DoubleDoubleからのバトンを紡ぐ原島“ど真ん中”宙芳。TOKYO HEALTH CLUBの4人が待つお店の軒先にママチャリで登場だ。冒頭から撮れ高を気にしてくれる優しい男である。
今回、板橋のフッド・スターがTHCをおもてなすめし処は東武練馬駅北口にある居酒屋「むさし乃」。このお店のDOPEなローカル感は#03のdoooo x KOJOEの川崎・溝の口回にも通ずるものがある。
原島考案の豆乳ハイがメニュー化しているあたり、マスターとの強い繋がりをうかがえる。きゅうりの輪切りが入ったかっぱ割りなど、健康を気にするアラフォー世代に実に優しいドリンクラインナップである。
「週末はレイヴみたいな感じ!」とむさし乃を称える原島。THCの淡々とした静かな緊張感がどうにも笑えるのであった。
東京都出身のヒップホップ・グループ。メンバーはTSUBAME、SIKK-O、DULLBOY、JYAJIEの多摩美術大学の同級生4名。2010年に結成。2013年、著作権フリーの“インターネット踏み台レーベル”〈OMAKE-CLUB〉より『プレイ』でアルバム・デビュー。脱力系かつスキルフルなラップとクオリティの高いトラックで注目を浴びる。2014年の2作目『HEALTHY』ではメロディアスなフックを取り入れるなどさらなる進化を遂げる。2016年に3rdアルバム『VIBRATION』を発表。2017年にミニ・アルバム『MICHITONOSOGU』をリリース。
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2020.03.24(火)
OPEN 17:00
恵比寿Batich
DOOR ¥2,000 +1drink
学生 ¥1,000 +1drink *学生証必要
ACT:珠 鈴
GUEST:City Your City
<珠 鈴 写真展-虫が光に集まる理由->
17:00-19:00
ENTRANCE FREE
TIME TABLE:
写真展
17:00-19:00
LIVE
19:00-21:00
19:00〜 City Your City
19:45〜 珠 鈴
*19:00まで写真展のみの方は入場料無料で観覧できます。
*19:00以降は珠 鈴 的 旅のENTRANCEが必要になります。
*ライブに関しては、コロナウィルスの影響で急遽中止または延期になる可能性がございます。あらかじめご了承ください
チケット予約
TOKYO HEALTH CLUBがKick a Showを迎えお届けするフッドめし#07。
恵比寿/代官山での仕事の前に、または後にお腹を満たし軽く飲むなら「中国茶房8(エイト) 恵比寿店」というミュージシャンは多いであろう。
chelmicoの“E.S.P.”という曲の鈴木真海子のリリックにも「今宵エイトに行くのはリハの後」という一節が出てくるほどだ。私、セク山も度々利用してきた24時間フル回転のナイスな優良店である(ランチもおすすめ)。
店員に「注文は番号で」と優しく言われるDULLBOY。「エイトは番号だろ」と総ツッコミを受けるも決して怯まず、サングラスの奥の眼光は......どういう状態か全然わかりません!
北京ダックをほおばり幸せに満ちるKick a ShowとTHC。特にタメになるような話は一切していないが、彼らのあたたかい雰囲気を味わえるディナータイムである。
東京都出身のヒップホップ・グループ。メンバーはTSUBAME、SIKK-O、DULLBOY、JYAJIEの多摩美術大学の同級生4名。2010年に結成。2013年、著作権フリーの“インターネット踏み台レーベル”〈OMAKE-CLUB〉より『プレイ』でアルバム・デビュー。脱力系かつスキルフルなラップとクオリティの高いトラックで注目を浴びる。2014年の2作目『HEALTHY』ではメロディアスなフックを取り入れるなどさらなる進化を遂げる。2016年に3rdアルバム『VIBRATION』を発表。2017年にミニ・アルバム『MICHITONOSOGU』をリリース。
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Kick a Show
渋谷・中目黒・恵比寿を拠点とするシンガー。
相棒とも言うべきプロデューサー、Sam is Ohmとのタッグは抜群のケミストリーを生み出しており、最先端ながらもどこか懐かしさが香るメロディとトラック、USのR&B作品などにインスパイアされたというセンシュアルかつユーモア溢れるリリックが特徴的で、ストリートからインターネット上まで、コアなミュージック・ラヴァーズを唸らせてきた。
これまでに数々の客演参加も経てきており、2017年にはG.RINA、ZEN-LA-ROCKらのアルバムへ連続して参加。そして、同年、MONDO GROSSOが14年ぶりに発表して話題になったアルバム『何度でも新しく生まれる』にも参加し、MONDO GROSSOとともにFUJI ROCK FESTIVAL ‘17にも出演して話題になった。
2018年のバレンタイン・デーには記念すべきデビュー・アルバム『The Twelve Love』をリリース。多方面で高評価を得、同年に渋谷WWWにて初のワンマン・ライブも開催。そして、TOKYO HEALTH CLUBやJABBA DA FOOTBALL CLUB、eillといった気鋭のアーティストらともコラボを果たした。
CP Companyやadidasの広告イメージにも起用されたほか、MIHARA YASUHIROやヨウジヤマモト社のクリエイティヴ・チームがデザインするTHE SHOP YOHJI YAMAMOTOの限定ブランドであるS’YTEのモデルにも起用され、各方面でその才能を開花させている。
キャッチコピーは「お酒のお供にお耳の恋人」。
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「Berlin x Tokyo 2019:Creating Togetherness in Club Culture」
21:00-24:00 SCOPES Tokyo x DOMMUNE @SUPER DOMMUNE|渋谷パルコ9F
MC:Yuko Asanuma
TALK:Naz Chris|Chicks on a mission(from Tokyo)、Sapphire Slows(from Tokyo)
DJ DASCO(from Berlin)、DJ Sarah Farina (from Berlin)
DJ:Sapphire Slows(from Tokyo)、DJ DASCO(from Berlin)、DJ Sarah Farina(from Berlin)
2019.12.02(月)「Back to basics」不便が切り拓く、世界への道
18:00-20:00 SCOPES Tokyo @SO-CAL LINK GALLERY
出演:DJ Matsunaga、DJ KOCO a.k.a shimokita、ANONYMOUS、Naohiro Ukawa、NONKEY
「SCOPES with DMC JAPAN 'Turntable FETISHISM'」
21:00-24:00 SCOPES Tokyo x DOMMUNE @SUPER DOMMUNE|渋谷パルコ9F
DJ:DJ 松永(Creepy Nuts|2019 DMC WORLD CHAMPION)、DJ KOCO aka Shimokita、
ロベルト吉野、DJ 諭吉(2017 DMC WORLD SUPREMACY CHAMPION)、
ANONYMOUS (2019 DMC JAPAN CHAMPION)、DJ SHOTA(2015 DMC JAPAN CHAMPION)、
DJ BUNTA(2008 & 2010 DMC JAPAN SUPREMACY CHAMPION)
supported by DMC JAPAN
世界最高峰のベーシストであり、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)やマック・ミラー(Mac Miller)といった名だたるアーティストたちとも共演を果たしているミュージシャン・サンダーキャット(Thundercat)が今年4月、ついに日本に帰ってくる! 彼は、カマシ・ワシントン(Kamasi Washinton)やジョージア・アン・マルドロウ(Georgia Anne Muldrow)、ロス・フロム・フレンズ(Ross From Friends)など多岐にわたるジャンルのアーティストたちを輩出し、LAミュージック・シーンを支えてきたレーベル〈Brainfeeder〉の看板アーティストとしても知られています。
ハードコア・バンド、スイサイダル・テンデンシーズ(Suicidal Tendencies)のベーシストとしてキャリアをスタートさせ、エリカ・バドゥ(Erykah Badu)や盟友フライング・ロータス(Flying Lotus)のアルバムにゲスト参加し、その名を一躍世に広めると、2011年にソロアルバム『The Golden Age of Apocalypse』をリリース。2013年に発表された2ndアルバム『Apocalypse』は日本でも大ヒットを記録し、彼の存在を知らしめる要因となりました。さらに2017年発売の3rdアルバム『Drunk』は、サンダーキャットが水辺から顔を突き出しながら、こちらをにらみつけているというその印象的なアートワークも話題に。一方で、本作は超越したテクニックが持ち味だった彼のベーシストとしての印象をガラッと変えてしまうほどの豊かな音像に、誰もが驚いた作品でもありました。今年4月3日(金)には全世界が待望する3年ぶりのニューアルバム『It Is What It Is』をリリースする彼。
そんな彼が、NHK Eテレの知的エンターテインメント番組『シャキーン!』の人気コーナー「サウンドファイターズ」に出演することに!(4月2日(木)、3日(金)朝7時から放送)
「サウンドファイターズ」はふたりのアーティストが楽器を演奏、スピーカーの振動でリングを振動させ、紙相撲のように勝負する名物コーナーとして知られています。毎回豪華なゲストが出演し、白熱したファイトを繰り広げることから、子供にも大人にも大人気! この度、Qeticでは「サウンドファイターズ」に出演するサンダーキャットに密着し、普段の彼の様子や番組の裏側、さらに共演する中村佳穂さん、休日課長さん、吉田一郎さんという日本が誇る3組のアーティストとの交流に迫りました!
早速収録の準備に取り掛かった彼が手に取っているのは爪やすり。ベースを弾くのに重要なのか、念入りに爪を研いでいます。そしておもむろにハードケースから取り出したのは、目にも鮮やかな真っピンクのベース。世界有数の技巧派ベーシストとしても知られる彼のベースには、6つもの弦が張られています。ボディには「DON’T OVER THINK SHIT(くだらないことを考えすぎるな)」と虹色の文字で書かれたステッカーが。ユーモアあふれる彼の哲学も垣間見えました。
Qeticが新たにローンチするライブドキュメンタリー動画シリーズ「Keep A L1ve」。その第1弾として、異色のラッパー釈迦坊主が登場する。オープニングCGは、釈迦坊主のイベントにレギュラー出演するVJ、球根栽培が担当。彼のライブの魅力が凝縮された動画の公開と合わせて、この度インタビューを敢行した。
トラップを主軸にしながらも独自に音楽性を拡張させていく、釈迦坊主の妖艶で謎めいたラップスタイルは、ヘッズからギャルまで多様な人々を魅了させる。彼がオーガナイズするパーティ<TOKIO SHAMAN>は毎回満員になり、昨年は1,000人規模の恵比寿LIQUIDROOMで実施するまでに成長した。徐々にヒップホップ・シーンを侵食していく釈迦坊主本人にライブへの思いを聞かせてもらった。
Now On Sale
shaka bose 釈迦坊主
Label:Tokio Shaman Records
All Tracks Produced by shaka bose.
Mixed and mastered by shaka bose.
Artwork by Ryu Nishiyama
Format:配信
Track List
01. Dragon
02. Shinjuku
03. Poo
配信はこちら
NAGOMI
Now On Sale
shaka bose 釈迦坊主
Label:Tokio Shaman Records
All Tracks Produced by shaka bose.
Mixed and mastered by shaka bose.
Artwork by Ryu Nishiyama
Format:配信
Track List
01. Hideout
02. Supernova
03. iPhone 9 ft.OKBOY,Dogwoods
04. Bill Gates ft.Anatomia
05. 999 ft.Iida Reo
06. Alpha
配信はこちら
──当然、(玉置)周啓くんも曲作りとレコーディングとライブの感覚はMONO NO AWAREとはまったくベクトルが違うでしょう。
玉置 違いますね。ライブハウスではない場所でやるライブもそうだし、MONO NO AWAREの制作中にやけにMIZの曲ができたりしたこともあって。MONO NO AWAREが去年リリースした『かけがえのないもの』というアルバムは自分的にもけっこう難産だった曲もあったので。行き詰まったらMIZの曲を作ったりしてましたね。そういう意味でも心の支えになってた部分もありました。
──『かけがえのないもの』はMONO NO AWAREの音楽性の核心をいかに凝縮しながら拡張できるかというチャレンジをし、実際にそれを形象化した素晴らしいアルバムだったと思うけど、MIZの場合は自分から出てくるものをあくまで素直にキャッチするということなんだろうなって。蛇口をひねって水を出して、そのままコップに入れて飲むみたいな。 玉置 そうっすね。だってノリでベトナムに行ってレコーディングするくらいですから(笑)。MONO NO AWAREほど考えなくてもいいし、音の重なりも最小限だし、歌詞を書くときのマインドも違う。MIZは部屋の中で2人で生のギターと鳴らして、歌って、なんの加工もせず、「あ、これ気持ちいいな」という方向にただただ流れていくみたいな感じで作ってるから。浄化されながら作ってる感じがあります。
MIZ
2016年11月結成。MONO NO AWAREの八丈島出身、玉置周啓(Vo.)と加藤成順(Gt.)によるアコースティックユニット。聞き手のある場所の思い出、匂い、音にリンクするような楽曲をコンセプトに制作している。ある音楽を聴いて、風の吹く草原を思い浮かべる人もいれば、かつて住んでいたアパートを思い出す人もいる。それは、耳にした場所が旅先なのか、平日の最終バスなのかというのも関係しているかもしれない。だから、MIZは、さまざまな土地を訪れて写真を撮ってもらったり、もっと誰かの生活に寄り添うような空間で演奏をしてみたりする。そうすれば、僕らの音楽を聴いて思い浮かぶ映像が、めくるめく変わっていくと思うのです。
前作『Damogen Furies』からおよそ5年ぶり、鬼才トム・ジェンキンソン(Tom Jenkinson)によるソロ・プロジェクト、スクエアプッシャー(SQUAREPUSHER)による通算15枚目のアルバム『Be Up A Hello』がリリースされた。その間トムは、ショバリーダー・ワン(Shobaleader One)のアルバム『Elektrac』とのツアーをはじめ、BBCの番組『Daydreams』のサントラ制作や、オルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニー(James McVinnie)のアルバム『All Night Chroma』への楽曲提供など精力的な活動を行なっている。
それを経ての本作は、トムの学生時代からの親友が急死したことがきっかけとなり、制作がスタートしたという。彼と90年代に使っていたような古いシンセサイザーやミキサー、エフェクト・ユニットなどを駆使して、直感に従いながらほぼ1週間で仕上げたという本作には、初期スクエアプッシャーのサウンドの質感を持ちながらも、プログレッシヴかつアヴァンギャルドな楽曲が並んでいる。
このインタビューは、本来ならば4月に予定されていたスクエアプッシャーの来日公演に合わせて行われたもの。新型コロナウイルス感染症の影響により、残念ながら公演は延期となってしまったが、話の中でライブに向けての意気込みや、前回の<SONICMANIA>(ショバリーダー・ワン)で起きた驚きのエピソードなど、日本にまつわる話をたくさんしてくれたので、それをそのままお届けしたい。近いうちにまた、彼の素晴らしいステージを目にする日を願って。
INTERVIEW:SQUAREPUSHER
『Be Up A Hello』を制作する動機となった親友との別れ
──今作『Be Up A Hello』は、学生時代からのあなたの友人が亡くなったことが動機となって生まれたと聞きました。
彼の名前はクリスというのだけど、90年代の初期は本当によく遊んでたんだ。ただ仲良しだっただけじゃなくて、一緒に音楽を聴いたり、ライブやイベントに足を運んだり。そのうち一緒に音楽を作るようになってね。ちょうどエレクトロニック・ミュージックを制作するための機材が手に入りやすくなった頃だったから、2人で色んなハードウェアを手に入れては「これ、どうやって使ったらいいんだ?」って格闘していた。彼は機材のテクニカルな側面にとても興味を抱いていたし、色んなアイディアを話し合って長い時間を過ごしたから、僕自身の音楽活動の初期段階……1992年か1993年頃にはとても大きな役割を果たしたと思う。
それから月日が経つにつれ、一緒に何かに取り組む機会は減っていき、各々で作品作りをするようになった。彼は僕の一つ年上だから、亡くなった時はまだ44歳。それって、あまりにも若過ぎるだろう? だからこそ今回のアルバムはある意味、彼自身を「祝福」するものにしたいと思ったんだ。なおかつ、僕との一緒の時間をも祝福するようなね。レコーディングで使用する機材も、彼と90年代に使っていたような古いものにしたんだよ。
──ハードシンセやハードミキサー、フィジカルなエフェクト・ユニットなどを用いた、と。
うん。スクエアプッシャー名義でリリースした前作『Damogen Furies』では、ほぼ全てというくらいソフトシンセを使っていたのだけど、今回はそれとは正反対というか。まあ、多少はデジタルを混ぜてはいるけど、アナログ機材がメインなんだ。
──『Damogen Furies』の反動、という側面もありますか?
ある意味ではそうだね。あと、つい最近パイプ・オルガン用の作品『All Night Chroma』(トム・ジェンキンソンが作曲し、オルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニーが演奏したアルバム)を作ったのも大きい。フィジカルな機材を用いた作品作りに関心が向いていたんだよ。
Stor Eiglass
James McVinnie and Tom Jenkinson – Voix Célestes
──楽曲そのものも、友人のクリスに捧げるような内容にしたかった?
そもそもの段階では、彼への謝意を込めたトリビュート作品にしたかった。なので、彼とよく聴いていたダンス・ミュージック……つまり実験的でエッジの効いたスクエアプッシャー的な音楽ではなくて、もっとフロア寄りの楽曲を“楽しみながら“作っていた。最初から「レコードを1枚作ろう」という気持ちではなくて。とにかく作業に没頭している感じで始まった。
でも、続けていくうちにそれらの音源がどんどん「他の何か」に発展していってね。そうなってくると、俄然スクエアプッシャー・モードになって(笑)、どんどん肉付けしていった。しかも、そこに行き着くまでのスピードはかなり早くてさ、「じっくりと腰を据え、深く考え込みながら曲を作る」というよりは、とにかくこう(コン・コン・コン、とテンポよく指でテーブルを叩きながら)直観に従って作業を進めた感じ。「うーん、これはやるべきなのかな、どうかな?」なんてグダグダ悩まず、「これで決まり。はい、次!」という感じで敏速に決断を下しながら作っていったんだ。
──じゃあ、作り始めてからはトントン拍子に作業は進んでいったのですか?
曲を書いて仕上げるまでに1週間もかからなかったんじゃないかな。ほら、アナログ機材を使っているから、一度設定したパラメーターを後から完璧に再現するのって不可能じゃない? 一旦その曲に取り組み始めたら最後までそれをやり抜き、その日のうちにレコーディングして次の作業に取り掛かるしかないんだよ。ある意味、日記に近いのかもしれない。
──まさにその瞬間のジャーナル(日誌)であり、レコーディング(記録)ということですよね。ちなみにタイトル『Be Up A Hello』の由来というか、ニュアンスはどんなものなのでしょうか。
うーん、これって説明するのもなんだか妙な感じなんだよね、仲間内で使っていたフレーズというか。まあ、別に“他の人には通じない、自分たちだけの合言葉“とも違うんだけどさ。まあ、こうやって(と、こぶしを突き上げて振りながら)、“楽しもうぜ~!“みたいなニュアンスかな(笑)。
──なるほど、ありがとうございます。制作中はどんな音楽を聴いていましたか?
90年代初期に自分で買った、古い12インチを集めたコンピレーション・シリーズを息抜きによく聴いていたね。
制作の礎となった名機「VIC-20」
──アルバムのアートワークはどのようにして決まりましたか?
あれはコモドールジャパンが80年代に開発したホーム・コンピューター、VIC-20で描いたイラストだ。僕は子供の頃にこれを1台持っていてね。初めて使うコンピューターで、ちょっとしたプログラムを組んでゲームを作ったり、ドラムマシーンを作ったりしてたんだよ。なので、僕の最初期の音源には、VIC-20で組んだドラムマシーンの上にベースギターを乗せたものも結構ある。11歳の頃だったかな、今でも家にあるし、なかなかのクオリティだよ?
──いつか聴いてみたいです(笑)。
(笑)。で、今から2、3年前に「あのVIC-20を音源にしたら面白そうだぞ」と思いついたんだ。VIC-20には、独特の音色が色々入っているからね。それで、VIC-20をMIDIで制御できるようにシステムを組み立てることにした。そして、実際にVIC-20は今作『Be Up A Hello』に収録された、いくつかの楽曲の中に登場する。かなりの数のトラックにフィーチャーされているから、アルバムにおける主要ボイスと言ってもいいくらい。だったら、VIC-20をシンセとしてだけでなく、グラフィックを制作できるように、ソフトウェアに取り込んだんだ。
そうやって制作したアートワークが今回のアルバムと、次にリリースされたシングル「Midi Sans Frontieres (Avec Batterie)」のアートワークの土台になった。さらにVIC-20のプログラムをベースにしたものが、ライブ・ショウで使用するイメージの一部にもなっているよ。
──今回のプロジェクトではVIC-20が大活躍しているのですね。
そう。しかも、従来の使い方とは全く違う方法でVIC-20をフィーチャーすることが出来た。少なくとも自分はまだ見たことのないイメージを自分は作れたと自負しているんだ。すでに使い古された機材で、どれだけ新しいことができるか? というチャレンジに今はものすごくハマっているんだろうね。
“Terminal Slam”のミュージック・ビデオでも、VIC-20で作ったイメージのいくつかを用いている。電車の中のシーンとか、よく目を凝らしてみて欲しいな(笑)。
渋谷・中目黒・恵比寿を拠点とするシンガー。
相棒とも言うべきプロデューサー、Sam is Ohmとのタッグは抜群のケミストリーを生み出しており、最先端ながらもどこか懐かしさが香るメロディとトラック、USのR&B作品などにインスパイアされたというセンシュアルかつユーモア溢れるリリックが特徴的で、ストリートからインターネット上まで、コアなミュージック・ラヴァーズを唸らせてきた。
これまでに数々の客演参加も経てきており、2017年にはG.RINA、ZEN-LA-ROCKらのアルバムへ連続して参加。そして、同年、MONDO GROSSOが14年ぶりに発表して話題になったアルバム『何度でも新しく生まれる』にも参加し、MONDO GROSSOとともにFUJI ROCK FESTIVAL ‘17にも出演して話題になった。
2018年のバレンタイン・デーには記念すべきデビュー・アルバム『The Twelve Love』をリリース。多方面で高評価を得、同年に渋谷WWWにて初のワンマン・ライブも開催。そして、TOKYO HEALTH CLUBやJABBA DA FOOTBALL CLUB、eillといった気鋭のアーティストらともコラボを果たした。
CP Companyやadidasの広告イメージにも起用されたほか、MIHARA YASUHIROやヨウジヤマモト社のクリエイティヴ・チームがデザインするTHE SHOP YOHJI YAMAMOTOの限定ブランドであるS’YTEのモデルにも起用され、各方面でその才能を開花させている。
キャッチコピーは「お酒のお供にお耳の恋人」。
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テクノ・デジタルレイヴカルチャーをベースにしたグラフィックで活躍するアートディレクター、GraphersRock/岩屋民穂。
その最新ワークとして、ハーレーダビッドソンとのコラボレーションバイクが10台のみの完全限定生産で発売された。フュエルタンクにオリジナルのグラフィックがペイントされた〈STREET ROD® “FREEDOM” EDITION design by GraphersRock〉は、これまでのハーレーのイメージを刷新するデザインに仕上がっている。
なぜGraphersRockとハーレーダビッドソンが出会うことになったのか。
コラボレーションに至るまでの多様なデザインワークを紹介しながら、その軌跡を辿っていこう。
GraphersRockの根幹をなす音楽のデザイン
まずは音楽シーンにおけるデザインに注目してみたい。岩屋にとって、音楽の仕事は特別なものだという。
「中高生のころから音楽が生活の中心にあって、漠然とそれに関わる仕事がしたいと思っていました。デザインに興味を持ったきっかけも信藤三雄やデザイナーズ・リパブリック、ピーター・サヴィルなど、音楽と密接なデザイナーへの憧れが強かったので、音楽ありきでこの仕事についたと思っています。」
ネットレーベル、Maltine Recordsが2010年にリリースした『MP3 killed the CD star?』は、音源のダウンロードコードと空のCD-Rが付属するという、ネットレーベルにとってのCDのあり方を問いかけた一枚だ。刺激的なアルバムタイトルを、遊び心あるタイポグラフィで表現した。
「2000年代、通信速度の向上やプラットフォームの進化をきっかけに個々のアーティストたちがWeb上に音源をアップし始めていて、それを発掘していくことが楽しみでした。」
その中で活動し始めたばかりのMaltine Recordsを知り、まだ高校生だったtomadやtofubeatsと出会ったという。
「マルチネがCDという形で全国流通するにあたって、単なるコンピCDを作るなんてありえない。20歳前後が集まっていたマルチネメンバーたちの若さや悪ふざけ感も出したいという意図を込めました。」
2013年、tofubeatsのメジャーデビュー作『Don’t Stop The Music』は、イラストレーターの山根慶丈によるイラストを前面に打ち出し、懐かしさと新鮮さを両立させながらポップに仕上げた。以降、tofubeatsのジャケットの多くはこのメンバーで制作されているが、岩屋から見た2人の共通点について聞くと「時代性があるものをフラットに捉えているところ」だという。
ハーレーダビッドソンとGraphersRockのコラボモデルは、2019年のプロジェクト、〈SEEK for FREEDOM〉で制作されたアイアン1200に遡る。昨年は「テクノロジー&ワイルディ」をテーマに、カスタム可能なあらゆるパーツにペイントを施した1台限りのコンセプトモデルを完成させた。
このプロジェクトが目指したのは、ただアートピースを作り上げることではなく、ハーレーが持つ歴史と新たなシーンとの接続だ。
映画「イージーライダー」に代表されるような1960年代アメリカの自由を求める気風、1970年代のカスタム文化を色濃く受け継ぐアイアン1200を、GraphersRockのグラフィックが彩る。さらにお披露目では、tofubeatsや長谷川白紙をゲストに招いたエキシビジョンイベントを開催し、クラブミュージックや現代の若い感性とのリンクを印象づけた。
そして両者のコラボレーションは、2020年〈RE_SEEK for FREEDOM〉として再始動。冒頭でも触れた完全限定生産モデル〈STREET ROD® “FREEDOM” EDITION design by GraphersRock〉へと展開された。ハーレーの車種の中でも、スポーティで機動性に優れたストリートロッド。ブラックを基調としたダークカスタムの車体に、GraphersRockデザインのフュエルタンクが鮮やかに浮かび上がり、視線を引きつける。
岩屋によると、パワーの可視化に焦点を当てたテーマ「テクノロジー&ワイルディ」は踏襲しつつ、昨年のヒョウ柄に対して、人体の毛細血管をモチーフに選んだという。
デザインの意図や制作背景については〈RE_SEEK for FREEDOM〉特設サイトのインタビューでより詳しく語られている。ぜひそちらもお目通しいただきたい。
平面のグラフィックを越えて、ファッションからバイクまで――次々に新たなフィールドへと活動を広げるGraphersRock。未知の分野へ挑戦するとき、どのようなことを大事にしているのだろうか。
「なぜ、挑戦したことのない分野のクライアントがオファーをしてくれたのか、その意味と意図を考えます。そして徹底的なリサーチと対象を愛すること。また矛盾するようですが、リサーチし過ぎないこと。知りすぎると発想の伸びしろが薄くなると感じています。」
最後に改めて、〈RE_SEEK for FREEDOM〉特設サイトではGraphersRockがデザインした〈STREET ROD® “FREEDOM” EDITION design by GraphersRock〉の詳細なルックが見られるほか、実物を注文することも可能だ。販売期間は5月19日(火)まで。歴史に残る一台を、その目に焼き付けてほしい。
2012年にリリースされ、北欧の様々なアワードを受賞したデビュー・アルバム『Dýrð í dauðaþögn』と、ジョン・グラント(John Grant)が歌詞をサポートしたその英語詞版『In the Silence』(2014年)をリリース後、2017年の『Afterglow』でさらに世界の様々な場所へと活躍の舞台を広げ、日本でも人気を博すアイスランドのシンガーソングライター、アウスゲイル(Ásgeir)。彼が通算3枚目となる最新アルバム『Bury The Moon』(アイスランド語詞版アルバムは『Sátt』)を完成させた。
Ásgeir - Youth(Official Music Video)
デビュー・アルバムでのアコースティックギターの響きと歌を中心にエレクトロニックな要素をそっと加えた簡素ながら温かみを感じるサウンドを経て、前作『Afterglow』では打ち込みのビートやコーラスアレンジなども加えながら、プロダクション面でのさらなる実験を追求した彼は、今回の新作で一度原点回帰。アルバムに向けてまっさらな状態から制作をはじめた楽曲に加えて、曲として完成していなかった過去のアイディアも活かしながら、ふたたびギターと声を楽曲の中心に据えた、そぎ落とされた“歌のアルバム”に仕上げている。
とはいえ、『Bury The Moon』は、ただデビュー作の頃の作風に回帰したアルバムかというと、そうではないだろう。今回の収録曲には、冒頭の“Pictures”や“Youth”“Breathe”などを筆頭に全編にわたってたびたび登場するホーンアレンジをはじめとして、様々な場面にかなり繊細なタッチでアレンジ面での工夫が詰め込まれていることが分かる。つまり、『Bury The Moon』は1作目のシンプルな歌心と、2作目でのアレンジ面での工夫が、絶妙なバランスでひとつになった作品であり、そうした要素が緻密に重なり合うようにして、誰かの生活や人生の機微を浮かび上がらせていくような雰囲気は、まさにアウスゲイルならではだ。
そして彼の楽曲の魅力は、レコーディング作品以上に心震わせる歌の力や、ライブでも顕著なアコースティック/エレクトロニックな音の融合などによって、音源以上にライブでこそ真価を発揮する。彼はこれまでに2014年2月に新木場スタジオコーストで開催された<Hostess Club Weekender>での初来日以降、6年間に7度来日。同年7月の<FUJI ROCK FESTIVAL ‘14>ではホワイトステージの大自然をバックに初の日本でのフェス出演を成功させると、2015年1月には東京・大阪で初の単独公演を開催。翌2016年には<Summer Sonic 2016>の深夜帯<HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER>に、ジョン・グラントとともに出演した。そして2017年には、7月の<FUJI ROCK FESTIVAL '17>と、11月の東京・大阪での単独公演で2度来日。2020年5月18日(月)に開催予定だった来日公演は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響を受けて中止となったものの、状況が整う頃には、ふたたびあの素晴らしいライブが観られることを、楽しみにしている人も多いだろう。
そこで今回は、アイスランドにいる彼に過去の来日時の記憶の中で印象的だったことを、コメント付きのフォトダイアリー形式でまとめてもらった。新作『Bury The Moon』を聴きながら、彼の日本での思い出や、日本のリスナーとの6年間に思いを巡らせてみてほしい。
音楽ライターの二木信が、この困難な時代(Hard Times)をたくましく、しなやかに生きる人物や友人たち(Good Friends)を紹介していく連載「good friends, hard times」。国内のヒップホップに軸足を置きながら執筆活動を展開してきた二木が、主にその世界やその周辺の音楽文化、はたまたそれ以外の世界で活躍、躍動、奔走するプレイヤー(ラッパー/ビートメイカー/DJ)、A&Rやプロデューサーなど様々な人物を通じて音楽のいまと、いまの時代をサヴァイヴするヒントを探ります。
第3回目に登場するのは、昨年11月にオリジナル・ファースト・フル・アルバム『Re:BOOT』をリリースしたMEGA-G。
「俺は『Re:BOOT』を置き土産にラップをやめるつもりで、すべての気持ちを注ぎ込んで作ったんです」。MEGA-Gは、インタヴュー開始から数分で驚くような発言をした。が、その発言の真意は、以下のインタヴューを読んでもらえれば、伝わるにちがいない。ヒップホップを深く愛し、ヒップホップ・カルチャーの現状に対して確固とした意見と優れた批判精神を持つ1981年生まれのラッパー、MEGA-Gに前々からじっくり話を聞きたいと考えていた。そして昨年取材を申し込んだタイミングで、ソロ・アルバム『Re:BOOT』のリリースを知らされた。
2019年は、USヒップホップにおいて、ベテランの充実した作品が出た年でもある。ギャング・スター(Gang Starr)『ワン・オブ・ザ・ベスト・イエット(One Of The Best Yet)』とブラック・ムーン(Black Moon)『ライズ・オブ・ダ・ムーン(RISE OF DA MOON)』がその代表例だろう。翻って国内をみると、そうした世代のUSヒップホップに影響を受けたラッパーの充実した作品が発表されている。たとえば、B.I.G.JOE『Tenderness』や田我流『Ride On Time』などが挙げられる。MEGA-Gがみずからプロデュースを務めた『Re:BOOT』も間違いなく、そうした素晴らしい作品のなかの1枚だ。DJ SCRATCH NICEやZKA、MASS-HOLEらの強靭かつソウルフルなブーム・バップを基調に、レゲエ/ラガがあり、MEGA-Gなりのトラップへのアンサーもある。エンジニアはI-DeAが務めた。
昨年11月30日から約1週間、東京・蒲田駅東口から歩いて数分ほどの、呑川沿いにあるマンション1階に設けられた特設会場でMEGA-Gのポップアップショップが開かれた。MEGA-Gが客演参加した作品のCDの視聴ができ、アルバム・ジャケットの原画なども飾られ、オリジナル・デザインのグッズやアパレルが販売された。地元の仲間たちも集まっていた。取材はそのタイミングで行っている。いろいろ訊きたいことがあった。『Re:BOOT』についてはもちろん、彼が愛する〈ダック・ダウン(Duck Down Records)〉への想い、これまでのキャリア、いまのヒップホップについて考えること、そして「ラップをやめるつもり」という発言の真意と“ラップする理由”について。
──それからラッパーとしてどういう活動を展開していくんですか。
俺は最初、ラッパーとしてジャイアンって名乗っていました。藤子・F・不二雄先生を冒涜するかのように、ジャケットにドラえもんのジャイアンを使い、イントロでドラえもんの曲を丸々使う、というとんでもないデモテープを作りましてね。まだ18歳になる前でした。そのデモテープを渡すために、〈EL DORADO〉(DEV LARGEが1997年に立ち上げたレーベル)が渋谷のクラブ・FAMILYでやっていたイベントに行ったり、学校をサボってMASTERKEYさんとMAKI(THE MAGIC)さんがラジオの公開収録している現場に行ったりしていました。すげえ勢いで飛び込んでいくんであちこちでけっこう苦笑いされましたね(笑)。でもとにかく、自作のデモテープを聴いてほしくて渡り歩いていました。
──MEGA-Gくんは正式なメンバーではなかったそうですが、ZEEBRAが90年代後半に立ち上げたクルー、URBARIAN GYM (UBG)の準メンバー的存在で、DJ KEN-BOの運転手やレコード持ちをやっていた経歴もあるそうですね。
18、19歳ぐらいのころは、ZEEBRAの“真っ昼間”のMVとあの曲が収録された『THE RHYME ANIMAL』(ZEEBRAのファースト・アルバム/1998年)に刺激を受けまくっていた時期なんです。そのジブさんが「デモテープがあるヤツはガンガン持って来い」って<THE LIVE ANIMAL'98 JAPAN TOUR>のビデオで発言していたのを真に受けて突撃したんです。1999年のB-BOY PARKで当時、UBGに所属していたOJ & STのOJくんと出会い、その流れでSTさんやD-Originuさんともリンクした。そうして、1999年末に川崎のCLUB CITTA'であったイベントのときにバックヤード(楽屋)に入れてもらって、ジブさんにフリースタイルを仕掛けるという(笑)。そういう勢い突っ込んでいた時期ですね。まだ2ちゃんにもヒップホップのスレッドがないころに、「サグ(THUG)板」や「友情BBS」、「韻化帝国」というヒップホップの掲示板がネット上にあって、そこに書き込んで情報をゲットしたり、議論したりしていた名もなき戦士、名もなきB・ボーイでしたから。だから、クラブにももっと行きたいじゃないですか。でも金がない。じゃあ、どうするか。「クラブで働いている人かクラブでDJやっている人についていけばいいんだ」っていう発想になる。それでKEN-BOさんの運転手やることになった。だから、俺にとってヒップホップのDJの原点はKEN-BOさん。プレイを観てDJの勉強をしていました。でもいろいろきついこともありましたけどね。三宿のPARADISEってクラブで5時間のロング・セットをやるときに鬼のようにレコードバッグを持って行くんですよ。マジで肩がぶっ壊れるかと思った(笑)。
ZEEBRA - 真っ昼間
LICENSE TO ILL/MEGA-G feat. DJ MUTA(beat by NAGMATIC)
──2019年5月2日にこんなツイートをしていますね。「僕の中で業界の門を開けてくれたのはOJ&ST、初めてスタジオでマイクの前に立たせてくれたのはZEEBRA、そして業界の内側を教えてくれたのがD.Lなんです」と。そして、〈BOOT BANG〉のHPの「Feat. Works」の欄のいちばん古い楽曲が、2004年8月4日の“RICE/侍 Feat. L-VOKAL & MEGA-G”(RICE『Power Of Heat』収録)となっています。このあたりの時代の話を聞かせてもらえますか。
まずSPHERE(旧SPHERE of INFLUENCE)とL-VOKALも俺の初期の活動を支えてくれた重要人物です(SPHERE of INFLUENCE、L-VOKAL、DJ MAROKから成るクルーがCIG)。SPHEREから紹介されたL-VOKALが、当時レコーディングの経験もほとんどない俺にスタジオの現場を見せてくれたし、俺をフックアップして世に出してくれたのはCIGなんですよ。2002年ぐらいにL-VOKALのDJをやっていたT-TRO a.k.a TAKUYA TROPICANAのミックステープ(『BACK TO THE 95』)に入れるフリースタイルを録ろうって誘ってくれたのも彼らだった。そのラップが、デモテープ以外で俺がはじめて世に出したものです。D.O.くん、SPHERE、L-VOKAL、MCG名義の俺のフリースタイルが収録されている。
そして、その翌2003年にSPHEREがDEF JAMから出したセカンド・アルバム『ATLANTIS』収録の“FABULOUS 5”(feat. L-VOKAL、MEGA-G、KM-MARKIT、D.O)と“Dirty South”っていう2曲に参加して俺はデビューしたんですよ。Dirty Southっていうのは、SORA3000、 DOC D、SPHERE、俺の城南出身の4人で組んでいたグループで、ビートはWong Gun。Wong GunはいまのBACHLOGICですね。しかも、当時まだBEAT LEGENDという名義でやっていたと思うけど、D-ST.ENTの故・二木崇さんのレコードからサンプリングしてビートを作ったときは、Wong Gun名義だったんですよ。そういうルールがあった。これは余談ですけど、BLがラップやる時はSPYDERという名前でやっていて、超カッコよかった。5lackのフロウの原型のようにも聴ける。
──このときはMEGA-G名義になっていますよね。
そうですね。ある時、SPHEREとステーキを食いに行ったんです。ちょうど俺の誕生日が近かったから、ヤツが「500gのステーキを食ったら奢ってやるよ」って言ってきて。それでまんまと俺が完食したんです。で、そのステーキの名前がメガステーキだったから、メガ・ジャイアンでMEGA-Gになったわけです(笑)。その後、2004、5年くらいから〈Libra〉と合流して、DJ DOMMONのミックステープ(『GETTIN' HOT』)で初めて〈Libra〉の仕事をすることになるんです。
──MEGA-Gくんと日本語ラップ、日本のヒップホップの歴史との深いつながり、またそういう歴史の継承ということで言えば、『Re:BOOT』の“Outta Here”というスキットは重要です。このスキットはYOU THE ROCK★の語りのみで構成されています。
その次の“RAP IS OUTTA CONTROL”という曲のなかに「今の現状からoutta hereさせられるのを考えた事あるかキッズ?」というリリックがありますよね。このラインにつながるイントロが欲しいとまず思い立った。そこで当然思い出したのが、YOUさんの大傑作『THE★GRAFFITI ROCK '98』に収録されているスキット“OUTA HERE(REAL SHIT PT.1)”だった。YOUさんは、KRS・ワン(KRS-One)の“Outta Here”のファースト・ヴァースを日本語訳して自分なりの味付けをしてライヴで朗読したものをここに収録した。俺はその詩のあるいち部分を変えていただき、朗読してもらうつもりだったんです。そういうオファーをするためにYOUさんに会いに行った。
そしてその場でまず“RAP IS OUTTA CONTROL”を聴いてもらいました。すると、YOUさんが、その曲でスクラッチされているTwiGyさんの「ラップじゃねえか たかが」(“改正開始”)というリリックを聴いて、『俺もこのリリックを使おうと思っていたし、俺もこれがマジ言いたかったことなんだよ』と言ってくれた。「リンクした」と感激しましたね。さらに、YOUさんはその場でノートを開いて新しい詩を書いてワンテイクでバシッと録音をキメてくれたんですよ。それで完成したのがあのスキット。しかもYOUさんが“Outta Here”を当時作ったのは、ビギーが殺された直後の気持ちを残し、伝えておきたかったかららしいんです。その話を聞いてなおさら自分のアルバムに詩を朗読してもらって良かったと思いましたね。
KRS-One - Outta Here
──日本のヒップホップ、人生の浮き沈みを経験して見てきたYOU THE ROCK★だからこそ成立していますよね。また、KRS・ワンの“Outta Here”が収録されたアルバムのタイトルが『リターン・オブ・ザ・ブーム・バップ(Return of the Boom Bap)』(1993年)です。直訳すれば、「ブーム・バップの逆襲」となる。『Re:BOOT』もまさに「ブーム・バップの逆襲」というのがふさわしいヒップホップ・アルバムです。同時に、“808 is coming”でトラップにも挑戦している。この曲はMEGA-Gくんなりのトラップに対するアンサーですね。
トラップをディスりたいとか、そういうことではないんです。ただ、同じ打ち方のハイハットに同じようなスカスカのビート上で、みんなが同じようにフロウをしているのを聴くと、「なぜ、みずから個性を殺しているんだろうか?」「ヒップホップは個性が大事なんじゃないか?」と強く思う。そこから来た俺なりの問題提起です。そこで、トラップのビートで2、3曲ぐらいはやろうかと当初は考えていたけど、1曲入魂で作りました。
けれども、単なるトラップ・チューンをやるつもりはなかった。そこでI-DeAくんからまさにアイデアを授けられたわけです。それこそKRS・ワンの〈ブギ・ダウン・プロダクションズ〉(Boogie Down Productions)に所属するラッパー、D・ナイス(D-Nice)にその名も“TR 808 イズ・カミン(The TR 808 Is Coming)”(1991年)という曲がある。それが元ネタで、BPMもほぼほぼいっしょです。ただ、ドラムの打ち込みを今風に変えて、D・ナイスの曲を100回くらい聴いた上で、90年代からいまに至るまでのヒップホップを吸収した俺なりのアンサーや解釈をリリックとラップに込めた。ヒップホップには絶対に欠かすことのできないドラムマシーンであるTR-808にすべてを関連付けながら、だけど、ドラムマシーンの808なのか、“あっちの808”なのか、そのあたりも混ぜて考えさせるようにしている。「ダブル・ミーニングだぞ、わかるか?」と。トラップをやるにしても、フロウもリリックも内容も大人の余裕を見せた曲に仕上がっているはずですね。
D-Nice - The TR 808 Is Coming
MEGA-G “Stonedz iz the way feat. DOGMA/808 is coming”
──いま“あっちの808”という話が出ました。イヴィル・ディーがビートを作りラッパーのDOGMAが客演参加した“Stonedz iz the way”は単なるストーナー・ラップではなく、ウィードが法律で禁止されている日本の現状に対する異議申し立てになっています。
DOGMAとのSTONEDZのアルバム『STONEDZ PROJECT』(2016年)で俺たちなりのいわゆるストーナー・ラップの最高峰を作ったんです。だから、このトピックを扱うのであれば次のレベルに行かなければならないし、ラッパーとしていまの時代にこのことについて歌うのならば、メッセージが重要じゃないですか。「俺たちはぶっ飛んでるぜ、ウェーイ!」っていうのは若い人に任せておきたいです。
──近年、舐達麻やジャパニーズマゲニーズが活躍していますが、日本語ラップにおけるストーナー・ラップの重要作のひとつと言えば、2014年に公開されたSTONEDZの“HIGH BRAND”のMVですよね。日本語ラップにおけるこの領域の先例には、THINK TANK『BLACK SMOKER』(2002年)の当時としては衝撃的なジャケがありますが、このMVもすごい。アムステルダムで撮っていますね。
アムスには2012から2013年にかけて3回くらい行っています。2012年はカンナビス・カップの25周年で、その記念大会に行きました。それが初アムスです。カンナビス・カップ(The Cannabis Cup)にはアメリカからゴーストフェイス・キラー(Ghostface Killah)やスタイルズ・P(Styles P)、ノリエガ(N.O.R.E.)らも来ていてすごい盛り上がりで衝撃を受けて。それで翌2013年の4月20日に再訪するんです。そこで、“HIGH BRAND”のMVを撮るためにアムスでも5本の指に入るぐらいのGREY AREAという有名なコーヒーショップに通い詰めることになる。
だけど、そのお店のなかで撮影をしたいと、店主に頼むと最初は「バカヤロー!」って感じで門前払いをしばしば食いまして(笑)。それでもめげずに、このお店をロケで使いたいという情熱を伝えるために毎日オープン前から並んで、オープンと同時に入店して居座るというとんでもない荒技を駆使すると、だんだん店主も優しくなってきて。「お前らはファミリーだ」なんて認めてくれて、店のメニューにないものも売ってくれました。そして帰国が迫るなかで再び撮影のお願いをすると、「じゃあ、今晩撮ろう」ってボソッと言ってくれた。斜め前のお店で寿司の出前を取ってくれた上に、「撮影には太いジョイントが必要だろ?」と、お店からのご好意であのMVに登場するでっかいジョイントを提供してくれたんです。25グラムも詰まっていて顔面がめっちゃ熱かったです(笑)。
HIGH BRAND feat. DOGMA
──なるほど。また、先ほどからビギーの話がしばしば出てきていますが、“Stonedz iz the way”では、ビギーの“エブリデイ・ストラグル(Everyday Struggle)”(『レディ・トゥ・ダイ(Ready To Die)』1994年)のラップがスクラッチされています。
あのスクラッチはDJ DOMMONですね。実は“I LOVE YOU SON”の最初のヴァージョンは、ビギーがジェイ・Zといっしょにやっている“アイ・ラヴ・ザ・ドウ(I Love The Dough)”と同じネタでビートを組んでいたんです。アルバムやEPを出すときには必ず1曲はビギーへのオマージュを入れるようにしているんですが、なんとこのヴァージョンがいちどポシャッてしまった。それで気持ちが萎えているときにLIBROくんのアルバム『SOUND SPIRIT』のレコーディングに誘っていただいて“ライムファクター”を録音して。そこで、スキル・トレードというかたちで俺のアルバムのためにビートをもらえませんか? とお願いしてもらったのが完成した“I LOVE YOU SON”のビートだった。
ところが、この曲が完成する前に足を骨折して入院するんです。その入院中にT2KくんのEP『continue...』の“Fuck You to Money”の秋田犬どぶろくの声がすごく染みて。俺にはいま秋田犬どぶろくが必要だと思い、彼を誘わせてもらったんです。昔からOZROSAURUS“My Dear Son”がすごく好きで、自分もいつかそういう曲を作りたいと考えていたんです。2014年に子供が生まれているんですけど、実は俺、その直後にちょっとパクられてしまって。だから、子供に会いたいけど会えないつらさ、懺悔、そういった素直な気持ちを込めたファースト・ヴァースは留置所のなかで書いている。そしてセカンド・ヴァースで奥さんにたいする感謝を込めつつ、自分のいまの現状を伝える構成にした。そして、秋田犬どぶろくともうひとり、この曲をともに作るラッパーが必要だと考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが、PRIMALだった。かつては共同生活をしていたし、PRIMALが奥さんと出会って、結婚して、子供を授かるまでの過程を見て知っている。子供のためにラップをちょっと休んで仕事を頑張っているのもカッコいいし、俺が思うカッコいい父親のひとりだから誘いましたね。
──この曲のセカンド・ヴァースで「大どんでん返しも多めだが舞い込んで来る大本命のMADONNAを手に入れるlike SEANPENN」というラインがありますよね。このあたりをみずからRAP GENIUSしてもらうとどう解説できますか?
マドンナ(Madonna)が結婚していたショーン・ペン(Sean Penn)との関係が破綻するなかで作っていた『ライク・ア・プレイヤー(Like a Prayer)』(1989年)というアルバムのなかに“キープ・イット・トゥゲザー(Keep It Together)”という曲が収録されているんですけど、この曲はスライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)“ファミリー・アフェア(Family Affair)”を冒頭で引用しているんです。それで、俺にもいろんな家庭事情があるけれど、それを乗り越えて一緒に歩んでいこうという意味を込めて「family affair超えてkeep it together」と続けている。さらに「21g新たに背負い」というのは、タイトルは魂の重さが21グラムであると唱えたある科学者の説に由来する、ショーン・ペン主演の映画『21グラム(21 Grams)』からの引用です。新しい魂は、つまり子供のことですよね。そうして、ここではマドンナとショーン・ペンを使ってラップを展開させているんですよね。全曲こうして解説しようとすれば、できますね。それぐらい、引用とライミングと意味なんかをかけた仕掛けをすべての楽曲にいろいろ張り巡らしています。
──そんなMEGA-Gくんだからこそ、ラップをやめるか、やめないかを真剣に悩み、悩みつづけているとも言えますね。“Rhyme and reason”の「もう月日や金これ以上費やしても無意味なだけ......既に限界さ稼ぎと才能このゲーム常にスピーディなんだぜ?」というラインにその気持ちが象徴的に表れています。
新しい才能を発掘するディレクターやプロデューサーの仕事もしたいと思っているんです。とにかくいまは、この作品にすべてを注ぎ込みましたから、しばらくは新しい作品を作らないです。残量がゼロなんです。いま振り返れば、JUSWANNAではメシア、STONEDZではDOGMAという相方がいて、俺より彼らのほうが人気があったと思うんですよ。俺は常にナンバー2だったし、そのポジションをキープしようとしてしまったところがあった。今回のソロ・アルバムではそこを払拭したかった。
それともうひとつ、実は半分ぐらい完成している段階であるレーベルに持ち込んだんです。そうしたら、ディレクターの方からすごく遠回しな表現で「あなたはいま自分たちのレーベルに必要ありません」って厳しい答えが返ってきた。それは本当に悲しかったし、なにより悔しかったんですよ。それで絶対世に出してやるって逆に燃えました。“Two Turntables and a Mic”の「売れないものには消極的なrecord deal/お前らの後悔マイクで総取り/忖度無くても良い音楽は支持される/それはきっとこんな歌」ってラップしたのはそういう経験があったからです。
だから、いろんな意味でどうしても出さなきゃいけない作品だったんです。だけど、3年の制作のあいだに何度も「この作品は本当にリリースできるのか?」っていう不安に襲われて。もしかしたら完成前にラップをやめざるを得なくなって、作品を完成させられないかもしれないという危機感もあった。そんなときに俺のなかで何かが変化したんです。それは、自分のことを応援してくれる人に会って話すときにすごく熱くなるものを感じていたんですよ。そして、俺にとっての“ラップする理由”はこれだったのかもしれないと、作品を出し終えたあとにはっきり気づいたんです。だから今後また、出会いがあったり、環境の変化があったり、海外に行ってみたり、そういう経験が積まれて新たな“Rhyme and reason”ができたときに、また新たな作品を生まれてくるはずだと思います。
01. I’m going thorough changes(beat by DJ SCRATCH NICE)
02. muddy waters(beat by VAL)
03. stonedz iz the way/feat. DOGMA(beat by DJ EVIL DEE)
04. southern hospitality/feat. KM$&T2K(beat by ZKA)
05. I love you son/feat. PRIMAL & 秋田犬どぶ六(beat by LIBRO)
06. 93interlude(beat by DJ CARREC)
07. two turntable & a mic(beat by DJ CARREC)
08. lowend theory(beat by DJ EVIL DEE)
09. champion sound/feat. N.E.N&BLAHRMY(beat by NAGMATIC)
10. license to ill/feat. DJ MUTA(beat by NAGMATIC)
11. 808 is coming (beat by I-DeA)
12. outta here/feat. YOU THE ROCK★(beat by I-DeA)
13. rap is outta control(beat by LIBRO)
14. rhyme and reason(beat by MASS-HOLE)