」と願う切実さと、何者にもなれなかった悲しさ、そして青春のあとに残る小さな希望が描かれている。鑑賞後には、独特の重さを持った痛みが残るだろう。しかしその痛みは、主役を演じた橋本愛が言う通り、「心地良い」ものでもある。 橋本愛はこうも語る。「何者でもないことを自覚することの方が大事」「何者かになりたいという欲望を引き剥がすことを心がけている」。また、渡辺大知は、「何者かになりたいと願うことが正しいとは思わない、でもその欲求はすごく純粋なもの」だという。橋本愛と渡辺大知のふたりに、この作品が持つ痛みや希望について語ってもらった。 10/19公開 映画『ここは退屈迎えに来て』予告

「どうしようもなく痛んでしまうが、心地良い痛み」(橋本愛)

渡辺大知、橋本愛
——完成した映画を観て、率直にどう感じましたか? 橋本愛(以下、橋本) 安心した、という気持ちが大きいです。というのも、わたしはこの原作小説『ここは退屈迎えに来て』を読者として読んでいて好きだったので、作品を傷つけたくないという気持ちがいちばんにあったんです。だから、良い映画になっていて原作の核を守れたことにほっとしました。あとはフジファブリックさんの音楽ですよね。 渡辺大知(以下、渡辺) 音楽、本当に素晴らしかった。 ——フジファブリックによる主題歌“Water Lily Flower”は本当に素晴らしいですよね。これだけ素晴らしい音楽を持ってこられると、渡辺さんはミュージシャンとして嫉妬するんじゃないですか?  Water Lily Flower
渡辺 嫉妬? ……嫉妬は、してないですね……。なんでだろう。良いものにたくさん出会いたいし、才能ある人たちにいっぱい会えると嬉しいからかなあ。そもそも音楽が好きでやっているので、良い音楽があるのに「クソ!」みたいな気持ちにはあんまりならないですね。 橋本 わたしは、この映画を90分観たあとにこの主題歌が聴こえてくるという、その時間の体験がすごく尊いものに感じられました。あの頃に戻りたいと強く思ってるわけでもないし、いまがあの頃より輝いてないと思ってるわけでもないけど、この映画を観ると、どうしようもなく心が痛んでしまう。そしてその痛みは結構、心地良いものだったんです。不思議な感覚になりました。 渡辺 原作や脚本を読んだ時に僕が感じたのは、鬱屈とした生活のなかにあるきらめきのようなものでした。今回の映画では、それが見事に映像化されている。淡々とした映画ではあるし、特別な事件が起きるわけでもない。でも登場人物や街の景色がみずみずしく目に飛び込んでくる。なんでもないことのなかに潜んでいるきらめきみたいなものが、うらやましく思えてくるんです。だから心にモヤモヤを抱えた人の救いになるんじゃないか。この映画は、退屈であることが良いとも悪いとも言っていないと思います。でもそれは大事なことなんだと思える。

「等身大の寂しさが出せた」(渡辺大知)

——おふたりともアラサー(現在)と高校生(過去)という、10歳も差のある役を演じられました。難しかったことは? 橋本 「10年もいたしね」というセリフがあるんですけど、その10年は自分にない10年なので、難しかったです。わたしにとって10年前は小学校の高学年になってしまうので……。セリフとリンクできる経験が自分にないから、想像で補うしかなかった。 渡辺 でもあのセリフには橋本さんが演じる「私」の10年がたしかに見えましたよ。僕は、「自分が高校生に見えるのかな……」ということが心配でした。 橋本 (笑)。 渡辺 僕はいま28歳で、高校を卒業してから10年経つので、作品内の現在のパートの人物たちと同い年なんです。20歳くらいの頃は、高校生活ってまだ近い過去のものだったから、思い出したり懐かしんだりするような感覚はなかった。でも28歳になると、高校生活というものがすごく遠くにある感じがして、切なくなる。あんなに鮮明に頭に浮かんでいた高校生の頃の記憶をちょっと忘れ始めている。それが寂しい。そういう意味では、等身大の寂しさが出せたかなという気がしています。役柄として難しいという感覚はあまりなかったけど、だからこそ、この作品に合った自分の消化の仕方をすごく考えました。 ——舞台となるのはどこかの地方都市。撮影は富山県だそうですね。おふたりの地元の風景とはどれくらい似ていますか? 橋本 わたし、富山の景色がすごく好きなんです。地元の熊本と似ているんですけど、ひとつ明らかに違ったのは、夕日。熊本の夕日は、まぶしくて見ていられない。でも富山の夕日はきれいでずっと見ていれられる。どうしてなんだろうって原作者の山内マリコさんと話していたら、「富山の空はグレーがかってるからね」って言われて(笑)。気候のせいなのか、空気の違いでフィルターがかかるのかわからないけど、夕日が本当にきれいでした。本来は目にやさしいものが好きだし、太陽より月のほうが好きなので、これまで夕日を特に好きだと思ったことはなかったんですけど。 渡辺 たしかに、橋本さんは月が好きそうだし似合うよね。月が似合う女、橋本愛。その女が愛した太陽のある街、富山。 ——東京の夕日はどうですか? 橋本 東京の夕日は、ビルに反射してまぶしいですよね。夕日というより「西陽」というイメージ。 渡辺 僕の地元は神戸の山奥なんですけど、この映画のようなまっすぐな道はなくて。神戸は坂が多い町なんです。 橋本 チャリ漕ぐの大変そう。 渡辺 そう、だからチャリは漕がない。それで地元にいた頃、夕日が真っ赤に染まる瞬間を見たことがなかったんです。山に囲まれていると、日が沈む頃にはもう太陽が山に隠れてしまっていて。空はオレンジがかってるけど、夕日自体が赤くなるところを見たことがなかった。初めて東京に出てきた時、夕日が赤くて、それを見て泣きました。 橋本 フジファブリックだ〜! 渡辺 あっ、ほんとだ“茜色の夕日”だ。……いや、これいま思い出したことなので仕込みじゃないですよ(笑)。だから初めて東京の丸くて赤い夕日を見た時は、すごくかっこいいと思いました。その光景はいまだに脳に焼き付いていますね。僕のなかでの東京は、あの丸い夕日と東京タワーのイメージ。 橋本 じゃあ東京は赤い街なんだ。面白いなあ。

「“何者でもない”ことを自覚することが大事」(橋本愛)

——おふたりは以前に映画『大人ドロップ』『渇き』(ともに’14)などで共演されていますが、当時は一緒に撮影するシーンは少なかったと思います。今回、本格的に共演してみて、お互いどのような印象を持ちましたか? 橋本 今回の役柄のせいもあるけど、中性的な印象がすごく強いです。ニュートラルという言葉の意味そのままの人だと思う。何を入れてもいろんな形や色にしてくれるから、他の作品を見てもまったく違うキャラクターになっているし、オーラも役によってまったく違う。ミュージシャンをやりながらここまで演じられるのはすごいなって、圧倒されます。 渡辺 ……やばいですね、ちょっといま、照れてしまって橋本さんの目を見られないです。橋本さんは、その佇まいというか、圧倒的な存在力。セリフを言う前からセリフが始まっているような感覚なんですよね。ミュージシャンでもたまにいるんです、歌う前からかっこいい人が。その人がステージに出てきただけで泣けちゃうという。たとえば、僕はハナレグミの永積タカシさんを初めて見た時にそう感じました。そういう力を橋本さんは映像で出せる人なんです。現場で、切り返したカメラに橋本さんが映った瞬間、もう何かが始まっている。そう思わせてくれる人は映画にとってすごく大事ですよね。いち映画ファンとしても、橋本さんが映画界にいてくれていることはありがたいと思います。お芝居がうまい方はたくさんいらっしゃいますけど、橋本さんにしかない魅力はそうした佇まい、存在力だと僕は思います。 ——本作で描かれる人物は「何者かになりたくて、何者にもなれなかった人物」です。そういう悶々とした時期というのは、おふたりにはあったんでしょうか? 橋本 わたしは「何者かになりたい」と思ったことがないかもしれません。仕事を始めたのが早かったので、自分探しをする前にその船に乗っていたという感じ。だから「何者かになること」が正しいとも思っていないし、むしろ「何者でもない」ことを自覚することの方が大事だと思う。確かに、自分が弱っている時や、何かひとつのことに集中しすぎていると、そういう浅はかな欲望が出てくることもあります。だから逆に、それを打ち消す作業を頑張っている。たぶん、「大きくなりたい」と思うから「何者かになりたい」と願うんだと思うんです。でもそれに固執すると、自分がどんどん小さくなっていくという予感がする。そういう矛盾を引き剥がすことを心がけています。 渡辺 僕もまったく同じ回答でお願いします(笑)。というのは冗談で、僕はこれまで「何者かになりたい」という感情が浮かんだことがなかったんです。音楽も役者も、「やりたいなあ」と思う前に、気付いたらもうやっていた。でも最近ふと「あれ? 自分はなんでこれをやってるんだっけ?」って初めて考えたんです。そうしたら、自分のなかに「何者かになりたい」という気持ちが実はあったんだと、ようやく28歳になったいま気付きました。「何者かになりたい」と願うことが正しいとはいまでも思っていないけど、その欲求はすごく純粋なものだから、そう思っちゃったということを大事にしたいです。

「退屈だということを忘れさせるのではなく、向き合わせてくれる」(渡辺大知)

——この映画に希望はあると思いますか? 橋本 あると思います。たしかに痛いまま終わる映画だけど、すごく何気ないもので持ち上げられる感じがしていて。出来事というよりも、何かを読んだり見たり、良い意味で自分にとって都合の良いものをピックアップして、そうしてなんとか前向きに生きていく。それがこの映画の本当に小さい、けれどもたしかな希望だと思いました。 ——終盤で、東京に出たある人物が「超楽しい」と言うシーンがあります。あのシーンをどう解釈しましたか? 映画のテーマ的には、皮肉とも解釈できると思うのですが。 橋本 最初に脚本を読んだ時は、その人物が無理やり言っている感じがしました。でも映画を観たら、表情や東京の街並みの美しさから、人物の心が満たされている感じがして。それはいつか終わるものなのかもしれないけど、美しい瞬間だとは思います。 渡辺 僕は、先のある「超楽しい」だなという感じがして、それが切なく感じました。東京に行ったり、地元に戻ったり、残ったり、いろんな生き方があると思うけど、みんな不安や退屈を抱えて生きている。退屈だということを忘れさせるのではなくて、ちゃんと向き合わせてくれる。それがあのセリフだと思いました。 ——「超楽しい」と言った人物は、あの数年後に「私」になるかもしれないわけですよね。 渡辺 構造的にはそうですよね。でも、そうならないかもしれない。 橋本 ならないでほしいですね(笑)。 渡辺 でも、東京にいようが地方にいようが、どこにいても変わらないんだと思います。みんなそこそこ楽しくて、そこそこ退屈で。それを悲観的に捉えてしまったら終わりという気がする。橋本さんが言った「何者にもなれない、ということを自覚する」という言葉に近いけど、「楽しくないとやばい」とは思わない方がいいと思う。そもそも「退屈だ」と思うことは生きている証だと思うし。そういうことも受け入れさせてくれる映画だと思います。

映画『ここは退屈迎えに来て』

10月19日(金) 全国公開

出演:橋本愛 門脇麦 成田凌 / 渡辺大知 岸井ゆきの 内田理央 柳ゆり菜 亀田侑樹 瀧内公美 片山友希 木崎絹子 / マキタスポーツ 村上淳 原作:山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」幻冬舎文庫 監督:廣木隆一 脚本:櫻井 智也 制作プロダクション:ダブ 配給:KADOKAWA ©2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会 詳細はこちら

text & interview by 山田宗太朗

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Qetichub Vol.05 – メイリ

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PROFILE

メイリ

北海道出身、色白の道産子グラドル。週プレボイン番付大関&美巨乳美巨尻番付張出横綱。2018年2月にDVD『愛のつづき』、5月に『Sweet Vacation』を発売。タレントとしてAmebaTV「お願いランキング」や「モヤモヤさまぁ〜ず2」配信オリジナルコンテンツに出演。
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セクシー美女軍団HECATEダンサーズとシラフでアガる!多幸感溢れる新サービス『デリハイ』を体験!

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2018年も残りわずか、いよいよ忘年会シーズンがやってきました。街を歩けば、どこもかしこもクリスマスの装い。企業の納会に顔を出す、2人だけでラヴリーな時間を楽しむ、仲間ともぐもぐタイム、自宅でまったりeスポーツ……などシチュエーションは数あれど、プライベートから仕事の付き合いまで、家でも外でもパーティーで遊び倒す。それが正しい年末年始の過ごし方でしょう。

いざパーティーとなれば、“U.S.A.”ばりのアゲアゲでいきたいもの。山ナシ・オチナシ・意味ナシの三拍子揃った、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」的パーティーほど悲惨なものはございません。かといって、いきなりテンション上げるのも正直キツイ。

そんなときは、新サービス『デリバリーハイテンション DELI-HIGH powered by HECATE』(以下、デリハイ)の出番です!

『デリハイ』とは?

デリバリーハイテンション DELI-HIGH powered by HECATE

『デリハイ』は、パーティードリンク「HECATE(ヘカテ)」を企画・製造する、株式会社ヘカテの斬新すぎる宅配サービス。ハイになりたい場面に合わせて、最強のウェアラブル・パーティー・デバイスを装着したHECATEダンサーズが、HECATEとハイテンションをお届けします。

HECATEはノンアルコールなので、お酒を呑めない人でもウェルカム! しかも『デリハイ』は完全無料!! もう呼ぶしかないっしょ!!!……と言いたいところですが、いきなり頼むのはビビるのもわかります。ということで、『デリハイ』の魅力がわかる体験潜入レポートをお届け。宴会部長のアナタと、人生マンネリ気味の方は必読ですよ!

Report:デリバリーハイテンション DELI-HIGHpowered by HECATE

今回、『デリハイ』を体験してもらったのはTEAM COLORSの皆さん。

ファッション×ヘアメイクアップ×ボディメイクのアーティスト集団で、TV、CM、広告など芸能界で広く活躍されています。クリエイティヴの最前線にいる彼らに、『デリハイ』は楽しんでもらえるのか。原宿にあるCOLORS LOUNGEを会場に、いよいよパーティー開始です!

セクシー美女軍団HECATEダンサーズがド派手に登場!

ド派手な入場曲に合わせて、さっそくHECATEダンサーズが姿を現しました。オール金髪で黒のサングラス&コスチューム姿。未来的フォルムをもつ、セクシーな美女軍団ではないですか。おまけに彼女たち、凄そうなブツ(ライフル?)を構えていますよ。中央に立つリーダーらしき方は、重厚なバックパックを背負っています。いったい何が始まるのでしょう? TEAM COLORSの面々も「ヤバーイ!」と興奮が抑えきれないようです。

ここで、中央に立つリーダーから出だしの挨拶。他のメンバーは「ザ・フェイム」期のレディー・ガガ風なのに、リーダーの髪型とメイクは「ボーン・ディス・ウェイ」期のガガっぽく貫禄があります。お姉さんキャラで仕切り上手、これは幹事も助かるでしょう。

シラフでアガる、すっきりヘルシーなパリピ味

キンキンに冷えたHECATEをお配りしたあと、『デリハイ』についてリーダーから解説。エキゾチックなリーダーの爆笑MCによって、場の空気もホットになったところで、「3・2・1、ヘカテ〜〜!!」で乾杯です。

いやー、始まったばかりなのにメチャ楽しい! それにHECATEもメチャ美味しい。ライムの香りがしてモヒートっぽい口当たり。カフェインやマカ、ガラナなどエネルギッシュ成分も配合され、シラフでアガる、すっきりヘルシーなパリピ味がします。

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おやおや、大量のドル札が舞っていますよ。「バブルへGO!!」と言わんばかりのゴージャスな演出ですね。さらに、ダンサーズの一人が「トイレット ペーパーガン」で突風を吹かせ、トイレットペーパーまで舞っているではないですか。これは異様な空間です。

HECATEダンサーズの先導でダンスナイト開幕!?

「どんどん飲んで〜」とリーダーが煽り、HECATEをもう一本おかわり。そして、「みなさん踊りましょう!」と声をかけ、TEAM COLORSも全員起立。「ドローンミラーボール」が放つLEDレーザーに囲まれ、ダンスナイトの幕開けです。

しかし、どう踊るべきかわからず、TEAM COLORSはいささか困惑ぎみ。「こんなテンションでは困ります」と、リーダーから愛のムチが入りました。これは通称「おしかりタイム」。容赦ないダメ出しのあとに、HECATEダンサーズによる振付のレクチャーが始まります。

まずは両腕を突き出し、交互にクロスさせたあと、元気印のマッスルポーズでイェーイ!

その次は、腕をしならせて波を作り、ジョン・トラボルタばりに人さし指を突き上げてイェイ、イェイ! 

シンプルで覚えやすく、TEAM COLORSも楽しそう。ダンスはどんどんスピードアップしていき、踊っているうちに振付も完璧にマスター。最後は、「よくできました〜」とリーダーもご満悦で、ハイタッチと乾杯の嵐が生まれました。

超高水圧でHECATEを噴射する「ヘカテライフル」をお口に発射!

そのあと、ダンスの切れ味がよかったお兄さんが優秀賞に選ばれ、ご褒美にダンサーズと記念撮影。

さらに、超高水圧でHECATEを噴射する「ヘカテライフル」をお口に発射されています。ここにもエロスを感じてしまうのは、筆者の心が汚れているせいでしょうか。お兄さんもかなりニヤついています。

思い切りフィーバーしまくったところで、あっという間にお別れの時間です。次の現場に駆けつけるため、「さあ撤収よ!」とその場を去るダンサーズ。これでおしまいか……と思いかけたところにバズーカから、大量の金テープが勢いよく放出! 最後までハイテンションをお届けする仕事っぷりに、TEAM COLORSの皆さんも大感激でした。

ノンアルコールとは思えぬ多幸感!!!

TEAM COLORSさんに『デリハイ』が帰宅後、感想をお伺いをしてみました。みなさん『デリハイ』の興奮が冷めぬまま、「テンション上がりました!単純に楽しかったです!大きなイベントで来て欲しい!」「場を盛り上げたいときやサプライズなどのときにとても良いと思いました!一緒に踊ったり、皆さん面白くて楽しかったです♪」など、“ハイ”テンションのコメントをくださり、『デリハイ』にご満悦の様子。

実際に体験しながら驚かされたのは、ノンアルコールとは思えぬ多幸感。あらゆる層に対応した、画期的サービスだと言えるでしょう。完全無料の『デリハイ』は公式サイトから簡単に応募できるので、気になる方はさっそくトライしてみるべし。

応募はこちらから

『デリハイ』体験はまさにこのHECATEのオフィシャルムービーのようなカオスな盛り上がり。近年稀にみるハイテンションな空間をお届けします!

クリスマスパーティや忘年会シーズンのお供にしたい『デリハイ』はチェック必須です!

デリバリーハイテンション DELI-HIGH powered by HECATE

実施日:2018.11.30(金)〜12.24(月)までの毎週金曜日・土曜日

実施時間:1st:17:00~17:45/2nd:18:45~19:30/3rd:20:30~21:15/4th:22:15~23:00

訪問先:ダイニングバーや居酒屋などのお店、ご自宅、オフィス等

デリハイチーム構成:ダンサーを含めた5名構成

予約方法: STEP1 特設サイトよりご希望日時と必要情報を記入し応募 STEP2 当選者に当選メールを配信 STEP3 デリハイ事務局から事前に電話で確認

詳細はこちら

HECATE(ヘカテ)

オフィシャルサイトInstagramTwitter

text by Toshiya Oguma photo by 山本春花

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高岩遼のモノローグ|『10』リリースライブに向けて

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高岩遼

高岩遼|Road to QUATTRO

明日はいよいよ俺の晴れ舞台。ソロ・アルバム『10』のリリース・ライブが渋谷はCLUB QUATTROのステージにて。渋谷ストリートをブラりして、頭をリセットしたいと思う。

高岩遼
高岩遼
高岩遼

ここは所謂“高架下”。路上ライブで汗を流した場所。駅の開発が進み、ミュージシャンが陣取れそうな場所はもうない。

SANABAGUN. 『WARNING』 at渋谷路上 2015-08-21

高岩遼
高岩遼
高岩遼

TSUTAYA前。ここも路上ライブで数々のドラマが生まれた場所だね。人も多く注目は集めやすいが手配リスク高。チップの入りも微妙なのでご注意を。This is 度胸試し。

THE THROTTLE ゲリラLIVE渋谷0604

高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼

やっぱ、渋谷でスケボーはできないっすね(笑)。

高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼

円山町まで来たけど、asiaは実は思い入れ強くて。昔、代官山で<一人三役>ってイベントを打ったんだよね。ジャズ岩と、サナ岩と、スロ岩のキングギドラフルコース。ヤバいイベント。その後お世話になったブッカーさんがasiaに移ってて、連絡くれてイベントやってよって。そこで第2回目の一人三役のショウをしたんだよね、タイトルは<THE 3 VIBES>。ダッチがポスター作ってくれたりとか。高岩の野望やビジョンが更に広がりだした瞬間だったね。え? 第3回目? 今は無理だな! もうちょと年食ったら必ずやりたいね。

高岩遼ワンマンショウ 〜一人三役〜

高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼
高岩遼

クアトロ、やりますよ。明日。

フルビッグバンド、素晴らしいミュージシャンが揃いました。Yaffleも一緒にステージに乗ります。高岩の10年が高岩をここに連れてきました。この先の10年の始まりとなるであろう明日、俺は一つ自分に宿題を出しました。超えてみせましょう、高岩遼。

すげぇ、楽しみ。

text by 高岩遼

高岩 遼 - ROMANTIC

高岩遼ソロアルバムリリースパーティ“10”

2018.12.12(水) OPEN 18:15 / START 19:00 渋谷CLUB QUATTRO ADV ¥4,000(1ドリンク代別)

チケット一般発売中 主催:VINTAGE ROCK std. 企画/制作:高岩遼、UNIVERSAL MUSIC JAPAN / Bauxite Music wy. / VINTAGE ROCK std. お問い合わせ:VINTAGE ROCK std.

詳細はこちら

高岩遼

オフィシャルサイトTwitterInstagram【コラム】高岩遼のよろしくHOLIDAY

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TeddyLoid×MATZ インタビュー|バーチャルYouTuberキズナアイの魅力・ポテンシャルを解き明かす

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2016年12月に活動を開始し、現在ではYouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数が230万人を突破するなどバーチャルYouTuber界最大のスターとして知られるキズナアイ。

彼女がこの7月に発表したデビュー曲“Hello, Morning (Prod.Nor)”に続き、様々なプロデューサーを迎えて9週連続でオリジナル曲をリリースしている。週ごとに変わる参加プロデューサーは、Yunomi、Avec Avec、Nor、Pa’s Lam System、☆Taku Takahashi、DÉ DÉ MOUSEなど豪華布陣。

歌詞は主に彼女自身が手掛け、バーチャルとリアルの壁を越えて「世界中の人たちと繋がりたい!」と語る彼女の思いが伝わるような歌詞と、クラブ・シーンの最先端のトレンドが楽曲の中でひとつになっている。

中でもEDMを基調にしたサウンドで、キズナアイの楽曲に新たな魅力を加えているのが、TeddyLoidとMATZの2人だ。今回は2人に集まってもらい、アーティストとしてのキズナアイの魅力や楽曲の制作風景、好きな動画、これからやってほしいことまで——。彼女の様々な魅力を語ってもらった。

Interview TeddyLoid&MATZ

——そもそも、お2人はバーチャルYouTuberにどんな魅力を感じていますか?

TeddyLoid 僕はもともと、バーチャルおばあちゃんがすごく好きなんですよ。この人はゲーム実況などをやっている……人というか、おばあちゃんで(笑)。そういう面白い動画を観ることが多いですね。でも、やっぱりすごく嬉しかったのは、キズナアイちゃんがアーティストとしてデビューしてくれたことでした。彼女の番組は前からずっと観ていましたけど、当初はまさか音楽をやってくれるとは思っていなくて。しかも、実際の音楽もすごくいいので、彼女のミュージシャンとしてのポテンシャルの高さを感じているところです。

MATZ 僕もともと、バーチャルYouTuberの存在を知ったきっかけがキズナアイさんだったんです。僕らの世代はみんな暇があったらYouTuberの動画を観ているんですけど、そこに初めてバーチャルの女の子がやってきて、普通の人のように楽しく話していることに魅力を感じました。それに、「もし音楽をはじめるなら、エレクトロが合うだろうな」と思っていたら、デビュー曲の“Hello, Morning (Prod.Nor)”がまさにそのイメージに当てはまる曲で。今では好きなミュージシャンのひとりにもなっていますね。

——バーチャルYouTuberはCGやイラストのキャラクターでありながら、リアルタイムで視聴者の人たちとコミュニケーションが取れることが魅力的ですよね。

TeddyLoid そうですね。これまでの二次元のコンテンツって、世に出る前に喋り方だったり、動き方だったり、表情だったりを編集しなければいけなくて。でも、キズナアイちゃんは、「存在自体がキズナアイちゃん」なんですよね。動画を観ていて、僕は彼女が生きているように感じるし、その存在感がそのままダイレクトに伝わるところがすごいと思います。

MATZ バーチャルとリアルで次元は違いますけど、僕らと同じ時間を共有していて、コミュニケーションを取ることができて。そこにファンタジーを感じますし、同時に今の時代のテクノロジーが集約された存在だとも思うので、すごくワクワクしますよね。

——では、キズナアイちゃんの動画の中で好きなものというと?

TeddyLoid 僕はダントツで、HIKAKINくんとの“親分コラボ”(YouTuberの親分と呼ばれるHIKAKINと、VTuberの親分と呼ばれるキズナアイのコラボ動画)ですね。僕はHIKAKIN&SEIKINの楽曲プロデュースもさせてもらっているので、今回キズナアイちゃんの楽曲のプロデュースもできて、その両方にかかわれたことがすごく嬉しいです。僕はあの親分コラボ動画がすごく好きだし、できればそこに混ざりたい(笑)。

MATZ はははは。

——あの動画では、結構真面目な話もしていたんですよね。

TeddyLoid そうそう! 「キズナアイちゃん、頭いいなぁ」と思って。あの動画を観て、僕の中でもだいぶ印象が変わりました。

MATZ 僕は「スナック愛」が一番好きですね。あのシリーズって、関西弁のバージョンもありますよね。それを仕事が終わったあとに、家でお酒を飲みながら楽しんで観るのが好きで(笑)。そういう楽しみ方をさせてもらっています。

——「スナック愛」は、もともと2017年に出た動画でしたが、今年復活しましたよね。

MATZ あれはすごくいいです(笑)。

TeddyLoid こんなイケメンが、「スナック愛」を観ながら……。

MATZ ひとり酒ですよ(笑)。

TeddyLoid 今度、僕がそこに混ざるのもいいかも。

MATZ ぜひお願いします!

——「A.I.Games」でのゲーム実況も面白いですよね。キズナアイちゃんはスーパーAIなのに、ゲームがあまり上手くなくて。

TeddyLoid でも、それがいいんですよね。僕、ゲーム実況動画を観ていて、完全に「(スーパーAIに)勝てるな……!」と思いましたもん。

MATZ (笑)。

TeddyLoid でも、それがキズナアイちゃんの個性に繋がっているというか。

——やっぱり、同じ時代を生きている、ひとりのキャラクターだということで。

TeddyLoid 実際、僕の中ではバーチャルYouTuberというよりも、むしろ実在する人物に近いイメージなんです。しかも、今はアーティストでもあって、そういう意味でも共感していて。

MATZ 僕もTeddyさんと同じで、キャラクターでもなくて、キズナアイさんという、この時代に本当に存在する人物のように感じます。だから、細かい仕草や表情、喋り方も、ひとりの人としていいなぁと思うんですよ。

——そして、そんなキズナアイから、今回2人に楽曲制作のオファーが来ることになったのですね。

 

TeddyLoid  これはすごく嬉しかったです。最初にお話をいただいたときに、「feat. HIKAKINにしたいな」とか、色んなアイディアが出てきて(笑)。あとは、僕がやるなら思いきりEDMにして、これまで彼女が見せてこなかった表情を引き出せたら、とも思っていました。

——Teddyさんがプロデュースを担当した“melty world”までは、バキバキのEDMというよりも「kawaii futurebass」が中心でしたよね。一方で“melty world”は、《Put your hands up now》という歌詞も含めて、ライブの風景が想像できる曲になっていると思いました。

 

TeddyLoid  そうですね。僕の場合は超王道の、スタジアムでかかるようなEDMを作りたかったんです。それから、キズナアイちゃんが考えた歌詞と同じように、彼女がみんなを新しい扉の先、新しい世界へ誘うような曲にしたいとも思っていました。だから、これまでの曲とは全然違うジャンルにしていますし、後半では声を思いきり切り刻んでいて。一緒にライブをするのが今から楽しみです。MATZがプロデュースした“hello, alone”は取材の時点ではまだ配信されていなくて聴けていないけど、どんな感じになってるの?

MATZ アイちゃんは今ここに存在していても、次元が違うので、同じ次元で直接会うことはできないじゃないですか。僕の場合はその「切なさ」「儚さ」や、「今の技術を集約した細かいニュアンスや、喜怒哀楽が出せる存在でもある」ということを意識して、曲を考えました。それで、「発展した技術が生み出す繊細な表現」を意識して、曲を作っていったんです。

——MATZさんの“hello, alone”は、タイトルにデビュー曲の“Hello, Morning”との繋がりを感じますし、そのうえでちょっと切ない感情や、キズナアイちゃんのこれからへの気持ちのようなものが伝わるような楽曲になっていますね。

MATZ 実際にボーカル面では、キズナアイさんに細かい感情を表現するように歌ってもらいました。歌詞はアイちゃんがバーチャルYouTuberを引っ張ってやっていくぞ、という気持ちが感じられるものになっていて、その思いの込めかたもらしさがすごくあって。実は僕もタイトルが“hello, alone”に決まったときに“Hello, Morning”との繋がりを感じて、ここから「Hello」シリーズが「2部作」「3部作」と増えていってくれたらな、と勝手に思っていました。歌ってもらうとき、キーがいつもより高いので「大丈夫かな?」と思っていたんですけど、それも見事に歌い上げてくれて。歌手としてのポテンシャルがすごく高いと思いました。

——TeddyLoidさん、MATZさんの楽曲はそれぞれ、キズナアイの新しい表情が見えるような楽曲になっている印象ですね。

MATZ 僕たちの場合、もともとフューチャーベースではない、「128~130ぐらいのEDMを作ってほしい」という発注を受けていたんです。実際に一緒に曲を作らせてもらって、「こういうトラックに歌が乗ることで、また違った個性が出ているなぁ」と思いました。

TeddyLoid いい意味で、「僕らもフューチャーベース勢に負けたくない!」とも思っていましたね。

——一緒に曲を作った人たちから見て、キズナアイちゃんのアーティストとしての魅力はどんなところにあると思いますか?

MATZ もう、魅力がありまくりですよ。

TeddyLoid 本当にそうだよね。僕が特に思ったのは、やっぱり「声がいい」ということですね。僕はオートチューンマニアなんで、「オートチューンがかかっている声じゃないと駄目」みたいなところがあるんですけど(笑)。キズナアイちゃんの声はそのままでもすごく心地いんです。曲を作っているときは声を何百回も聴くんですけど、その作業も心地よくて。

MATZ キズナアイさんの声って、ずっと聴いていても全然疲れないですよね。僕も曲を作るときは何回も繰り返し声を聴くんですけど、聴くたびに元気になっていく感覚でした。

TeddyLoid その声のよさというのが、バーチャルYouTuberとしての活躍にも繋がっているように感じます。だから、他にも色んな曲ができそう。バラードを歌ってもらっても合いそうですし。

MATZ 聴きたいですよね。そもそも、アイちゃんはシンガーとしてもピッチがめちゃくちゃいいんですよ。

TeddyLoid そうそう。それに、僕らが考えたメロディを、自分で考えた歌詞と一緒にいい形で表現してくれていて、お互いのポテンシャルを引き出し合えたような作業でした。

MATZ 最初のオーダーとして、「ループを主体にした洋楽ポップスっぽい曲にしてほしい」とも言われたんですけど、キズナアイさんは同じループの中でも色々な歌い方ができるので、繰り返すことに意味がある、ちゃんと曲のメッセージが伝わるような曲になったと思います。

——歌詞を自分でも考えている、というのも大きな魅力ですよね。

TeddyLoid 自分で思いを発信しているんですよね。

MATZ 詞から思いが伝わってきたので、僕らがプロデュースするというよりも、むしろ一緒にコラボレーションをしているような感覚でした。

——制作中、特に印象に残っていることはありますか?

TeddyLoid “melty world”では《Put your hands up now》というパートの声のバリエーションをたくさん録らせてもらったので、それを思いきり切り刻んで、新しいフレーズにしていったことが楽しかったです。

MATZ “melty world”は曲調もメロディも、聴いたときに一発でTeddyさんだと分かる感じになっていて、「やっぱり流石だな」と思いました。

TeddyLoid 嬉しい。そのまま声を乗せるだけじゃなく、色々エディットしてみたんです。

MATZ

 僕も声の素材の話ですけど、よくEDMのドロップで、シンセがバーッと鳴っているところに「アーーー」とクワイアっぽい声が入って、それがコードと一緒にサイドチェインされて気持ちいい音になる瞬間がありますよね。今回の“hello, alone”では、それをアイさんの声でやりたいと思って、素材録りで「『アー』ってやってください」とお願いしました。そこでも見事なピッチでまっすぐに歌ってくれて。その素材を5~6本もらって、聴いているときがめちゃくちゃ楽しかったです。

TeddyLoid それもう、ただのファンだよね(笑)。

MATZ 「ええなぁ」って(笑)。だから、やっぱりすごくいい声だと思うんですよ。

TeddyLoid アイディアが湧き出る声というか。そういう魅力がありますよね。

——MATZさんは制作中、煮詰まったときにアイちゃんの動画を観たりもしたそうですね。

MATZ はい。トラックメイカーの人はやる人が多いと思うんですけど、僕は作業が煮詰まったときに、YouTubeで音楽とは関係ない動画を観たりするんですよ。

TeddyLoid それは僕も分かる。でも、キズナアイちゃんの曲を作っているときに、キズナアイちゃんの動画を観るって……なんか贅沢だね。

MATZ それで叱咤激励された気持ちになって、「さぁ頑張ろう!」と作業を進めていきました。「スナック愛」を観るのは終わってからです。ダレちゃうんで(笑)。

——12月29日(土)と30日(日)には、それぞれ東京と大阪で初のワンマンライブ<Kizuna AI 1st Live “hello, world”>も開催されますね。

MATZ 僕が東京公演に出て、Teddyさんが大阪公演に出るんですよね。

——当日はどんなことを楽しみにしていますか?

TeddyLoid まだどんな内容になるかは分からないですけど、“melty world”は曲を作っている時点でも、<ULTRA>やフェスでの自分のDJのときにかけて、キズナアイちゃんが乗り込んできたら楽しそうだな、と思っていたんですよ。だから、ライブはすごく楽しみです。

MATZ 僕もTeddyさんと同じようにスタジアムでやるような雰囲気を想像して曲を作っていたので、当日がすごく楽しみです。

TeddyLoid 東京と大阪で、それぞれ盛り上げられたら嬉しいですね。

——またキズナアイとコラボレーションできるとしたら、やってみたいことは?

TeddyLoid 今回は僕が曲を作って、MATZが曲を作ってという感じでしたけど、次は曲作りの段階から、自分とMATZと2人で曲を作っても面白そうですね。最近は海外だと、ひとつの曲に複数のプロデューサーがかかわるコライトが一般的になっていますし。

MATZ 今はほとんどその形ですよね。それは面白そう! あとは最近、ダンス・ミュージックを作っている人でも、「バーチャル空間に行きたい」「自分もバーチャルYouTuberになりたい」と言っている人が多くて。だから、僕らがバーチャル空間に行って、リアルタイムで曲を作っても楽しそうです。

TeddyLoid それも面白そう。さらにイケメンになるわけだ、バーチャル空間では。

MATZ  どういうことですか(笑)。

TeddyLoid (笑)。あとは、「feat. HIKAKINくん」での親分コラボで曲を作ってみたいですね。やっぱり「W親分コラボ」で!

——2018年はバーチャルYouTuberが広く認知されはじめた年になったと思います。これから、バーチャルYouTuberのみなさんにはどんな活躍を期待していますか?

TeddyLoid 今回キズナアイちゃんがミュージシャンと一緒に曲を作れたことがすごく楽しかったですけど、音楽以外だと俳優や女優になれる可能性もありますよね。実際、僕はバーチャルYouTuberのみなさんが映画やドラマにも出てくれるようになると思っているので、そのときには主題歌を担当させてもらえたらいいな、と勝手に思ったりしています。

MATZ 女優や俳優業、すごく面白そうですね。表情もすごく伝わりますし。めっちゃ観たい。

TeddyLoid 学校の授業でキズナアイちゃんが出てきてくれたら、すごくいいと思うんですよ。学生の人たちには彼女のファンもすごく多いだろうし、みんな喜びそう。

MATZ 寝てたら怒られるわけですね(笑)。

TeddyLoid そうそう。チョークが飛んでくる。

——次元を超えてチョークが飛んでくる、と(笑)。

TeddyLoid 可能性は無限大ですよね。

——これからますます身近な存在になってくれたら、とても楽しくなりそうですね。

TeddyLoid 本当にそうですね。

——2人が思うキズナアイちゃんの魅力とは、どういうものだと思いますか?

TeddyLoid やっぱりそれは、何を言っても、何を話しても、人の心を掴んでしまうところなんだと思います。一緒に曲を作らせてもらっていても、動画を観ていても、僕自身すごくそういう魅力を感じます。

MATZ 見た目も最新の技術が集結したものになっていてすごいですけど、それだけじゃなくて、中身もバーチャルYouTuberを代表できる人なんだと思います。Teddyさんも言うように、人を惹きつける力がすごいというか。そういう魅力を持っている人ですよね。バーチャルYouTuberの代表として、これからも突き進んでいってもらいたいです。

TeddyLoid 彼女を中心に、どんどんバーチャルYouTuberの輪を広げていってほしいです。そしていつか、バーチャルYouTuber全体のテーマソングが生まれても楽しそう。バーチャルYouTuberの合唱曲というか(笑)。

——“We Are the World”のようなイメージですか?

MATZ バーチャルYouTuberだけの“We Are the World”! それ、すごく聴いてみたいです(笑)。

Photo by Kohichi Ogasahara

INFORMATION

Kizuna AI 1st Live “hello, world”

2018.12.29(土) 東京・Zepp DiverCity OPEN 17:00/START 18:00

2018.12.30(日) 大阪・Zepp Osaka Bayside OPEN 17:00/START 18:00

詳細はこちら

キズナアイ

Kizuna AI(キズナアイ)は、2016年12月に活動を開始した(自称)世界初のバーチャルYouTuber。自身の運営するYouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数は230万人を突破し、ゲーム実況専門チャンネルである「A.I.Games」の登録者数も110万人を突破した。現在はYouTubeに限らず、多方面にて活動の場を広げており、日本国内だけでなく海外からも人気を博している。そんなキズナアイの使命は世界中のみんなと繋がること。その一環として、VRやAIといった先端テクノロジーと人間の架け橋になろうと日々奮闘中。さまざまな壁を超える手段として、本格的な音楽アーティスト活動にも取り組んでいる。(c)Kizuna AI

YouTube A.I. ChannelA.I. Games

SNS TwitterInstagramFacebookWeiboWebsite

MATZ

身長187cm・20歳・北海道生まれ北海道育ちのプロデューサー/DJ。 エレクトロなどのダンスミュージックから影響を受け、15歳よりコンピューターを用いて楽曲制作を開始する。 北海道で活動し、SoundCloudに公開されたオリジナルトラックが早くも各地のDJから注目を集め、2016年にアメリカ・マイアミで開催された“Ultra Music Festival”でもサポートされる。 最先端のデジタル・クリエイティブを取り入れたスタイルと日本人離れしたスマートなビジュアルは、日本のダンスミュージック・シーンを牽引する次世代アーティストとなるだろう。

SNS TwitterInstagramSpotify

Teddyloid

弱冠18才にしてMIYAVIのDJ~サウンド・プロデューサーとしてワールドツアーに同行し、そのキャリアをスタート。 ☆Taku Takahashi(m-flo)と共にガイナックスのアニメ“Panty & Stocking with Garterbelt”のOSTをプロデュース。 柴咲コウ、DECO*27とのユニット、galaxias!の結成、ももいろクローバーZの“Neo STARGATE”のサウンドプロデュース~2013年の西武ドーム大会へのゲスト出演、アニメ『メカクシティアクターズ』へのBGM提供、ボーカロイドIAのプロデュース〜リミックス、『アニメ(ーター)見本市』中の吉崎響監督作品『ME!ME!ME!』、スクウェア・エニックスの『無限∞ナイツ』、宮本亜門演出のWRECKING CREW ORCHESTRAの長編新作公演、“SUPERLOSERZ SAVE THE EARTH 負け犬は世界を救う“等を手掛ける。 2014年8月にキングレコードEVIL LINE RECORDSよりEP、“UNDER THE BLACK MOON”、続く9月にファーストアルバム、“BLACK MOON RISING”をリリースし、ソロ・アーティストとしてメジャー・デビュー。 2015年夏には『ももいろクローバーZ×TeddyLoid Remix Project』をスタートし、9月には初の公式リミックス・アルバム、“Re:MOMOIRO CLOVER Z”としてリリースを実現。ももいろクローバーZの夏の大型公演『桃神祭2015』では、DJとしてフロントアクト出演を果たした。 12月には全12曲に計14組の豪華ゲスト・アーティストを迎えた初のコラヴォレーション作品、“SILENT PLANET”をオリジナル2ndアルバムとしてリリース。小室哲哉、中田ヤスタカ、柴崎コウ、KOHH他、豪華かつ大胆な共演が話題となっている。4月からオンエア中のモード学園グループの学校法人・専門学校 HALの2016年度TVCM「嫌い、でも、好き」篇では、音楽を担当している。 海外からの評価も高く、今年5月には初のアジア開催となった“MICS MACAU 2016 DJ Festival”に日本代表DJとして招聘され、また7月にはLAで催された北米最大のジャパンカルチャーの祭典、“ANIME EXPO 2016"のDJイベントにヘッドライナーとして出演を果たした。

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EVENT INFORMATION

Suchmos ARENA TOUR 2019

03.16(SAT)静岡:エコパアリーナ 03.30(SAT)宮城:ゼビオアリーナ仙台 04.06(SAT)北海道:北海道立総合体育センター 北海きたえーる 04.20(SAT)新潟:朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター 04.29(MON)福岡:福岡国際センター 05.11(SAT)広島:広島サンプラザホール 05.25(SAT)兵庫 / 神戸:ワールド記念ホール 05.26(SUN)兵庫 / 神戸:ワールド記念ホール

各種プレイガイド先行受付中!

https://www.suchmos.com/live/

Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM

2019.09.08(SUN)神奈川:横浜スタジアム

RELEASE INFORMATION

NEW ALBUM COMING OUT 2019 SPRING...

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東京コミコン2018レポート|MARVEL人気の“熱”を感じにコミコンに行ってみた!

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東京コミコン2018

日本では3回目の開催となる「東京コミックコンベンション」、略して「東京コミコン」が2018年11月30日、12月1日、12月2日の3日間に渡って幕張メッセで開催されました。東京では3回目の開催。コミコンの名は知っているものの行ったことがない! という人は多いと思います。かくいう筆者もまさにその口。海外のコミコンにあの映画スターが来てこんな発言をした! だったり、コミコン限定グッズ発売! みたいな記事をうらやむ日々でした。しかし、今年はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)10周年であり、『アベンジャーズ4』を待ち望む日々の中での開催ということで、何をやっているかはよくわからないけれど、行けば愛するMARVELのあれやこれやを楽しめるはず、というだけでチケットを取ったのでありました(記事は後から書くことになっただけで自腹参戦!)。

東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 

コミコン発祥の地はサンディエゴ。1970年にスタートした「ゴールデン・ステート・コミック・ブック・コンベンション」が原点で、当初はテクノロジーとポップカルチャーのイベントだったそうです。そこにコミック、アニメ、ゲーム、映画などが加わり、いまではサンディエゴだけでなく世界各国で開催される世界的イベントに。東京コミコンも年々来場者・出展企業数共に右肩上がりで、今年は6万人以上の来場者を記録。早くも来年の開催決定がアナウンスされました。そんな大盛り上がりの東京コミコン2018の潜入レポートをお届けします。

東京コミコン2018、突撃レポート!!

東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 

開場時刻に間に合うように訪れたため、平日でありながら長蛇の列。コスプレをしている方もいれば、いつかロバート・ダウニー・Jr.に来て欲しいと熱弁をふるう方、おそらく来日ゲストとの撮影会のため和服でビシッと決めている方など、並んでいる時間も楽しいのなんの。会場に入ると、巨大な企業ブースの大規模ディスプレーが目に入り、普通であればどこから見るか迷うところでしょうが、今年はきっと誰もが最初に行くべきところが決まっていたはずです。そう、スタン・リー氏の追悼モニュメントです。スタン・リー氏はスパイダーマンやハルクなどMARVELの人気キャラクターの生みの親。東京コミコンにも名誉親善大使として第1回、第2回に参加し、今回も来日予定でしたが、直前の11月12日に逝去されました。わたしたちがMARVELをここまで楽しめている現在を作ってくれたことに、まず感謝して哀悼の意を示さなければ。メインステージ冒頭で追悼映像が流れ、追悼モニュメントのメッセージボードは開場すぐにたくさん謝意で埋め尽くされていきました。

 
東京コミコン2018 

もともとの理念がテクノロジーとポップカルチャーのイベントというだけあり、体験型のアトラクションもちらほら。まずMARVEL本家のブースにはキネクトを用いたアトラクション「BECOME IRON MAN」がお目見え。モニターに戦闘シーンが一人称視点で写し出され、手のひらから出る非行安定装置を転用した武器を操ることができるのです! 憧れですよね、アイアンマンのスーツを着るのは。ハルクバスターにも乗れましたよ!

東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 

MARVELブースには、2019年3月15日に公開を控える『キャプテン・マーベル』の限定ムビチケ発売、マーベル・コミック・ジャパンリミテッドエディションの展示ゾーン、武者絵を現代に甦らせる武人画師 こうじょう雅之氏の作品展示(ライブペインティングも開催されたそう)などさまざまなコーナーを展開。そしてMARVELといえば魅力的なグッズの数々が人気ですが、東京コミコンでも大規模な物販コーナーが設けられました。ポップアップストアはよく商業施設にオープンしていますが、その数倍どころではない規模の圧倒的物量のグッズが販売され、初日の早い時間から入場制限がかかるほど。トムヒ様来日フィーバーを受けてか、ロキグッズってこんなにあったっけ? というほど商品が投入されているのが印象的でした。

東京コミコン2018 
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MARVELきっての人気キャラクターであるスパイダーマンはやはり別格で、単独でふたつのブースを展開。記録的大ヒット中のPS4ゲームソフト『Marvel’s Spider-Man』体験プレイブース、公開前から絶賛評が集まるアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の予告編に、自分の顔をはめこんだキャラクターを登場させることができるブースが登場。ちなみに、顔を隠せるうえにコスプレ費用もさほどかからないのか、スパイダーマンコスプレイヤーはたくさん出現し、一同に会した絵は圧巻でした。でも、この「誰でもスパイダーマンになれる」というのは、スパイダーマンの根底のテーマに通じる気はしませんか?

東京コミコン2018 
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MARVELのお隣は同じくディズニーの誇る金看板『スター・ウォーズ』。物販のほかに、3D Phantomによるホログラム映像、ソニーの映像システム「Warp Square」を使用したミレニアム・ファルコンのパノラマ映像などを楽しめました。

ワーナー ブラザース ジャパンのブースは、2019年2月8日に公開を控える『アクアマン』、予告編が到着した話題の新作『シャザム!』(公開日・邦題未定)など、注目の大作を擁するDC映画一色。夏祭りのように櫓が組まれ、人気DCキャラのお面や金太郎飴を販売。櫓の周囲には等身大フィギュアが並び、ブースの完成度の高さは圧巻でした。券売機で先にお会計をするシステムも技アリだったと思います。MARVELのキャプテン・マーベル姿のコンパニオンさんに対し、DCはワンダーウーマン姿で対抗。このあたりからも、ヒロインの時代ということが伝わってきますよね。  他にも『トランスフォーマー』シリーズの最新作『バンブルビー』(2019年3月22日公開)、デッドプールのライアン・レイノルズがピカチュウの声を演じる実写映画『名探偵ピカチュウ』など話題作のブースも。また、ナイト2000、デロリアン、ミスター・ビーンのMINIなど、映画を彩るビークルなども展示されました。

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企業ブースでもMARVELグッズは目立ちまくり。FUNKOや6インチフィギュア「マーベル・レジェンド」などの会場限定アイテムを発売したホットトイズは、アベンジャーズの面々の等身大フィギュアを展示するなど、ほぼMARVEL本家ブースなのではというほど。そもそも精巧なムービー・マスターピースの展示品を見ているだけでも博物館気分に浸れるくらいでした。歴代アイアンマンがズラリと並んだ「S.H.フィギュアーツ」やMARVEL人気ヒーローがレトロな超合金になった「超合金HEROES」を擁するバンダイも目立っていました。また、企業だけではなく、アメコミグッズを扱う専門店のブースも数多く並び、そこはまるで掘り出し物ザクザクのフリマのような雰囲気でとても楽しかったです。

東京コミコン2018 

さて、コミコンのもうひとつの魅力は豪華な来日ゲストです。今年はゲストが二転三転し、やきもきした方は多いのではないでしょうか。最初の目玉はバッキー役のセバスチャン・スタンでしたが撮影日程のためキャンセル。続いてファルコン役のアンソニー・マッキーもキャンセルとなり、あらあらと思っていると、ロキ役のトム・ヒドルストン、ホークアイ役のジェレミー・レナーが電撃決定。また直前になってフラッシュ役のエズラ・ミラーまで! なんという女子ウケする面々でしょう。彼らは会期中、写真撮影会とサイン会に臨みました。

東京コミコン2018 

この撮影会のチケットは争奪戦かつ高価で、入手困難なのですが、この記事の撮影を担当したカメラマン山本春花なる人物、トムヒの撮影会チケットを気合いで取っていたのです! その後、東京コミコン2018の撮影依頼が舞い込むも、撮影会の時間だけはフリータイムにしてほしいと懇願。長い列に並ぶ姿がこちら。うっきうきの顔で戻ってきたのは言うまでもありません(笑)。

東京コミコン2018 

11月30日のオープニング時は、メインステージに来日ゲストも多数登場し、歓迎するファンにとびきりの笑顔を振りまいてくれました。まず、『バーフバリ』に主演したラーナー・ダッグバーティ。

東京コミコン2018 

『スター・ウォーズ EP2』で幼い日のボバ・フェットを演じたダニエル・ローガン! ジャンゴのヘルメットを拾い上げる姿は名シーンですね。

東京コミコン2018 

『ハリー・ポッター』シリーズでロンの兄フレッドとジョージ・ウィーズリーを演じたフェルプス兄弟。

東京コミコン2018 

『ロボコップ』のピーター・ウェラー! オーラが違います。

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DC映画のフラッシュ役、『ファンタスティック・ビースト』のクリーデンス役でいまをときめくエズラ・ミラー。個性的なスタイルとサービス精神旺盛な振る舞いで輝いていました。

東京コミコン2018 
東京コミコン2018 
東京コミコン2018 

そしてひときわ歓声が沸き上がったトム・ヒドルストン。ロキを主人公にしたドラマシリーズも正式発表されました。これからもロキで居続けてくれるのは嬉しい限り!

東京コミコン2018 

この登壇時、山本春花はステージ前でお仕事撮影中。プロでありながら、トムヒに目線をもらった瞬間、心臓発作になりかけて(山本談)手ブレさせてしまうという手痛いミス! 「逆に彼と目が合って動揺しない人ってこの世界にいるんですか…??」(山本談)だそう…。

 

MCUの集大成である『アベンジャーズ4』ですが、ついにそのタイトルと予告編が公開されました。その名も『アベンジャーズ/エンドゲーム』! 2019年4月26日公開! 2008年の『アイアンマン』にはじまり、少しずつ、計画的に、ファンの期待に応えながら拡張してきたMCUの世界がここでいったんの完結となります。この多種多様な世の中にあって、ここまでひとつのコンテンツが愛されたのは奇跡的なこと。舵取りをしてきたケヴィン・ファイギ、キャストをまとめてきたロバート・ダウニー・Jr.の凄さは語り尽くせません。公開までまだ数ヶ月ありますから、過去20作品を数日に1本ペースで見ても余裕で間に合いますよね! 最高のエンタテインメントを届けてくれたMARVELに感謝し、最高の状態で公開に臨み、冒頭のMARVELファンファーレで泣きましょう!

Text by 鈴木文彦 Photo by 山本春花

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citrusplus×山部哲也(bacter)対談|時代に沿った自己プロデュース力とクリエイティブを生み出す戦略

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citrusprus&山部哲也(bacter)

すでにQetic誌上でアパレルブランド「UNFOLLOW」とのコラボレーション・ムービーを公開するなど、インディペンデントな音楽ユニットとしては稀有な形で、カルチャー全方位的な側面を見せているcitrusplus。未だ謎な部分も多い彼らだが、今回、初めてメンバーのヨロズユイ(Vo)、藤牧宗太郎(DJ/Key)、森惇平(VJ/Dr)にインタビューを敢行した。

“didn’t exist.” Vol.1 with『UNFOLLOW』LOOK1 “off to”

ダンサブルなフューチャーポップユニットとして、12月に3タイトルの楽曲を連続リリースするというユニークな手法をとり、続いてコンテンポラリーダンサーの水村里奈をフィーチャーしている1stシングル「fall」のミュージックビデオも配信。このビデオのディレクターは、これまで主に大手クライアントの広告を手がけてきた株式会社エレファントストーンのセクションであるフィルムメイキングチーム/メディアの「bacter」を束ねる山部哲也だ。

citrusplusメンバーから映像のメインイメージを提起し、シナリオやロケ地、カメラワークはbacterが担当するという、一つの楽曲=テーマを元にしたチームでの制作と言える新しい手法によって、アイデア一発のローコストなMVとは一線を画すクオリティを実現している。正直、ライブハウスに複数で出演する規模感の音楽ユニットがなぜこうしたクオリティを担保できるのか。citrusplusの戦略とはなんなのか。いや、もっと言えばcitrusplusとはなんなのか?

今、欲しいけれどないものは自分たちで作るしかない。しかも自分たちだけで作らなければならないわけじゃない。そのことをcitrusplusと山部哲也のクリエイティブの作り方から読み解く。

Interview: citrusplus&山部哲也(bacter)

citrusprus&山部哲也(bacter)

——まずcitrusplusとはなんぞや?というところから伺っていくんですが、DJとVJとボーカルというトリオで、あからさまに人物が特定できない、この方針はどういうところから?

藤牧 最初はスタジオでの遊びから始まってるんですけど、自分が打ち込みをやってて、彼(森)が映像をやっててというところで、そもそもバンドとしてやるというよりは、「何か作ってみたい」というところから始まったんです。だから逆に楽器を使おうという発想にならずに、パソコンとかVJ機材を使って、どこでもライブできるとか、ネットで発信できるという方向で今の形になったところはありますね。

——音楽が真ん中にあるけど、最初から見せ方を考えていたと。そこにはカルチャー的な背景があるんですか?

 そうですね。僕がファッションが好きで、今、仕事でもファッションメディアにいるんですけど、ファッションの映像とかーーちょっと僕個人的なところになっちゃうんですけど、ファッションのスチールだったり、言葉の使い方だったりが「いいな」と思っていて。耳で聴くものなんですけど、やっぱり聴覚と視覚でいうと視覚からくるものもすごく大事かなと思って。そこでいいと思ったものを聴くっていう時代になって来てるのかなと。逆転してるような時代なんで、そうなった時に「いいな」と思って貰えるものは音だけじゃなくて、作ってる人誰かな?っていうのも僕は思うので、そこは意識してますね。

——視覚的要素も込みでcitrusplusというブランドを信用してもらう?

 そうですね。ブランドだと思ってます。

——なるほど。歌の部分ではどうですか?いわゆるシンガーソングライターでもバンドでもないスタイルだと思うんですが。

ヨロズユイ(以下、ヨロズ) そうですね。自分があまり「歌!歌!」というような主張をするというよりは、今二人が言ったように、総合的な供給であるべきというか。需要が総合的なライフスタイルみたいなものとか、カルチャーとか、そういうものになりつつあるというか。歌に関してはその一要素だと、このユニットに関しては思っています。

——エレクトロミュージックでありつつ、すごくポップミュージックでもあり、割と歌詞がふんわり聴こえてくる曲もあれば、今回の「fall」みたいに明快に聴こえる曲もあるという。その辺はどういう割合で考えているんですか?

藤牧 ジャンルレスに行こうっていうのはあって。カルチャー系の人達に刺さるような中でジャンルレスで行くっていうのは考えていて。それぞれ好きな曲の背景も違ったりするんですね。僕は結構、歌謡曲とかポップスが好きで、で、森は……。

 エレクトロの中でもヨーロッパのドイツとか重いテイストが好きで。だけどポップスも聴いてたりしてて、ヨロズはなんだろね? 面白いよね。

ヨロズ 多岐に渡りますね。パンクが元々好きだったりとか(笑)。それこそ演歌も好きだったりします。

citrusprus&山部哲也(bacter)

——これは勝手なイメージですけど、citrusplusはタイトルがあってそこから曲ができるのかな?と思ったり。

藤牧 ああ。

 結論から言っちゃうと実はそうじゃないです、実際の作り方は。だけど、そう感じてもらえたのはやってる者からするといいことかなと思って。そういう風に思ってもらえるようにビジュアルとかすごいこだわってたりするんですね。だけど実際はやりたい音楽をやってるんですけど。

ヨロズ 藤牧がゼロイチでトラックを生んでくれて、それを叩いて叩いて、100とか120とかにしていって、自分が言葉乗せてっていう中でいうと、おっしゃっていただいた「タイトルから考えてるんじゃないか?」っていうのは嬉しくて。いかにそれに適切なラベリングをするかっていうのが私の最後の仕事、っていうような認識でいるので。

——「surface」とか「fall」「melt」っていう物質の入った瓶が並ぶみたいな。

3人 あー

ヨロズ 嬉しい。それはまさに狙いたいところかもしれないです。

——それって例えばアパレルだと、シーズンごとのテーマや実際のプロダクトだったりするイメージなのかな?と。

 はい。そういうことで考えると、曲ごとにグッズとかあってもいいのかなとか、そういうこともやっていきたいなと思いますね。

——今って音楽を聴くきっかけが、どこから入ってくるか選択肢や導線が多い時代じゃないですか。

藤牧 そうですね。ある程度コンセプチュアルであって、ちゃんとブランドは意識しながらも、とっつきにくいものにはしたくないと思ってて。やっぱりシーンから離れた友達も「あ、いいね」って音だったり、ライブに行きたいって思えるような、そういうところは絶対忘れないようにして行きたい。それとブランド感の両立はこれから挑戦して行きたいですね。意外とそこをやり切れてるアーティストは少ないかな?と思うので、そこで突出したいなと思ってます。

 よく売れてから何々のブランドさんとコラボしましたっていうのは多いなと思っていて。売れてないからといって別にコラボしちゃいけないってことはなくて、その前から全然できるコラボはするべきだと思っていて。ちっちゃいからこそ少しでも波を起こしていかないといけないんだなっていう意識はあります。

藤牧 結構それはユニットの中でも刺激になりますね。「その話取って来てくれたんだ、自分も頑張らなきゃ」みたいな、そういった作用はあります。

——考えてみたら一人1部署みたいなもんですもんね。

 (笑)。「口、耳、目」みたいな話ですけど、責任持ってクオリティを高く届けようと思ってますね。

——しばしcitrusplus概論みたいな話をお聞きしましたが、そういう風に活動してる彼らの音楽や活動の仕方を山部さんはどういう風に見てらっしゃいますか?

山部哲也(以下、山部) 最初に「fall」って曲を聴かせてもらった時に、視覚的な音楽だなっていう風に聴覚的に感じたというか。いろんな曲の音で色だったり空間みたいなものが頭に浮かぶなぁって印象を受けて。実際お会いしてそれぞれが分業されていて、現代的だなって印象は受けましたね。それこそ多様化してる現代において、ユニット内で多様な面を持ってる人たちがいるユニットなんだなと思ったので、いろんな意味で今っぽいなと。

——実際に今回の「fall」のミュージックビデオを作ることになった経緯はどういうところなんですか?

藤牧 また僕らの話になっちゃうんですけど、音楽ユニットでもあるけど、総合的な表現を担うユニットだなと思っていて。なので影の存在ではなくPRスタッフも前に出ていたり、ビデオグラファーもどんどん前に出すようなスタンスのユニットなんですね。それでビデオグラファーが映像の勉強をするために、山部さんの会社のエレファントストーンさんでアルバイトとして働いていて。その時に映像を作りたいと僕らが言った時に、ビデオグラファーが「ボスがめちゃくちゃかっこいい映像作るから」と。で、山部さんとお話しして、めっちゃセンスあるなと思ってお願いすることになりました。

——会社名の「エレファントストーン」に反応してしまいました(笑)。みなさん音楽が好きな方が多いんですか?

山部 多いです。社長がそれこそストーン・ローゼズが好きで。たまたま会社の名前何にしよう? ってことで出てきた会社名なんです。

——やはり。これまでは主に広告を?

山部 広告が多いですね。なので、今回のアプローチの仕方も、制作過程というのも曲を聴いた上であって、何度かヒアリングをしました。3回くらいしまして、「どういうイメージ?何がしたいの?」っていうのは掘り下げた上で作って行った感じですね。割と詰め方としては仕事の感覚と近かったのかなと思うんです。アプローチとしてはその中で具体的なイメージを掘り下げていって、それで出てきたのが水中だったりとか、ダンス・モデルの方の資質もあるんですけど、そういったところから作って行った感じですね。

——キーワードみたいなものはあったんですか?

 それは逆に山部さんが導いてくれたような(笑)。

——水だったり?

 あと暗いとか重いとかっていうようなワードはありつつみたいなところですかね。

藤牧 どちらかというと、なんか水中と踊るぐらいしかなくて、それを広げてくださって。

山部 抽象度の高い会話を拾って。

——そこであまり具体的になると制限が生まれますからね。でも不思議と歌詞の世界ともリンクしていますね。

ヨロズ 大体の解釈が共鳴するものだったので、信頼してお任せして。打ち合わせの時に「わかってくださってるなぁ」みたいな感じがすごいあって。すごい嬉しかった。

藤牧 ちなみにメンバーの僕らが聞いてもはっきりした回答返ってこないんです。

ヨロズ ああ、私のことね?

藤牧 結構、こういうことをこう考えてますよというより、世界観が強かったりするので、それを導き出して映像に落とし込めるのはすごいなと。

山部 何百回か聴かせてもらって(笑)。

ヨロズ うなされてたりして(笑)。

——(笑)。水村里奈さんが普通に夜の街の中で踊るシーンがメインですが、夜に全く人がいない時の自由さが伝わってきました。シナリオやロケ地など具体的なことは山部さんが詰めていったんですか?

山部 そうですね。ロケ地はご提案してみたいな感じで、「ここで撮ったらいいと思います」とか。カメラワークに関しては結構、こっち主導でやらせてもらってた部分があったんですけど。手持ち感というか、ドキドキ感みたいなものが出せるのかなと思って、そういう風な撮り方をしていますね。

citrusprus&山部哲也(bacter)

——水村さんのコンテンポラリーダンスはアドリブなんですか?

山部 アドリブですね、完全に。もうその場で。

藤牧 すごいっす、あの迫力。

山部 演出っていうところは言ってないけど、「ここのBメロのところではこんな感情がいいかなと思います」ぐらいの話しかしてなくて、その場で踊ってくれて。すげえなぁと(笑)。

——citrusplusの皆さんから見た山部さんのクリエイティブに対する印象はいかがですか?

 淡々と静かに撮られてたんですね。チームのメンバーの方に強く指示するわけでもなく、モデルさん、踊られてるダンサーさんにも強く言われるわけでもなく、その場の緊張感を使いつつなのか、その人たちの本来の力を出すというか。僕らも初めてだったので、他の人がどうとか比較できないんですけど、淡々と冷静にその場でいいものを映し出していくっていう印象はありました。

——撮影現場で広がって行ったことはありますか?

山部 照明や撮り方も、もっとこうしようっていうアイデアとか、そういう感じですかね。ダンスを見ながらどんどんやりたいことが広がっていったというか。あと、水の中とかも想定してたカット以外にも「あ、もっとこういうのもあったら面白いよね」というのは水村さんありきで広がって行った世界なのかなと思いますね。

——水の中なんて特に不確実性の塊じゃないですか?

藤牧 そうですよねぇ。

ヨロズ でも水がすごい似合うよね。

 青い感じもかっこよかったし。

——水ってただの水じゃ青には見えないというか。

山部 そうなんです。その辺は難しかったところですね。

——でもクリエイティブのためのクリエイティブじゃなくて目的意識をちゃんと持ってらっしゃる感じがして。

ヨロズ 奇抜さとかじゃなく?

——はい。見たことのないもの作ろうとするとそうなりがちじゃないですか?

藤牧 一番最初ということもあるので、それこそ曲もポップス要素の王道なものを作りつつ、ちょっとエレクトロ要素を入れているように、ミュージックビデオも最初は奇を衒うっていうよりはスッて入ってくるかっこいいものがいいなとは思っていて。

citrusprus&山部哲也(bacter)

——いいクリエイティブの定義ってなんだと思われますか?

山部 僕が思うのはスタートとゴールが一貫してることに対して素直だったり、その人が持ってる生き様みたいなものが出てくるのがクリエイティブだなと感じますね。その人の個性が表れてるものを表現しようとし続けることがクリエイティブだなと思います。

藤牧 見た人聴いた人の価値観を広げる、「自分こういうの好きだったんだ」って新たに気づきを与えるとか。例えば我々でいうと、音楽にそんな興味なかったけど、ファッションとかそういったクリエイティブが好きで入ってきたとか、逆に音楽好きだけどファッションだったり映像だったり、そういうところに興味持ってくれるとか、そういった気づきを与えるのもクリエイティブの一つかなと思ってたりしますね。

 僕は瞬間的にかっこよさを伝えられるか?っていうのがすごくあるかなと思っていて。3分とか4分、楽曲はあるんですけど、3秒聴いたらもう「これはすごい」ってなるとか。今ってどんどんクリエイティブに対して接触時間が短くなってきてると思うんで、最初の3秒ぐらいでかっこいいなと思わせるような力が必要になってくるのかなと思います。だから自分たちの話でいくと、今回、ちょうどタイトルを入れていただいてるんですけど水村さんが水中に落ちていく瞬間を切り取った瞬間に、客観的に「素敵だな」と思える、そこの絵で勝負できるかどうか。それは音、言葉、写真にもあるというのがすごい大事かなと思いますね。

ヨロズ 発想が言葉よりになっちゃうんですけど、翻訳性みたいなものかな? と、自分が思いつく良いクリエイティブに関しては。自分とか消費者の人とかが、まだ名前のない感情やよく分からないモヤモヤとか、なんかわかんないけど気持ちいい、ホットスポットみたいなものがあった時に、それにはまる「あ、これが言いたかった」とか「これ、欲しかった」とかっていう、まだないところに、その言葉を与える、そういう経験を提供できるのが私は素晴らしいクリエイティブだなと思うんですね。なので、自分の潜在的な何かに対する気づきを得られるような媒体が優秀なクリエイティブかなと思います。

——連続してリリースされる3曲についてもお聞きしたいんですが3曲とも方向性が違ってて。この3曲を連続リリースする意図はどういうところですか?

藤牧 一応、今年の初めぐらいから毎月作ってて、今、13曲ぐらいあるんですけど、年内に5曲ぐらい揃えて、ユニットとしてもちゃんと体裁整えた上で来年勝負に出たいなと思ってまして、それでまず5曲出したいなって。それを出す上で普通に出すより3曲連続で、いろんなクリエイターの方にアートワークも協力してもらってるんですけど、毎回話題を出していく形でリリースしていくのが面白いかなと思ったからなんです。

——なるほど。

藤牧 その3曲っていうのは13曲の中でもライブでも人気の3曲で、1曲目の「surface」っていうのは乗りやすくてダンサブル要素もあるけどポップス要素もある、いわばcitrusplusっぽい曲かなと思ってます。2曲目の「drawing」はどっちかというとエレクトロに寄った感じで、3曲目の「melt」はチル系、それぞれ違った側面出していきたいなと思って、それを年内に出したいと思ったのが経緯です。

——そして気になる今後の山部さんとの関係はどうなっていきそうなんですか?

 僕らの映像もそうなんですけど、周りのアーティスト、知り合いの音楽アーティストもかっこいい映像を作りたいって言ってて、「どうしよう」って僕に相談が来るぐらいなんですね。でも僕が作っちゃうと、bacterさんみたいなレベルで作れないんで、bacterさんの映像が若いアーティストの作品としていろんなところで出るようになればいいなと。

——そこがcitrusplusがメディア的でもあるところですね。

 いい意味で僕らのユニットって、それこそクリエイティブユニットみたいな感じで動いていて、有難いことに周りで仲良くしてくれている方達の中には、デザイナーさんもいればスタイリストさんもいれば、ファッション系の方々もいる。映像を作りたいと思ってる方達がbacterさんと繋がって行って、かっこいい映像コンテンツが世の中に出ていくのはいいことだと思いますね。

ヨロズ クリエイティブユニットみたいにちょっと偉そうなこと言ってますけど、自分の解釈ではあり方としてはプラットフォーマーというか。今、我々にとって一番強いコンテンツは音楽ですけど、そこに関わってる人が出会ったりするのはすごい面白いことで。そんな関わり方で今後、色々なクリエイターさんともやっていけると面白いかなと思ってますね。

citrusprus&山部哲也(bacter)

text by 石角友香 photo by 横山マサト

EVENT INFORMATION

QETINIGHTYOUNG #Clamping Force

QETINIGHTYOUNG

2018.12.26(水) 
OPEN 19:00|CLOSE 24:00 
EBISU BATICA

Entrance Door ¥2,000
 Discount(¥500 off)→Follow “Qetic SNS Acount”

Main Floor 
YOSA&TAAR 
illmore 
内田珠鈴 
citrusplus 
age(GATO)

Lounge
 MARBLE CREW(トドクロ×Sharkboy×亀田模型)
 rice water groove -floor live-
 マザーファッ子 
HARU
 Chibichael 
EITA(KEWL) 
DJ XVIDEO(JUSTICE inc.) 
redeyes
 Qetic Crew(Yuuzirou Nakamoto & Norio Maeda)

詳細はこちら

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あっこゴリラ インタビュー|『GRRRLISM』で描いた抑圧からの解放とは?

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ウィットに富んだリリックとリズミカルなフロウ、さまざまな音楽ジャンルを独創的に折衷した攻撃的なトラックが相俟って、人それぞれが持つ個性を肯定する。

注目の新時代ラッパー、あっこゴリラが初のアルバムをリリースした。そのタイトルは自ら生み出した造語『GRRRLISM』。固定概念や同調圧力に対し、女性の目線ならではの熱きメッセージが溢れてくるような、明確なテーマ性を持った強い言葉だと感じた。HAPPY BIRTHDAYというバンドのドラマーとして一度メジャー・デビューするも解散。一人になってから、何が原動力となりラップという表現手段を選んだのか。今回なぜそのようなタイトルを付けたのか。どんなアルバムにしたかったのか。

彼女の過去から現在に至るまでを掘り下げ、『GRRRLISM』にある真意と作品の魅力に迫る。

Interview:あっこゴリラ

あっこゴリラ

――以前に本誌の記事で、インタビュアーは私ではなかったのですが、一度HAPPY BIRTHDAYというバンドのドラマーとして、ソニー・ミュージックからメジャー・デビューし、解散したのちにあっこゴリラとしての活動を始め、また再び古巣ソニー・ミュージックからレコードを出すに至った経緯について話をお伺いしました。そこには掲載されていなかったことで聞きたいことがあるんです。なぜバンドのドラマーがラップという表現を選んだのでしょうか?

そこは衝動ですね。言葉で説明できるようなきっかっけや経緯があるわけではなく、ノリで体が先に動いちゃった感じです。

――では、当時またバンドをやるとかバンドに入るという選択肢もあったのでしょうか。

いえ、まったくなかったです。HAPPY BIRTHDAYは、ギター・ボーカルのきさが曲も歌詞も全部作っていて、私はドラムを叩くだけの二人組だったから、私が勝手に居場所がない、才能がないって思い込んでた部分があったんです。

――だから、自分がイニシアチブを持って音楽をするときに、バンドではなかったと。

そんなの絶対に無理だと思ってました。自分のことすら認められてないのに、メンバーを集めて引っ張ていくなんて、とんでもない。歌をうたうってこともそうですね。

――でもラップならできる、ということですか?

なぜでしょうね。自信ないのに、衝動は抑えられない、という相反するエネルギーをもっているので、苦労しました(笑)。ヒップホップ・カルチャーのことも当時はあまり知らなかったし「やべえ、やっちゃった……」ってあとで気が付いたくらい。でも4年間本気でラップをしてきたら、自分のことも、音楽との向き合い方も、人との向き合い方も、大きく変わりました。結果ヒップホップに救われた人生です。そんな自分の音楽が、今いろんな人たちに聴いてもらえてるのが嬉しいし、まさかここにきてライブでバンドまで率いるようになるなんて。

――でも、今は勢いのままその延長線上ではないですよね?トラックやフロウからは、ヒップホップ・カルチャーのことやオルタナティブという概念、パンクなどの文脈を踏まえていないとできないであろう要素も多く含まれているように思いますが、そこはいかがでしょう?ヒップホップについては、前のインタビューで、ソロとして動き出したあとに、オールドスクールから学んだとおっしゃっていましたが。

ヒップホップに関しては、オールドスクールから勉強もしたけど、結果出会った人や人生からヒップホップを学び、知っていったかんじです。オルタナっぽい空気に関しては、HAPPY BIRTHDAYはすごくポップなバンドだったし、その時代だけを切り取るとイメージできないかもしれないんですけど、その前は nisennenmondaiやBOREDOMSが好きで、ライブにも行きまくってたんです。

あっこゴリラ

――そこからなぜHAPPY BIRTHDAYを結成したのですか?

きさとはライブハウスで出会って、音楽的にどうこうというよりは、バイブスが合うからやろうぜって。でも、私はの趣味はそんな感じだったから、歌を殺すドラムしか叩けなかった。「8ビートとかつまんねえ」って舐めてましたし。いかに手数を増やすか、みたいな。

――nisennenmondaiやBOREDOMSからの影響を、そのままポップな歌が前にある曲に持ってきたらそうなりますよね。

「これじゃあバンド崩壊するわ」って思ったから、8ビートからちゃんと勉強したんです。“タカトン”なのか“タカトコ”なのか、それだけに命をかけて丁寧に。でも正直そこでストレスが溜まって爆発したのかもしれない。それは今やってる音楽のリズムにも表れてるように思いますし、おっしゃったようなオルタナっぽさに繋がっているのかなと。

――全体的にリズムやサウンド、メロディにも、エキゾッチックなムードが漂ってるじゃないですか。それはどこからきてるんですか?

そこはM.I.Aの影響ですね。あの土着的な感じや、圧倒的にオリジナルなんだけどポップな曲の数々にはやられましたね。衝撃的でした。

――言葉についてはどうですか? 大雑把な言い方にはなりますが、多くの曲が固定概念や同調圧力みたいなものに対して、自分の足で歩くことの大切さを、言葉や音にして表現されている。

その通りだと思います。昔は、周りと違うことがダメだと言われると、私はそういうダメな人間なんだって思ってたんです。ずっと視野が狭かった。でも、そういうマインドだと曲なんて作れない。ただ、何かを表現したいっていう想いはどこかにずっとあったから、これまたそこで溜まりに溜まったストレスが爆発して、パンクになっているように思います。

――今回リリースされる初のアルバム『GRRRLISM』も、タイトルからしてパンクです。

そうですね。見たまま<Riot Grrr>へのオマージュと、普通に「GIRL」と「ISM」を合わせただけの言葉から連想される、”女の子代表”というイメージを超えていきたくて、スペルを変えました。あとは、動物が吠えているようにも見えるし、いい感じだなって。

――「“女の子代表”というイメージを超えていきたい」とおっしゃったことついて。タイトルの元ネタにもなった<Riot Grrrl>という女性パンク・バンドたちが起こしたムーヴメントは、抑圧された女性の目線からの強い主張であって、女性以外に排他的なものではないですし、人間レベルで差別はいけないという、普通のことを言ってるだけでもある。しかし、悲しい話ですが当時も今もそこが伝わりきらず、という現実があります。

私の言いたいことは、まさにすべてのジェンダー、年齢、国籍、あらゆる物事に繋がってるんです。伝えたいのはそこだから、ほんとうは限定的に女の子を指してると思われないような、もっと適切な言葉があるんじゃないかって、すごく考えたんですけどね。でも、女の子はこうあるべきと縛るものがある以上、まずは、そこを超えたところで話がしたい。だから「GIRL」を「GRRRL」にしたんです。

あっこゴリラ
あっこゴリラ

――一言でいうのもなんですけど、女はしおらしく。おかしな話です。

だから、いきなりぶっ飛んだこと言って伝わらないのも嫌ですし、言いたいこともやりたいことも、すでに3枚分くらいあるから、まず「GRRRL」からスタートすることにしました。

――曲の流れがいいですね。既発曲も入れ込みながら、アルバムとしての完成度が高い。

すでにリリースしていた曲のなかで、ここまでで話したようなテーマにハマる“ゲリラ”と“ウルトラジェンダー”は入れたかったんです。で、そこからほかにどういう曲を入れていくか、最初の段階で骨組みを作って、アルバとしていいものにしようとしました。

――6曲目に入っている“開戦前夜”がひとつの大きなポイントになっているんじゃないかと。レイドバックした曲調で、その前後に二つのドラマがある。前後半、言ってることに統一感はありながら、聴こえ方や見える景色が違うんで、飽きずにじっくり向き合えるんですよね。

“開戦前夜”は完全に自己否定マックスの自分に向かって言ってる曲で、0から踏み出して1になるようなイメージなんです。9月にシングルで出して、このアルバムにも入ってる“エビバディBO”みたいに、〈脇毛生やしたいなら生やそうぜ自由だぜ〉ってメッセージもいいんですけど、それって自己否定マックスの自分にはまだハードルが高いというか。だから今回は、当時の自分に響く言葉と音を探すことに比重を置いた部分もあって、その象徴と言える曲ですね。

――前半はまさにパンクでオルタナなあっこゴリラが炸裂します。

前半の5曲は、音楽的に私にとってのコアな部分というか。例えば、1曲目の“100%AKKOGORILLA”だと、トラックメイカーの食品まつりさんとは相性ばっちりで、私が根っこに持ってる攻撃的な部分と密接な感覚を持っているから、バイレ・ファンキまではいってないけど攻めてる、そんな絶妙なところを突いていてくれてる。3曲目の“エビバディBO”や4曲目の“グランマ”を一緒に作ってくれたgrooveman Spotさんもそうで、私のことをほんとうによく分かってくれてます。

――そういった前半のスリリングな刺激から、6曲目の“開戦前夜”があって、後半はフィーチャリング・ゲストを迎えた曲を中心に自由で開放的な空気になる。捉え方によっては後半の方がポップですよね。

確かにそうかも。前半は「これがあっこゴリラです」っていう私の得意な球を真っすぐ投げた。でも、ポップな後半のほうが裸になっているような気もします。

――前半の曲は、まさに服をビリビリ破いて脱いだその瞬間。後半はすでに裸のあっこゴリラさんが自由に楽しんでる感じ、しません? すごく自由度が高い。

ああ。なるほど!

――コラボ曲だと、今回のアルバムで解禁になった曲が2曲。まずはTempalayを迎えた“THIS IS ME”から話を聞かせてもらえますか? Tempalayらしいサイケデリックなサウンドと、あっこゴリラさんらしさの混ざり具合がもう自由すぎて、実に面白い。

カオスですよね。お互い譲らない感じが良かったなと。

――間奏とか。

いきなり違う曲が始まる、みたいな。この曲、実はすごく大変でした。いつもはテーマとか曲調とか、イメージがあってトラックメイカーの人たちに、「だからあなたの力が欲しい」って依頼して、阿吽の呼吸で作っていくんですけど、Tempalayはバンドだからそうやって外部の人と曲を作ることもあまりないだろうし、私もバンドと1曲を作ることってないから、そこのコミュニケーションが難しかったんです。

――セッションしながら作ったんですか?

いえ。綾斗くん(小原 綾斗)に、「(曲のイメージが)見えたほうがいい」言われて、「THIS IS ME」というタイトルやリリックの内容、「色はレインボーで」とか、とにかく自分なりにいっぱい説明しました。で、デモが返ってきて、メロディーは私が作ったものに置き換えて、綾斗くんのデモの段階ではサビだった部分が間奏になって。

――それでおっしゃったようなカオスに。

私も感覚的だけど綾斗くんはもっと感覚的な人で、お互いばらばらで通じないところが入り混じったり、かたやThe White Stripesとかゆらゆら帝国とか、ルーツが近い部分もあるから、そこで重なったり。で、夏樹くん(藤本夏樹)とAAAMYYYちゃんは、個性を発揮しながらうまくバランサーにもなってくれた。そんな感じで、お互いが置きにいかなかったのが良かったなって、思います。

あっこゴリラ
あっこゴリラ

――もう1曲は04 limited sazabys・GENさんとの“GOOD VIBRATIONS”。バンドマンとして、メロディック・パンクをやってるGENさんのイメージしかない人は、こういうゆったりとした打ち込みのポップソングに、意外性を感じるかもしれませんね。

私はGENがいろんな音楽を聴くのを知ってるし、むしろフォーリミのGENのほうが後追いで、感覚としてはフォーリミの人ではなくて、めちゃくちゃいい友達なんです。そこで、この曲を誰か一緒にやりたいなって思った瞬間「これはGENじゃね?」って思いました。だから、バンドとはまた違うんだけど、これはこれで彼の素が出てるんじゃないかと、思います。

――既発曲をアルバム用にリミックスした向井太一さんとの“ゲリラ”、永原真夏さんとの“ウルトラジェンダー”と、迎えるメンバーの出自の幅も、あっこゴリラさんならではで魅力的です。

GENみたいに、曲がほぼ完成している状態でお願いするパターンもあるし、「ふだんやってることとはぜんぜん違うだろうけど、一緒に作ってみない?」って声をかけることもあるんですけど、ようるすに「せっかく同じ時代に生きてるんだからやってみうようぜ、楽しいじゃん」ってことで、思い浮かんだ人はけっこう躊躇なくサラッと誘っちゃうんです。向井太一とかはまさにそんな感じで。

――“ゲリラ”はあっこゴリラさんにとって、大きな曲だと思うんですけど、いかがですか?

そうですね。いちばん多くの人に知ってもらってる曲ですし、私の思う『GRRRLISM』にも合ってたんで、入れたいなって。今回、音楽という角度からのリリックで、作品のテーマにせまっているのはこの曲だけなんですよね。「文脈も最高なんだけど、子供の頃に換気扇から聴こえた音とか最高じゃね」って。ヤバいものはヤバい!

――「ゲリラ」という言葉の使い方の妙があって、メロディーがキャッチーでダイレクトに入ってくるポップな魅力もありつつ、いろんな要素の組み合わせが個性的。すごいタイミングで「向井太一、歌うま!」、みたいな。

わかる! 私が入るとオルタナ色強くなっちゃうし、向井太一とやるなら、もうちょっとストレートに彼の歌を活かすようなメロディーとか展開になりそうなものを、ある意味いびつですよね。

――そういう独自の折衷感覚が癖になるんですよね。あっこゴリラさんとトラックメイカーの方々、そしてゲストのみなさん、このチームだからこそ成せる業。これって、Tempalayとの作曲とレコーディングについては話していただきましたけど、基本的にどこまで狙ってるんですか?

ほぼ完全に感覚ですね。だから綿密にやれちゃう人がすごいなって、思います。地味に嫌いなコード進行とかはありますけど。

――なるほど。まだまだこれからどんな曲が飛び出してくるのか、楽しみです。

さっき「やりたいことは3枚分くらいある」って言いましたけど、ほんとに山ほどあるんで、それを同じ時代を生きている人たちと、ラフに組んでどんどん作っていきたいですね。

あっこゴリラ

Text by TAISHI IWAMI Photo by Naoto Kudo

RELEASE INFORMATION

『GRRRLISM』

2018.12.5発売 初回生産限定盤(CD+DVD) AICL-3607~8 \4,000 通常盤(CD) AICL-3609 \2,800

詳細はこちら

EVENT INFORMATION

あっこゴリラ GRRRLISM ONE MAN TOUR

2019年2月8日(金) at 名古屋アポロベイス OPEN 19:00 / START 20:00 チケット:オールスタンディング 前売2,800円(税込み/ドリンク代別) お問い合わせ: アポロベイス052-261-5308 一般発売日:10月20日(土)

2019年2月9日(土) at 梅田Shangri-La OPEN 18:00 / START 19:00 チケット:オールスタンディング 前売2,800円(税込み/ドリンク代別) お問い合わせ: 清水音泉06-6357-3666 一般発売日:10月20日(土)

2019年3月26日(火) at 渋谷CLUB QUATTRO OPEN 18:30 / START 19:30 チケット:オールスタンディング 3,500円(税込み/ドリンク代別) お問い合わせ: クリエイティブマン03-3499-6669 一般発売日:2019年1月26日(土)10:00~

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あっこゴリラ

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ポップ・ミュージックの先駆者、マーク・ロンソンって?国内のミュージックシーンにも影響を与える魅力へ迫る

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マーク・ロンソン

2014年にリリースした“Uptown Funk ft. Bruno Mars”が全米シングル・チャートで14週連続1位を記録するメガ・ヒット曲となり、2016年のグラミー賞では「年間最優秀レコード賞」を含む2冠を達成するなど、世界的プロデューサー/DJとして活躍するマーク・ロンソン。彼が2018年12月17日、星野源とのダブル・ヘッドライナー公演を開催しました。今回はジャンルも作風も多岐にわたるオリジナル曲/プロデュース&ゲスト参加曲の歴史と、ダブル・ヘッドライナー公演当日のレポートで、彼の魅力を改めて振り返ります。

1:ジャンルや時代を軽やかに横断するオリジナル曲の数々

1975年にロンドンで生まれ、NYで育ったマーク・ロンソンは、NY大学在学中にNYのヒップホップ系クラブでDJ活動をスタート。NYのヒップホップ/R&BシーンでDJとして人気を獲得します。その頃からの特徴は、ヒップホップやR&Bにこだわることなく、むしろロックやクラブ・ミュージックをはじめとする幅広い興味を反映したDJプレイ。その雰囲気は2003年の1stアルバム『Here Comes the Fuzz』にも顕著で、ここにはモス・デフやゴーストフェイス・キラー、ジャック・ホワイトやリヴァース・クオモといった幅広いゲストが集結しました。とはいえ、マーク・ロンソンが世界的なDJ/プロデューサーとして広く認知されたのは2007年の2作目『Version』。この作品ではコールドプレイやズートンズ、カイザー・チーフスといったUKの人気アーティストを中心にした楽曲を、エイミー・ワインハウスやリリー・アレンらとともにモータウン/スタックス風のソウル・アレンジで再解釈。自身初の全英チャートの2位を記録し、翌年にはブリット・アワードも受賞。

Oh My God ft. Lily Allen(2007年作『Version』収録)

続いて2010年には、マーク・ロンソン&ビジネス・インターナショナル名義で、当時アンダーグランドで盛り上がっていたディスコ・ブギーの再評価などにも通じるようなアナログ感満載の70~80年代風レトロ・ソウルを形にした『Record Collection』を発表。“Bang Bang Bang”のMVでの日本語や日本のドラマ作品へのオマージュも話題になりました。

Bang Bang Bang(2010年作『Record Collection』収録)

こうして生まれ故郷のイギリスを起点に世界へと人気を広げていったマーク・ロンソンは、いよいよ2014年にブルーノ・マーズを迎えた“Uptown Funk”を発表。この曲は前年にリリースされたダフト・パンクの“Get Lucky”などを起点にした世界的なディスコ/ファンク再評価ともリンクして、「ダウンタウン=下町/ストリート」ではなく「アップタウン=高級街」流儀の華やかで洗練されたファンク・ポップを鳴らし大ヒット。これまでの彼の楽曲の特徴だったレトロなドラム・ビート以上にファンキーなカッティング・ギターを前面に押し出して世界のポップ・シーンの方向性を決定づけると、この曲を収録した2015年の3rdアルバム『Uptown Special』は初のUKチャート1位を獲得。アメリカでも5位まで上昇し、2016年のグラミー賞では「年間最優秀レコード賞」を含む2冠を達成しました。

Uptown Funk ft. Bruno Mars(2015年作『Uptown Special』収録)

とはいえ、その後もマーク・ロンソンはひとつの音楽性にとどまることなく、音楽的な冒険を続けています。2018年にはメジャー・レイザーとしての活動や主宰を務めるレーベル〈Mad Decent〉からのリリース作品などでマーク・ロンソン同様に世界のポップ・シーンのトレンドセッターとして暗躍する名プロデューサー/DJ、ディプロとともに新ユニット、シルク・シティを始動。その代表曲“Electricity”では、ヴォーカルにデュア・リパを迎え、クラシックなソウル路線とは異なるEDMシーンの流行に即した音楽を追求しています。

Silk City & Dua Lipa - Electricity ft. Diplo & Mark Ronson(2018年)

また、自身のソロ名義での最新曲“Nothing Breaks Like a Heart ft. Miley Cyrus”では、マイリー・サイラスをゲストに招集し、LAのリック・ルービンのスタジオでレコーディング。2018年以降アメリカのポップ・シーンで増えているギターのアルペジオなどを効果的に使ったサウンドで、自身の新たな興味を形にしています。ちなみに、このコラボはマイリーの歌声に惚れ込んだマークが何度もラブコールを送って実現したもの。マイリーは11月に起きたカリフォルニアの山火事によって自宅を焼失しましたが、《This burning house/There's nothing left》という歌詞の一節が現実になるという哀しい偶然も……。

Nothing Breaks Like a Heart ft. Miley Cyrus(2018年)

2:ポップ・ミュージックのトレンドを予見するプロデュースワークの数々

一方で、そうした自身のオリジナル曲に大きな影響を与えてきたのが、多岐にわたるプロデュース業や様々なアーティスト作品へのゲスト参加曲。マーク・ロンソンのキャリアを振り返ると、プロデュース曲での音楽的な冒険が後に自身の楽曲のヒットにも繋がるという、アーティスト/プロデューサーの2つの顔を持つ彼ならではのヒットの法則が見えてきます。中でも彼の名前を一躍有名にしたのは、サラーム・レミとともにアルバム・プロデュースを行なったUKの歌姫エイミー・ワインハウスの2006年作『Back to Black』の収録曲“Rehab”でした。

エイミー・ワインハウス“Rehab”(2006年作『Back to Black』収録)
この楽曲はスカスカのレトロなドラム・ビートと60~70年代風色濃いヴィンテージ感溢れるソウル・アレンジによって、エイミー・ワインハウスのドスの効いた歌声を最大限に引き出した彼女の代表曲。この楽曲のヒットによって、その後イギリスでは自国のノーザン・ソウルなども加えたソウル・ブームが花開き、それがマーク・ロンソン自身のアルバム『Version』のヒットにも繋がっていきます。また、同じくイギリスを代表するシンガー、アデルのデビュー作『19』では“Cold Shoulder”のプロデュースを担当。ドラムのループを生かしたヒップホップ・ビートで作品に幅を追加し、マーク・ロンソンは時代を象徴するプロデューサーとしてより人気を獲得していきました。

アデル「Cold Shoulder」(2008年作『19』に収録)

こうした楽曲のヒットに続く形で、その後アメリカのポップ・シーンでもプロデューサーとしての人気を広げていった彼が、2012年に担当したのがブルーノ・マーズの『Unorthodox Jukebox』収録曲“Locked Out Of Heaven”。ここではよりクロさを持ったファンクに焦点を当て、2014年の“Uptown Funk”に繋がるサウンドの変化を徐々に進めています。

ブルーノ・マーズ「Locked Out Of Heaven」 (2012年作『Unorthodox Jukebox』収録)

以降はポール・マッカートニーを筆頭にしたレジェンドの楽曲もプロデュース。同時に映画『スーサイド・スクワッド』のサウンドトラック収録曲“Standing In The Rain”では、アクション・ブロンソンとザ・ブラック・キーズのダン・オーバックによる楽曲にゲスト参加し、ドラム・ビートを生かしたプロダクションを提供したことも記憶に新しいはずです。

ポール・マッカートニー「New」(2013年作『New』に収録)

Action Bronson & Dan Auerbach (of The Black Keys) ft. Mark Ronson「Standing In The Rain」(映画『スーサイド・スクワッド』サウンドトラックに収録)

2018年に制作に参加したことで話題となったのは、レディー・ガガの主演映画『アリー/スター誕生』のメイン曲“Shallow”。この曲ではレディー・ガガや共同プロデューサーのアンソニー・ロサモンド、アンドリュー・ワイアットとの共同作業で、アコースティック・ギターを主体にした、ガガとブラッドリー・クーパーによる熱いバラードに貢献。この曲ではマークもギターを手に作業を進めたそうで、近年の彼がプロデュース業においてもヒップホップ/ソウルにとどまらず、様々な音を追求していることを伝える楽曲になっています。

レディー・ガガ「Shallow」(映画『アリー/ スター誕生』サウンドトラックに収録)

3:星野源との一夜限りのダブル・ヘッドライナー公演が実現!

そして12月17日、マーク・ロンソンと星野源による一夜限りのダブル・ヘッドライナー公演<LIVE in JAPAN 2018 星野源 × MARK RONSON>が実現! 幕張メッセに集まった超満員の観客の前に登場したマーク・ロンソンは、マイリー・サイラスとの楽曲“Nothing Breaks Like a Heart”でDJをスタート。DJ卓の上には“Nothing Breaks Like a Heart”のジャケットと同じミラーボール製のひび割れたハートも登場し、会場は一気に華やかなダンスフロアへと姿を変えていきます。

マーク・ロンソン
マーク・ロンソン

続いてディプロとのユニット=シルク・シティとデュア・リパのコラボ曲“Electricity”へと繋いで彼の最新モードを伝えると、以降は1stの収録曲“Ooh Wee”や、テーム・インパラのケヴィン・パーカーを迎えた“Daffodils”&ミスティカルを迎えた“Feel Right”といった2015年の『Uptown Special』の楽曲を披露。続いて、この日共にヘッドライナーを務める星野源との音楽的な共通点でもあるマイケル・ジャクソンの生誕60周年に公開したマイケルのマッシュアップ曲“Diamonds Are Invincible”をさらにミックスしたバージョンをプレイすると、観客からさらなる歓声が巻き起こりました。

マーク・ロンソン
マーク・ロンソン

その後は観客に「レジェンドから、もうひとりのレジェンドへ!」と告げて、自身のアルバム『Version』の収録曲でエイミー・ワインハウスがヴォーカルを担当したザ・ズートンズのカヴァー曲“Valerie”を披露し、そのまま代表曲“Uptown Funk”に繋げて会場からもこの日一番の大歓声。最後はクリスマス・シーズンに合わせてマイリー・サイラスとコラボレーションした新曲で、古くからの友人・ショーン・レノンも参加したジョン・レノンとオノ・ヨーコの名曲“Happy Xmas (War Is Over)”のカヴァーを披露して約40分間のステージを終えました。

マーク・ロンソン

その後登場した星野源が、MCでソウル・ミュージックを大々的に取り入れるきっかけとなった転機作『Yellow Dancer』の制作中、街のコンビニで流れた“Uptown Funk”に勇気づけられたと語っていたように、マーク・ロンソンの近年の活動は世界のポップ・シーンに様々な影響を与えています。そして、それを可能にしているのは、DJ/プロデューサー/アーティストとして古今東西の国やジャンルを繋いでいく、あらゆる音楽のハブのような存在感。その活動が多岐に亘っているからこそ、彼の活動を追えば、ポップ・ミュージックの次なるトレンドが見えてくる。そんな雰囲気こそが、マーク・ロンソンの最大の魅力かもしれません。

マーク・ロンソン

ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート feat. マイリー・サイラス

マーク・ロンソン

マーク・ロンソンの代表曲をまとめて聴く

星野 源 5th Album『POP VIRUS』

マーク・ロンソン

2018年12月19日(水)リリース 初回限定盤A (CD+Blu-ray+特製ブックレット) VIZL-1490 ¥5,000(+税) 初回限定盤B (CD+DVD+特製ブックレット) VIZL-1491 ¥4,800(+税) 通常盤 初回限定仕様 (CD+特製ブックレット) VIZL-1492 ¥3,100(+税) 通常盤 (CD) VICL-65085 ¥3,000(+税)

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タンジェリン・ドリーム、ソロ、作曲と多彩な顔を持つ世界的ヴァイオリニスト山根星子インタビュー 『ベルリンで生きる女性たち』 Part.5

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私がQetic連載コラムでインタビュー企画を始めてから、一番名前を聞いたのが彼女だった。それは音楽関係者だけに限らず、実に多方面から“山根 星子(Hoshiko Yamane)”という名前を聞き、”一番インタビューすべきアーティスト”なのだと感じていた。だから、私はまだその会ったことのない1人のアーティストのことを常に頭の片隅で想像し、意識していたのだと思う。会いたいアーティストと次々出会っては様々な形で取材させてもらい、感銘を受けてきた。そんな中で、彼女にもきっといつか会えるだろうという予感がしていた。それから月日が流れ、偶然友人宅で挨拶を交わした相手が紛れもなく彼女だったのだ。 山根 星子という本名での活動、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)、Tukico、KiSekiなど、様々な名義で様々なジャンルを同時にこなし、短期間でこれほどまでの実績を作り上げてきたアーティストが他にいるだろうか? 少なくとも私は知らない。そんな唯一無二のヴァイオリニスト・山根 星子さんを2018年最後のゲストとして迎え、念願のインタビューを行った。 今年を締めくくるスペシャルロングインタビューとなっていますので、是非最後までご覧下さい!! 

山根星子『一つだけになりたくなかった。だから、やりたいと思ったことは全部やってきたし、これからもやっていく。』

インタビュアー宮沢香奈(以下、Kana) まずは、今年最後のゲストとして『ベルリンで生きる女性たち』インタビュー企画にご登場頂き、ありがとうございます!! 本日はよろしくお願いします。 山根星子(以下、Hoshiko) こちらこそよろしくお願いします。 Kana ようやく星子ちゃんにインタビュー出来る機会に恵まれて私的にも非常に嬉しいんですが、もうプロフィールを見るだけでもすご過ぎて何から聞いたらいいのか悩んでしまいました。まずは、やはりベルリンに移住してきたきっかけから聞きたいんですが、2006年に移住してきたんですよね?  Hoshiko そうですね。日本では4歳からクラシックをやってきて、ベルリンに来る前は愛知県立芸術大学の音楽院に通っていたんですが、やはり本場のドイツで音楽の勉強をしたいと思ったんですよね。それで、春休みや夏休みを利用してドイツに来ては入りたい音大のリサーチや講習会を受けていました。習いたい先生がベルリンにいたので、個人レッスンを受けるために移住してきたのが2006年です。そこからもう丸12年になります。 Kana ドイツの音大に入るのはやはり大変なんですか? 演奏技術はもちろん、ドイツ語も必要になってきますよね? Hoshiko もちろんそうですね。個人レッスンを受けながら語学学校にも通ってました。ベルリンに来てからいろんな大学を受けたんですが、もうすごい倍率なんですよ。それに移住してきた時点ですでに24歳だったから年齢的にも難しかったんです。なので、ベルリンではなく近郊の大学をいくつか受けて、ロストック音楽大学に受かったので、ベルリンから通ってました。 Kana え、めちゃくちゃ遠くないですか??
Photo : Saki Hinatsu
Hoshiko 3時間ぐらいです(笑)。でも、この街が気に入っていたからどうしても引っ越したくなかったんですよ。それに、日本ではもう大学院を修了していたから、あとはレッスンとかオーケストラとか実技的なことだけを習いに行っていたので、週一ぐらいの通学でした。 Kana それでも大変ですよね。片道3時間掛けてまで引っ越したくなかったベルリンの何にそこまで惹かれたんですか? Hoshiko 私は幼少期からクラシックしかやってきてなかったから、それ以外のことを全然知らなかったんですよ。ベルリンの物価がめちゃくちゃ安いことさえ知らずに音楽をやるためだけにここに来たから、クラブカルチャーが盛んな街なんてことも全然知らなかったし、テクノとかダンスミュージックとも無縁だったんです。語学学校の友達に初めてクラブに連れていってもらって、やっと“Berghain”とか知りましたから(笑)。 Kana そうだったんですね?! てっきりもともと興味があるんだと思ってました!! Hoshiko 実は全然!! 日本にいた時に画家の知り合いぐらいはいたけど、ベルリンに来てからDJとか他ジャンルのアーティストたちと出会うようになって、カルチャーショックを受けたんです。今まで知らなかった世界の人たちと知り合っていくのがすごく楽しかったし、街自体もすごいおもしろいと思ってました。それに、ロストックの大学に受かった時点ですでにベルリンで知り合ったアーティストたちと即興とかセッションも始めてたので、そうゆう理由もあって引っ越したくなかったんですよね。 Kana なるほど。ベルリンへ来てから星子ちゃんの中で世界が一気に広がったんですね。しかも、2006年当時って今とは全然違くないですか? Hoshiko 全然違いますよ! とにかく何でもありだったし、めちゃくちゃおもしろかったです。今でこそこんなオシャレなカフェとかあるけど、この辺なんて何もなかったですから。廃墟しかなくて、何だかよく分からないアーティストがいっぱいいて、普通に全裸で道を歩いてる人もいましたから(笑)。

Photo : Saki Hinatsu

Kana (爆笑)。なんといっても“フリードリヒスハイン”ですからね。スクワット(アーティストやアナーキストが廃墟を占拠して住居やアトリエにしている建物のこと)とヒッピーだらけの時代だし、相当ぶっ飛んでそうですね。いいなあー!クラブとかも今とは違うイリーガルで激ヤバなとことかパーティーとかいっぱいあった時代ですよね。私なんてまだ憧れと妄想の世界でしかなかったです。その時代にベルリンのダンスミュージックと初めて出会うっていうのは、ものすごく衝撃的で貴重なことだと思うし、影響されないわけがないですよね。 Hoshiko そうですね。ベルリンに来たからこうなったんでしょうね(笑)。 Kana (笑)。でも、そこからのいきなりタンジェリン・ドリーム(以下、タンジェリン)の正式メンバーってすごくないですか?50年以上のキャリアと世界的知名度を誇る、しかも、日本人ではなくドイツ人で形成されたバンドのメンバーに抜擢されるなんて、ベルリンにいてアーティスト活動を勢力的にしていたとしても、そうそうある話ではないですよね。そこにはどういった経緯があったのか詳しく教えてもらえますか? Hoshiko きっかけは、2010年にKlangstein奏者のユルゲン(Jürgen Heidemann)と一緒にやっている“KiSeki”というデュオで初めてコンサートをやったんですけど、その時にトーステン(タンジェリンのメンバーThorsten Quaeschning)が見に来てくれたんですよ。たまたまトーステンがユルゲンと幼馴染で、クラシックがベースにあって、即興も出来るヴァイオリニストがいるってことで見に来てくれたんです。それで、後日タンジェリン・ドリームってバンドやってるんだけど、フジロックに出ない?って言われたんです。 Kana もうその時点で“持ってる感”出てますね!  Hoshiko でも私、その当時タンジェリンのこと知らなかったんですよ(笑)。 Kana えええーーーっ!!! Hoshiko 正確にはYouTubeとかで曲を聴いたことがあって、後からそれに気付いたんですけど、その時は全くリンクしてなくて……(笑)。ただ、“バンドのことは知らないけど、フジロックは知ってる。”と(笑)それに、その当時は誘われたら何でも行ってたから、タンジェリンの件もそのノリと同じで”ああ、おもしろそうだな”って、軽い感じで引き受けたんですよ。日本人だし、通訳的な感じで必要なのかなあ?ぐらいに思ってましたからね(笑)。 Kana タンジェリンよりフジロックが優勢だったわけですね(笑)。 おもしろ過ぎるエピソードですけど、そこから正式メンバーになった経緯は? Hoshiko 2011年の1月に、ウィーン郊外にあるタンジェリンの創始者であるエドガー(故エドガー・フローゼ)の自宅兼スタジオでオーディションを受けることになったんです。そこからようやく”タンジェリン・ドリーム”というバンドの経歴や楽曲を調べ始めたんですが、ウィキペディアを見たらすごいことが書いてあって、”なんかすごい話になってるな”ってやっと実感が湧いたんです。 Kana おそっ(笑)! Hoshiko エドガーとはそのオーディションの時が初対面だったんですけど、もうオーラが違うんですよね。今でも思い出すと緊張しますが、まずスタジオに入って最初に“何が出来るの?”って聞かれたんですけど、その時はどれぐらい技術があるか見るためにベートーヴェンかなにかクラシックの定番を1曲弾いたんです。そしたら、”うーん、問題なく弾けてるけど、それだけじゃおもしろくないんだよね。あとは何が出来るの?”って言われて焦りましたよね。結局その日はそこまでで終わって翌日にもう一回弾くことになったんです。でも、“もう少しアーティスティックでクレイジーな人が欲しいんだよね。彼女、技術はあるけど、普通だよね”って、エドガーとトーステンが話してるのが聞こえてきちゃって、うわ! どうしようって。
左:星子さん 右:エドガー・フローゼ
Kana “あのー、聞こえてるんですけど?ドイツ語分かるんですけど?”って感じですよね(笑)。そこからどうやって逆転勝利を得たんですか?? 何だか私まで緊張してきた!! Hoshiko その日の夜に“今日で絶対運命が変わる”って確信したんですよ。もし、このチャンスを逃したら絶対にこのあと自分の音楽人生はないって悟ったんですよね。それで、明日何を弾けば、どんな自分を表現すれば繋ぎ止めれるかということを必死に考えて、考えて、とにかく与えられたものを全部やってやろう!って覚悟を決めたんです。それで、いざ翌日になって出された課題が、エドガーの作った曲に合わせて即興で弾くことだったんです。”それなら出来る!”と思って、もう無我夢中で全力で演奏しましたね。弾き終わった瞬間にエドガーが拍手をしてくれて、そこでメンバー入りが決まりました。 Kana (拍手) わあ、すごい!! 鳥肌立った!! まず、普通の精神力だったら、そんな大御所のアーティストを前に怯んでしまうだろうし、“普通だね”って言われてしまったら自信喪失してそこで終わってしまう可能性の方が大きいと思うんです。でも、それを人生のチャンスだって捉えた星子ちゃんの精神力の強さに感心するし、やっぱりそこに行く運命だったんじゃないですかね。それに、タンジェリンのことをよく知らなかったのも逆に良かったかもしれないですよね。ファン過ぎたらそれこそ緊張でおかしくなって、うまく表現出来ないと思うし。あとは、何より、星子ちゃんの中で確固たる自信があったってことですよね? Hoshiko それはそうですね。その証拠にタンジェリンとしての初ステージで“これが自分の天職だ!!”って実感しましたから。結局最初のきっかけとなったフジロックへの出演は、3.11の影響でスポンサーが降りたのでなしになってしまったんです。でも、同じ年の2011年5月にマンチェスターでのライブがすでに決まっていて、それが初ステージになったんですが、2000人の観客を前に演奏して、緊張するどころか最高に気持ちよかったんですよね。
2011年6月ライブ with Brian May @テネリフェ島
2014年 ワールドツアー
Kana そこから新たな音楽人生がスタートしたんですね。タンジェリンといえば実験音楽だし、これまでやってきたことと全然違うわけじゃないですか? それなのに初ステージで天職だって思えるってやっぱり導かれてますよね。ベルリンに来たことから全てが始まってるわけですが、自分の仕事に対して”天職”とまで思えてる人は本当に少ないと思うし、羨ましいことだと思います。 Hoshiko でもやっぱりエドガーが亡くなったことで受けた影響はすごく大きかったですよね。彼の意向で6人体制だったところからトーステンと私が残って、現メンバーのウルリッヒ(Ulrich Schnauss)が加入して、4人体制にメンバーチェンジしたばかりだったんです。新メンバーでオーストラリアツアーを回って、このままやっていくんだろうなって時に突然の訃報でしたからね。 Kana やはりそんなに違うものなんですか? Hoshiko やっぱりタンジェリンは中心メンバーのエドガーありきのバンドでしたからね。エドガーが亡くなったのが、2015年1月だったんですけど、そこからほぼ空白になりましたから。もうこのままバンドを止めるのか、一年はトリビュートでやるのか、そんな状態でした。 Kana 入ってまだ間もないのに……。 Hoshiko 本当にそうです。でも、現メンバーでのコンビネーションがすごく良かったし、エドガーの奥さんがマネージメントをしているんですけど、奥さんからもタンジェリンの名前のまま活動を続けていって欲しいと言われて、それで続けることになったんです。そこから、小さい会場やドイツ国内のフェスとかに少しずつ出演しながら再スタートを切ったんですが、最初はやっぱり大変でしたね。バンドとしては50年以上のキャリアがあるけど、それはエドガーやこれまでのメンバーのキャリアだし、タンジェリンの昔からのファンの人たちって60代、70代が多いんですよ。自分の子供を連れて家族で見に来てる人も多いぐらいですから。でも、現メンバーの私たちは30,40代の同世代だし、新しい世代の若いファン層を増やそうって考えたんです。セットリストには昔の曲も入れつつ、セッションや新しい楽曲を徐々に入れるようにしていきました。それで、やっと今年になって忙しくなってきて、ようやく前の感じが戻ってきたって思いました。ウルリッヒがメンバー入りしてくれてたこともすごく良かったと思っています。彼はキャリアもあるし、ダンスミュージックのこともわかってるし、世界のシーンも分かっていたので、心強かったです。
2018年 ライブ with Paul Frick(Brandt Brauer Frick) @rbb (ベルリン)
Kana そんな苦労があったとは分からないぐらい活躍してるように思えるし、私も観に行かせてもらった11月のrbbでのライブも堂々たるプレイで、年齢層高めのファンを魅了してたと思うんですが、星子ちゃんの話を聞いてると、エドガー・フローゼがいかに偉大な人物だったかというのも実感させられますね。残念ながら生存中に生で観ることは出来ませんでしたが、彼の意思を引き継いだ新タンジェリンの活躍にも期待しています。偉大といえば、ジェーン・バーキンとも共演していますが、一体どうゆう繋がりなんですか?? これすっごい聞きたかったんです!! Hoshiko それもまた人との繋がりからなんですが、ジェーンがツアーの時にバックで弾いてくれる演奏家を探してるってことで、パリ在住の同級生が繋げてくれたんです。それで、2011年のワールドツアーにサポートメンバーとして参加することになったんです。 Kana 今度はいきなりのフレンチ・ポップ!! Hoshiko です(笑)。ジャズみたいなコード進行しかない譜面を渡されて、正直全然分からなかったんですけど、出来るって言いました。 Kana また(笑)!! もう言ったもん勝ちみたいになってきましたね。でもそれでまたバシッとやり遂げちゃったってことですよね。すごいなあ……。ジェーン・バーキンはどんな人なんですか? Hoshiko すっごいフランクです。もう憧れの女性って感じ。 Kana それは全世界の人が思ってることだと思いますが……(笑)? Hoshiko そうなんですけど!なんていうのかな? 本当に気取ってなくて、着飾ってなくて、もうね、オーラがピンク色なんですよ!自然体で笑ってて、私たちサポートメンバーへの気遣いも素晴らしかったし、空港で会ったファンにも握手とか写真とか気軽に応えてるんです。みんなに愛される人って、こういう人なんだろうなって思いました。2年間で30カ国ぐらい回ったんですが、ツアーに同行できて本当に良かったと思っています。
2011年~2013年 ジェーン・バーキン ワールドツアー
Kana うわー、是非会ってみたい!! というか、ジェーンもすごいけど、星子ちゃんの2011年が濃厚過ぎますよね。タンジェリンへの加入とジェーン・バーキンって!! Hoshiko 確かに振り返ってみると2011年にいろんなことがギュッと凝縮されてますよね。でも、私何も考えてないんだと思います(笑)深く考えずに来るものは拒まず、何でもやるって言っちゃうんですよ。出来るって信じ込んでるし、出来るって言ってから、”さて、どうするか?”って考えてますから。 Kana まず、出来るって言えちゃう勇気と自信がすごいし、それで実際出来ちゃうからいろんなことに身を結んでるんですよね。タンジェリンやソロ名義以外でも前述の”KiSeki”だったり、”Tukico”だったりといろんな名義で、アコースティック、アンビエント、ビートの入ったミニマルと本当に幅広く手掛けてますが、どうやってハンドリングしてるんですか? 切り替えるのが大変そうだなあって思ったんですが。 Hoshiko うーん、一度に何足もの草鞋を履いてるのが好きなんですよね。一つのことに集中出来ないというか、一つだけになりたくないんですよ。タンジェリンに加入した時もまだオーケストラに所属してて、そっちではモーツァルト弾いてましたから(笑)ジェーンのツアーが終わった2013年から本格的に作曲を始めたんですよ。以前からラップトップや機材を使って楽曲制作をやってみたいと思っていたので、独学でロジックとか勉強し始めました。それで曲を作っていたらミニマルなサウンドに仕上がったんです。演奏家としては本名でやってたし、テイストも全然違うから、名義を変えたほうがいいかな?と思って”Tukico”にしました。名義を変えた理由はそれだけなんです。 Kana 名義変えたほうが分かりやすいですしね。
2015年Tukico ジャパンツアー
Hoshiko ダンスミュージックのシーンってあんまり生楽器が入ってるスタイルがなかったからやってみたかったんですよね。制作を始めて最初の2年ぐらいは電子音楽の方にハマってて、まだペーペーなのに2014年にはsub-tleさんのツアーに参加させてもらってDommuneにも出たり、2015年には日本ツアーもやって、リリースもしました。Tukico以外での作曲はずっと続けてきた舞台音楽の影響からですね。 Kana 舞踏アーティストのMotimaruともコラボしてますよね? ソロアルバム『Threads』にも収録されている同タイトルの”Threads”とか壮大ですごく好きな楽曲ですし、彼らの舞台は言葉ではうまく表現できないすごさがありますよね。 Hoshiko Motimaruとはもう3、4年に一緒にやってますが、私も彼らの舞台を初めて見た時にすごい感銘を受けて、一緒に何かやりたいって自ら申し出たぐらいです。自分の名前で曲を作りたいとかではなく、彼らの舞台が好きだからそのために曲を作ってる感じですね。一度、舞台の制作費が足りない時があって、だったら舞台用に作った曲をBandcampで売って制作費に当てたらいいんじゃないかと思って、その時初めて自分の曲を売ることも始めたんです。そしたら、”あ、いけるんぢゃない?”って手応えを感じれたんですよね。
Motimaru
Kana 全てにおいて勢力的だし、結果を残してますが、悩んだりとかしないんですか(笑) ?これまでインタビューさせてもらってきた人たちってジャンル関係なく、どこかで挫折を味わってたり、苦労の末に掴んだ今があったりしますが、星子ちゃんにはあまりそれを感じないですよね。もちろん、幼少期からの努力の積み重ねと才能だとは思いますが、それだけではない何かを感じます。ベルリンに導かれてきたように、他にはいない唯一無二の存在になるためにヴァイオリニストになったんじゃないかなと思います。 Hoshiko でも、こうなった今の方が迷う時がありますよね。21歳の時に、30歳までに演奏家として仕事をやっていく、40歳までに自分の音楽だけでやっていくって決めてたんですよ。今30代後半になって、曲もいろいろ作ってきたけど、自分が思っているほど理想に追いつけてない気がするんですよね。 Kana え、ここまでやって、実績を作っているのに? Hoshiko やっぱりクラシックがベースにあるから、アナログで演奏するのが一番落ち着くんですよ。でも、7年も電子音楽をやってたらシンセとかも当たり前に知ってるって思われるんです。本当は全然知らないし、機材のこととかも詳しくないのに。そこのギャップをどう思われてるか気になることがあるし、プレッシャーに感じることもありますよね。やりたいと思ったことを全部やってきたから、自分はどこのジャンルにも属せてない感じがします。それが良いのか悪いのかも分からないんですけど。 Kana うーん、私はそれでいいと思いますけどね。元から電子音楽をやってるアーティストだったら知ってて当然だと思いますが、そうではないし、クラシックがベースにあるからこそ出来ることがあって、違う視点や感性があるからこそ他のことにも活かされてるんだと思います。一つに絞る必要はないし、そんなルールはないじゃないですか。星子ちゃんの曲を聴いてると、煮詰まった時とかギューってなってた気持ちが解かれてく感じがあって、すごく心地良いんですよね。往年のクラシックも好きなんですけど、そうではなく全部オリジナルで、アコースティックなサウンドの中にアンビエントやミニマルな要素も感じるし、逆にタンジェリンの時には電子音楽なんだけど、クラシックを感じます。それが星子ちゃんだけの持ち味で魅力なんだと思います。今はタンジェリンとしての活動が一番多いと思いますが、来年に向けて何かやりたいこととかありますか?
Photo : Saki Hinatsu
Hoshiko 来年はアンサンブルのための譜面を書きたいと思ってます。自分の曲を弦楽四重奏用ににアレンジして、人に弾いてもらったら深みが出てすごくよかったんですよ。他の人にも弾いてもらうことで、自分一人だけで完結せずに一緒に作りあげてく感覚が得れるので、もっとやっていきたいですね。 Kana それはまた名義変えないといけないかもですね(笑)。最後になりますが、これは皆さんに聞いてるんですが、海外で活躍したいと思っている若いアーティストにこれだけはやっておいた方が良いとか何かアドバイスがあったらお願いします。 Hoshiko そんな大それたこと言えないですけど(笑)。 とにかくいろんな世界を見ることが大事ですよね。それはジャンル関係なく大事だと思います。だって、どこからインスピレーションを受けるか分からないじゃないですか。その時はグッときてなくても、後から思い出して気になることもあるし、出会った瞬間にグッとくることもあると思うんです。だから、いろんなものを見て欲しいですね、場所や人や物を。 Kana 実体現が身を結んでるだけに、めちゃくちゃ説得力がありますね。 Hoshiko あと、人との繋がりは本当に大事だと思います。昔、まだmixiが主流だった頃に、”日本からベルリンに遊びに行きたいんだけど、英語も話せないから案内してくれませんか?”って、全然知らない人からの書き込みがあって、”あ、おもしろそう”って思って引き受けたことがあるんです(笑)。 他にも、演劇をやりたいんですけど一緒にやりませんか?とか、ポップアップとかも呼ばれたらすぐに顔を出して、誰かしらと繋がってましたね。でもその時知り合った人たちがずっと私の活動を応援してくれてて、その人たちも年を重ねながらいろんな経験を積んでるから、違う業界で活躍してるんですよね。そこからまた人を紹介してくれたり、結果良い縁になっています。 Kana 私だったら危ないヤツだったらどうしよう?とか変に勘ぐって相手にしなそうですが、やっぱり星子ちゃんは人を引き付けてるんでしょうね。変な人という意味ではなく(笑)。全く違う分野でも星子ちゃんの音楽人生にプラスになる人が自然と周りに集まってきてるんだと思います。本日は寒い中長時間に渡り、貴重なお話をありがとうございました!!
Photo : Saki HIanatsu
ベルリンの引力とは不思議なものである。この地にいなかったら巡り会えていない人と繋がり、またそこからさらに繋がってゆく。それは、日本人であってもどこの国であっても関係ない。それどころか分野さえも関係ない。灰色に囲まれた決して万人受けしないマイノリティーなこの地で、アドレナリンが彷彿するほど楽しめる“自分の道”を知っている人同士が自然と知り合い、自然と何かを構築しているのだ。だから、この街はおもしろい。 新たに迎える年もまた楽しいことで溢れんことを願って、皆さんにとって素晴らしい年になることを願って、今年最後のコラムをベルリンからお届けする。 山根 星子/Hoshiko Yamane SoundCloud

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Moscoman インタビュー|ハラルとディスコ、混ぜ合わせることのできないものの融合を楽しむこと

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Moscoman

最近では海外での活躍も目覚ましいQue Sakamotoが率いる国内屈指のNu Discoパーティー<Huit Etoiles>。モダンエスニックの革命家Red AxesやAcid Arabらと共に一大ムーヴメントを築き上げたMoscomanと、DixonやÂmeでお馴染み〈Innervisions〉からのリリースも話題のTrikkがダブルヘッドライナーで登場し、<Disco Halal meets Huit Etoiles>としてスペシャルなショーケースとして1月12日(土)に表参道のVENTで開催される。

アンダーグラウンドのムーブメントを生み出す街として、近年高い評価を受け、同時にサブ・ジャンルのミュージシャンにとって最高のインスピレーションを与える街として名高いポルトが生んだTrikkは、若き才能として称賛され、新しいスターとして注目されている。〈ManMakeMusic〉や〈Lossless〉などのレーベルからの作品のリリース、〈Hotflush Recordings〉や〈Pets Recordings〉などへのリミックスの提供、そして絶大な人気を誇る〈Innervisions〉からのリリースを通してTrikkはその才能を世界に証明してきた。

今回はTrikkと共にダブルヘッドライナーとして出演するMoscomanにインタビューを取ってみた。イスラエル出身にして、レーベル〈Disco Halal〉を運営し、近年オルタナなクラブ・カルチャーにおいて影響力を持つ存在になったMoscomanは特徴的なサウンドで世界中の多くのオーディエンスを喜ばせてきた。活動の初期にはテルアビブの大衆的なバーで、成功した今ではより多くのオーディエンスに向けて、自分の故郷の様々な音楽とより幅の広いエレクトロニック・ミュージックをつなぎ合わせ、ニューウェーブ、ハウス、テクノ、トランスそして自身の音楽とのジャンルの差を埋めながら常に進化してきたアーティストだ。

Interview:Moscoman

Moscoman

Huit Etoiles 今回2回目の来日ですね。

Moscoman 昨年日本に訪れて夢が叶ったよ。日本に入国する一ヶ月以上前から地元を離れていたけど、想像していた以上に日本滞在は最高のものだった。それ以来、東京に戻って再びVENTでプレイすることを考えていたんだ。VENTでのプレイは2017年のDJ活動の中のハイライトの一つで、再び<Huit Etoiles>クルーに会えることも最高だね!

Huit Etoiles 今回の日本滞在中にあなたが行ってみたい観光スポットなどあれば教えてください。

Moscoman 日本が大好きだよ。すべてが魅力的で興味深い。最初はただ単に外国だからかと思ったけど、いろんな他の文化の国を滞在してみて、日本の文化は私にとって何かとても大きなものだと気付いたよ。今回は私の大好きな、食事、音楽、仲間との時間を費やしたい。普段から肉は食べないけど、大抵の日本食は好きで、特に蕎麦と鰻だね。日本の文化は東京と郊外でのジャズのセッション、レコードバー、そして”生きがい”という人生のあり方は魅力的だよ。

Huit Etoiles ありがとうございます。では、本題に入りましょう。音楽の話を聞かせてください。あなたがDJを始めたきっかけを教えて下さい。

Moscoman DJはかなり若いことから始めていたんだ。趣味としては16歳くらいからかな。プロとしてのDJ活動はこの12年くらい。エレクトロニック・ミュージックを始めたのは結構遅かった。当時はすでに28歳だったけど、なにか新しいことを始めるのに遅いなんてことはないね。

Huit Etoiles あなたの音楽やレーベルからは中東色はもちろんのこと、ジャズやロックやフォーク、トランスなどの要素を感じる事が出来ますよね、そのバックグラウンドはなんだったのですか?

Moscoman 自分が毎日聴いているもの。だからそれらがアウトプットとなって自分の音楽になる。レーベルにも同じことが言える。好きな音楽のみをリリースしているんだ。これらの音楽は、人生の一部だと思ってるよ。

Huit Etoiles 幅広い音楽性のルーツが良く分かりました。日本人のアーティストで好きな方はいらっしゃいますか?

Moscoman お気に入りの日本人アーティストはたくさんいるよ。間違いなく細野晴臣はそのリストのトップだね。彼は驚くほど多才なキャリアを持っていて、素晴らしい音楽を沢山リリースしてきた。できるなら彼になりたい(笑)。でも本心を言うと彼の半分の才能も持っていないよ。他のアーティストだと尾島由郎、近藤浩治、佐藤博などがお気に入りだね。もちろんもっと他にも好きなアーティストはたくさんいるよ。

Huit Etoiles 改めて、あなたが運営しているレーベル〈Disco Halal〉にはどんな意味がありますか? 

Moscoman この名前は“ディスコ”と”ハラール”という2つの大切なものの融合なんだ。混ぜ合わせることができないもので、東と西だったり、クラブとその外の世界だったり、この混ぜ合わせることのできないものの融合を楽しんでいるんだ。レーベルを作ったのは、友人たちが音楽をリリースできる場所を作りたかったから。今でも同じ気持ちで、このレーベルは友人たちのためなんだ。

Huit Etoiles あなたは今年からSolumunのエージェンシーになって、更に彼のレーベルからアルバムもリリースされましたね。それによって心境の変化や環境の変化はありましたか?

Moscoman 新しいお客さんたちのために、心をオープンにすることは素晴らしいことだよ。Solomunには素晴らしいファンがいて、その一部になれることは幸運なこと。気持ちや考え方は変えること無く、もっともっと自分の好きな音楽をリリースできるようになれば嬉しい。

Huit Etoiles 2019年の活動予定を教えてください。

Moscoman 1月いっぱいは日本にいるよ。コラボしたい方がいれば、全然空いてるよ! その後2月はアメリカに行って、3月はヨーロッパに戻る予定。夏はフェスや楽しいことがいっぱいだね。それ以降はまだノープランなんだ。

Huit Etoiles ありがとうございます。では最後のトピックへ。今回の僕たちのパーティー<Huit Etoiles>は〈Disco Halal〉の名前も入ってます。そのパーティーにあなたは今回共演するTrikkを推薦してくれましたね。彼は今年あなたのレーベルからリミックスも提供してくれています。

Trikk

Trikk

Moscoman Trikkは最近の私のお気に入りのプロデューサーだよ。彼は〈Innervision〉の一員だけど、彼らのためにリミックスをしたことがあるし、一緒にオリジナル曲とリミックスを作る話もしたことがあったんだ。近くに住んでいて、同じビジネスをしていて、同じような物事が好きで、共通の友達がいて、気が合うんだよね。彼とはベルリンの〈Innervision〉のオフィスで1年前くらいに会って、それ以来友達になれて嬉しいよ。

Huit Etoiles 僕も実際2018の<Innervisions Sonar>で彼のプレイを観ましたが、大変素晴らしかったです。

Moscoman そうだったね! その時はじめてあなたとヨーロッパでも会ったんだよね。あのときTrikkはとてもクールなセットを披露してくれたんだ。まるで空間がひっくり返るような感じだったよ。ビッグネームのアーティストは常に素晴らしいものを見せてくれる。Trikkのような人は軽くそのようなことをやってのけて、それがまた美しいんだよね。

Huit Etoiles 去年のあなたのプレイは僕の中でもベストアクトの一つだったと思っています。あれから日本で沢山の友人やファンが出来ましたよね。今回また来日するという事であなたも非常に楽しみにしているかと思います。そんな方々にメッセージをお願いします。

Moscoman 日本にまた戻ってこれて、あなた達に会えることはとても楽しみです!パーティーや街かどやいろんなところで新しい人に会って、気軽にMoscoって声をかけてください。

Watashi wa Nihon ni modotte kite minasan ni aeru koto o totemo kōfun shite imasu. Pātī ya machi de anata ni aeru no o ureshiku omoimasu, Mosco.」(原文ママ)

イベントには国内からもMustache X、Huit Etoiles Crew、Jun Nishioka、Motoki a.k.a. Shame、Candy Boys、Bless Hacker、u come on!、FLEDtokyoといった珠玉のローカルDJが集結し、Disco Halalと<Huit Etoiles>による新年会とも言える新年第一回目となる開催を大いに盛り上げてくれるだろう!

限定のイベントTシャツをプレゼント 人気ブランドSoft MachineのデザインによるDisco Halal×Huit Etoiles コラボTシャツを各色、M、Lサイズを各1名にプレゼント。詳細は下記よりチェックしよう。

Moscoman
Moscoman
Moscoman
Moscoman

Moscoman & Trikk at Disco Halal meets Huit Etoiles

Moscoman

2019.01.12(土) OPEN 23:00 DOOR ¥3,500|FB discount ¥3,000ADV ¥2,500

ROOM1 Moscoman(Disco Halal) Trikk(Innervisions) Mustache X(Fake Eyes Production) Que Sakamoto(Huit Etoiles/Roam Recordings)

ROOM2 Huit Etoiles Crew Jun Nishioka(cha cha cha) Motoki a.k.a. Shame(Lose Yourself) Candy Boys(Yosuke Nakagawa & Genki Tanaka) Bless Hacker u come on!(flowers in cave) FLEDtokyo(Tu.uT.Tu./Test Press Tuesday)

ATTENTION You must be 20 or over with Photo ID to enter. Also,sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。 ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。 尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。

詳細はこちら

Disco Halal×Huit Etoiles コラボTシャツ 各色、M、Lサイズ各1名様

▼メールでの応募方法

「応募する」ボタンをクリック後、お問い合わせフォームより、お問い合わせ内容を「プレゼントのご応募」とし、メッセージ本文に下記必要事項を明記のうえご応募ください。

1)ご希望のプレゼント:Disco Halal×Huit Etoiles コラボTシャツ(黒 or 白・M or L) 2)お名前: 3)住所:〒 4)メールアドレス: 5)電話番号: ※応募情報が未記入の場合は無効とさせて頂きます。

応募する

応募期間 2019年1月4日(金)〜1月11日(水)23:59まで

※物品がが破損、未着となった場合でも一切保障いたしかねます。予めご了承ください。 ※当選発表は物品の発送をもって代えさせていただきます。

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avengers in sci-fi木幡× タイラダイスケ対談|ロックスターの居た街

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11月7日にリリースされたavengers in sci-fiの新作『Pixels EP』。新進気鋭のヒップホップユニットTENG GANG STARRをフィーチャー、DATSのMONJOE、DE DE MOUSE、The Band Apartの木暮栄一によるリミックスを収録するなどコラボレーションをテーマにした意欲作だ。 2019 (No Heroes) feat. TENG GANG STARR
そのリリースを記念したトークイベント<ロックスターの居た街>が11月20日に新宿のRock Cafe Loftにて開催された。avengers in sci-fiの木幡太郎とインタビュアー村上がゲストにDJタイラダイスケを迎える形で行われた当企画は、お酒を飲みながらバンドの今までとこれからについて語るというラフな空気ながら、今まで語られなかった秘話や、音楽シーンを取り巻く現状にも踏み込んだ貴重な内容となった。

Talk session 木幡太郎 × タイラダイスケ

タイラダイスケ(以下、タイラ) そういえば、古参ファンはavengers in sci-fiをアベンジャーズって呼ぶけど、いつの間にかアベンズに変わったよね。 木幡太郎(以下、木幡) avengers in sci-fiってミスチルみたいに略せないから、ケミカルブラザーズがケムズって略されてるみたいに海外風の略を考えたいと思って、半ばふざけた気持ちでブログでアベンズって言っていたら浸透して。それと〈Hip Land MUSIC〉に所属する時にちょうどTwitterが盛り上がり始めて、検索されやすいワードにする必要がでてきて。で、某大物マネージャーが「アベンズ」を正式な略称にしちゃおうよって言ったみたいですよ ――2012年4月にリリースの『Disc 4 The Seasons』は、宇宙的、未来的なものにエクスタシーを感じなくなったため、俯瞰した視点でストーリーを描くスタイルから一人称の音楽へ変化したアルバムになっています。なぜ「宇宙的、未来的なもの」から気持ちが離れ始めたのでしょうか? 木幡 まあ単純に飽きてきたっていうことですかね。他にもやりたいことっていっぱいあるじゃないですか。血迷ってブルースやりたいねって時もあるし。かっこ良い言い方をすると、自分たちの引き出しがアベンズの枠を超えちゃったっていうか。 タイラ 宇宙的、SF的みたいなアベンジャーズの外堀イメージが、この後出る『Unknown Tokyo Blues』からだいぶ変わってきたよね。その時やりたいけど、怖いっていう感覚はなかったの? 木幡 滅茶苦茶ありますよ。エモとかポストハードコアってメロコアから地続きのジャンルなんですけど、メロコアの「モッシュしようぜ」って音楽からもうちょっとエモーショナルに、泣かせる音楽性にシフトしていったり、テクニックの面でも向上して音楽性が広がっていったジャンルなんですよ。それは音楽的には正当な進化なんですけど、キッズたちはもっとモッシュさせてくれよ、とうずうずしていて。それまでどの会場でもお客さんがパンパンだったバンドが、音楽性を変えた瞬間にお客さんが離れちゃうっていうのを結構リアルに見てきた世代だったので、そうなるのは結構覚悟はしましたね。
――2014年にリリースした 『Unknown Tokyo Blues』では、今までは物語性を重視してきたアベンズが現実、生活していて感じることを音楽に落とし込んだ今までとは雰囲気の違うアルバムにもなっています。こうした変化はなぜ起きたのでしょうか? 木幡 やっぱり『Disc 4 The Seasons』は一人称使うとか、チラ見せみたいなところがあって。俺『Disc 4 The Seasons』の嫌いなところって、自分で歌っててイタいのよ。それまでラブソングとか歌うのを頑なに我慢してたから、その反動で、昔フラれた女の子の話とかがリアルに出てきちゃっているというか。『Disc 4 The Seasons』の曲の歌詞は自分の体験をそのまま歌にしていて、それに対して『Unknown Tokyo Blues』は自分が見た世界、自分が見て感じた世界を詞にしているっていう。 ――2017年3月に会場限定リリースした『Light Years Apart』について伺いたいのですが、この歌詞は何を歌っているのでしょうか。僕はこれから独立しようとしているアベンズの船出の曲なのかなって思ったのですが 木幡 まあまあ近いかな。月並みだけど、凄い遠くまで来たなっていうニュアンスで。高校の頃に何も考えないで始めた、パンクロッカーだった少年が、ああ、こんなところまで来たんだなっていう。まああとこれに関しては若い頃の地元の友達に対して宛ててる歌でもあって。しょうもないことをしていた友達が結婚していくのを見て、お前が結婚するのかよ、本当にイカれてるなって。それが羨ましくもあり、嬉しくもあり。俺はとてもじゃないけどそんなことできないなっていう。あと俺らみたいな零細バンドがレーベル作って、フリーでやっていこうなんて最高にイカレているじゃん。もうここまで来たらとことんイカレたことやろうよって自分たちを後押しする意味も含んでます。
――クリエイティブベース〈SCIENCE ACTION〉を設立した経緯を聞かせて頂けますか? 木幡 メジャーとは1年毎に契約していたんだけど、次どこか探してもまた同じことを繰り返すだけだなと思って。メジャーレーベルって慈善事業じゃなくて商売だから、俺たちみたいなバンドが結局またメジャーと契約したとして、アルバム出して売れませんね。じゃあ契約切れですねっていうのを繰り返すんだろうなっていうのは目に見えているなと。それって無駄な時間だなって思ったのよ。継続とか蓄積がリセットされちゃうわけで。それなら自分たちがカッコいいなと思えることをやった方が良いなと思ったっていうのはすごくある。それにやっぱりメジャーと契約していると関わる人が多くなってきて、バンドのイメージ一つにしても全部を把握してコントロールするのって凄い難しい。なんか違うなって思ってももう手遅れでっていう事に妥協するのが普通になっちゃう。そういうの耐えられるタイプじゃないんで、まぁ早い話が向いてなかったなと……(笑)。 タイラ そもそも今の時代のレコード会社の在り方っていう話でもあるよね。昔CDが売れていた時代は「良いものやろう」っていう人達もレコード会社にいれたけど、今はCDが売れなくてレコード会社の体力自体が無くなってきているから、短期的な売り上げを望めないとそもそもバンドがレコード会社にいられないっていうね。もちろん純粋なレコード会社で働いている方もいっぱいるとは思うんだけど、でもレコード会社の体力が年々無くなってきているというのも事実で。だから時代の流れ的に、太郎君がもっとクリエイティブなことをやりたいなって思った時に、このまま惰性でメジャーと契約し続けるのが自分のやりたいことと一致するのかなっていう疑問が正直あったと思うんだよね。 木幡 時代的なことだとSNSの登場ってすごく大きくて。それまではメディアを使って声明を発表するっていうのが普通だったけどそれが自分たちでやれる時代になったっていうのは、2002年のバンドを始めた頃からすれば本当に理想的な状態っていうか、音源とか情報とか全部自分たちで出して、フライヤーとか物販とかも全部自分たちで作ってっていうか、そういうのが一番理想だったんですよね。 タイラ 太郎くんのルーツであるパンクとかハードコアってDIY、全部自分たちのことは自分たちでやるんだっていう精神性のもとに成り立っている音楽だったりするわけじゃないですか。結局そこに立ち返ったっていうことかもしれないよね。 ――次に2017年9月にリリースされたシングル『I Was Born To Dance With You/Indigo』の話を伺いたいと思うのですが、“I Was Born To Dance With You”の歌詞にはどういう意味が込められているのでしょうか? 木幡 俺の中ではダンスミュージックってそんなに深いこと歌っちゃいけないんですよ。この曲の詞はダフト・パンクの“Digital Love”を下敷きにしているんだけど、“Digital Love”って夢の中で好きな子と踊ってるみたいなくだらない歌詞で。俺の中ではダンスミュージックってそんなに深いこと歌っちゃいけなくて、朝まで踊ろうよっていうのがダンスミュージックに関しては正解というか。それがカッコいいんすよね。それが基本にあったうえで一応俺の死生観を反映していて。諸行無常じゃないけど、皆んないつかは離れて行くもんだという。まあ出会っては消えて行った人達が自分を形作っているっていう気持ちも込めつつ誰しも究極的には1人というか。
――それに対して“Indigo”は失恋ソングだというように伺っていますが、「Indigo」は何のメタファーなんでしょうか? 木幡 「Indigo」は俺の中で空とか海のメタファーで。メキシコってこの曲に出てくるじゃないですか。俺の中でのロードムービーのイメージって大体メキシコを目指すんすよ。犯罪犯してアメリカにいられなくなった奴らが道中で金盗んだり、いきずりのセックスしたりしながら。で、最終的な目的地がメキシコのビーチだったりする。これは、5年間一緒に住んでいた女性に家を追い出されたことを題材に書いた詞なんだよね。ふられると急に自分のあてどなさとかしょうもなさが客観的に見えるようになっちゃうもんで、先の見えないバンドマンとかメキシコを目指すロードムービーみたいなもんだなと。まあ「Indigo」を見せてやれなかったなっていう贖罪の歌だよね(笑)。
木幡 “True Color”のデモを作った時はアシッドハウスっぽいものを作りたいなと思ってたんです。でも作ったのが1年前なんで自分にとってもう少しタイムリーにしたくて。まんまアシッドハウスだと懐古的すぎる気もしたし。ヒップホップって今すごいじゃないですか。どんどん新しいものが出てくる。対してロックフィールドって相変わらずカートコバーンの再来を待っている感じなんだけど、XXXTENTACIONとか皮肉にもそれがヒップホップのフィールドから出てきてっていう状況だし。ヒップホップから受けた刺激を反映したいなと。 タイラ デモから今の“True Color”に変えたのは、ただのリバイバルじゃ面白くないって思ったってこと? 木幡 それもあります。あと“True Color”のマスターバージョンでは、生ドラムを使いたくなくてセッションでグルーヴの確認だけしてそれを打ち込みに置き換える作業をしたんです。ロックって、クラブミュージックとかヒップホップと比べてデカいホールでDJが流した時にぐちゃぐちゃになってしまうっていうか。 タイラ クラブミュージックとかヒップホップって大きい音量でDJがかけることを前提に作られてきた音楽だけど、ロックってそもそも大音量で聴かれる音楽じゃなかったっていうことがあるかもしれないね。 木幡 日本だと無理してロックで踊らなきゃいけないってなっちゃってるんじゃないですか。でも直感的に踊らそうと思ったらロックがクラブミュージックとかヒップホップとかテクノとかハウスミュージックに勝てるわけがないですよね。 やっぱりロックって演奏しているのが強みだから、演奏しているのを見せてなんぼですよ。 タイラ そうだね。あとはロックっていうのは音だけじゃなくて、その裏側にあるストーリーとか、エモーショナルなもの、歌詞の意味とか、そういったものも良いなって思う要素だったりするからさ、聴いてるお客さんはそれも含めて楽しめるっていうのがロックの良さだと思うけれど、音だけでいうと確かにそうかもしれないね。
木幡 “Hooray For The World”のデモを作った時はPeggy Gouとかよく聴いてて、ガチ・アシッドハウスみたいな曲になったんですけど、1年たって聴くとつまんないなって思っちゃって。で、合宿に入った時俺はなぜかすごいプリンスを聴いていて。そういえば昔ラジオでプリンスっぽいよね、ゲイ・ミュージックだよねって言われたことがあって。最近その意味がわかるようになってきて、確かにプリンスの曲きくとコード進行がすごく少なくて、ハウス的っていうか。ゲイをはじめ虐げられる側の人たちの居場所としてハウスとかが流れるクラブが発展したっていう歴史があるんですけど、そういう歴史を踏まえてのゲイ・ミュージックっぽいよねっていう話だったと思うんですよね。で、プリンスの”I would Die 4 U”が“Hooray For The World”のマスターバージョンの元ネタになっています。コード進行が1パターンで進むところとか参考にしてます。

avengers in sci-fi人気曲投票企画

1位「Yang 2」 2位「Sonic Fireworks」 3位「Citizen Song」 4位「NAYUTANIZED」 5位「I Was Born To Dance With You」 6位「Homosapiens Experience」 7位「Dune」 8位「avenger strikes back」 9位「Before The Stardust Fades」 10位「Tokyo Techtonix」 11位「Odd Moon Shining」 12位「Pearl Pool」 13位「Starmine Sister」 13位「Riders In The Rain」 15位「Universe Universe」 16位「Wish Upon The Diamond Dust」 17位「Crusaders」 18位「No Pain, No Youth」 19位「Two Lone Swallows」 20位「Psycho Monday」」
木幡 10位の“Tokyo Techtonix”は同窓会の歌的なところがあって。「変わってたのは俺の方ではないぜ」っていう部分、同窓会とか行くと「お前変わったな」とか言われるわけよ。そいつとしては、お前東京に染まってんじゃねえよみたいな。そういうやりとりってあるでしょ。でも俺からすると変わったのはお前の方じゃないかよっていう。9位の“Before The Stardust Fades”はシングルカットしなかったことを今でも悔やんでいて。アイデアは最高だったなって。これ湘南乃風がやりそうなアッパーなレゲエのドラムを引用していて。稲見と一緒に車で帰っているときに、レディオ湘南で湘南乃風かMINMIがかかったんすよ。で、これ取り入れたら面白いなって直感的に思ったっていう(笑) タイラ あの時代のレゲエは一世を風靡したからね。音楽知らない人が聴いても、アガる状態だったもんね。 木幡 そういうのを自分たちなりにアレンジするのが好きなんですよ。単純にオリジナルじゃなくて。組み合わせの妙で勝負していくっていうのがやっぱり音楽家の腕の見せ所だなと思っていて。俺たちなりに調理するとこうなるんだぞっていう。7位の“DUNE”はこういう曲を作りたくてギターを始めたって言っても過言ではないくらい、滅茶苦茶俺も大好きな曲で。リフが中心の音楽を日本の音楽に落とし込むって結構大変で。J-POPってやっぱりメロディーを基準に作ってあって、メロディーにリフが添えられてるという状態。対して本来的なロックンロールってリフに歌が添えられているっていう感覚だから、多分海外だったらイントロのリフで1曲突っ走るみたいな音楽にすると思うんですよね。要するに日本的な歌謡性と欧米産のロックのメカニズムってすこぶる相性が悪い。
タイラ 確かにこれまでアベンジャーズの曲でギターのリフ一発で行くっていうのがあんまり無かった気がするね。 木幡 まあでもリフってちょっと古い概念で、もうニルヴァーナで最後だったのかなっていう。 タイラ “Smells Like Teen Spirit”とかね。 木幡 あれがやっぱり理想だったんで。どうやったら俺がニルヴァーナみたいな曲を作れるんだろうってことは実はずっと考えていたことで、それができないから“NAYUTANIZED“を作って、“avenger strikes back”を作ってっていうのを続けていたんですけど。ようやくニルヴァーナからの影響を、胸を張れるレベルで形にできて。やっとここまでこれたんだなっていう感じは本当にしているんですよね。 ――アンケートの中で、第6位の“Homosapiens Experience”は「朝に限らず何かをスタートするときに聴くととても気分があがるし元気がでるから」という理由で投票された方がいらっしゃいました 木幡 「それは的を得ていて、この曲はどんな時間帯に聴いてもアッパーに聴こえる曲にしたかったんですよ。曲のテンポとかって人間のバイオリズムと切り離せなくて、体調によって感じ方が変わるんですよ。だけど“Homosapiens Experience“はどの時間、どの体調で聴いても早いと感じると思います。4位の“NAYUTANIZED”は楽譜に起こしたらすごい綺麗だと思うんですよね。楽譜に隙間が無くて、どっかしらに音が入っているみたいな。それが余裕の無さであり、だから今聴くと若いなっていう。 “I Was Born To Dance With You”も同じノリで休むところがない。この2曲とか、多分その道の専門家が言えば、これ同じ曲だねってなると思う。大人になった“NAYUTANIZED”が“I Was Born To Dance With You“っていうのはちょっとあるな。“Homosapiens Experience”“I Was Born To Dance With You”“NAYUTANIZED“の3曲は本当に同じタイプの曲で“I Was Born To Dance With You”を作った時、俺ハウス版「Homosapiens Experience」作りたいんだよねって言って。“Homosapiens Experience”はサビとバースの境が無いし、“I Was Born To Dance With You“もフックから入っていて、Aメロ、Bメロ、サビじゃない構造とか、瞬間的に沸点に行く感じというのは同じ。そして“Citizen Song“が3位に入っているのは皆さんお目が高い。 タイラ これは良いことですよ。だって“Citizen Song”ってやりたいことやったぜっていう曲でしょ? 木幡 真面目にやっていると思われたらちょっと困っちゃうんだけど、“Citizen Song“ってレッドツェッペリンの“Immigrant Song”、邦題「移民の歌」と同じリフを弾いていて。そこからの“Citizen Song“=「市民の歌」っていう。 タイラ 「移民の歌」と「市民の歌」とかけたってことでしょ? 木幡 そうそう。ヒップホップのサンプリングカルチャーをロックバンドでやるっていう。2位の“Sonic Fireworks“はアイデア満載だし、凄いと思うけど、まあちょっと歌詞とかは若かったというか、今思うともうちょっと深みのあるものを書けたかなって。“Yang2”もできたときは凄い好きだったけど。瞬間的に好きなものってあるじゃないですか。熱しやすく冷めやすいみたいな。 タイラ でもこの曲は凄くコマーシャルというか、バチッていう瞬発力が滅茶苦茶ある。 木幡 瞬発力は俺らずっと意識しているんですけど、それって結構ダンスミュージック的じゃないんですよね。パンク的というか、一瞬でモッシュさせるみたいな。
タイラ でもそれはやっぱりロックの良さでもあるよね。ニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”のリフが聴こえてきた時にうわーってなるみたいなことを、自分たちのやり方でどうするのかっていうのは、ロックバンドは多分みんな考えていると思う。 木幡 なんかそういうのと、ダンスミュージック的なサウンドメイクを同居させたかったっている感じはあるんですけどね。そこら辺が俺たちが中途半端な理由でもあり。まあでも“Yang2“もやっぱり、歌詞もそうだね……。 タイラ やめなさいよ(笑) 木幡 いやいや関係ない。俺の意見だから。歌詞って一番過去の自分と向き合わなければならない瞬間で、本当に昔の自分の髪型見ているみたいな。自分の昔の写真見て、うわーって思うじゃないですか。『Disc 4 The Seasons』の曲ってそういう時期なんですよ。
タイラ それはもうちょっと経たないと太郎君が認められないかもしれない。 木幡 確かに。今はちょうどこの時期と対極にあるし。まあでもハマる要素っていうのはあるだろうなって思う。

Text by 村上 黎

RELEASE INFORMATION

Pixels EP

2018.11.7 release ¥2,130 (TAX-OUT) 詳細はこちら

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アラン・ウォーカー インタビュー|21歳のEDMプロデューサーが考えるネット上のコミュニティと可能性

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アラン・ウォーカー

2015年にリリースした“Faded”が全英週間シングル・チャートや全米ホット・ダンス/エレクトロニック・チャートでトップ10入りを果たすと、以降も北欧のプロデューサーらしい美しいメロディや壮大なサウンドスケープを持った楽曲を多数リリース。3大EDMフェスでのパフォーマンスなども経験しながら、彼が「Walkers」と呼ぶ黒いマスクとフードを身につけたファンを各地に増殖させていくという、ユニークな活動を続けてきたイギリス生まれ、ノルウェー育ちの21歳のEDMプロデューサー、アラン・ウォーカー。彼が3年越しのデビュー・アルバム『Different World』を完成させた。

この作品は8曲目の“Interlude”を境に全編が大きく2つのセクションに分かれており、前半に最新曲を、後半にこれまでの人気曲を収録することで彼の3年間が表現されている。新木場スタジオコーストとZeppなんば大阪での公演が即日ソールドアウトとなり、急遽東京での深夜公演も追加されて盛況となった12月末の来日時に、デビュー・アルバムの制作風景を聞いた。

Interview:アラン・ウォーカー

アラン・ウォーカー

――“Faded”が話題になった2015年からデビュー・アルバム『Different World』の完成までに3年間かかりましたね。その中でどんな変化を感じていますか?

この3年間は自分にとってのすべてと言えるもので、アーティストとしても人としても、自分を発展させることができた期間だったと思う。3年間の間にアーティストとしての自分を確立していくことができたし、3年かかったからこそ、今回のアルバム『Different World』は過去の自分と、今の自分との両方が反映された作品になったんじゃないかな。

――あなたの場合、同じように黒いマスクやフードをつけてくれるファン=「Walkers」がアノニマス的に増殖していくのを経験した3年間だったとも言えそうです。

うん、このアイディアはもともと、「誰でもウォーカー・ファミリーになれるよ」という意味ではじめたものだったんだ。僕の音楽を聴いてくれる人たちも一緒になって、アラン・ウォーカーの軌跡を辿ってもらいたいと思った。最初は誰にも知られていなかったし、誰も参加していない状況だったものが、インターネットを通じてアノニマス的にどんどん広がっていく様子を体験できたのはとても嬉しいことだったよ。

アラン・ウォーカー

――おそらく、EDMシーンに多い「スーパースターDJ」的なものとは異なる発想ですよね。

スペイン語の言い回しで「Mi casa es su casa(=僕の家は君の家)」という言葉があるんだけど、それと同じで、僕の場合は「一緒に活動を広げていく」「色んな人を迎え入れたい」という気持ちが強いんだ。

――つまり、誰でも“アラン・ウォーカー”に参加できる、と。

そう。今の時代、僕は「自分が排除されている」と感じている人がすごく多いと思っていて。だから、「一緒に/共に」活動することって、僕にはすごく重要なことなんだ。色んな人がウォーカー・コミュニティの一員として、僕の音楽を共に楽しんでくれて、コミュニケーションを取れるような関係性でいたい。「Walkers」のコミュニティが広がっていくことには自分と同じ格好をしたミニオンがどんどん増えていくような感覚も少しあるけど、何よりも、僕の音楽に共感してくれるファミリーがどんどん増えていくような気持ちなんだ。

――すごくインターネット/クラウド的な感覚ですよね。あなたのキャリア自体も、最初はネット上でアノニマス的に複数人が楽曲にかかわる作業をもとにはじまったものでした。

やっぱり、それが僕のルーツだから、ウォーカー・コミュニティにも似たようなストーリーが生まれたんだと思う。音楽をはじめたとき、インターネット上で色々な人たちが僕を迎え入れてくれた。だからこそ、僕も音楽を通して色々な人を迎え入れたいと思っているんだ。

――今回のアルバム『Different World』では、前半に新曲が、後半にこれまでの代表曲がまとめられています。この全体の構成は、どんな風に考えていったんですか?

それは単純な話で、新しくできた新曲を一番に聴いてもらいたかったんだよ。古い曲をいくつも聴いてようやく新曲に辿り着くのではなくて、僕の今の興味が反映された新しい曲を早く聴いてほしかった。アルバムの全体の方向性については、作りはじめた時点ではまったくノー・アイディアだったよ(笑)。僕はアルバム制作と並行して3~6か月おきに新曲を作り続けていたんだけど、発表したもの以外にも、いい曲になる可能性を秘めているけれども「まだ出来ていないな」と感じる曲の断片がたくさんあった。その中で「これは世に出してもいい」と感じられる曲のストックが徐々にたまっていって、アルバムとしてまとめられるぐらいの曲数が揃ったのが、ようやく今だった、ということなんだと思う。とはいえ、今の時代、音楽はストリーミングベースに変わっているわけだし、アルバムを作っても聴いてもらえるかどうか正直不安だった。でも、実際にリリースしてみたら、多くのウォーカー・ファミリーが作品を手にしてくれたから、出してすごくよかったと思っているところなんだ。

――制作中、特に印象的だった楽曲を挙げるなら?

スティーヴ・アオキと一緒に作った“Lonely(feat. Isák & Omar Noir)”かな。この曲はツアーで上海から北京に向かう4~5時間の電車の旅の間に最初のデモができた曲だった。その頃からユニークでクールな雰囲気の曲だったけど、2年後にようやく完成して今回日の目を見ることになった。

アラン・ウォーカー

――どんなイメージから曲が生まれていったのか詳しく教えてもらえますか?

この曲を作ったときは……うーん、正直自分ではよく分かっていないんだけど(笑)。新しいウォーカー・ミュージックを作って、自分の音楽を次のレベルに持っていきたい、という気持ちだったと思う。これまでの曲と似たようなメロディや曲調、スタイルを繰り返すのではなくて、まだ試したことのない雰囲気のものにしたかった。それでゲーム音楽っぽい要素を加えていったんだ。スティーブには、プロダクションの面で色んなアイディアを加えてもらった。彼は才能溢れるクリエイター/プロデューサーで、EDMシーンでは伝説級の人でもある。彼と一緒に作業する中で、この曲が何度も話題に持ち上がってきたんだ。特に彼はこの曲のメロディを気に入ってくれていて、曲の構成について手助けをしてくれたよ。

――タイトル曲の“Different World(feat. K-391, Sofia Carson & CORSAK)”はどうでしょう?

この曲は僕とK-391(アラン・ウォーカーが影響を受け、過去曲でも共作しているノルウェー拠点のアーティスト)と一緒に作った曲だけど、もともとは彼がYouTubeで曲を作っていく過程を映した動画があって、それがいいなと思っていたんだ。とても楽しそうに、制作過程自体を楽しむような雰囲気だった。そこから、彼と共作するようになって……。今回は、彼と作業しているところに中国からCORSAKも参加してくれて、彼とも一緒に曲を作って、歌詞を書いて、さらにソフィア・カーソンが加わってくれた。この曲は、地球の環境問題、汚染問題についての曲。今人々は、地球が耐えられる以上の資源を日々消費してしまっているし、地球を治す活動もある一方で、それよりも多くの場面で、この星を壊してしまっている。そういう人々の意識をもっと高めたいと思ったんだ。人として重要なことだから、声を大にして、小さなものから大きなところへと広げていければいいなと思った。コミュニティの力を使って「違う世界(=Different World)」を作っていきたい、と思ったんだ。

――それがアルバム・タイトルにもなっているんですね。自分自身が3年間の間に、小さなものが大きなものへと変わっていく経験をしたからこそかもしれません。

そうだね。この3年間は、世界中の色々な場所に行くことができて、コーチェラのような大型フェスにも出ることができて、日本にも来ることができた。日本は美しい国だよね。今回の来日では初めて大阪にも行ったよ。夜のネオン街もすごく好きだ。日本の「Walkers」にも会えたし、スーパーハッピーだよ。そもそも、僕は活動をはじめた当初は、自分が世界中を回って音楽を届けられる日が来るとは思ってもいなかった。でも、この3年間で音楽はユニバーサルな言語だということ、言語の壁を越えて理解できるものだということを感じた。「音楽を通して世界をひとつにできるんじゃないか?」って。実際、大勢の人がひとつになる姿は素晴らしいものだと思うんだ。インターネットがあれば、何だって可能なんだよ。

アラン・ウォーカー
アラン・ウォーカー

RELEASE INFORMATION ALAN WALKER | アラン・ウォーカー

『Different World | ディファレント・ワールド』

●配信 発売中(2018年12月14日) 全15曲 https://SonyMusicJapan.lnk.to/AW_DWi 

●国内盤CD 発売中(2018年12月26日) 全18曲(ボーナス・トラック3曲) 初回生産分のみロゴ・ステッカー封入 解説・歌詞対訳付 SICP-5937 / 2,200+税

●輸入盤CD 発売中(2018年12月21日) 全15曲

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海外オフィシャル・サイト

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SUMIRE×今野里絵インタビュー|オムニバス作品『LAPSE』で表現する“未来への抗い方”とは

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SUMIRE×今野里絵

現在公開中の映画『青の帰り道』や1月26日(土)から全国公開となる『デイアンドナイト』や、SALU“Good Vibes Only feat. JP THE WAVY,EXILE SHOKICHI”や、向井太一“Siren(Pro. tofubeats)”のミュージックビデオなど話題作が続いているクリエイティブチーム〈BABEL LABELバベルレーベル)〉。注目を集める彼らがオリジナル映画製作プロジェクト「BABEL FILM」を始動させ、未来をテーマにした3篇のオムニバス作品『LAPSEラプス)』を完成させた。

MOBILE CREATIVE AWARDグランプリを受賞した『Converse 110th Anniversary SHOES OF THE DEAD』のWEB CMなどを手がける志真健太郎監督は、『SIN』と題した作品で主演に栁俊太郎を起用。幼少期に政府の教育機関のシミュレーションで見た暗い未来が現実化し、苦しむ男を描く。

テレビドラマ『日本ボロ宿紀行』などを手がけるアベラヒデノブ監督が主演も務める『失敗人間ヒトシジュニア』は、人間とクローンが共生する未来を舞台に、自分がクローン人間の失敗作だと聞かされ、恋愛も破綻し絶望の淵に立たされた青年を主人公にした物語だ。彼と同じ境遇にある初美(ハッピー)を中村ゆりかが瑞々しく演じている。

Awich 『紙飛行機』 のミュージックビデオなども手がける、〈HAVIT ART STUDIO(ハビットアートスタジオ)〉のメンバー今野里絵監督の『リンデン・バウム・ダンス』は、人間が人工知能に医療を委ねている未来を舞台に、主人公の大学生ヨウと寝たきりの祖母の関係や、夢の世界を軸にストーリーが進んでいく。セリフの少ない感覚的な役柄のヨウをSUMIREが演じているのも見どころの一つ。

未来を描くと言っても過去のSF映画が設定した時代をすでに迎えている今。若手監督とキャストによる新しい「未来を想像する映画」が、今回の「LAPSE=時の経過」と題されたオムニバスの軸にある。3作品のキャッチフレーズは「未来に抗え」。

今回は『リンデン・バウム・ダンス』で主演したSUMIREと、初の映画監督・脚本作品となる今野里絵にインタビューを実施。二人ならではの感性が生きる本作の内容とともに、彼らにとっての未来について聞いた。

Interview:『リンデン・バウム・ダンス』 今野里絵×SUMIRE

SUMIRE×今野里絵

——今野監督はこれまでも“HAVIT ART STUDIO”でミュージックビデオ制作やグラフィックデザインもされていますが、〈BABEL LABEL〉に加入した理由を聞かせていただけますか?

今野里絵(以下、今野) もう3年ぐらい前、私たちがミュージックビデオなどをアップロードしていたら、BABEL LABELの代表で、「LAPSE」プロデューサーの山田久人さんから、Facebookでメッセージをいただいたのがきっかけでした。それまでは横の繋がりがなく、趣味の延長みたいな感じでやってたので、そんな時、メッセージをいただいて、レーベルの存在を教えてもらって、仲良くなっていった感じです。

——もともとは映像表現をやりたかったんですか?

今野 映像だけじゃなくて、グラフィックや写真撮ったりするのが好きで。周りの友達を撮るところから始まっていて、表現全般が好きかも知れないです。

——SUMIREさんは今野監督の作品はご存知でしたか?

SUMIRE なんとなくは知っていて、今回、一緒に映像を作り上げていくということで、ミュージックビデオを見て、こういうセンスがあって撮ってるんだなということを知って。さらに今回の映画を通してこの監督だからこの映像の雰囲気が出せるんだなと思ったり。撮影で髪をピンクにしてたんですけど、そういうのと撮りたい映像のやり方が合ってるのかなと思ったり。

SUMIRE×今野里絵

——完成した作品を観てどんな印象を持ちましたか?

SUMIRE 『LAPSE』の3本を続けて観たんですけど、私が出ている『リンデン・バウム・ダンス』が一番、アート色が強いというか。監督が言った「表現するのが好きだから、作っていきたい」っていう意味があの3本の中だと一番表現されてるのかなと思いました。

——今回の『LAPSE』のテーマである「未来」を監督はどう捉えましたか?

今野 最初に「未来」っていうキーワードだけをいただいてたんですけど、自分の実体験だったりとか、もともと思ってたことと、みんなでやろうって話してた「未来」ってテーマをどうくくりつけたらいいか最初悩んで。自分にはもともと未来の話っていう感覚がなかったので、未来の要素を足して。人間がやってることを機械に置き換えたりすることで、何か新しく見えてくることもある気がして、それはすごい面白いなと思いました。

SUMIRE×今野里絵

——20年後の2038年という時代設定や人工知能による医療行為が要素になっているのは?

今野 あんまり遠い未来のSFみたいなことを考えるのは得意じゃないというか、遠すぎるとリアリティがなくなっちゃうなと思ってたので、遠くない未来にしたっていうのはありますね。

——映画は昔から近未来を描いた作品も多いですが、そこからの影響はありますか?

SUMIRE SFっぽいものは昔も今も作られてはきてるけど、映像の技術だったり、撮り方や機械の変化もあるこの作品は同じSFの括りでも、今らしい映像というか、絵が綺麗だとも思います。やはり昔のものは古き良き時代の撮り方だと思っちゃう。

今野 60年代とか70年代って、未来は超楽しみで希望みたいなのがあったと思うんですけど、それはたぶん空想の世界というか、夢の世界であり得ないことというか。今の人が未来について考えたときに、希望みたいなものってあります? 

SUMIRE 自分のことはわかんないし……う〜ん、でもケータイとか発達してるなと思うし。でも読めないんですよね。5年前の自分が今こうなるとかも分かってないだろうし、予測不能ですね(笑)。

——確かに。映像の質感はむしろ淡い感じで、未来とか過去では括れないイメージがありました。あの質感にしたのは?

今野 テーマが明るいものじゃないので、そのぶん映像は綺麗にしたいなというのはあって。ストーリーも暗いし、映像も暗いってなっちゃうとつらいので。

——近未来の物語ですけど、ヨーロッパ映画的な質感もあって。

今野 SUMIREちゃんだからそういう風に見えるっていうのは、結構あるんじゃないかと。そういう空気感があるので。

——アップでの目の表情の演技も多いですね。

今野 言葉というのがもともと得意じゃないというか、逆に言葉が溢れ出しちゃってめんどくさい! ってなって、映像表現とか絵を描いたりするのが好きなので、今回、セリフはあんまりなしで、行動とか音楽でセリフの代わりに表現しようっていうのがありました。多く喋ることはあんまりなかったけど、その人が出すオーラだったり、表情、顔であったりとか、音楽、そういういろんな部分でこの映画は人の感情を伝えたりするのかなと思います。

——主人公ヨウの行動をSUMIREさんはどう感じましたか?

SUMIRE 最初、台本読んで、ヨウと自分を照らし合わせたときにちょっとキャラクター的に似てる部分があるかなって思ったり。すごい単純なところで自分もおばあちゃん子なので、その人に対する気持ちが主に理解できた部分かも。あのおばあちゃんがいるからヨウもいるとか、そういうところです。

SUMIRE×今野里絵

——明快なストーリーではないこの作品を演じるときに大事にしたことはありますか?

SUMIRE 演技してる自分と関係なく、もともと自分が持ってる要素だったり性格、自分が持ってる目だったり顔だったり、そういうのも残しつつ演技していきたいなというか、素の部分で見せるというのは思いました。

今野 これまではミュージックビデオが多かったので、演技をつけるのは初めての部分もあって。SUMIREちゃんと初めて会ったとき、そのままがいいというか、ストーリーに過剰な演出がある訳ではないので、普段をこっそり撮ってた風なぐらいの喋り方だったりとか、雰囲気がいいんじゃないかなと思って。SUMIREちゃんなりのニュアンスでやっていただいたので、それはすごい良かったと思います。

——「未来に抗え」というテーマを持ったこの作品群。では、監督や出演者はどう未来に抗うのか? もしくは未来に対するスタンスは?

SUMIRE 何が起こるか分からない時代に、前よりもなりつつあって。でも、そのときそのとき楽しんでれば、未来もよくなるのかな。解決策も決まってるわけじゃないし。みんながやりたいことをできてればいいな。

今野 恐怖みたいなものはみんなあるんじゃないですかね? クローンとか、アベラくんの話もそうだし、得体の知れない奴がやってきて、人間をいつか超えるんじゃないか? みたいな。そういう怖さみたいなものはうっすら感じてて、それが現実になるんじゃないか? ということをこの3作品で、ちょっとでも感じてもらえればいいんじゃないかなと思いますね。

SUMIRE×今野里絵
SUMIRE×今野里絵

果たして未来とは、受け入れるべき運命なのか、自ら切り開くものなのか。現実から少し離れた想像の世界=映画『LAPSE』のメッセージはそれに向き合ういいチャンスだ。

Text 石角友香/Photo 山本春花

BABEL LABEL が描く3篇の未来の物語 『LAPSE(ラプス)』 2019年2月16日よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開

映画『LAPSE ラプス』予告編

志真健太郎 監督・脚本 『SIN』 出演:栁俊太郎、内田慈、比嘉梨乃、 平岡亮、林田麻里、手塚とおる

アベラヒデノブ 監督・脚本 『失敗人間ヒトシジュニア』
 出演:アベラヒデノブ、中村ゆりか、清水くるみ、ねお、信江勇、根岸拓哉、深水元基

HAVIT ART STUDIO監督・脚本 『リンデン・バウム・ダンス』 
出演:SUMIRE、小川あん

 

主題歌:SALU『LIGHTS』

監督:志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO 撮影:石塚将巳/佐藤匡/大橋尚広 照明:水瀬貴寛 美術:遠藤信弥 録音:吉方淳二 音楽:岩本裕司/河合里美 助監督:滑川将人  衣装:安本侑史 ヘアメイク:白銀一太/細野裕之/中島彩花 

プロデューサー:山田久人、藤井道人 製作:BABEL LABEL 
配給:アークエンタテインメント

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ダンスミュージック都市アムステルダムの新星Nachtbraker、来日直前インタビュー

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Nachtbraker

今、ダンスミュージックの起点となる都市はどこか?ベルリンやロンドン、イビザと答える人もいるかもしれないが、世界でも有数のレコードショップが軒を連ね、毎年素晴らしいラインナップで開催される<Dekmantel Festival>や、ダンス・ミュージックの祭典ADEも開催されるオランダの首都アムステルダムは、1年を通じて話題に事欠かないシーンの中心都市の一つだ。

 

ここ日本でも著名なDetroit Swindleのレーベル〈Heist〉や、ドイツの名門レーベル〈Dirt Crew Recordings〉からのリリースで注目を集め、自身のレーベル〈Quartet Series〉から待望のフルアルバム『When You Find a Stranger in the Alps』をリリースしたNachtbrakerは、10年以上に渡る彼のキャリアの長さとは裏腹にまだ27歳。

最新アルバムは実に幅広いトラックで構成され、彼のプレイにも通じる自由な世界観が凝縮されている。アムステルダム発、モダンハウスシーンの新星Nachtbrakerに、来日直前のインタビューを行った。

Interview:Nachtbraker

Nachtbraker

ーーはじめに自己紹介をお願いします。

こんにちは、Maurits VerwoerdことNachtbraker。27歳でオランダアムステルダムに住んでます。ここ10年くらいこの名義で曲を作り続けてるかな? それから〈Quartet Series〉というレーベルを3年間前にスタートして、それと<ZeeZout>というフェスティバル、Rins FMやRed Light Radioといったラジオのレジデントもやっているよ。

ーーあなたのプロジェクトNachtbrakerとレーベル〈Quartet Series〉について紹介してもらえますか? アーティストネームの由来も教えてください。

Nachtbrakerという名義で10年。最初のギグはそれこそ友達の家で始まったのかな。友達からフライヤーに何かアーティストネームを載せろよ、と言われてこの名前を仲間が付けたんだ。その時は夜の11時から朝の7時まで曲を作ってたから、オランダ語で「夜更かし/フクロウ」って意味の「Nachtbraker」がそのまま名前として誕生したってことだね。

〈Quartet Series〉は元々自分の中にレコードをみんなに収集してもらえるような仕掛けをアイデアとしてもっていたんだ。子供の時に「quartets」っていうカードゲームにハマってて、自分のレーベルもそのカードみたいにできないかと思ったんだ。4枚の似てる絵を集めて「Quartet(カルテット)」を完成させる。これこそレーベルのコンセプトだ!ってね。だからアートワークがとっても重要な柱だし、それに関しては本当に力を入れたよ。自分が信頼するヴィジュアルアーティスト達と一緒に仕事をしたね。

※レーベルのジャケットを手がけたのは以下のヴィジュアルアーティスト。Marcoはレーベルロゴと初期のジャケット、Elsemarijnはその後のジャケット、Lunaは今回のアルバムアートワークと最新のプレスフォトを手がけた。

ElsemarijnMarcoLuna

ーー今回はフルアルバムのリリース後のツアーですが、アルバムの内容についていくつか質問させてください。今回のアルバムはどのような環境で製作されましたか?

そうだね。僕はあまりたくさんの機材を使う方じゃないかな。時々友人でもあり、スタジオが隣同士のDetroit SwindleからKorg Monopolyをたまに借りることがあるね。それからMC303 Grooveboxも使ったな、とてもいい音がでるんだよ。でもほとんどの作業はソフトの中で完結しているよ。FL Studioをメインに使いながらFruity Loopsを制作の最初から活用している。これは10年前に制作をスタートしてからずっと変わってないし、一番クリエイティブを発揮できる自分の習慣みたいなもんだよね。さらにWavesやArturiaみたいなプラグインも使ってるよ。

サンプリングはとにかく沢山やるな。古いファンクやソウル、ジャズ、アンビエント、ヒップホップはもちろん、フィールドレコーディングもよくやるね。それこそ、アルバムの最初の曲はモロッコの近くのランサローテ島っていう島に住んでいる友達の家でDream Sequenceを使って作ったんだ。クラップ(拍手)の部分は部屋の中でいい感じのエコーがかかるような場所で何度も叩いてレイヤーしていったんだ。かすかに聞こえる電車の音とかは地元アムステルダムのトラム(路面電車)をレコーディングしたし、それこそトラック「Aliens」はYouTubeからUFOを目撃してパニックになってる人たちの声をサンプルしたし、トラック「lol」もYouTubeから取ったね。

「lol」は引き笑いみたいな声をYouTubeの断片から見つけてそれを使ったんだ。17か18歳の頃に実家の屋根裏で友達とやってたバカ笑いみたいなのをこの曲で表現したかったんだ。

ーーアルバムに収録されたトラックは実に幅広いBPMやテイストで構成されていて、フロア映えは勿論、リスニングでも楽しめるように構成されているように感じます。このアルバムのコンセプトについて話してもらえますか?

それはシンプルにアルバムがどうなったかってことだよね。2年半前からアルバムのプロデュースに取りかか始めたけど、明確なコンセプトやアイデアがあったわけじゃなかった。ただ自分は窮屈と感じることなく音楽を作りたいと思ってたからね。

だから自分が現場でたまにプレイしたいなと思ってた曲を作って、それをプレイリストに入れて使っては捨ててたけど、満足できるプレイリストができるまで立ち止まることは無かったんだ。ほとんどの楽曲はまっさらな状態からスタートして、単純に曲から曲へ移行するという感じ。時には曲がドラム&ベースで終わるのもあれば、ヒップホップだったり、ハウスやテクノのクラブトラックだったりするしね。

Nachtbraker

ーー個人的にはB1-Randy、C-2 Just Doing My Thang、D-1Aliensがお気に入りなのですが、アルバムの中で特に気に入っているトラックはありますか?

ありがとう。正直言って全部の楽曲が好きだからね(笑)。自分にとってベストじゃない曲はアルバムに入れないよ。強いて言えば「Driving Me Lazy」「 Horsepony」そして「Just Doing my Thang」は作れたこと自体に誇りを持ってるし、プレイするのは「Flambo」と「Randy」が最高だね。

ーーあなたのリリースするトラックには個性的なパーカッションやサンプリングが、予想外のタイミングで散りばめられているように感じます。あなたがこうしたトラックを製作するようになった音楽的なルーツや、影響を受けたアーティストについて教えてください。

音楽の勉強は全くしいてないんだ。ちょっとのコードやピアノは弾けるけど、それだけ。でも音楽をよく感じて、曲を聴く時に、自分にこれが使えるぞっていう音の断片をいつも見つけることができる。だからサンプルをするし、とにかく沢山の音楽を聴いて、正しい気持ちで、正しい音の断片をサンプルするだけさ。

ーー今後のリリースやツアーの予定について教えてください。

今始まっているアジア/オーストラリアのツアーが本当に楽しんでるよ。(ツアーフライヤーを見てくれ!)日本や韓国そしてオーストラリアの雰囲気は最高だし、戻れて本当に嬉しいよ。遠くの世界に自分の音楽が届いているのが本当に嬉しいよ。

ーー2015年の初来日から今回が4度目の来日ですが、日本でのお気に入りの場所はありますか?また好きな日本の食べ物やお酒など、あれば教えてください。

もちろん。何度もここに訪れていつも歓迎されてる気持ちだよ。世界中で最も気に入っている場所だ。東京も好きだし、2017年に初めてプレイした大阪も訪れることができた。クールな街で現地の人も本当に素晴らしいよ。次に来る機会があれば東京や大阪に限らず日本の色々なところを訪れたい。もっともっと発見できる事があるはずだからね。田舎の方なんかも間違いなく素晴らしいだろうね。好きな食べ物は、即答で味噌ラーメン! 毎日食べれるよ。

ーー最後にギグを楽しみにしてくれているあなたのファンにメッセージをお願いします!

またみんなの前でプレイできるのが待ち遠しいよ。ここは僕にとって最も楽しくて、世界中で一番素晴らしい観客がいて、本当にやりがいがある。何年もサポートしてくれたことに本当に感謝したいし、何度も戻って来ることを約束するよ。ありがとう!

Nachtbraker

Nachtbraker

2019.01.26(土) OPEN 23:00 DOOR ¥3,500|FB discount ¥3,000ADV ¥2,500

ROOM1 Nachtbraker Midori Aoyama(Eureka!) Frankie $(N.O.S.) Atsu(B-LIB)

ROOM2 T.P shunhor Mari Kim Ueno(Charterhouse Records) Shohei Magaino Jasmine(Mnchr-m)

ATTENTION You must be 20 or over with Photo ID to enter. Also,sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。 ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。 尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。

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星野源『POP VIRUS』収録曲解説|日本中で感染者続出の「POP菌」その対処法

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元来、解毒剤やワクチンは、接種等を通じ、まずあえてその菌(Virus)を自らの中に取り込み、それに抵抗しうる免疫を体内で育み、免疫力や抵抗力を作り出すことから始める。そんな中、星野源が昨年12月19日に発売した3年ぶりの5枚目となったニューアルバム『POP VIRUS』は、その菌が聴いた者たちの中に侵入し、今でも多くの感染者を生み出している。しかも、その感染力は強烈だ。 この『POP VIRUS』。今年に入ってもその感染力は一向に衰える気配を見せず、その猛威は増すばかり。オリコンやビルボードといった主要チャートで4週連続1位を記録するなど、音楽ニュースを中心にその猛威を多く目にする。

最新作「POP VIRUS」の特異性と「星野源」というアーティストの本質

発売を一か月過ぎても未だその実売ペースに衰えを魅せない星野源のニューアルバム『POP VIRUS』。それは、2018年を振り返るタイミングでの彼の露出や当人の取り上げられ方も手伝い、発売~昨年末はファンを中心に、年末から年明けには作品の評価もあいまって、幅広い層が同作品に触手を伸ばしていると聞く。 そもそも星野源の人気の裾野は広く、日本国中の老若男女を巻き込んだものだ。NHK紅白歌合戦では「おげんさんといっしょ」での出演に際する「SUN」の歌唱と、後半に於ける自身での「アイデア」でのダブル出演。また、その日の歌手別視聴率では全出演者中3位の43.5%(後半平均視聴率41.5% 。共に関東圏ビデオリサーチ調べ)を記録。加え年始では、歌手方面以外の役者面や人間面がクローズアップされる場面も多々。CM出演や各種露出、NHKの新大河ドラマ「いだてん」での役者出演等々、国民的人気や幅の広さ、支持のされ方を伺わせた。 そんな『POP VIRUS』なのだが、彼のパブリックイメージや、TBS系火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』での“恋”、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の“アイデア”、日本テレビ系水曜ドラマ『過保護のカホコ』の“Family Song”といった主題歌群。花王ビオレuボディウォッシュCMソングとしても周知の“肌”、スカパー!『リオ2016パラリンピック』テーマ曲“Continues”等々、昨今の彼の放ってきたシングル曲やヒット曲、タイアップ曲で構成された全編を想像し、プレイするとやや意外な面に出くわす。 星野源 - Family Song【MV & Trailer】/ Gen Hoshino - Family Song
それは上述の収録代表曲たちから想起させる、華やいだ明るさを有した、老若男女が楽しめる、ポップでキャッチーでエンターテインな楽曲だけでなく、プログラミングや現行のエッジーなな音楽的トレンドが多く用いられていた点だ。しかもそれらはどれもあえて音数を少なくしている感も伺える。これらは、「幅広く・分かりやすく」よりも、私信やパーソナル的な、より傍らで伝えられるかのように私の中では響いた。これこそが星野源が連綿と紡いできた本質。個と個のパーソナル、そして、どこか彼の歌にまとわりついている寂寞とした本質さが今作でも変わらず生きづいており、サウンド面に於いても元々リスナー体質で古今東西かなり幅広い音楽を聴き、それを自作でも落とし込んできた彼らしさとも結びつけることが出来、こちらも嬉しかった。 これまで以上にソウルフルさに重きが置かれた感のある作品。とは言え、それは別に表立っての高らかな熱唱とはまた違い、スウェイな部分や歌にグルーヴを感じさせる類い。そんな今作を紐解くと、MPCプレーヤーとしてのSTUTSの参加の影響に行き着く。MPCをリアルタイムでパットを打つことで、音質はマシナリーながら人間的なグルーヴ感を生み出していることは“アイデア”のMVからも立証済み。 星野源 - アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino - IDEA
また、ヴィンテージのアナログシンセ類も多用され、それらはゴージャスに響く楽曲群に対抗するかのようにチープ感を擁しながらも、深みのある音となり、対象さやメリハリ、コントラストづけに一役買っている。長岡亮介(G.)、ハマ・オカモト(B.)、河村"カースケ"智康(Dr.)、櫻田泰啓(key)、石橋英子(Key&Cho.他)といったおなじみの豪華サポートメンバーも全面参加。適材適所な存在感を醸し出している。

『POP VIRUS』全収録曲を一挙紹介

以下は各曲における“ポップ・ウイルス”の採取報告だ。 まずはウォームなギターと星野のソウルフルな歌声による出だしから、長岡亮介、石橋英子とのコーラスとSTUTSの作り出すスネア処理にアクセントをつけたリズムに、傍らで永遠を伝えるようにしっとりと歌う星野の歌声と、徐々に生命力を帯びていくバンドサウンドとストリングスも印象的。ここから愛が花を咲かせ、根を張り、種となり、また芽吹き、花をさかせていくアルバムジャケットとのリンク性も伺える“Pop Virus”から今作は幕を開ける。うって変わりパーッと華やかな空気に。 星野源 - Pop Virus【MV】/ Gen Hoshino - Pop Virus
老若男女を一緒に踊り歌わせた大ヒット曲“恋”が続いて登場。アルバムミックスで聴くとその印象がまた違うのが新鮮だ。 星野源 - 恋【MV & Trailer】/ Gen Hoshino - Koi
また、モータウンポップスライクなブラッキーでファンキーながらもポップさやバカラックテイストも織り交ぜた、ゆっくりと身体をスウェイさせたくなる“Get a Feel”。スネアのアクセントと躍動感のあるベースラインとウォームで左右にパンされた2種のファンキーなギターと泳ぎ回るストリングスも耳を惹く、肌を合わせていれば言葉は要らないかのような情景が思い浮かぶ“肌”。 星野源 –「肌」【Studio Live from “POP VIRUS”】 / Gen Hoshino - Hada
そして、グリッチポップ的なトラックの上、音数少ない隙間の多い楽器類、いつまでもそばに居て欲しいとの願いを込め、聴き手に各人の愛しい人を想い起させる“Pair Dancer”。チェロを始め厳かなストリングスと厳格なピアノとが神妙さを醸し出し、サビではそこから開放された明るさを得、最後には光へと包まれるかのような、どの水の流れも全ては大海へと向かい出会うことを信じさせてくれる“Present”が次々と現れる。 対して中盤では音数が少ないながらも存在感のある曲たちが耳を惹いた。かなり隙間や余白が多く、コーラスの山下達郎も交え、山下特有のドゥワップ要素やハーモニーも耳を惹く『最後の一葉』の一場面を思い浮かばせる“Dead Leaf”。アコギによる弾き弾き語り風のギターと打ち込み、途中のチューニングもご愛敬な、凄く間近で歌われているように響く、自身の子供の頃を想い起させ、今もあまり変わっていない様に気づかさせる“KIDS”が各々独特の輝きを魅せる。 折り返し地点では、生命力や躍動溢れる曲が響いた。命は続く、日々は続く、素晴らしい光景を眼前に広げてくれ、豪華なゲストコーラス隊とゴスペルを彷彿とさせる生命力と活力、そしてバイタリティを与えてくれる、会場を交えてのハミングする光景も思い浮かぶ“Continues”。また、ブロークンビーツの疾走感と躍動感に乗せ、走り出してくかのような気持ちが歌とサウンドで表された、サビで出会う解放感と、それでも行くんだ感がたまらない“サピエンス”。再びパーッと、彼独特のエキゾチックさと、現代風のウェーヴィな要素もキチンと交えたサウンドと共に、どこまでも行けそうな気がする、大ヒット曲“アイデア”が続いた。 後半は願いや祈りを感じる曲が並んだ。日常感や情景感、ほのかな幸せを広げるように、日々の営みへのささやかな祈りを思わせた“Family Song”。アーバンでアダルティなサウンドの中、星野のウォームなファルセットも印象的。空虚を歌う、この“Nothing”からもどこか祈りの本質が伺えた。そして、ラストは大団円とばかりに、明るくポップにエンタテインメントにとTo Be Continued感たっぷりに“Hello Song”が今作を締めた。 この2月2日からは<星野 源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』>とタイトルされた全8公演にも及ぶ全国5大ドームツアーも控えている星野。今年に入っても、このニューアルバムやツアーの続報、役者やその他面白い動きや話題を交え、数々の彼の話題を随時、各所で耳にすることだろう。そんな中、この『POP VIRUS』は、これからも猛威をふるい、多くの人に感染していくに違いない。しかし残念ながら、まだ現在のポップス史上では、このウイルスに対抗するワクチンや処方箋は開発されてはいない。ならば、逆に自ら積極的に取り入れ、自身を抗体化させるのが最適というもの。但し、この『POP VIRUS』、中毒性がかなり強いので、用法・用量を守り、その摂取と自己管理には充分にご注意あれ。

RELEASE INFORMATION

『POP VIRUS』

星野源 VICL-65085 ビクターエンタテイメント 初回限定盤A(CD+Blu-ray+特製ブックレット)VIZL-1490 ¥5,000(+tax) 初回限定盤B(CD+DVD+特製ブックレット)VIZL-1491 ¥4,800(+tax) 通常盤 初回限定仕様(CD+特製ブックレット)VIZL-1492 ¥3,100(+tax) 通常盤(CD)VICL-65085 ¥3,000(+tax)各種アフィリエイト 詳細はこちら

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アベラヒデノブ監督とねお&きいたが映画『LAPSE』から紐解く、SNS世代の未来について

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LAPSE

映像ディレクター集団「BABEL LABEL」のオリジナル映画プロジェクト「BABEL FILM」の第1作目となるオムニバス映画『LAPSE(ラプス)』が2月16日より公開される。

近未来を舞台に異なるテイストの3作品からなる『LAPSE』の中から、今回はクローン人間の失敗作であることに絶望する主人公と、その後の行動を描いた『失敗人間ヒトシジュニア』の主演も務めるアベラヒデノブ監督、そしてクローン製造会社のマスコットキャラクターを演じるねお、クローンを演じるきいたの3人で対談を実施。

ねおはYouTuber、そしてTikTokで動画を配信する現役高校生クリエーターで、昨年は雑誌「Popteen」専属モデルや、WEBドラマ『恋のはじまりは放課後のチャイムから』で、より認知度をアップ。きいたはインスタグラムに現役高校生の日常をアップしたところ人気急上昇。現在フォロワー9万人以上を誇り、芸能界入り。昨年はAbemaTVの恋愛リアリティショー『太陽とオオカミくんには騙されない』に出演した。

まさに今の時代の情報発信を行うティーンの二人は、どんな未来を作りたいのか、そして未来のために何ができるのか? を映画『失敗人間ヒトシジュニア』とSNSでの発信を軸に考えてもらった。

Interview:『失敗人間 ヒトシジュニア』 アベラヒデノブ×ねお×きいた

LAPSE

――アベラさんは『失敗人間ヒトシジュニア』をどういう未来を想像しながら作られたんでしょうか。

アベラヒデノブ(以下、アベラ) まず、子供の頃から見てた「ドラえもん」のような「なんでも可能になってそうな未来」と、少し先の未来で現実に起こりそうなことを題材にしていこうというのはありました。現実の中にすでにクローンが可能になっていてお猿さんのクローンとか仕上がってる。で、都市伝説かリアルかわかんないですけど、人間のクローンも技術的に可能で、この世の中に存在してるんじゃないか?と言われていて。

きいた この世界に?

アベラ 偉人の方がクローンになってて、目が醒めるのを待ってる可能性もある。そんなこともあるって話を風の噂やネットの記事で見てて、今回、クローンを取り上げたんですね。かといって普通のクローンをやってもしょうがないので、僕自身のルックスに対するコンプレックスとミックスして、「失敗したクローン」「ミスってしまったクローン」、しかもクローンであることを隠されてて、「お前はクローンなんだよ」って言われた瞬間の恐怖みたいなものも取り入れて、今回の作品を考えました。

LAPSE

――ねおさんときいたさんは今回この作品に出演されて、そういう未来をどう感じましたか?

きいた 発展というのはすごくいいことだと思うんですけど、「クローンだから」ってすぐに殺されちゃったりするのはあんまりいい印象ではないので、発展に伴って、考え方をいい方向に持っていけば、もっといい世界が作れるんじゃないかな?と思うんですけど。

――いろんな科学技術を?

きいた いいことも悪いこともいっぱいあるので。いいことだけに使いたいですね。

――この作品の未来の設定は、すでにクローンがいて、しかも失敗したクローンと判断されると国によって回収されて破棄されちゃうわけで。

ねお ホントにそういうのが始まってくるといいこともあったり悪いこともあったりなので、自分ができることがあったら少しでも協力して、クローン人間も含め良い時代を作れたらなと思います。でも、クローン人間がいることによっていつもと違う日常ができたりとかってあるのでいいのかなとも思います。

――例えば?

ねお 自分とちょっと違うクローン人間が作れたとしたら、自分に足りないところをクローン人間にやっていただきたいなと思います(笑)。

――ポジティヴに考えると自分は一つって決めなくてもいい?

アベラ 今の自分と全く同じ自分がもう一人現れちゃうと困るし気持ち悪いんですけど(苦笑)。自分の欠点を遺伝子操作で補った完璧なクローンを作れるよ、っていうのがこの映画の世界観ではあるんです。

――題材としてディストピアというか、あまりポジティヴな未来ではないじゃないですか。この物語自体をどう感じましたか?

ねお 難しい話だけど、色々考えさせられる映画だなと思って。(発展の過程で)何かを変えたら映画の中で起こったようにはならなかったかもしれないなと思ったので、やっぱり考えて行動することも大事なのかなと。自分もちゃんと考えて行動するようになったので、すごく考えさせられる映画だなと思いました。

――何を間違えたら人間はクローンを作ってしまうのか、もしくは作って人間扱いするのかしないのか、その境目ってなんなんでしょうね?

きいた 一つの命っていうものをちゃんと大事にするっていうことですね。便利っていう気持ちでクローンを作ったらいけない気がする。

――確かに。ねおさんときいたさんは今、SNS上でフォロワーもたくさんいて、今の時代のインフルエンサーなわけですけど、お二人はどうやって情報収集をして発信していますか?

ねお とにかくSNS見ることが好きなので、空き時間ずっと携帯電話を見ています。海外で流行ってるものをいち早く取り入れることにも力を入れていて。韓国からの流行りも最近の傾向だと思っています。最新の情報をゲットして自分が紹介したいなと思うものがあったらいち早く取り入れてみて、自分なりに試してみて自分が感じたことを発信しています。

――そもそもYouTuberになったり、いろんなことを発信しようと思ったきっかけはなんなんですか?

ねお YouTube始めたきっかけは、「ミックスチャンネル」をやってたんですけど、その時は声を出したことがなくて。自分の声でものを紹介してみようとYouTubeを始めてみました。「毎日メイク」やったり、質問コーナーでもファンの方と交流したりして始めたのがきっかけですね。

――きいたさんは最初、Instagramだったと思うんですけど、始めたきっかけは?

きいた 僕、もともとSNSをやってなくて。高校生活が始まった時らみんなやってて、「取り残される!」と思って始めました。その時の内容は男子高校生の日常をずっと撮っていまいたね。

――乗り遅れるってどんな部分だったんですか?

きいた やってないと完全に話についていけなくて。やっぱりSNSには情報があふれているなと。

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――今の時代らしい発信の仕方をしてる二人をアベラさんから見てどうですか?

アベラ や、純粋にすごいなって思います。でもやっぱりお二人をフォローしてる方の数だけ、実際にSNSやってる若い子たちがいて、おんなじように工夫して発信してますけど、実際に多くのフォロワーを得る方は限られるじゃないですか。やっぱりそこは、若くてルックス良くてとか、そんな単純なものじゃないと思う。お二人の工夫――きいたくんならきいたくんで、日常をあげてるけど、その日常のユニークさが、もしかしたらフォローされる理由なんじゃないかと思います。ルックスだけでフォローされるほど甘くないですからね。

ねお・きいた ははは。

アベラ 僕がSNSのなんなんだって話になってきますけど(笑)。SNSを好きで見ているだけなんですけど、そんな甘くないというか。その中できっと人の心を大げさじゃなく何かしら震わせたからこそ、この人をフォローしたいなと思うし、追いかけられる立場になったお二人を純粋に尊敬します。で、それでいて若さには驚愕します(笑)。

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――お二人はそういう自覚はありますか?今、SNSから世の中に出て行く人がたくさんいるので。

ねお SNSがなかったら今のねおはいなかったです。普通に学校行って、家で動画撮ってあげていただけなのに、たくさんのファンがついて来てくれて。賛同してくれる声が多くなると自分のやらなきゃいけないってことが見えてきて。SNSがあってよかったなって今は思っています。

きいた そうですね。わかります。

――今はまさに渦中にいらっしゃいますが、これからどうなっていくと思いますか?

ねお ああ、でも流行ってるものっていつ終わるかわかんないし、いつ次に何が来るかわかんないので、常に気は抜けないなぁとは思います。一回気抜いちゃうと時代に遅れちゃって、もう終わっちゃうのかなっていうのはあるので、どれだけファンの方を飽きさせないかっていうのを常に考えて投稿してます。

――TikTokの良さってねおさんから見てなんだと思いますか?

ねお 15秒の動画を、携帯電話ひとつで撮って、携帯電話ひとつであげれる、手軽さですかね。誰でもちょっと動画を工夫したりしたら、みんなに見てもらえますし。

アベラ すごいなと思うのはディレクターで映像を撮ってる時に、ああいうテンポ感のいい映像、例えば自分で回して、自分で揺らしたり。あれってホントだったらカメラマンがやったり、結構技術が必要だったりする手法なんです。で、映像的に確かに面白くて、それを今、みんな実践できてて、ディレクターとしてはある意味、面白い映像作るのこれからやばいな、みたいな気持ちもあります。アプリでボタン一個で加工できて、音楽とセンス良く合わせてるじゃないですか。映画撮ってるからプロなんや、とかじゃない。今、スマホでも撮れるしね。センスの時代やなと、ホント安い言葉じゃなくて思います。

――その辺は希望でもあり脅威でもありっていう?

アベラ うん、確かに。そもそもYouTuberさんがみんな編集ソフト持ってやってらっしゃるじゃないですか。あれ、今まではプロのエディターさんが使ってた機材を今、皆さん普通に使いこなしてますから。でもYouTuberさんもプロなんで、ホントその境目ははっきりしなくなってきていて。プロとアマの境目を考えると、ディレクターである自分たちは、より頑張らな、なって思います。

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――今回のオムニバス映画には「未来」というキーワードがありますけど、皆さんが「未来」と聞いた時、どんな世の中や人、ファッションやライフスタイルを想像をしますか?

ねお 今ってもうロボットが受付するホテルがあったりするので、未来になるともっとホントの人間みたいなロボットがいるホテルがあったりするのかなと思ったりします。

アベラ コンビニも自動で無人で袋だけ渡されて、「こちらでお会計」みたいな、自動化されてきそうですよね。ちなみに僕からするとスマートフォンもすごい未来の機器、っていうとおかしいですけど、僕が例えば高校生の頃はパカパカ・ケータイだったんですけど。

きいた ガラパゴス・ケータイですよね?

アベラ はい。お二人は携帯電話を初めて持った時はすでにスマホでした?

きいた いや、僕は小学校5年からでその時はパカパカ。

ねお パカパカです。で、小六からスマホです(笑)。

アベラ 小六からスマホ! じゃあスマホに変わった時の喜びはありましたか?

きいた でもすでにiPod Touchがあって液晶画面だったので、結構慣れてましたね。なのでスマホに変わったところでもそんなに違和感なかったかも。

アベラ だから未来、どうなっていくんやろ?って考えた時に身の回りのものもどこまでが変わっていくのかとか想像しません?

きいた 携帯電話も無くなるんじゃないですか?手にチップ埋め込んで。

ねお やだー。

アベラ SF映画とかでね、よく見るものですからね。『アイアンマン』とか。

きいた かっこいいですよね。

アベラ 今は画面にタッチの時代じゃないですか?それが空間にタッチの時代になっていきそうじゃないですか。だから今、急に僕らがその時代にタイムスリップしてみたら街行く景色、爆笑しそうですよね。今、ギリギリ、ワイヤレスのイヤホンつけて「あ、もしもし」とか言ってる時点で結構見た目が危ないのに、もうこれ(イヤホン)も付いてない、単なる空間で「うん、ちょっと待って」とか言ってる時代になるのかも。

ねお・きいた ははは。

アベラ チップとか埋め込んだらもしかしたら自分だけに見えてて、空間で共有することもなくなったり。

きいた それって人と話さなくなりそうで怖いですね。

アベラ それは感じる?

きいた すごく感じますね。コミュニケーションの能力がなくなってくるなと。

アベラ 10歳以上年が離れてる世代なので話さないのが当たり前なのかな?って思ってたけど、そこに恐怖は感じたりするんですね。

ねお みんなでご飯食べてる時も携帯電話を見る方がすごく多いなと思うので、「話そうよ」と思っちゃう。

きいた 僕、実家でご飯食べる時、テレビ禁止だったんです、会話をするために。そういうので会話を大事にしてたので。

アベラ 素晴らしい。

きいた 携帯電話一つで会話ができちゃうのが、僕はあんまり好きじゃない。

ねお 一緒にいる人が携帯電話ばかり見ているとさみしくなりますね。ごはん食べてるときも携帯電話見てばかりいると「こっち見て!」って心の中で叫んじゃう。

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――じゃあ皆さんはどんな未来が理想ですか?

きいた 僕は人間同士が話さないような未来にしたくないですね。人間味が強くあってほしいです。ちゃんと人の心を大切にしたり、命を大切にしたり会話を大切にしたり、そういうことを大事にした上で未来を作ってほしい。

――今ある仕事がAIに取って代わるという話題もリアリティがありますもんね。

アベラ 僕、クリスマスにGoogleアシスタントに「淋しい」って話しかけたんです。そしたらクリスマスソング送ってくれて。今はね、プログラムされた返答しかできないですけど、これ、一瞬ですよ、「あ、僕、寂しくない」と思っちゃったんですよ。

きいた 本当に?

アベラ その瞬間に怖くなりました。AIが歌を送ってくれて満たされちゃったんですよ。人として大事な孤独っていうものが満たされちゃったんですよ。で、それと同じでAIがどんどん人の代わり、俳優さんとかもしかしたら全部、CG処理されて素材だけ撮っといたら、お芝居は画面の中でやれるようになるとか、それこそきいたくんが今言ってた、人として大事なことと真逆な未来をあえて話してますけど。ね?そういうことが起きた時に「え?」って、自分でも怖くなる。

きいた 人間いらなくなっちゃいますね。

アベラ SNSの中でAIねおちゃん、AIきいたくんみたいなのが勝手に始め出して……。

ねお 怖い怖い。

アベラ 生身の二人は唯一無二の存在なので、そういう未来は阻止したいですね。人間臭い部分をちゃんと持った、人間としての、ダメなとこ、料理できないとかね?それも含め魅力じゃないですか?それがあるから人間としてのファンがフォローしたくなる、自分が共感する部分も、ダメな部分もあるんだ、ねおちゃんも。きいたくんもちょっとくしゃっと笑う時もあるんだとか。でもAIにはそれはできないでほしい。

ねお うん、できないでほしい。

アベラ やっぱ生身のきいたくんがいい、ねおちゃんがいい、こんなの嘘や、人間であってほしい。まさに“未来に抗え”………今、映画のキャッチコピーを言わせてもらいましたけど(笑)、そういう気持ちは確かにあります。

LAPSE

Text 石角友香/Photo 小笠原孝一

BABEL LABEL が描く3篇の未来の物語 『LAPSE(ラプス)』 2019年2月16日よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開

映画『LAPSE ラプス』予告編

志真健太郎 監督・脚本 『SIN』 出演:栁俊太郎、内田慈、比嘉梨乃、 平岡亮、林田麻里、手塚とおる

アベラヒデノブ 監督・脚本 『失敗人間ヒトシジュニア』 
出演:アベラヒデノブ、中村ゆりか、清水くるみ、ねお、信江勇、根岸拓哉、深水元基

HAVIT ART STUDIO監督・脚本 『リンデン・バウム・ダンス』
 出演:SUMIRE、小川あん

 

主題歌:SALU『LIGHTS』

監督:志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO 撮影:石塚将巳/佐藤匡/大橋尚広 照明:水瀬貴寛 美術:遠藤信弥 録音:吉方淳二 音楽:岩本裕司/河合里美 助監督:滑川将人  衣装:安本侑史 ヘアメイク:白銀一太/細野裕之/中島彩花 

プロデューサー:山田久人、藤井道人 製作:BABEL LABEL 
配給:アークエンタテインメント

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