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MONO NO AWARE 玉置周啓&加藤成順インタビュー|最新作『AHA』と地元・八丈島から見た「東京」

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MONO NO AWARE
MONO NO AWAREの2ndフルアルバム『AHA』が完成した。 彼らの音楽表現は最初から誰にも似ていない。ここからがロック、ここからがポップというボーダーラインもない。それでいて、彼らがクリエイトする音楽像は自然体のまま様々なカルチャーと呼応する同時代性と、現行世界と平行世界の間でトリップするような共時性を帯びている。 今作でその様相はサウンドプロダクションの進化と原風景が浮かび上がるソングライティングによってグッと生々しいものになっている。 筆者は今作のリード曲である“東京”のMV撮影に同行し、ソングライターでありボーカル&ギターの玉置周啓とギターの加藤成順にこのインタビューを実施した。 訪れた場所は、二人のふるさと、東京都八丈島だ。羽田空港から直行便で55分。東京でありながら大自然に囲まれた土地に降り立って湧き上がる旅情は、MONO NO AWAREの音楽と向き合っているときにフラッシュバックする“初めてなのに知っている”という感覚によく似ていた。 MONO NO AWARE

Interview:MONO NO AWARE(玉置周啓&加藤成順)

——二人がここ八丈島で出会ったのはいつごろなんですか? 加藤 ちゃんと知り合ったのは高校のときですね。でも、中学のときもちょっと会ったことがあって。 玉置 陸上記録会で一回会いましたね。 加藤 そのときは一言二言交わすくらいだったと思いますけど。 玉置 成順のお母さんは俺の小学校の保健の先生だったんですよ。加藤先生に同い年の息子がいることは知っていたんですけど、陸上記録会でたまたま隣だったのが成順だとは認識してなくて。陸上記録会に来てることはわかってたけど、違う子だと思ってたんです。名前も知らずに石ころを投げ合ったり、ちょっかいを出し合ったりしていた記憶があります。それで長距離走が始まって、成順が「がんばろう」って言ってきてうれしかったので覚えてますね。俺のほうが先にゴールしたんだけど(笑)。 加藤 当時、八丈島には小学校が5校と中学校が3校あって、高校でみんな一緒になるんです。高校の同級生は60人くらいでしたね。 ——八丈島は東京都ではあるけど、伊豆諸島の島であって。島の外にある都会としての東京を幼いころの二人はどう見ていたんですか? 加藤 東京という街は島の外にあるという感じでしたね。 玉置 自分が住んでる場所が東京という自覚はなかったですね。だから、都民の日という祝日の意味がよくわからなくて。中1のときに「都民」ってこういう漢字なんだって思ったんです。それまでなんで都民の日が祝日なのかよくわからなかった。 加藤 そっか! それは今わかったわ。東京都民の祝日なのか(笑)。それくらい島は島というか。東京に行くのは旅行という感じでした。遊びに行く場所。 玉置 東京の最初のイメージはディズニーランドでしたし。うちは旅行に行くといったらほぼ毎回ディズニーランドだったので。 加藤 わかるわ! 玉置 で、一番近い本土が東京なんだって大学入学のタイミングで島を出たときに初めて実感しました。埼玉から東京に出てくるのとは違うし、奄美大島で生まれ育って鹿児島に行くというのとも違う感覚だと思うんですよ。都会からしたら八丈島はすごく僻地だと思うし。自然に囲まれて育ってきたのに大学からいきなり大都会のど真ん中で過ごすギャップはすごくありましたね。 加藤 しかもほぼ強制的な感覚というか、高校を卒業したらみんな島を出て本土の東京に行くという流れがあるんです。島に残ってもいいけど仕事がないし。他の地方に行く人も少なくて。みんな本土の東京に行くんですよ。 玉置 俺も島を出ていく場所の候補が東京しかなかったです。どこに行くにしても一回東京を経由するというか。中高生になると原宿に初めて行ってみたりするんだけど、それも全部パラレルワールドみたいな感覚でしたね。 MONO NO AWARE MONO NO AWARE ——ニューアルバムの顔でもある“東京”にも感じる視点だけど、そのパラレルワールド感だったり、ある種の生々しい違和感ってこのバンドの音楽性においてすごく重要なキーワードだと思っていて。八丈島で生まれ育ったバックグラウンドが、MONO NO AWAREの1曲単位でジャンルを横断する複合的なサウンドプロダクションや不可思議なポップネスを帯びた歌に影響を及ぼしているという感覚はある? 加藤 そこは意外と無自覚なんですよね。周啓の性格が大きいと思うんですよね。何もないところから曲を作っちゃうオリジナリティを最初から持っていて。そういう、ここにないから自分で作っちゃえという感覚に八丈島感があるのかもしれないけど、実際のところはわからないですね。僕は小学生からパソコン大好きっ子だったので。小3でブラインドタッチできてましたし(笑)。で、中高生くらいになるとネットで東京の情報や音楽の情報を得てたんですよ。でも、周啓は出会ったときから自分で音楽を作っていて。 ——最初はゲームソフトで曲を作っていたんだっけ? 玉置 そう、『大合奏!バンドブラザーズ』で。中1の終わりくらいから作ってました。 ——そのころはDTMのことも知らなかっただろし。 玉置 そう、DTM自体も知らないし、もとを辿れば小学校3年生くらいのときに母親が使い終わった携帯電話で着信音を自分で作ったのが最初だったと思います。着信音の3トラックでがんばって曲を作って、それを目覚まし時計代わりにして朝起きてました(笑)。『バンドブラザーズ』もそれに似てるなと思って。『バンドブラザーズ』は8トラックあって、音色も40種類くらいあったのでこれは面白いと思って。それで最初はゲーム音楽みたいな曲を作って。 ——そもそもお母さんが使い古した携帯電話で着メロを作るという遊びをするのもなかなか珍しいと思うんだけど。 玉置 カッコいい言い方をすると遊びに飢えてたんですよね。親にゲームを買ってもらったり恵まれていたほうだとは思うんですけど、ゲームもどんどん飽きちゃうので。もっと違うもので遊びたいと思ってたら、たまたま母親が使わないからって携帯電話を渡してくれて。 ——だから、誰かの音楽を聴いて自分もこういう曲を作りたいと思ったとか、そういう始まりではない。リスナーから始まってないわけですよね。最初から作曲者側に立っていたというか。 玉置 確かにそうですね。 ——それまで自分は音楽が好きだという自覚もなかった? 玉置 う〜ん、なかったですね。音楽が娯楽のトップにあったという感じはなくて。野球もサッカーも楽しんでたし、その中の一つに音楽があって。ピアノを習いに行かせてもらっていた時期もあったんですよ。小3から小6までピアノも習っていたんです。家にピアノがあったのでそれで遊んでたら「ピアノ習う?」って親が言ってくれて。先に妹が習っていたんですけど、「あなたも習えばいいじゃない」という流れで。“カノン”とか練習曲を弾くのがマジで苦痛で(笑)。 ——(玉置)周啓にとってピアノの練習は娯楽ではなかった。 玉置 そうだったんだと思います。ピアノの先生の家に行ってもすぐに自分で好き勝手に弾き始めちゃって、先生は呆れてそれを見てるみたいな。でも、そういう自分を認めてくれる先生ではあったんですよ。 MONO NO AWARE MONO NO AWARE ——(加藤)成順が最初にギターに触ったのは? 加藤 父親がギターで弾き語りをしていて。フォークがめちゃくちゃ好きな人で、それで自分も小6のときにアコギを買ってもらって。父親が用意してくれるくらいの勢いだったんですけど(笑)。でも、あんまり弾けなくてすぐに練習しなくなっちゃったんです。小学生から中2までは卓球にのめり込んでいて。並行して小3くらいからパソコンもめちゃくちゃ好きになって。で、中3のときに卓球を辞めたあとにヤンキーみたいな友だちから「バンドやろうよ」って誘われて。彼は僕がアコギをちょっと弾けるという情報を入手して、無理やりバンドに入れたんです。「こいつは超ギターを弾ける」ってプレッシャーをかけてきて。それからめちゃくちゃがんばって練習しました。 ——最初はコピーバンドをやってたの? 加藤 ビジュアル系のコピーをやってました。 玉置 全然弾けないのにビジュアル系をやるってヤバいよね(笑)。 加藤 めちゃくちゃ難しかった!  玉置 高校に入るとバンドをやってるグループがけっこう多くて。 なぜか自分たちの学年はバンドをやりたいという人が多かったんですよね。男の子は半数以上やってた。 ——局地的なバンドブームじゃないですか(笑)。 加藤 確かに!(笑)。僕らの世代だけだったんですけど。 ——(玉置)周啓はどんな音楽を聴いてたんですか? 玉置 僕はORANGE RANGEとRADWIMPSが好きでした。友だちからSUM41を教えてもらったり、当時の流行の音楽を聴きつつ。俺の父親がハマった音楽を一生聴き続けるタイプで。家の屋根裏が吹き抜けになってたんですけど、そこにデカいCDコンポが置いてあって。CDが6枚入るコンポなんですけど、その6枚のアルバムをずっとループしていて。マイケル・ジャクソンと浜崎あゆみと安室奈美恵とTOTOとあとなんだったかな? 俺はTOTOが異常に好きになって。 ——そのラインナップでTOTOに反応するのが周啓らしいかもね。 玉置 そうですよね(笑)。TOTOのメロディが気持ちよくて、3歳くらいから高校を卒業するまで父親が夏になったらそのコンポから音楽を流していたので、TOTOが流れると夏がきたなって思うんです。でも、未だに俺はそんなに音楽について詳しくないので。 ——いろんな音楽を掘ってるという感じではないですよね。成順はいろんなジャンルの音楽を聴いてる印象があるけど。 玉置 そうなんですよ。俺はいろんな音楽を掘るのが苦手で。 ——掘るよりも自分で作ったほうが早いし、自分で聴きたい曲を得られるという感覚があるのかな? 玉置 今はそんなに思わないですけど、高校のときは人が作った曲を聴くより、自分で作った曲のほうが自分のツボを押さえられるから気持ちいいという感覚があって。人が作った曲にリスペクトがないわけじゃないんだけど、自分で作ったほうが早いし気持ちよかったですね。 MONO NO AWARE ——MONO NO AWAREには変則的な展開の曲も少なくないじゃないですか。あれは自分の気持ちいいポイントを探し当てた結果なのかなと。 玉置 そうですね。そういう感覚ですね。ずっと鼻歌みたいな感覚で作ってます。 ——成順はそんな周啓のことを最初から面白いやつだと思っていたと。 加藤 完全に思ってました。本人にもずっと「面白いよ」って言い続けて、一緒にバンドをやろうってなったのも周啓の面白さを広めたいという思いがあったからで。それは今でもそうなんですけど。その思いが一番強いですね。面白いと思うのは音楽面だけではなくて。僕たちが高校受験した日に都内はすごい大雪に見舞われていたんですね。こっちは雪が降ってないんだけど、都立高校の試験は一斉にスタートするので。都心は大雪だから試験の開始時間が2時間遅れることになって、それに合わせて島にいる僕たちは暇になったんですよ。で、周啓が持っていた紙に女の子の好きな髪型をいっぱい書いて、初めて会うやつらに「どの髪型が一番好き?」って訊いていて(笑)。 玉置 ヤンキーみたいなやつらもちゃんと答えてくれて(笑)。ショートカットが1位だったんですけど。 加藤 なんでも作っちゃうのが面白い。絵も描けるから、文化祭のときにポケモンの地図のジオラマを作ったりとか。そういう発想が面白いなって。 ——周りからは変わったやつと思われてたんですか? 加藤 意外にそうでもなくて。ちゃんと人として優しい部分もあって、そのバランスがいいんですよね。そういうところが曲にも出てるんじゃないかなって最近すごく思います。めちゃくちゃ振り切れてる部分もあるんだけど、周啓の中でちゃんと咀嚼できているというか。さらに周啓が作った曲をバンドで共有して、肉付けをすると曲として強いものになるのかなって思いますね。音楽として単に尖ってるだけだったらこういう曲になってないなって。 玉置 尖れるほど完璧主義じゃないというのもありますけどね。こだわりきらないというか。曲が完成に近づいてくると飽きてきちゃうんですよ。だから、デモを作ってるときが一番楽しくて。レコーディングになるとちょっと飽きてきちゃう。それはまだ僕がガキなところがあるんですけど、そういうところをメンバーがカバーしてくれてる。人としての部分も音楽的な部分もフォローしてもらってますね。バンドとしていろんなジャッジをしてくれるのが成順で。自分が考えてもみなかったことに成順が気づいてくれて、「確かにそっちのほうがバンドとして映えるわ」って思うことが多いんです。俺より俺のことをわかってるんじゃないかって思うこともあるし。俺が作った曲を活かす術においてもそうで。アレンジもシビアに考えてくれる。すごいなって思いますね。そういうところが成順の才能だなって。 ——お互い自分にないものを補い合ってる。 玉置 そう思いますね。 MONO NO AWARE ——ここからは、アルバムの話を聞きたいと思うんですけど、まずリード曲の“東京”という曲をこのタイミングで作ろうと思ったのはどういう思いからなんですか? 加藤 最初は、大学の音楽サークルにいるときに周啓が“東京”という曲を作ったんですよ。曲自体は今の“東京”とかなり変化したけど、原型はある感じで。サビはけっこうそのままですね。で、そのときから僕は“東京”が大好きで。 玉置 歌詞は全然違うんです。当時はシティポップが再勃興していて。サークルの中でも盛り上がってたんですね。僕はMONO NO AWAREでシティポップみたいな曲をやりたいとは思ってなかったので、息抜きで自分なりにシティポップみたいな曲が作れるか試してみようと思ったんです。それで、歌詞も最初は「都会で生きてる自分」みたいな感じで。 ——いかにもアーバンな感じというか。 玉置 そう。サウンドもそういう感じで。それから、何がきっかけだったか今パッと思い出せないんですけど、どんどん曲が変化していって。最終的にはサビ以外はメロディも歌詞もアレンジも全部変わりましたね。 ——その変化した“東京”をニューアルバムに収録しようと思ったのはなぜ? 玉置 最初は成順の提案でしたね。 加藤 前作をリリースしてから新曲があまりできてなかったというのもあったんですけど、それとはべつに“東京”はMONO NO AWAREでもやれるんじゃないかってずっと思っていたので。それくらい曲が好きだったし。それで、「やろうよ」って提案して。 玉置 俺は「じゃあまた練ってみるわ」って言って。 加藤 “東京”があったからこのアルバムでは島のことを思わせるような曲が生まれていったと思うんですよね。 MONO NO AWARE ——“東京”を軸にどんどん原風景に寄っていったと。 加藤 自分たちのメッセージがある曲というか。 玉置 今回のアルバムで最初にデモを作ったのが“東京”だったので。そのあとに残り9曲のデモを作るってなったときに自然と島の情景とかが浮かんだんです。 ——島の自然だったり、通っていた学校の風景だったり。 玉置 自分でも想像以上に島の情景が浮かんだので不思議な感覚になって。もっと違うタイプの曲ができるとイメージしてたんですよ。“東京”よりもキャッチーで、“イワンコッチャナイ”みたいなスーパーダンスナンバーが生まれるみたいな。いや、“イワンコッチャナイ”がスーパーダンスナンバーかは別として(笑)、僕の中で“東京”は踊れる曲というより、歌詞も含めてちょっとヘビーな曲なんですよね。だから、アルバムでは他にもっとライトな曲があって“東京”があるみたいなイメージを浮かべていたんですけど、意外と全体的にヘビーな感じになったなって。それは音というより歌詞が。 MONO NO AWARE "東京" (Official Music Video)
——だからこそ、MONO NO AWAREの原風景と新しい歌の像を同時に広げられているアルバムになっていると思います。アルバムの軸になっているのは、“東京”とラストの“センチメンタル・ジャーニー”だと思うんですね。この曲、解釈を間違えてるかもしれないし、誤解だったらちょっと申し訳ないんですけど、後追い自殺する人の歌のように聴こえるんですね。 玉置 なんでそう思ったんですか? すげぇ。実はけっこうまんまそういうことを歌ってますね。僕と関係性の深い人が、一昨年の夏に島で自殺したんですね。そんなことを曲にするなよって感じかもしれないですけど、すごくショックで。そのあとに『センチメンタル・ジャーニー』というスターンというイギリスの作家が書いた紀行文を読んでいたら、「旅に出る理由は身体的衰弱か精神的衰弱、どちらかの理由があるからだ」ということが書いてあって。なるほどと思ったんですよね。自殺もそれに重なるなと思って。 ——この曲は自殺を美化してるわけではないし、自殺という行為自体にフォーカスを当てているのではなくて、自分にとってほんとに大切な人がいて、その人の感覚をいかに理解し、同化できるかというさらに奥のことを歌ってると思うんですね。 玉置 そうですね。なんて言うのかな? その人の告別式にいろんな人が来ていて、これだけ慕われていたんだって俺はグッときていたんですけど、喪主の人が「最後は情けない死に方でしたが——」って言った言葉がすごく引っかかっていて。そう言う気持ちはわかるけど、果たして本人にとって自殺は無念の死だったのかどうか考え始めたら止まらなくなっちゃって。中学生くらいのときも「自殺するやつは負けだ」とよく言ってる子がいて「そうなのかな?」ってずっと考えたんですよ。そういうことを考えるのも好きだったし。いつの間にかそういうことを考えなくなってしまっていたけど、その人の死が呼び戻してくれた感覚があって。情けなくないんじゃないかな、ちょっと旅に出る感覚だったかもしれないなって。キザな言い方かもしれないけど、ほんとにそう思ったので歌詞もそういうイメージで書きましたね。 ——《しょうがないよ 彼はもう無重力だから》というフレーズも言葉自体には諦観が帯びているんだけど、この曲ではカラッと聴こえるのが周啓の歌詞らしいなと。 玉置 そこは、《伊代はまだ 16だから》とかけたんですけど(笑)。 ——なるほど、そこで“センチメンタル・ジャーニー”というタイトルが活きてくるのか!(笑)。この曲を歌うにあたって、周啓にとってユーモアを忘れないことってすごく重要だったと思うんです。 玉置 ほんとにそう思いますね。うれしいです。自分たちは熱いバンドがたくさんいて、そういう音楽を聴いて育ってきた世代だと思っていて。僕はそういうバンドを否定しないけど、熱い感じでメッセージを投げかけるようなことは自分にはできないなと思って。照れくさすぎて。だから、前のアルバムも歌詞は基本ギャグみたいな感じがあったんですけど。 ——でも、今作では踏み込んだ。 玉置 そうなんですよね。自然とそうなったんだけど、自覚はあって。 加藤 いいと思う。 ——でも、ユーモアを捨てるのも違うしね。 玉置 そうなんですよ。だからメッセージっぽい感じの曲にもちょっと笑えるところがあればい いなと思って。 MONO NO AWARE ——あらためて“東京”のリリックにある《ふるさとは帰る場所ではないんだよ》って、周啓はどういう思いで書いたのかなって。 玉置 大学のときに読んでいた坂口安吾の『堕落論』だったかな? 「我々はふるさとに帰ることが仕事ではない」みたいな文章が書いてあって。それがずっと引っかかっていて、ふと思い出したんですよね。坂口安吾は理想主義者ではなくて、「法隆寺は取り壊して駐車場にすればいい」とか言う人だったので。ノスタルジーに浸ることは人間にとってなんの意味もないことなのかなって坂口安吾の本を読みながら感じて。坂口安吾を熱心に研究したわけではないからわからないけど、そういう意識があったから「我々はふるさとに帰ることが仕事ではない」って書いたのかなって思ったんですよね。ただ、それは本心とはちょっと違うかもしれない。無理をしてでもそう言うべきだと思ったのかもしれないと感じて。僕も島に帰りたくてしょうがない時期もあったんですけど、いざ島に帰って昔、従兄弟と遊びに行った海にまた行ったりしてもすごく小さく感じて、幼いころに感じた感覚が全然湧き上がらなくて。 ——郷愁に浸れないみたいな。 玉置 そう、浸ろうと思って島に帰ってるんだけど、浸れなくて。それを思うと、ふるさとって場所だけじゃないのかもしれないなって。場所ではなくて、ひさしぶりに会う人と話してやっと島に帰ってきたという感覚を覚えるから。無理やり過去の思い出を引っ張り出してあのころはよかったという気持ちを持ちながら過ごすことって違うなと思ったんです。今の自分は気張ってでもそういうことを言う時期なのかなとも思うし。だから、30歳くらいになったら「ふるさとは帰るべき場所だ」って言ってるかもしれない。 MONO NO AWARE ——子どもができたら自分の原風景を見せたいと思うだろうし。 玉置 そうそう。でも、今はただ島に帰っただけでは心が動かないということは、今の自分にとって島はふるさとに帰ってきたからといって浸れる場所ではないんだなって思う。島が変わったというより、自分が変わったんですよね。 加藤 逆に東京でめちゃくちゃ雨が降ってパッと晴れて空気が蒸し返したときにめちゃくちゃ島を懐かしく思ったりするし。島に帰ってきてもやることがなくてNetflixを観ちゃうとかね(笑)。 玉置 あるね(笑)。 ——今は東京にやるべきことがあるからね。 玉置 そう。それが幸せなことだから。失敗したときに一番ふるさとの温かみを感じられると思う。 ——どんな自分でも許してくれる場所だし。 玉置 そういうことだと思うんですよね。ふるさとって、無償の愛ということなのかなって思いますね。 MONO NO AWARE

RELEASE INFORMATION

『AHA』

2018.08.01 MONO NO AWARE [amazonjs asin="B07DKSSD7D" locale="JP" title="AHA"] 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

MONO NO AWARE 『AHA』リリースツアー<OHO>

2018.09.28(金)札幌COLONY ※ゲスト有り 2018.10.12(金)福岡 the voodoo lounge ※ゲスト有り 2018.10.13(土)広島4.14 ※ゲスト有り 2018.10.26(金)仙台enn3rd ※ゲスト有り 2018.10.30(火)大阪 Shangri-la ※ワンマン公演 2018.10.31(水)名古屋 TOKUZO ※ワンマン公演 2018.11.16(金)東京LIQUIDROOM ※ワンマン公演 詳細はこちら

text & interview by 三宅正一

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Qetichub Vol.03 – 菜乃花

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PROFILE

菜乃花

フィット所属. . . . .あいかっぷのフィギュア体型。広島県出身。ぶりっこは癖です。川口オートレースのイメージガールをさせて頂いてます!
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【対談】マヒトゥ・ザ・ピーポー×OMSB×Hi’Spec×YELLOWUHURU×三宅唱が語る|GEZANとGHPDのコラボ『BODY ODD』

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BODY ODD
今年最も衝撃的で必然的、奇抜で奇妙、まさに風変わりなコラボがこの夏に実現した。 GEZANと〈GHPD〉のスピット7インチ『BODY ODD』は8月8日にリリースされると、同時に三宅唱が監督するMVも公開、五木田智央が描き下ろしたジャケットデザインも含め、全てが完璧に仕上がったとしても過言ではないこのプロジェクトは、たちまち話題となった。 両サイドの曲名が“BODY ODD”となっている本作。A面では、客演にCampanella、ハマジ(KK manga)、LOSS(ENDON)、 カベヤシュウト(odd eyes)、OMSBで、ミックスはスティーヴ・アルビニが担当。B面となる〈GHPD〉サイドのトラックを手掛けるのはHi’Specで、USOWAとOMSBに加え、マヒトゥ・ザ・ピーポーが客演、ミックスと両曲のマスタリングを手掛けたのはillicit Tsuboiであることが明かされている。
BODY ODD
『BODY ODD』ジャケット

GEZAN×GHPD×三宅唱

GEZANは大阪で結成され、現在東京を拠点に活動しているバンド。レーベル〈十三月の甲虫〉を主催しており、<全感覚祭>を毎年開催(今年は大阪で10月)、唯一無二のサウンドスケープとその圧倒的なライブパフォーマンスで、国内外問わずフォロアーを獲得し。今年の10月にはニルヴァーナらとの作品で著名なスティーヴ・アルビニをプロデュースに迎えた4枚目のフルアルバム『Silence Will Speak』をリリースする。 〈GHPD〉(Gami Holla Production Development)はSIMI LABOMSBHi’SpecUSOWA、<FLATTOP>主催のYELLOWUHURUが昨年立ち上げたコレクティブ。これまでOMSBとYELLOWUHURUがMIX CDをリリースしている。 GEZAN -BODY ODD feat. CAMPANELLA, ハマジ, LOSS, カベヤシュウト, OMSB
GHPD - 『BODY ODD』(Official Music Video)
村上淳主演の『Playback』、OMSBやBIMVaVa、Hi’Specらが出演したヒップホップファン必見のドキュメンタリー『THE COCKPIT』、そしてサニーデイ・サービスらのMVも手がけ、柄本佑・石橋静河・染谷将太が出演する最新作『きみの鳥はうたえる』(OMSB、Hi'Specも出演、Hi’Specは映画音楽も手がける)が9月1日(土)からロードショーとなる三宅唱監督。 「きみの鳥はうたえる」 予告編
ここで、タイムラインをまとめてみよう。GEZANと〈GHPD〉はもちろんのこと、豪華出演者が彩りを加える『BODY ODD』のリリースパーティーは8月24日(金)に愛知、26日(日)に大阪、31日(金)に開催。本作のMVを監督している三宅唱の映画『きみの鳥はうたえる』は9月1日(土)新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほかロードショー、以降全国順次公開となる。そしてGEZANの4枚目のアルバムが9月末にアナログ、10月にCD等でリリースされ、同月には大阪で<全感覚祭>が開催となる。 そしてこれ以上とないタイミングでGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー、〈GHPD〉からOMSB・Hi’Spec・YELLOWUHURU、そして映画監督の三宅唱で対談を行った。

対談:BODY ODD

BODY ODD ——まず最初にコラボの経緯を。 OMSB あれは1986年......。 マヒトゥ・ザ・ピーポー(以下、マヒト) まだ生まれてないよ。 OMSB 生まれてないや。 Hi'Spec オムス(OMSB)は俺の1つ下だから88年? OMSB 89年。 マヒト 俺も89年。平成元年だけど、平成が終わるのはなんか寂しいね。ずっと平成生まれですって言ってきたし。 OMSB いやでも俺は嬉しい。初めてだ仕事をした時に、昭和生まれのやつに「平成かよお前!」って言われて超面倒くさかったから、今度は俺がそれできるなって(笑)。 ──みんな活動歴も同じくらい? マヒト 僕はバンドを始めたのが20歳くらい。 OMSB あんまり変わらないよ。DJは16歳からだけど、グループは18、19歳くらいだから。   

俺も結構キレキレだった気がしたのに、負けた。そういうカマし方あったんだって。

Hi'Spec 今回のコラボまでは、YELLOWUHURU(以下、カマダ)が一番大きいのかな。 マヒト 一番最初に会ったのはカマダかも。 OMSB カマタが<FLATTOP>をもうやってて、俺は〈BLACK SMOKER〉のイベントでGEZANと知り合ったんだよね。 マヒト 俺とオムスは完全に〈BLACK SMOKER〉で。 OMSB それでカマタは〈BLACK SMOKER〉の2014年くらいにclubasiaでやってた<ELNINO>に遊びに来てて、その時に俺と翔くん(Hi’Spec)が出てたのを観てくれたんだよね。その時に俺は代々木のココナッツディスクで働いてて、そこに遊びに来てくれた時にすごい良かったって言ってくれて「俺のイベントに出て欲しいんだよね」と。それがWWWで開催された第1回の<FLATTOP>だった。 マヒト その時、なんで俺呼ばれてないんだって話をカマダにしたの覚えてる。 Hi'Spec 第1回、2回目と三宅さんがVJ。 “FLATTOP” at UNIT - OMSB & Hi’ Spec Beat Live with Sho Miyake & B.D. & USOWA & PAVRO & AKKOGORILLA
三宅唱(以下、三宅) YouTubeにあるあの時のビデオ、今でもたまにみるよ。 OMSB どっちも〈BLACK SMOKER〉からリリースとかもしてて......。最初にあったのはHeavySickZeroかもしれない。俺はリハーサルでかましたくて、というのも同業者をひとまず牽制していく瞬間だと思うんだよね。そうやってたら次にマヒト達がきたんだけど、いきなりマヒトがドラムスティックを持ってドラムを叩きまくって「よっしゃ、身体温まった」って(笑)。俺も結構キレキレだった気がしたのに、負けた。そういうカマし方あったんだって。 Hi'Spec 誰なんだろうこの人、「ドラムの人じゃないのか!?」って。 マヒト 全然全然覚えてない......。 OMSB 結構びっくりして。それでよろしくと。   

......あのパートめちゃくちゃかっこいいよね

マヒト 最初は“BODY ODD”っていうGEZANの曲があって、オムスに客演をお願いした。最初は単純に1曲で作ったんだけど、すごいはまってた。これを一つの点にして違うアプローチで何か作れたら面白いなと。 OMSB その流れで翔くんがB面を担当するようになった。 マヒト A面のサンプリングとかもB面に使ったり。 OMSB リミックスというよりかは、どちらも「BODY ODD」で。 ——A面の客演のセレクトは? マヒト Campanellaは昔から友達だったり、客演のセレクトは単純にタイミングで友達を呼んだ。 ——でも、そもそもどうしてオムスだった? マヒト ......あのパートめちゃくちゃかっこいいよね。 OMSB アハハ。 マヒト 単純に曲が太くて力があるから、ジャズっぽいアレンジでヒップホップはありますけど、バンドの骨太サウンドでマイクリレーをやるのは珍しいなと思って、最初に浮かんだのがオムス。 OMSB 嬉しい〜。嬉しさ。嬉しみが深い。   

「違和感こそがGHの色だな」

マヒト B面では、相模原に初めて遊びに行って、翔くんのスタジオに入ってその空気に飲まれた。これが「GAMI」かと。 曲作りでバンドと違う部分でいうと、ヒップホップの人は音階みたいなのを気にしないよね。トラックがあって、音階を気にせずに乗せれるから。でも歌をやってると音階によるから、最初に送られてきたやつでイメージしたら全然変わってて。一応用意していったんだけど、完成品にあるパートはその時になくて、オムスがラップしてる時にノリで考えた。 BODY ODD OMSB でもノリで良かったんだと思うよ。 マヒト 「BODY ODD」とか言おうとすら思ってなかったから。 三宅 あれいい歌詞だよね。すごいよね(笑)。 マヒト あれしかないから。まさにノリ。 三宅 「BODY ODD」って口に出したいスペルだよね。すごい気持ちいい並びで。合唱曲みたいな。 ——「BODY ODD」は両曲共に良い意味で、違和感を感じた。 OMSB B面で「違和感こそがGHの色だな」ってUSOWAが言ってるんですけど、そういうこと。 ——でも、と同時に違和感がないというか……。たとえばオムスやHi'Specはヒップホップだけど、全然違うジャンルにタッチしてるところもある。王道をやっていながら、得体の知れない何かがある。それはGEZANも同じで。 OMSB GEZANもそうだと思うんだけど、自分のやってるフィールドの芯が一つあるからどこにでも行けるのかなと。 マヒト A面の客演してくれた人たちをどういう風に選んだかって話があったけど、彼らとは自然に繋がっただけで、面白いことができるタイミングを感じた。異質かもしれないけど、作ってる時は自然な気持ち。   

恋愛は事故みたいなもんですからね(笑)。

——〈GHPD〉はどういう経緯で作った? Hi'Spec 色んなことを自分たちでやりたいなっていう、すごいシンプルなことを思った。 OMSB 自分で好きなものを作って、それを届けられる場所があれば良いなというのがきっかけだけど、まだ全然作れてない。 マヒト 〈SUMMIT〉(SIMI LABやPUNPEEが所属するレーベル)で思い出すのは、増田さん(〈SUMMIT〉代表)がオムスのライブで、母と父の間みたいな感じで見守ってて、めっちゃ良いレーベルだなって思ったこと。 そこからどうこうする訳ではないけど、でも〈GHPD〉をやるって聞いた時に、何か自由みたいなものを形にしたいのかなとは思った。だから『BODY ODD』は象徴的な一枚だよね。 Hi'Spec 音源としてはこれが初だからね。 BODY ODD ——GEZANも自分たちのレーベル〈十三月の甲虫〉でやってる。 マヒト 昔から八百屋みたいな感覚でやってるので、他と比べてどうとかはないかな。 ——〈GHPD〉の色ができていくといい。そのために『BODY ODD』がある意味で最初の色になる。 三宅 その出発点に立ち会えてすごい良かった。 OMSB 三宅さんには<FLATTOP>もVJをやってもらっていて、大事な時にいつも助けてもらってます。 三宅 ミュージシャンが生まれる瞬間ってなかなか立ち会えないというか、変な話「気づいたらいる」じゃん。オムスたちは“WALK MAN”(SIMI LAB)がアップされた直後のタイミングで知ったけど、それも、だれかが先に気づいて騒いでくれたから気づけたわけで。パトカーの音で事件に気づくみたいな。でも〈GHPD〉は、アーティストがもう一度出発点に立っている気がして、リスナーとして単純にアがるんだよね。最初の誕生には絶対に立ち会えないんだけど、2回目の誕生には立ち会える。 SIMI LAB/WALK MAN
マヒト ラップが上手いとか、才能には色々なものがあるけど、居合わせる才能はあるよね。ツボというか、時間の流れの中で居合わせる才能ってすごい重要だなって。 OMSB 絶対ある。 三宅 歌の上手さとかは鍛えても限界があるかもしれないけど、居合わせる才能だけは作れるんじゃないか、と思いたい。 マヒト でも逆にすごいデリケートでセンスがいるよね。全然意味のないところからはじめる訳だから。 三宅 避けれない事故とかもあるしね。恋愛と同じで。 OMSB 恋愛は事故みたいなもんですからね(笑)。   

手紙書くのっていつぶり?

OMSB 『BODY ODD』の7インチを作るにあたって、新宿で打ち合わせしたんだけど、そこでジャケットをどうしようかって話になった。その時たまたま五木田智央さんの「TACOMA FUJI RECORDS」のTシャツを着てて、カマタが反応した。 マヒト ちょうどその時、東京オペラシティアートギャラリーで五木田さんの個展がやってたよね。観に行った。 OMSB しかも確かその打ち合わせの日に個展に行ってたんだよね。その前から画集も持ってたし。 三宅 オムスが五木田さんを好きな話、前にもしたことあるよね。ちょうどその後、山口でオムスと翔くん、それから『きみの鳥はうたえる』プロデューサーの松井さんと飲んで、五木田さんの話になった。昔松井さんがZINEを作って絵を描いてもらったことがあるって話で盛り上がって。 OMSB ダメ元で五木田さんに聞いてみるって流れになって。 Hi'Spec それで、「とりあえず音源を送ってください!」って返事が来て。 マヒト 俺らは新しいアルバムを送った。 OMSB あとは俺の諸々出したやつと翔くんのアルバムかな。 BODY ODD マヒト それですごいのが、カマダには作品のタイトルが「BODY ODD」になるっていうの言ったんだけど、あいつメールで五木田さんにそれを言ってないんですよね。でも届いた絵を見たらちゃんとボディー感があった。だから、ちゃんと音を聴いてから肉々しい部分を落とし込んでいただいたのかなと。感動した。 三宅 あれ以外は考えられないもん。 OMSB マジでヒヤヒヤしたもん。俺とUSOWA、カマタ、翔くんで手紙を書いたんだよね。 Hi'Spec 庄やでね。 OMSB 言葉遣いとかには気をつけようって。 三宅 手紙書くのっていつぶり? Hi'Spec 俺らは書いてないけど、とりあえず考えた。 OMSB それでカマタが意外と達筆だったんだよね(笑)。それで筆を任せた。 マヒト 7インチって記念品みたいなところがあるじゃないですか。そういう意味でもバシッと決まって、この時点で8割くらい勝利が見えてた。 ——でも五木田智央さん描き下ろしのジャケットって……、いまやあれだけの絵描きさんだし、めちゃくちゃ忙しいはずなのに、ほんとすごい。 OMSB しかも、それでドンピシャのものが届くってすごいよなぁ。 マヒト ジャケットの上に文字をのっけたのはカマダと俺で話し合ったことだったんですけど、これまでの五木田さんの描いたMETA FIVEやTOWA TEIさんの作品ではかっちりした字体が多かった。その感じでやるとインダストリアルでカチッとはまるんですけど、収まりが良すぎる気がした。 それで友達のSTANGにグラフィティーを乗せてもらったらいい感じに荒くなって、〈GHPD〉の始まりにクロスする感じがして、すごく気に入ってる。

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週末バンド、toconomaが歩んだ10年間。会社とバンドを両立してきた理由|前編

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メンバー全員、フルタイムの仕事を持つ「週末バンド」、toconoma(トコノマ)。2008年の結成から、10年を経て3枚のフル・アルバムなどをリリース、今夏、ついに<FUJI ROCK FESTIVAL>(以下、フジロック)のフィールド・オヴ・ヘブンにも出演を果たし、働く同世代には仲間を祝うような気分も大いにあったはず。インストバンドという、言葉や国境の壁を越える表現で、その場にいるオーディエンスを巻き込みパワーも実証してくれた。 続けたいと思えばいつまでも音楽を続けたい、生活の中に音楽があるタイプのミュージシャンが、今、バンド専業から、仕事もバンドも楽しみながら自己表現として並行する生き方が増えている。 そこで、結成10周年を迎え、まさにそんな生き方を実現してきたtoconomaのメンバーに、前編では10年の振り返り、後編では「週末バンド」としての活動の仕方や、仕事と音楽の関係性について聞いた。

Interview:toconoma

toconoma ——先日は<フジロック>初出演おめでとうございました。 一同 ありがとうございます。 西川隆太郎(以下、西川) 天気がギリギリもって、僕らの時は結構晴れて。フタ開けたらすごいたくさんの人が来てくれたので、よかったです。 ——そもそもバンドを結成した頃から<フジロック>のフィールド・オヴ・ヘブンに出たかったそうですね。結構持ち時間長いですが、作戦はありましたか? 石橋光太郎(以下、石橋) 結構セットリストは揉んだ気がします。なんかこう、お客さんが全然いないパターンとか。 西川 少ない方に届く用の曲を用意したり…(笑)。 ——一つ目標が達成された感じですか? 石橋 いや、最終目標でもないから、燃え尽き症候群的にはならないけど……正直めっちゃ出たかったです(笑)。 西川 フジロックには出るまで行かない!みたいな無駄な意地を張り続けて、行けてなかったんですよね(笑)。でも、行ってみたら、ものすごくお祭り感や独特の楽しい雰囲気があって、また遊びに行きたいなと思いました。 ——最近海外のお客さんも増えているんですが何か反応は? 西川 台湾で今年の4月にライブやったんですけど、その時のお客さんが来てくれて話しかけてくれて。エレファントジム(Elephant Gym)っていうバンドと対バンしたんですけど、「ライブ見ました! また台湾来てください」と声をかけてもらったのが嬉しかったですね。 石橋 配信を見て初めて知った人のリアクションがよかったとか。あと周りの友人、家族、昔からのバンド友達とかが「むちゃくちゃよかった」ってメッセージをたくさんくれて、素直にやっててよかったなと思いました。 ——10年振り返るのはなかなか難しいと思うんですが、皆さんのバックボーンからお聞きして行きたいなと。矢向さん以外の3人は最初に楽器で弾いてみたものがビジュアル系バンドだったりするそうで。 石橋 はい。そうです。まあ、時代ってやつです。 ——どんな音楽少年だったんですか? 石橋 なんだろう? CDが一番売れてた時代に思春期を過ごしたので、みんなと一緒にJ-POPも聴いてて、TRF聴いて、ミスチル(Mr.Children)聴いて、ギター始めて。でも高校生になってからはメロコア一色。もうHi-STANDRD、横山健になりたかった。 toconoma 西川 僕も全く一緒で、J-POP聴いて、中学くらいからギターを始めたのかな? ちょうどGLAYとかラルク(L'Arc〜en〜Ciel)が流行ってて。ちょうど中学生ぐらいだったのでコピーとかして。で、高校入ってやっぱりメロコア流行って、BRAHMANを完コピして(笑)。 ——パンクに行くきっかけって<AIR JAM>ですか? 西川 ま、そうですね。<AIR JAM>がやっぱり大きいですね。あとは単純にみんな聴いてたし、流行ってたというのもあると思います。僕は大学に入ってからどっちかというと、ジャズとかレゲエとかスカとか、そういう感じで。友達にDJとか増えて来て、バンド界隈だけじゃない感じの音楽とかを聴き始めて。大学でギターやってる人が多かったから、鍵盤弾いてみようかぐらいの感じで(笑)。なので、ちゃんとピアノをやり始めたのは20歳からなんです。 ——清水さんは? 清水 中学は完全LUNA SEAだけで。当時のビジュアル系の人たちって、ビジュアル系に憧れてビジュアル系始めてないので、いろんなルーツを持っていて。そこからすごい掘っていって、「あ、こういうのもあるんだ」っていうんで、いろんな音楽を知っていったという。でも高校は二人と一緒で、流行ってたメロコアとか聴いてて、高校卒業したらきっかけは覚えてないですけど、ハードコアとかが面白くなって、ハードコアバンド始めたりして。色々また広がっていった感じで。ドラムは親戚からもらって(笑)。それまでベースをやってたけど、高校の文化祭でドラムが必要だったこともあって始めたという。 矢向怜(以下、矢向) 僕もだいたいおんなじです(笑)。 ——(笑)。toconomaの結成は社会人になってからなんですよね。 西川 そうです。社会人2年目からですね。 ——同じ会社だったんですか? 西川 僕と石橋が一緒のグループ会社で。新入社員研修で音楽の話になって、近しい音楽を聴いてるし、まぁ楽器やってるから面白半分でスタジオ入ってみようか、ぐらいの。いたって普通のノリですね(笑)。 toconoma ——そこからバンドになって行くプロセスは? 西川 もともとドラムは違う人だったんですけど、3人でやってて、やっぱベース欲しいよねってなって、吉祥寺のNOAH(音楽貸しスタジオSOUND STUDIO NOAH)でメンバー募集の張り紙を石橋が作って貼って、それをビッて取ったのが矢向だったということです。 ——その段階でもまだ趣味なんですか? 西川 今も趣味って言ったら怒られるかもしれないですけど(笑)、気持ち的には、うん、8割ぐらいは。 ——結成当時にお手本になったバンドはあったんですか? 西川 toeとかですかね。 石橋 そうだね。当時はtoeとかSPECIAL OTHERSとか、その辺のインストバンドを聴きながら。あと同じ頃にクラブジャズのシーンもすごく盛り上がってたので、自然にインストバンドになった感じですかね。 ——歌ってそれなりに……。 西川 僕らは特に歌詞にのせて何かを伝えるというコンセプトではなかったのかもしれないです。 石橋 そうですね。歌いたい人がいなかったから、じゃあインストでいいんじゃない? ぐらいの感じ。 西川 でも一曲だけありますよ。 石橋 一曲だけあるんですよね。矢向が絶唱してます。 矢向 ははは。 ——それは音源になってるんですか? 西川 なってます。 1枚目の『POOL』を出す前にEPを自主制作で作って、そこに入ってます。 石橋 ちょっとした黒歴史みたいな(笑)。 矢向 サビだけ歌が入ってるぐらいで。なんであれをやろうと思ったのか(笑)。 ——今や謎なんですね。『POOL』がリリースされるまで5年経過してますが、どの辺からアルバムを作ろうと思い始めたんですか? 西川 記念に作ろっかな、ぐらいの。 ——OLさんみたいな発言ですが(笑)。 一同 ははは。 西川 石橋がグラフィックデザインやってるんで、CDのジャケット作りたいです、と。ある程度オリジナル曲もたまってきて、アルバム作ってみよっか? みたいな。500枚だけ。 石橋 みんなのボーナスじゃないですけど、貯金から資金を出して。人づてにレコーディングってのはどうやってやるのか聞いて。ご縁があってエンジニアの星野(星野誠。クラムボンやSPECIAL OTHERSなどを手がけるエンジニア)さんにたどり着いて。レコーディングの最中も別にどこのレーベルから出すとかもなかったですね。よく星野さん受けてくれたな〜。 ——その段階でレコーディングの仕方とかミックスの仕方とかわからない状態で? 石橋 ど素人(笑)。 西川 全部、星野さんに教えてもらって。「そういうもんなんだぁ」みたいな(笑)。 ——(笑)、すごい。レコーディング期間中ももちろん仕事も並行してるわけですよね。 西川 そうですね。土日を2週ぐらいで録ったのかな。 ——今のグルーヴや色々な要素がある音楽性と比較するとすごくシンプルだなという印象が。 石橋 そうっすね。技術的な問題だと思います(笑)。 西川 ただ、原型としてはこう、メロディは割とキャッチーでビートはしっかりしてるみたいなのは、ゆるく僕らのテーマ的にあって、それは一応、再現できてるのかなと。『POOL』が出来始めたから、僕らはこういう感じの音楽なんだって、自分たちで認識する、そういう契機にはなったのかなと思います。 ——バンド内で2012年頃、何かブームはありましたか? 西川 何聴いてたっけ(笑)? クロマニヨン(cro-magnon)、聴いてましたね。 石橋 クロマニヨンとかダチャンボ(Dachambo)とか、SOIL(&“PIMP”SESSIONS)とか、あの辺の人たちいいなと思いながらすごく聴いてた。 ——『POOL』の翌年にはもう2ndの『TENT』がリリースされているんですが。 石橋 信じらんないペースですよね、今思うと。 西川 辛かったよね(笑)。 清水 ストックがあって作るのと、ゼロから作るっていうのは違うから。 ——曲がどんどんできる時期だったんですか? 石橋 『POOL』をある程度、いろんな方から評価していただいて、タワレコの人が「すごくいい」って言って展開してくださったりとか、お客さんもジワジワっと増えていく中で、意外と自分たちがやってることって通用するのかな? みたいな、そういう自信はちょっとだけ出てきた頃ですね。それで、もっと音楽的なルーツを掘ってみたり、例えばギターでいうとカッティングってプレイをもっと研究してみようとか、そういう欲求がすごくあったような気がします。 西川 あとライブでセットリストの中で、「ここにこういう曲があったらいいのにな」とか、そういうのから出来た曲も結構あったりして。なんかそれは『POOL』を作った時とはちょっと違った感じはありましたよね。でもなんでそんなにタイトなスケジュールでやったんだろうという(笑)。 石橋 ほんとにね、そそのかしてくる悪い大人がいたんですよ(笑)。 西川 「アルバムどうですかね?」みたいな(笑)。 石橋 それをまだ僕らもウブでしたから、真に受けて作ったって感じですね。 西川 あまりに時間が無くて、合宿したんですよ(笑)。軽井沢で。「曲作んないとこれ、ダメだわ」って。 ——それも皆さん休み合わせて? 西川 土日で軽井沢行って。バンドサークルとかが行くようなとこなのかも知れないんですけど、スタジオがあって、夜通しこもって、ああでもないこうでもないって3〜4曲作って。で、その後、パターゴルフして帰るみたいな(笑)。 ——元気ですね(笑)。 石橋 その時自分のギターが修理中で、宿にあるヘロヘロのギターを借りてreliveを作ったような気が…。 西川 しかも熱出してたよね? なんのために来たんだみたいなね? 石橋 絶対もうあのペースはやんないですけど、1年って短いスパンで作品を出たのは結果的に良かったと思います。 西川 確かに(笑)。推進力にはなったよね。 石橋 その2ndアルバム出した時のリリースパーティを200人ぐらいのキャパでやったんですけど、そこが売り切れて、結果としては良かったなと。 ——ゼロから作った『TENT』の音楽的な変化は皆さん自身はどう捉えてましたか? 西川 軸みたいなものはあんまり変わってないかもしれないですね。僕なんかでいうと、単純に機材が増えたりとかした部分もあったんで、より表現の幅みたいなものは『POOL』と『TENT』だと『TENT』の方があるし。 ——明らかにタフになっていってる気はするんですよ、作品を重ねるごとに。 西川 気がするだけかもしれない(笑)。 ——いやいや、スキルが必要な曲が明らかに出現していて。 石橋 やっぱり『POOL』を作った時に比べて、機材が増えたりしていて、シンプルに楽器の音色はどれがいいんだとか、曲をアレンジするとはどういうことなのか? とか、楽曲の構成とかそこに対する真剣度は上がっていて。レコーディングの現場でいうと、音を重ねてダビングするみたいなことも覚えたり(笑)、そこはバンドらしく健やかに成長していったのかなと思いますね。 ——近作『NEWTOWN』に関しては、インストなんですけど「ソング」っていう概念というか、主旋律が印象的な曲が多いなと思ったんですが、その辺はどうですか? 石橋 作ってる時はそんな深いこと考えてないんですけど、言われてそうなのかもなと思ったのが、ライブが野外とか、人数も多くなってきてる時に、そこにいる人たちにちゃんと届くように……メロディがちゃんと聴こえるようなアレンジとか……そういうところが……………あったかなぁ(笑)? 西川 いや、それは完全に後付けですね(笑)。 ——西川さんの鍵盤のバリエーションも増えて。 西川 こと鍵盤でいうと、音探しみたいな楽しみもあります。例えば代表的なところで“orbit”って曲があるんですけど、この曲はシーケンサー使って、ドラムとタイミング合わせてるんですが、そういうのはやったことなかったりとか。ちょっとレトロな感じとかも好きだったんで、“L.S.L”とか昔懐かしい音色を取り入れてみようかなとか、なんかそういう楽しみを作品にするみたいなのはありましたね。 toconoma“orbit”MV
toconoma“L.S.L”MV
——いわゆるインストといえばこんな感じみたいな曲じゃなくなってきて、すごいキャッチーだなと思いましたが。 西川 僕個人的には『POOL』から『NEWTOWN』まで、メロディとか旋律に関してはやっぱりこう、ちゃんとインストバンドだけど、ソラで歌えるというか「こういうメロディだよね」ってわからないと、ちょっとやっぱり……。 石橋 口ずさめない。 西川 と、元から思ってる節があって。それはあんまり変わってないというか。それがなんか音色を通じて割とはっきり出たのが『NEWTOWN』だったのかもしれないし。 清水 ドラムに関していうと、最新作は音作り、そこまでライブを想定せずにいろんなスネアの音色とか、シンバルを工夫してみたりっていうのをして……スキルは上がってるのかな(笑)? 作曲してくれるのが石橋と西川なんで、基本的に。ドラマーが作らないリズムってドラマーからしたら新鮮で、それに応えようとしてる結果だと思います。ま、『POOL』からずっとですけど。 石橋 いつもありがとうございます(笑)。 ——(笑)。矢向さんはライブの時、すごい気持ち良さそうにベースを弾いてらっしゃいますが。 矢向 単純にバンドが好きですからね。自分の役割っていうのもあるし、曲としてどういう風にしたいっていうのがある中で、俺はここら辺の立ち位置じゃね? じゃあ自分的にはどうアプローチするのがいいかとか、聴かせるための工夫とか話し合ったりして。そういうのが枚数重ねるたびに増えてきてるので。 石橋 頼りになるしね、ベースソロが。困った時のベースソロ(笑)。スタジオで練習してると、ソロの時でもずっと座って弾いてるんですよ。でもライブだとソロは前に出るみたいな暗黙のルールがあって、<フジロック>のステージに立って、ライブしてる最中に「あ、この人、今日3回も前行くんだ」って気づくみたいな(笑)。 矢向 そこはそうだね。ちょっと恥ずかしい(笑)。 toconoma 石橋 「本日3回目のベースソロ!」(笑)。 西川 割とバンドの中でも和を保ってくれるタイプなんですけど、ライブになると結果的に一番前に出てる(笑)。 ——アートワークについてもお聞きするんですが、インストバンドってあまりビジュアルを特定できない良さもあるなと思って。アー写もジャケットのアートワークも。 清水 最初に石橋が作りたいの作って、それがtoconomaのブランディングになってて、結果的に今こうなってる感じがあるけど。 石橋 アー写にイラストが多いのは撮影する時間がないからです。月に4日しか稼動できないので、練習したいんですよね。写真のやつは、イベントの出演前に撮影したり、過去の写真をコラージュしてます。 ——今のオフィシャルサイトのプロフィールになってるイラストはすごくいいですね。 石橋 まぁ某巨匠のインスパイア系。 西川 うちの母にも大変好評で(笑)。 石橋 僕が描いたんですけど、4人のキャラクターみたいなものを出したくて。多分、toconomaをやってる雰囲気ってこんな感じなんです。
toconoma 絶妙な4人の間合いには、「週末バンド」の現実的な大変ささえ、今や笑いに変える底力が。後半では、社会人バンドとして10年継続できた理由や、仕事とバンドのバランスなどについてお届けします。

EVENT INFORMATION

Tour TOCOJAWS 2018 -toconoma 10th anniversary-

Tour TOCOJAWS 2018/Hong Kong

2018.09.22(土) TTN This Town Needs

Tour TOCOJAWS 2018/名古屋

2018.10.14(日) 名古屋CLUB QUATTRO OPEN/16:00 START/17:00 ¥3,800+1D(18歳以下入場無料/受付にて身分証明証をご提示ください/チケット購入者の後の入場になります)

Tour TOCOJAWS 2018/大阪

2018.10.27(土) Umeda TRRAD OPEN/18:00 START/19:00 ¥3,800+1D(18歳以下入場無料/受付にて身分証明証をご提示ください/チケット購入者の後の入場になります)

Tour TOCOJAWS 2018/東京

2018.11.18(日) TSUTAYA O-EAST OPEN/16:00 START/17:00 ¥3,800+1D(18歳以下入場無料/受付にて身分証明証をご提示ください/チケット購入者の後の入場になります)
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photo by Kohichi Ogaahara

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『アントマン&ワスプ』ペイトン・リード監督インタビュー|アントマンの真の敵は“ワークライフバランス”

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アントマン&ワスプ
アントマンって知っているかい? マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)の中で最小最強かつ最高に気さくなヒーローなんだぜ! でも、そのアントマンが主役の『アントマン』、そして8月31日(金)に公開された新作『アントマン&ワスプ』の監督、ペイトン・リード氏のことは知っているかい? アントマンが気さくなヒーローになったのは、監督の気さくさあってのものなのだということがわかるくらい、飾らなくて温かい人なのだ。 そんなペイトン・リード監督に来日単独インタビュー。本作の注目は勿論、アントマンやバディを組むことになった女性初のタイトルロールヒーローのワスプについて、本作の見どころなど伺った。

「アントマン&ワスプ」日本版本予告

Interview:ペイトン・リード監督

アントマン&ワスプ そもそも、最初に言わせてほしい。『アントマン&ワスプ』は最高だ。そして、ジャパンプレミアを兼ねたファンミーティングイベントで来日したポール・ラッド(アントマン役)、エヴァンジェリン・リリー(ワスプ役)、そしてペイトン・リード監督のトリオは本当に仲良しで会場の雰囲気を和ませた。そんな3人を中心としたスタッフたちが、現場で和気藹々とこの映画を作ったのだな、という“人の良さ”のようなものが本作からは滲み出るのだ。 「日本に来るのはこれが2回目なんです。前回は一作目の『アントマン』のプロモーションで、京都にも行きました。今回は初めて大阪に行くから楽しみですね!」 アントマン&ワスプ そう、ペイトン・リード監督はニコニコしながら話す。会って握手をして3秒でわかる良い人感。 「LAでもよく食べているくらい、日本食は大好きなんです。ファンミーティングイベントの後には、鉄板焼きのお店に行って。目の前に食材がずらりと並べられていて4人のシェフが叫び合う……すごい熱気でしたよ! あのような類の店はアメリカにはないから、本当に素晴らしくて最高の体験でした」 来日の感想を嬉々として話してくれる監督。映画の話に入る前に、是非監督に伺いたいことがあった。アントマンのモチーフは蟻で、ワスプのモチーフは蜂となっているが、Qeticのマスコットキャラクター「あいつ」は、監督の目には何モチーフの生き物に見えるのだろうか。 「えー!? なんだろう、アザラシ? しずく?(笑)一体何なんだ!?」 実は何でもないんです……と言ったところ爆笑していた。 アントマン&ワスプ さて、このペイトン・リード監督は『アントマン』シリーズを手がける前から、『チアーズ!』や『イエスマン “YES”は人生のパスワード』などのコメディ×ヒューマンドラマというスタイルの作品を撮ってきていた。自身のコメディスタイルを、どのようにして『アントマン』シリーズに落とし込んだのだろう? 「自然にフィットしていった感じですね。『アントマン』を監督するとなった時、原作コミックに馴染みのない人からしたら『アントマン!? なんだよ、アントマン(蟻男)って。小さくなって蟻と一緒に飛び回るなんて馬鹿げている!』という第一印象を抱くのではないかと思いました。なので、一作目の映画のトーンは実際にそういうノリになっています。ただ、それと同時に僕らはアントマンがどれだけ強いかという事、そしてテクノロジーの可能性を描こうとしたんです。 でも、『アントマン』のコメディスタイルは、特に主演のポール・ラッドありきのものだと感じています。彼は他のマーベルヒーローと違ったヒーローを見事に演じてくれていますからね。天才でもないし、ものすごいお金持ちでもない、神でもない、普通の人間です。しかも、なんならルーザー(ダメ男)なんですよ。何回も救いようのないミスを犯して、奥さんには離婚されるわ、刑務所に入れられるわで……。でも僕は、こんな男がヒーローになれるという意味で、アイアンマンやソーよりも共感できて好きです」 アントマン&ワスプ 確かに、アントマンは誰よりも共感しやすいキャラクターだろう。何より、ちょっぴりイケてない男の子や、仕事と育児を両立させて頑張っているバツイチの子持ちにとっては。 「そう、バツイチの子持ちである点も僕は気に入っています。本作での彼の大きな葛藤、試練は“ワークライフバランス”なんです。彼はアントマンになることも好きでしょうが、一方で、毎回スーツを着るたびにトラブルに遭ってしまうこともわかっている。さらに、彼は本当に自分の娘に対して良い父親でいることに集中したいのです。だから、アントマンになれる落とし所みたいなものを探しています。ワスプのようにヒーローをフルコミットできないですしね」 続けて監督は、本作が一作目と比べて成長している点を話してくれた。 「『アントマン&ワスプ』の製作段階の初めに、僕たちは二つのことを話し合いました。一つは前作よりも愉快で面白い作品にすること。もう一つはアントマンたちの縮小テクノロジーを、最大限に生かしたいということです。そこで、一作目のように人に対してだけ使うのではなく、車やビルといったあらゆるものに使うようにしたんです。ただ、何より重要だったのは『アントマン』というシリーズ作品が、あくまで父と娘の話であるというエモーションや空気感を維持させることでした」 アントマン&ワスプ さて、一作目との違いは何といってもワスプの活躍っぷりだ。エヴァンジェリン・リリーの美しい肉体美+本格的なアクションシーンが、とにかく見ていて気持ちがいい。なにより彼女は身体的に強いだけでなく、ピム博士と同レベルの秀才であり、自立している。従来の“救われるヒロイン”ではなく、心身共に強い女性ヒーローなのだ。 「全くその通りなんです。実はエヴァンジェリンと僕はワスプのキャラクター像について、脚本を書く前の段階から沢山話し合いの時間を設けていました。前作の彼女は最後にスーツを手にしましたが、今作では100%ヒーローとして戦う姿が描ける。ホープ・ヴァン・ダインが、ワスプとして戦う態度などについて、エヴァンジェリンと固めていったんです。彼女は『激しい戦闘シーンなのに髪の毛に乱れがない』とか『とても汗をかいているはずなのに、そんな風に見えない』とか、的確なヴィジョンを持っていましたね」 アントマン&ワスプ 実は監督は、以前ハフィントン・ポストのインタビューで、「ワスプがアベンジャーズの女性キャラクターのリーダーになるべきだ」と話していた。この発言について伺ってみた。 「誰かが、女性版アベンジャーズが製作されるとしたら誰がリーダーになると思うか、と聞いたんです。名前に“キャプテン”と入っているからキャプテン・マーベルが挙げられがちですが、僕はワスプと答えました。彼女は決断力の高いリーダーとして頑張ってくれるはずですよ。そういう映画が作られるかは、さておき(笑)」 アントマン&ワスプ そこで気になるのは、ワスプの単独映画だ。幾度か話が出るたびにエヴァンジェリン・リリーが気乗りしていないという報道が複数されていたが、監督自身はどのようにお考えなのだろう。単独映画製作の可能性はあるのか? 「いつでもそこには可能性があります。しかし、エヴァンジェリンは常に単独映画に対してあまり乗り気ではないんです。彼女はワスプとアントマンのコントラストが、何よりも面白いと考えていますからね。コミックでも彼らは常にパートナーとして動いているし、その点が『アントマン&ワスプ』の核でもあります。 他のMCU作品ではこういう形の男女のパートナーシップは描かれていないはずです。仕事におけるパートナーではあるけど、お互いの私生活で何が起きているのかも把握しているレベルの関係性、それが二人において大事なのです。だからこそ、彼らはお互いのために、いつでもそこにいてあげるべきなのだと考えています。 誰も、ワスプが一人じゃやっていけないなんて、これっぽっちも思っていない。一目瞭然ですよね(笑)。彼女は一人で自分の世話くらいできます。しかし、『アントマン&ワスプ』の重要な部分は、勝手にスーツを持ち出して「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」に参加し、自分たちの存在を明るみに出してしまったスコットを、彼女がどこかで許してあげなければいけないところなんです」 アントマン&ワスプ さて、本作は監督が語ってくれたようなアントマンとワスプ以外にも、多くのキャラクターが自分の役割をそれぞれ担って活躍している。特に、“ヴィラン”として登場するゴーストや、一作目から登場していたピム博士や、スコットの泥棒仲間のルイスなど……ネタバレは避けたいのだが、全登場人物が"憎めない”といっても過言ではないほど、素敵なのだ。特に、蟻たちである。今度の蟻は大きい! そして賢い! 一体ピム博士はどのようにして、彼らをあそこまで調教したのだろう? 「彼は生涯をかけて、蟻をコントロールするテクノロジーを開発していました。70年代くらいからの日々の蓄積のおかげで、今や彼は蟻にスコットのデイリールーティーンを真似させたり、ドラムをさせたりすることまで可能にしたんですよ(笑)。そういう設定にしたら、めちゃくちゃ面白いと思って。人が持つアントマンのイメージは恐らく、体を縮ませて蟻に乗って飛ぶことですが、実はこの蟻の存在自体が秘密兵器なんです。だから、蟻が活躍するギャグシーンは撮っていて僕らも非常に楽しかったですよ。今後もっと増やしていくつもりです(笑)」 アントマン&ワスプ そんなギャグシーンが目立つ本作だが、何を隠そうあの絶望的な傑作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に続くMCUの新作となっている。監督は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を鑑賞した時、何を思い、本作の製作時に何を意識したのだろうか。 「『アントマン&ワスプ』を撮り始める前に、僕は脚本を読んでいてストーリーを知っていたんです。何が起きるかも……全て知っていました。ビジュアルエフェクトが完成する前の段階でのものを鑑賞しましたが、そんな状態のものでもすでに胸を突き刺すような、エモーショナルなものでしたね。内臓をえぐられるような、殴られるような結末でした。 僕らは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後に『アントマン&ワスプ』が公開されること、そして僕らの映画のトーンが全然違うことを知っていました。それに、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を鑑賞したファンが、本作の中に“繋がり”を探すはずだとも考えました。しかし、本作ではあまり『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』との“繋がり”を持たせていないのです……最後の最後までは。映画館でファンの後ろに座って、反応を見たいくらいです(笑)。 『アントマン&ワスプ』が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後の作品という意識も持っていましたが、それより自分たちが掲げていた目標に全てが到達でき、目指していた明るく楽しい映画を生み出せたことに非常に満足しているんです。なので、ファンの方に気に入ってもらえたら嬉しいですね」 アントマン&ワスプ シリアス路線まっしぐらであることが予想される、来年公開予定の『アベンジャーズ4(仮題)』に、アントマンは持ち前のユーモアをもたらしてくれるのだろうか。 「どうだろう、クリフハンガーになるでしょうね。彼を待ち受ける結末は、僕が子供の頃にみた『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』を見た時の感覚を思い出させるんです。『ハン・ソロ!?』って(笑) あの時は新作が出るのに3年間待たなければいけなかったし、その間ずっと彼がどうなるのかばかりを考えていました。ただ、『アベンジャーズ4(仮題)』は来年に公開されるから、安心してください」
アントマン&ワスプ
ファンミーティングの模様
たくさん興味深いエピソードをお話してくださったペイトン・リード監督ともお別れの時間が。最後に、『アントマン』を観ていなくても、いやMCUの他の作品を全然観ていなくても、『アントマン&ワスプ』が十分楽しめる映画である理由を話してくれた。 「僕らはこの映画を、大きなユニバースの一部の作品として作っていますが、基本的には何も知らない人が、この作品だけを観ても楽しめるような体験を生み出したかったんです。なので、最初の『アントマン』を観ていなくても、他のMCU作品を観ていなくても大丈夫! 本当に楽しい時間を過ごせるはずです。一作目から繋がっているストーリーではありますが、これはあくまでアントマンとワスプがどうなるか、ワスプが彼女の母親を救い出せるのか、という映画なので」 MCUとしては20作品目となる『アントマン&ワスプ』は、8月31日(金)より公開中。

『アントマン&ワスプ』

8月31日(金) 全国公開

アントマン&ワスプ 監督:ペイトン・リード  製作:ケヴィン・ファイギ 出演:ポール・ラッド/エヴァンジェリン・リリー/マイケル・ダグラス/マイケル・ペーニャ/ハンナ・ジョン・カメン/ローレンス・フィッシュバーン  配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン  ©Marvel Studios 2018 詳細はこちら

text by ANAIS

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コウキシン女子の初体験Vol.10安倍乙:浅草

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コウキシン女子の初体験

肉食/草食を始めとして、サブカル系女子、森ガール、青文字/赤文字、はたまたマウンティング女子なんてものまで……。こんなもはや根拠も脈絡もないカテゴライズに嫌気が差している人も多いはず。でも「好奇心(コウキシン)女子」っていうのはどう?

古今東西、“好奇心”がある人は誰でも素敵なはず(男女問わずにね)。

そんな括り方があれば良いなと思い、ある女の子に「今一番、行きたい場所/やってみたいこと」を“初体験”してもらおうじゃないかと思い、スタートしたのが本連載『コウキシン女子の初体験』。

第10回目となる今回は登場していただいたのは、秋元 康プロデュースの「劇団4ドル50セント」に所属しドラマ『おっさんずラブ』にも出演するなどモデル・女優としても幅広く活躍している安倍乙さん。

今回、“初体験”してもらうのは、海外からの観光客も多く、普段から賑わいを見せている観光名所、浅草。浅草の定番スポットである浅草寺や花やしき、浅草射的場での射的や浅草きんぎょでの金魚すくいなど浅草ならではといった場所を巡った。日本有数の観光名所で見せた安倍乙さんの様々な表情を捉えることに成功。今回はどんな“初体験”が待っているのだろう。

コウキシン女子 安倍乙

コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
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コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験
コウキシン女子の初体験

コウキシン女子の初体験

安倍 乙

秋元 康プロデュースの「劇団4ドル50セント」に所属しドラマ『おっさんずラブ』にも出演するなどモデル・女優としても幅広く活躍中。劇団4ドル50セント8/11(土)~9/14(金)の毎週金曜、土曜、日曜に週末定期公演Vol.2『夜明けのスプリット』Keystudioにて絶賛公演中!
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Attractionsインタビュー|“ストリート”がキーワード。ハーレーとコラボした楽曲の制作秘話

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ハーレーファミリーの“異端児”と呼ぶべき魅力を持ったモデル『ストリート750(XG750 Street® 750)』と『ストリートロッド(XG750A Street Rod®)』をフィーチャーしたプロジェクト「STREET×STREET」。その2018年度のキャンペーンヒーローを務めるAttractionsによるキャンペーンソング“Instant Jam”が完成した。 この曲は彼らの「等身大」「リアル」をテーマに、歌詞ではTARO(Vo)の故郷・ジャカルタの多様性に溢れたストリートを描写。音楽的にもこれまでのAttractionsの楽曲にはなかった新たな挑戦が込められ、ハーレーダビッドソンとフレッシュに共鳴することに成功している。完成したばかりのキャンペーンソングについて、TARO(Vo)、TAKE(G)、JUN(B)、AKIRA(Dr)に聞いた。

Interview:Attractions

——今回「STREET×STREET vol.02」のキャンペーンソング“Instant Jam”が完成しましたね。この曲はどんな風に制作したものだったんですか? TAKE 今回の曲は、普段のAttractionsの曲とはまた違う雰囲気の楽曲になったと思っています。僕らの場合、いつもはもっと非現実的なことをテーマにすることが多いですけど、今回はキャンペーンのキーワードでもある“ストリート”であったり、あとはリアルなリズムやコード感、シンセの音を意識しました。 TARO これまでのAttractionsにはないノリになっていると思います。 Attractions ——今まではTAKEさんがカッティング・ギターを多用することAttractionsのイメージになっていましたが、この曲はまた少し雰囲気が変わっていますね。 TAKE そうですね。今回は正直にジャカジャカッとギターを鳴らして、土臭さを意識しました。シンセのフレーズも、オリエンタルなものになっています。 ——もともと、Attractionsの楽曲はどんな風に作っていくことが多いんでしょう? TAKE 基本的にはあらかたの構成までを自分が持ってきて、バンド・メンバーに渡します。 JUN そこから「ここはこう弾こうとしてるんだけど、どうかな?」「もうちょっとここは抑えたほうがいいね」とメンバーで相談しながら作曲する形ですね。 TARO 歌詞に関しては僕に任されて作ることが多くて、自分が感じた曲のイメージから考えて書いていくことが多いです。おそらくメンバーにとっては、毎回歌詞が出来上がった時が一番のサプライズって感じですかね(笑)。 ——楽曲を聴いて連想したことを歌詞としてつけていくんですね。 TARO そうですね。これは歌のメロディに関しても一緒です。今回の“Instant Jam”の歌詞はハーレーのストリートファミリーのことを考えながら作りました。自分的には、幼少期に過ごした故郷ジャカルタのストリートのことを思い起こさせるな、と思って、その雰囲気について書いていきました。インドネシアのストリートって和気あいあいとしていて、考え方もすごくフリー(自由)な雰囲気なんです。日本人は羞恥心が強い人も多いですけど、「そんなこと気にせずに踊ろうよ。一緒に楽しもう!」という気持ちを引き出せたらいいな、と思って歌詞を書いていきました。 TAKE Attractionsにとっての「等身大」や「リアル」を意識した楽曲ですね。「自由にやってみよう!」っていう気持ちというか。 Attractions

4人が作り出す“自由”で踊れる楽曲のポイントとは?

続きをSTREET×STREET vol.02で読む!

Text by杉山 仁 Photo by 横山 マサト

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Corneliusが考える「音の構造物」。50歳を迎える手前にリリースした新アルバムについて

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Cornelius
前作『SENSIOUS』から11年ぶり、通算6枚目のアルバム『Mellow Waves』を昨年6月にリリースしたコーネリアス(Cornelius)が、それ以降の楽曲を集めた『Ripple Waves』をリリースする。 “波及”という意味を持つタイトルのつけられた本作には、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の企画展<AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展>のテーマ曲をはじめ、昨年リリースされたアナログ・シングルのカップリング曲、書き下ろしの新曲など、今回が初CD化となる音源が並んでいる。アルバム後半では、細野晴臣や坂本龍一、ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)、ビーチ・フォッシルズ(BEACH FOSSILS)ら、国籍も年齢も様々なアーティストたちが『Mellow Waves』の楽曲を再構築するなど、まさに『Mellow Waves』から“波及”した作品集といえる仕上がりとなった。 様々な音を配置し、組み合わせていく(デザインしていく)コーネリアスの楽曲を、「音の構造物(オーディオ・アーキテクチャー)」と例えたのはショーン・レノンだという。実際のところ、小山田圭吾はどこまで自覚的に音をデザインし、アーキテクトしているのだろうか。アルバム制作のプロセスはもちろん、来年50を迎える心境などについても真摯に語ってくれた。 Cornelius

Interview:Cornelius

──『Ripple Waves』は、『Mellow Waves』リリース以降の楽曲を収録しているということですが、このタイミングで、こういう形でまとめようと思ったのは、どんな経緯だったのでしょうか。 小山田圭吾(以下、小山田) まあ、だんだん曲が溜まってきたというのもあるんだけど(笑)。アメリカの〈Rostrum Records〉が来年のレコードストア・デイで、リミックスを出したいと言ってきて。「だったらもうちょっとコンパイルした感じのやつにしませんか?」と提案して、それが先に決まったんですね。で、日本でも10月からツアー(<MELLOW WAVES TOUR 2018>)が始まるし、その前にCDという形で出せたらいいなと。 ──コーネリアス・グループのツアーは昨年も国内外で勢力的に行われましたよね。アメリカツアーは2016年にもありましたが、日本では10年ぶりでした。やってみてどうでしたか? 小山田 楽しかったですね(笑)。META FIVEやYMOなどでライブはやっていたけど、コーネリアスでは久しぶりだったので。バンドの状態も、ライブも結構やってきたしいい感じになっているんじゃないかな。でもまあ10年ですからね。久しぶりに稼働すると、久しぶりに会う人とかも沢山いて。僕は来年50歳になるんですけど、「もうちょっとで死ぬかも」とか思ったりして(笑)。 ──何をおっしゃってるんですか(笑)。 小山田 いやいや、だって10年って結構一瞬だったから。あんまりのんびりしてるとアレだなと思って。次はもうちょっと早く出したいなとも思ってますね。レコーディングとかもそろそろやりたいなと。 ──それは楽しみです。でも、確かに『Mellow Wave』は“彼岸の音楽”というイメージが色濃くあったなと個人的には感じていて。例えば、ジャケットがモノクロだったり、何となく「三途の河」を想起させるデザインだったり。“いつか / どこか”や“未来の人へ”、“Surfing on Mind Wave pt 2”など、「死」をイメージする曲が多い気がしたのですが、実際のところはどうだったんでしょう。 小山田 やっぱり、「歳を取ってきたな」っていうのはありますよね。周りにも、割と親しくしてた人が亡くなってしまったり、親戚とか親の世代は結構死に始めていたりするし。そういう局面が、歳を取るとやっぱり増えてきますよね。曲を作っている時って、無意識なんだけど、あとで俯瞰して見ると、確かにそういう雰囲気が漂っているなとは思いました。 Cornelius 『いつか / どこか』 Sometime / Someplace (Live)
──今年6月から、21_21 DESIGN SIGHTで企画展<AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展>が始まって(10月14日まで)。その中のメインの音楽“AUDIO ARCHITECTURE”をコーネリアス名義で制作されています。 小山田 これは、展覧会のディレクターを務めている中村勇吾さんに誘われて。勇吾さんとは『デザインあ』も一緒にやっているんですけど、それ以外でもMETA FIVEとか、CMの仕事とか、結構色々やってきていて。今年は結構、展示ものが多いですね。<谷川俊太郎展>(東京オペラシティアートギャラリー)とか。 ──元々はどんな縁で始まったんですか? 小山田 最初は、息子の小学校の同級生のお父さんに、片山正通さんという建築とか内装……ユニクロの海外店舗のデザインなんかもやっている人がいて。今回の21_21 DESIGN SIGHTの会場構成も片山さんなんだけど。で、その人のワンダーウォールという会社のウェブサイトの音楽を頼まれて、サイトのデザインを手がけていたのが勇吾さんだったんです。それからしばらくして、『デザインあ』を一緒にやることになり、そこからよく一緒にやるようになったんですよね。10年くらいの付き合いになるのかな。 ──じゃあ、前作『SENSUOUS』を出した後くらい? 小山田 うん、そうですね。 ──企画展<AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展>のコンセプトに、「音楽は、音色や音域、音量、リズムといった様々な要素によって緻密にデザインされた構造物(アーキテクチャ)」とありますが、これはどこからきたのでしょうか。 小山田 『Mellow Waves』がリリースされてすぐくらいの時に、勇吾さんがコンビニで立ち読みをしてたらショーン・レノンのインタビューを見つけたらしいんですね。その記事でショーンが、「コーネリアスの音楽はオーディオ・アーキテクチャーみたいなものだ」って言ってたらしくて。そこから勇吾さんが、企画展のコンセプトを思いついて僕に頼んできたというのが、そもそもの経緯だったんです。まあ、言われてみたらそんな感じは自分でもするし、自分の音楽に限らず、音楽ってある意味では構造物というか。そういうところってあると思うし。 Cornelius ──なるほど。じゃあ、中村さん的には最初から小山田さんの音楽ありきの企画展だったわけですね。 小山田 うーん、どうなんだろう。勇吾さんとしては、そのショーンのインタビューを読んでコーネリアスに音楽を頼むのは、ちょっとベタ過ぎるかなと一瞬悩んだみたいですよ(笑)。他でもずっと一緒にやっていますしね。でもまあ、そもそものアイデアはそこから来てるし、それで僕に頼んでくれたと言ってましたね。 ──曲作りはどのように行ったのですか? 小山田 最初に、勇吾さんからキーワードみたいな物をとにかく沢山もらって。それを僕が構成して歌詞のようなものを作り、それに沿って曲を作っていきました。 ──なるほど。クレジットには中村さんが「作詞」となっていましたが、言葉を選んだのは中村さんで、それを曲の中で配置していったのは小山田さんということですかね? 小山田 うん、そうですね。 ──トラックの作り方は、普段と同じ? 小山田 そうですね。ただ、この曲は企画展の最初の部屋で、生演奏をしなくちゃいけなくて(展覧会ではその様子を巨大なスクリーン3面で見せている)。バンドで演奏するということを、トラック作りの段階から意識して作ったというのは、いつもとは少し違っていました。最近は、他の曲でもうっすらとバンドのことを意識して入るんですけど、この“AUDIO ARCHITECTURE”という曲では、4人(あらきゆうこ、堀江博久、大野由美子)のパートというのをよりはっきりと意識して作りましたね。 ──さっきのショーンの話じゃないですが、小山田さん自身は曲の作り方として「構造物」的なところを意識しているところはありますか? 小山田 音をどういう風に配置して、どう組み合わせていくかみたいなことはかなり意識しているので、「構造物」に近いところはありますよね。例えばキックが柱で、シェイカーやハットが装飾的であるとか。それぞれの音には色んな役割があって、それで曲が構成されていて。いかにそれが面白いバランスで出来ているかは意識していますね。 ──そういうことを意識するようになったのは、やっぱり『Point』の頃から? 小山田 その前から徐々に変化はありましたが、アルバムでいうとその頃から、はっきりと音で表れている気がします。 ──先日、マニュピレーターの美島豊明さんが、『Mellow Waves』のオーディオファイルを開いて、制作過程を明かすというイベント(「シンセの大学」)があって、参加してきたんですが……。 小山田 そんなことやってたんだ(笑)。 ──それが本当に興味深くて。音の配置をグリッドからズラしていくというのを、かなり意図的にやっているんだなって。あと、ベースやアコギも生楽器ではなく、ソフト音源を使っているんですね。 小山田 ほぼ全部そう。エレキギターは自分で弾いているけど、アコギは弾いていたり弾いてなかったり。外部の音は、声とエレキくらいで後はほぼコンピュータの中ですね。エレキはまだニュアンスをソフトで再現するのが難しいっていうのと、後自分で弾けるっていうのもあるかな。 Cornelius ──じゃあ、ニュアンスさえ再現できればエレキを打ち込んじゃってもいいかなっていう感じ? 小山田 うん、全く平気。その方が配置も楽になったりするしね。例えば、普通だったらギター1本で弾けるフレーズを、1音ずつ分けてLRで振ったりしてるんだけど、そういうのって手弾きでやっているとけっこう面倒臭いんですよ。最初にシミュレートして、それから録って配置してみたいな手順が、最初から打ち込めればだいぶ楽になるし(笑)。思いついたアイデアがより早く形に出来るのであれば、そっちの方が良いかなっていう気持ちはありますね。 ──逆にいうと、もうソフト音源でもベースやアコギなどはそこまで再現性が上がっているということなんですね。 小山田 そうですね。以前は弦楽器の再現って一番難しくて、ピアノくらいしか使えなかったんだけど、特にベース音源のここ最近の進化はすごいなと思う。最初は僕が自分でベースを弾いてみたりもしたんだけど、やっぱり音作りが難しくて。ソフトの方が最初からいい感じの音になっているし、しかもそれを瞬時に選べるから楽なんですよね。 ──しかし、そうやって構造的な面白さを追求して作った楽曲を、バンドで再現するとなると、イレギュラーなフレーズが満載だから高度なテクニックが必要なんでしょうね。 小山田 きっと、普通に演奏するだけでもかなり難しいと思うんだけど、歌いながら演奏することが多いから、それが大変ですね。歌っているリズムの裏で、フレーズを弾くとか、フレーズとは別の拍で歌うとか(笑)。そういうことが要求されるので。 ──先日、『デザインあ』のサントラもリリースされました。<デザインあ展>でやっていることと、<AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展>と共通する部分はありますか? 小山田 <AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展>はコーネリアス名義なので、「何をやってもいい」という感じだけど、『デザインあ』はあくまでも子供番組なので、そういうテイストは意識してやっていますね。番組のトーンとか、表現したいことをちゃんと説明できるという「機能性」みたいなものは意識しています。それがイコール、デザインということなんでしょうけど、それが明確に伝わるようには作っていますね。 Cornelius – デザインあ CD
──とはいえ、小山田さんらしさというか、どの曲を聴いてもすぐに「これはコーネリアスの音だな」って分かるじゃないですか。それって何でしょうね。 小山田 音色というのもあるでしょうけど、その組み合わせ方がやっぱり独特なんでしょうね。 ──ジャケットは、今回も中林忠良さんの版画ですが、この作品を選んだ理由は? 小山田 うーん、なんとなくとしか言いようがないんだけど(笑)。これはおそらく70年代くらいの作品なんだけど、標的のような円形があって。おそらくコラージュの跡だと思うんだけど、ここに丸いステッカーを貼った状態でパッケージしていて。そうすると太陽というか月というか、なんかそんな風に見えていいかなと。 ──なるほど。 小山田 それから『Ripple Waves』って「波紋」みたいな意味なんですが、『Mellow Waves』から波及してきたものっていう。なんか、いろんな人が関わっているから、絵の中に人が複数いるような感じとかもいいのかなとか。もともと中林さんが、どんな意味でこの作品を作ったのかは分からないけど、画集の中からこれがアルバムのイメージに合っているかなと思って選びました。
Cornelius
『Ripple Waves』
──アルバムの他の曲についてもお聞きしたいのですが、まず1曲目の“Audio Check Music”は、どんな意図で作った曲ですか? 小山田 これはTechnics(テクニクス)のターンテーブル(SL-1200GR)を買って、応募するともらえる曲。オーディオチェック用のレコードとして作ったんですよ。ステレオの状態をチェックして、バランスを整えるための音楽というか。 ──この曲と、“Inside a Dream”に入っているナレーションはサンプリング? 小山田 “Audio Check Music”は、英語ヴァージョンと日本語ヴァージョンがあって。『Ripple Waves』に収録されているのは英語で、日本語はターンテーブルを買った人じゃないと聴けないんですが、それは60年代に東洋化成が作っていたオーディオチェックのレコードからサンプリングして作りました。こっちはそれを英訳して、LEO今井くんにナレーションをお願いしました。喋り方や声のトーンも、ちょっと昔っぽくしてもらって。40代くらいの硬めのアナウンサーが話しているような感じというか。 ──“Inside a Dream”には複数の人の声が入っていますね。 小山田 最初に喋ってるのはうちのおじいちゃんなんですよ。おじいちゃんはNHKのアナウンサーだったんだけど、おじいちゃんが30代の頃に喋ってるラジオ番組がカセットで残ってて。そこからサンプリングしてます。それと、自分が3歳くらいの時の声も混じっているんですけど、それは僕の叔父さんが俳優というか歌手みたいなことをやっていて、結婚した時に親戚全員でTVに出ている映像があって。そこで親戚が喋ってる声とかがあったから、そこから声を抜いて作りました。 ──そういう声が残ってるってすごいですよね。 小山田 そうですね。特に、僕らの世代のおじいちゃんだと、若い頃の声が録音物として残ってるのは珍しいかもしれない。 ──新曲“Sonorama 1”は、いつ頃、どのようにして作った曲? 小山田 これは割と最近の曲ですね。次のツアーで新曲やりたいなと思って。ライブ用に作った曲です。 ──「Tiny Desk Concert」の音源も入ってますが、出演してみてどうでしたか? 小山田 NPRという国営放送のビルがあるんですが、そのうちの1フロアが音楽の部署になっていて。結構広いところなんだけど、その一角がライブスペースなんです。オフィスだからみんな普通に働いていて。そのコーナーで「せえの」で演奏するっていう。「何時からタイニーデスクやるよ」みたいな告知もしてくれるから、他のフロアの人とかも観に来ているんだけど、大きな音は出せないし、機材もないから歌もほぼ地声みたいな感じ。マイクは2本くらいしか立ってなくて、ラインも含めると4チャンくらいでレコーディングするという。映像もなしでアコースティックでっていうの、普段はやってないから大変でしたね(笑)。 Cornelius: NPR Music Tiny Desk Concert
──あんな形でコーネリアスを聴くこともないから、とても新鮮でした。 小山田 フロアには、音楽のジャンルごとにエキスパートみたいな人がいて。一番偉い人が現代音楽やクラシック担当で、タイムデスクをやっている人がオルタナ担当、みたいな。他にもワールドミュージック担当、ブラックミュージック担当、ブラジル担当とかいて、棚にはレコードや音楽関連の書籍や資料も沢山あって、すごくいい雰囲気でしたね。本当の音楽好きがやっているという雰囲気が伝わってくるというか。 ──アルバムの後半には、『Mellow Waves』の楽曲を再構築した他アーティストの作品が収録されています。これは何か決まりごとはありました? 小山田 いや、特にないですね。『Mellow Waves』の素材を自由に使ってもらって、好きなように再構築してもらいました。こうなってくると、「リミックス」ともいえないというか。自分の歌を入れている人もいたり、コラージュみたいにする人もいたり。どちらかといえばコラボ寄りというか……。 ──リミックスとカヴァーとコラボの中間みたいな。 小山田 そうそう。人選も、時代とかジャンルとかばらけてる方がいいなと思いながら、自分が好きな人たちにお願いしました。 ──どれも興味深かったんですけど、フェルトのローレンスは中でも一番ぶっ飛んでましたね。 小山田 ローレンスは驚きましたね(笑)。でも、きっと変わったものになるだろうなと思ってた。すごく変わった人っていうのも知ってたからね。交流は全然ないんだけど、高校生くらいからフェルトは聴いてて大好きだったし、ローレンスのリミックスなんて、きっとどこにも存在してないだろうと思って(笑)。頼んでみたら、やってくれたので嬉しかったですね。 ──それにしても、10年もインターバルがあったとは思えないくらい、ライブもレコーディングも勢力的で。このペースだとニュー・アルバムも早く聴けるんじゃないかと期待が高まります。 小山田 そうですね、いくつかアイデアもあるし。ツアーが終わったらやりたいなあと、ちょっと思ってます(笑)。 Cornelius

photo by 横山マサト

RELEASE INFORMATION

Ripple Waves

[amazonjs asin="B07DV5NSPR" locale="JP" title="Ripple Waves"] 2018.09.19(水) ¥2,400+税/WPCL-12923 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

Mellow Waves Tour 2018

2018.10.03(水) 福岡・国際会議場 メインホール OPEN/18:30 START/19:00 指定席 ¥7,800(税込) INFO:BEA 092-712-4221   2018.10.05(金) 大阪・オリックス劇場 OPEN/18:30 START/19:00 指定席 ¥7,800(税込) INFO:清水音泉 06-6357-3666   2018.10.08(月祝) 東京・東京国際フォーラム ホールA OPEN/16:30 START/17:30 指定席 ¥7,800(税込) INFO:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999   2018.10.19(金) 岡山・岡山市立市民文化ホール OPEN/18:30 START/19:00 ¥7,800(税込) INFO:FIASCO 086-222-1015 2018.10.21(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール OPEN/17:15 START/18:00 指定席 ¥7,800(税込) INFO:JAILHOUSE 052-936-6041   2018.10.24(水) 北海道・札幌市教育文化会館 大ホール OPEN/18:30 START/19:00 指定席 ¥7,800(税込) INFO:WESS 011-614-9999   2018.10.27(土) 宮城・電力ホール OPEN/17:00 START/18:00 指定席 ¥7,800(税込) INFO:ジー・アイ・ピー 022-222-9999 詳細はこちら

ヘリオス・グルーヴィーナイト vol.28

2018.10.13(土) 富山・南砺市福野文化創造センター 円形劇場ヘリオス OPEN/17:30 START/18:30 1階(スタンディング)¥5,000(税込)/ 2階(指定席)¥5,500(税込)
INFO:南砺市福野文化創造センター「ヘリオス」 0763-22-1125 *小、中、高校生、大学生、専門学校生を対象に 当日、学生証をご提示の方に¥1,000キャッシュバックします。 ※「ヘリオス・グルーヴィーナイト vol.28 富山」は対象外です。 
詳細はこちら
 

Mellow Waves Tour 2018 – Taipei


2018.11.09(金)
Legacy 台北 
OPEN/19:00 START/20:00 
NT$ 2,000(前売)/NT$ 2,200(当日) 你好我好有限公司 http://www.btpbtp.com/Cornelius.html 
*日本からはメールでの予約が可能。


Clockenflap 2018


2018年11月9日(金)~11月11日(日)(※Corneliusは11日に出演) 
Central Harbourfront Hong Kong 
オフィシャルHP http://www.clockenflap.com/
 チケットインフォメーション https://www.ticketflap.com/clockenflap2018 詳細はこちら

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ホセ・ジェイムズが語る、ビル・ウィザースに魅了された理由とアルバムに込めた想い

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ロバート・グラスパー(Robert Glasper)らとともに新世代のジャズ・シーンをけん引してきたシンガー、ホセ・ジェイムズ(Jose James)。彼が最新アルバム『リーン・オン・ミー』を完成させた。この作品は、今年生誕80年を迎えた伝説的なシンガー、ビル・ウィザース(Bill Withers)の楽曲に新たな解釈を加えたトリビュート・アルバム。ほぼ全曲が打ち合わせなしの一発録りで進められ、曲ごとに表情を変えていくホセ・ジェイムズのボーカルと、ネイト・ スミス(Dr)、ピノ・パラディーノ(B)、クリス・バワーズ(Key)、ブラッド・アレン・ウィリアムス(G)からなる鉄壁のバンドや、黒田卓也&コーリー・キングによるトランペット、そしてゲスト・ボーカルとして参加したレイラ・ハサウェイの歌声との掛け合いが楽しめるものになっている。 Lean on Me: José James Celebrates Bill Withers (preview)
また、彼はアルバム・リリースに先駆けてトリビュート・ライブも始動。日本でもアルバム・リリース後の10月末~11月に公演が予定されている。作品を完成させて日本にやってきたホセ・ジェイムズに、アルバムの制作風景と敬愛するビル・ウィザースへの思いを聞いた。

interview:ホセ・ジェイムズ

――今回の一連のプロジェクトは、どんな風にはじまったものだったんですか?  デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、レナード・コーエン(Leonard Cohen)、プリンス(Prince)……。僕はここ数年で自分のヒーローをたくさん失ってしまって落ち込んでいた時期があったんだ。「これから、音楽の未来ってどうなるんだろう?」って。そういうとき、音楽業界では決まってトリビュート・アルバムを出すと思うんだけど、そうやって偉大な故人を尊ぶのは素晴らしいことであると同時に、「だったら、生きているうちにトリビュートをして、彼らへの愛を伝えるべきなんじゃないか?」と思ったんだ。それが今回のプロジェクトのはじまりだよ。以前から僕はライブでビル・ウィザースの曲を3曲ほどメドレー形式で披露していて、観客からも「これをぜひレコーディングしてほしい」と言われていたし、今年はちょうどビルの生誕80周年。だから、タイミングとしてもバッチリだと思ったんだ。まずはライブでトリビュートをはじめたら、その噂を聞きつけたブルーノート社長のドン・ウォズ(Don Was)から「アルバムを出さないか?」と声がかかって、彼がプロデュースしてくれることになった。今回、ツアーとアルバムを通して『リーン・オン・ミー』というタイトルを付けているのは、この曲が持つメッセージがすごく今の社会に意味を持つものだと思ったからだね。異なる価値観を持った人たちがひとつのコミュニティが団結することを通じて、ポジティブなところに向かっていくような雰囲気が、この時代に必要なことだと思ったんだ。 ――今回はリヴィング・レジェンドへのトリビュート盤とあって、アルバムの制作前にビル・ウィザース本人にも会うことができたんですよね? うん、とても貴重な経験だった。僕らは多くの場合、アーティストを写真やMVやライブで知ることになるわけだけど、それって実はアンフェアな話で、本当のその人の人間性とは違っていたりもする。僕もビルに実際に会う前は、彼がどんな人か分からないからナーバスになっていたよ。彼が世に送り出した楽曲をライブで歌うだけなら一回限りでいいけれど、今回は作品としても残すわけだからね。それに、聴いた人に何か言われるだろうことも分かってた。僕だって、誰かが「トリビュート作品をつくっている」という話を聞いただけで、「どうせよくないだろう」と思ってしまうことがあるからね(笑)。でも、そうした不安が、ビルに会って取り除かれたんだ。実際に会った彼はとても謙虚で控えめで、でもクールで頭がよくて――。何より愛がいっぱいある人だった。僕が「こんな気持ちで企画を考えたので、トリビュートしてもいいですか?」と伝えたら、「もちろん。全部私が書いた曲だから、好きにやってもらって構わないよ」と言ってくれた。「音楽は『シェアするもの』だし、みんなが楽しんで、踊ってくれたらそれでいいんだ」って。そのとき、「大好きな彼の楽曲を、僕自身が自由に表現すればいいんだ」と感じて、すごくほっとしたのを覚えているよ。 ――そうすると、選曲でも色々と考えたことがあったんじゃないですか? そう、考えすぎるぐらい考えた。最初に彼の9枚のアルバムからそれぞれ数曲ずつ入れようとリストを作ったら、「これは絶対に外せない」という曲だけで60曲ぐらいになってしまって(笑)。それで必死に40~50曲に絞ったんだけど、その作業だけで半年ぐらいかかったし、そこから進まなくなってしまった。それでドン・ウォズに相談したら、「どの曲が一番君にとって大切かを考えてみたら?」とアドバイスをくれて、そこから本格的にリストを見直していったんだ。今回収録されたのは、その結果残った曲たちだね。 ――つまり、今回のアルバムはホセさんにとって思い入れのある楽曲を通して、ビル・ウィザースの魅力を広く紹介するような作品になっているんですね。 その通りだと思う。そうなってくれたら嬉しいと思ってるよ。 ――じゃあ、具体的にはどんな基準で選んでいったんでしょう? それぞれに選んだ理由があるよ。たとえば“グランドマザーズ・ハンズ”だったらこうだね。子供は親には反発することもあるけれど、おじいちゃんやおばあちゃんは孫を甘やかしてくれる。もしくは自分の子供と上手くいかなかった分、孫と接することで自分の間違った子育てを取り戻したいのかもしれない(笑)。僕自身も、「キャンディはいる? TVを観る?」みたいに、祖父や祖母にはいい思い出がたくさんあるんだ。この曲には、僕自身も小さい頃をもう一度思い返すような瞬間があった。そういう曲であることが素晴らしいと思ったんだ。ビル・ウィザースって、本来クールにはならない日常の出来事も、すごくクールなものにしてしまう魅力がある人だと思う。友情をストレートに歌うとダサくなる場合もあるけれど、彼が歌ったら不思議とクールになるんだよね。そういう魅力を伝えられると思ったんだ。 Bill Withers - Grandma's Hands (Audio)
――なるほど、他の曲はどうですか? 他の曲だと……“ザ・セイム・ラヴ・ザット・メイド・ミー・ラーフ”は、シンガーとしての挑戦という意味で選んだ曲だね。ビル・ウィザースって、実はオペラシンガーぐらいのテクニックを使っている曲があって、この曲もすごく難しい。たとえば“ラヴリー・デイ”でも、ただずっと《ラヴリーデイ~》と歌っているようにも聞こえるけれど、そこでもロングトーンの中で感情のうねりを表現していくという難しい技術を使っている。派手さはないけれど、シンガーとしてのテクニックが高い人なんだ。あと、彼は南部の人だから、母音の発音の仕方がかなり特徴的なんだ。すごく細かいことかもしれないけど、ボーカルの先生にその部分も細かく教えてもらってレコーディングに臨んだよ。 José James - Same Love That Made Me Laugh
José James - Lovely Day ft. Lalah Hathaway ――それはビル・ウィザースの魅力を可能な限り伝えたい、という思いからですか? その通りだね。 ――今回の制作作業では、あなたとビル・ウィザースの音楽との関係を改めて振り返るような機会もあったかもしれません。あなたはビル・ウィザースの音楽から、どんなことを学んだと思いますか? それは「誠実さ」のようなものなんだと思う。ビル・ウィザースの曲には明るくて楽しい曲もあるけど、たとえば“ベター・オフ・デッド”では、「俺なんか死んだ方がましだ」と歌っている。自分を美化していない曲が多いと思うんだ。「自分も埃まみれで生きてきたけど、君もそうなんだよ。みんなそうだけど、だからこそ一緒になってやっていくことが大事なんだ」って。真のアーティストって、自分のことをすべて見せていく人たちだと思うんだ。今のこの世の中、将来のことを考えたときに、「僕も君も完ぺきな人間じゃない。だからこそ一緒にやっていく必要がある」というメッセージは、とても心に響くものだと思うんだ。 José James - Better Off Dead
――ホセさんは最新の要素を取り入れるときは、それがどんな歴史の中にあるものかを考えてきたと思いますし、逆に過去の音楽を題材にするときには、その音楽と現在とを繋ぐことを意識してきたと思います。今回、ビル・ウィザースの過去の名曲を今あなたがカヴァーする作品だからこそ、意識した部分というと? ただのコピーにはしたくないという気持ちは強かったよ。たとえば映画の『ブレードランナー』もそうかもしれないけど、過去の作品をリメイクするときに、監督が代わって、ちょっと照明を変えただけでは、なかなかオリジナルを超えることはできないよね。“エイント・ノー・サンシャイン(消えゆく太陽)”なんかは、これまで一番カヴァーされてきた曲のひとつだと思うから、「ああ、またホセ・ジェイムズがカヴァーしてるんだな」とは思われないようにしたかった。「2018年に作られた曲にしたい」ということはドンにも最初に伝えて、彼がそこは上手くコントロールしてくれたと思う。オーガニックで温かい昔ながらの手触りがありつつ、同時にモダンなミックスにすることによって、しっかりと今の曲としての魅力を表現することができたと思うよ。 José James 'Ain't No Sunshine' | Live Studio Session
――日本でもこのアルバムがリリースされて、その後トリビュート・ライブが行なわれますね。これはどんなショウになりそうですか? まだ詳しくは言えないんだけど、最初はみんな知っているビル・ウィザースを入口にしつつ、最終的にはものすごくディープなところまで行くような、感情的な高まりのあるステージを見せられるんじゃないかと思う。すでに行なったワシントンDCのケネディセンターでのライブでは、お客さんもビル・ウィザースのファンが多くて、自分にとってのリトマス試験紙的な場所だったんだけど、そこでも会場の一体感が感じられる、とてもエモーショナルなショウにすることができた。日本でもそんな魅力が感じられるライブになると思うよ!

RELEASE INFORMATION

リーン・オン・ミー

ホセ・ジェイムズ 2018.09.28(金) ホセ・ジェイムズ 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

ホセ・ジェイムズ celebrates Bill Withers

2018.10.31(水) 1st Stage OPEN 17:30 START 18:30/2nd Stage OPEN 20:30 START 21:30 ビルボードライブ大阪 Service Area:¥8,900/Casual Area:¥7,900  2018.11.01(木)、11.02(金) 1st Stage OPEN 17:30 START 19:00/2nd Stage OPEN 20:45 START 21:30 ビルボードライブ東京 Service Area:¥8,900/Casual Area:¥7,900  ホセ・ジェイムズ(vo) 大林武司(p、key) ベン・ウィリアムス(b)  ネイト・スミス(ds) ブラッド・アレン・ウィリアムス(g)
詳細はこちら

text by 杉山仁 photo by Kohichi Ogasahara

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Attractions×ハーレー|コラボ曲「Instant Jam」のMV撮影現場レポ

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Attractions×ハーレー
ハーレーファミリーの“異端児”、『ストリート750(XG750 Street® 750)』と『ストリートロッド(XG750A Street Rod®)』をフィーチャーしたプロジェクト「STREET×STREET」。2018年の「STREET×STREET vol.02」ではスタイリッシュな音楽性で注目を集める福岡の4人組バンドAttractionsと、アーバンで軽快なイメージが印象的な2モデルの魅力が融合し、ストリートから新たな風が生まれた。そのキャンペーンソングとなる“Instant Jam”のMV撮影が、2018年9月某日、都内某所で行なわれた。 Attractions×ハーレー 先日公開されたインタビューでメンバーが語ってくれた通り、Attractionsが手がけた今年の「STREET×STREET vol.02」のキャンペーンソング“Instant Jam”は、バンドが新たな音楽性を追求して完成させた楽曲。それがハーレーファミリーに新鮮な価値観をもたらした『ストリート750(XG750 Street® 750)』と『ストリートロッド(XG750A Street Rod®)』のイメージとシンクロし、新しい場所へと辿り着いた。そうしたキャンペーンソングのテーマに合わせて、今回はMVでも斬新なギミックが取り入れられ、「デジタル」と「アナログ」を融合させたユニークな映像表現が追求された。 Attractions MV「Instant Jam」

貴重なMV撮影現場のレポートをお届け!

まずは撮影スタジオにメンバーが登場すると、後に今回のMVで活かされることになる、それぞれのソロカットを撮影。TARO(Vo)、TAKE(G)、JUN(B)、AKIRA(Dr)の4人が影が際立つクールなライティングの中で、実際に歌や演奏を繰り広げながら、歌唱/演奏シーンを撮影していく。フロント、サイド、斜めロー、ミドル、寄り、引きなど様々なバリエーションが映像に収められた。 Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー こうした各メンバーの演奏時には、他のメンバーもスタジオ内でモニターを観ながら様子を見守り、ときには「よりライブ感を出す」ために、ボーカルのTAROが他メンバーの熱いプレイに合わせて踊ったり、拍手をして演奏中のメンバーを盛り上げたりする瞬間も。こうした撮影時の雰囲気は、完成した演奏シーンでの熱い表情に反映されているはずだ。 Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー 続いてメンバー全員が集結し、スタジオにアンプを持ち込んでバンド全員での演奏シーンの撮影がスタート。 Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー 今度は4人の演奏が互いに連動し、映像にもバンドならではのグルーブが生まれていく。4人が横一列に並んだ際のスタイリッシュな佇まいは、まさに『ストリート750』や『ストリートロッド』の魅力とも繋がるような雰囲気だった。 Attractions×ハーレー 昼過ぎにはいよいよ、2台のハーレーが撮影スタジオに登場! 『ストリート750』と『ストリートロッド』はコンパクトでありながら、広いスタジオ内にあっても重厚な存在感を放つ。早速メンバーとハーレーとが一緒になって撮影がスタートし、両者が映像でも互いの魅力を引き立て合う姿が印象的だった。 Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー ハーレーのサイドミラーにメンバーの顔を映すなど、技アリの映像美を撮影する瞬間や、ハーレーの各パーツの魅力が改めて感じられるような映像も収められた。 Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー Attractions×ハーレー

気になる休憩中の様子や後半撮影は?

続きをSTREET×STREET vol.2でチェック!

Attractions

Attractions×ハーレー 2016年結成。UKロックを原点に、俄かに全国から熱い視線を集める福岡のニューストリートカルチャーの一翼を担うバンド。福岡・大名にあるアパレルショップ、BINGOBONGOグループが新たに立ち上げた音楽レーベル〈GIMMICK MAGIC〉の第一弾アーティスト。 2017年8月28日、福岡発世界基準の音を鳴らすべくデビュー曲“Knock Away”を配信リリース。Spotifyでは「Early Noise」「Tokyo Rising」など数々の主要プレイリストを網羅。異例の60万回再生を超え、Apple Musicでは「今週のNEW ARTIST」に大抜擢。 2018年10月4日(木)発売のEP『Attractions』リリースイベントではyahyel、韓国からKIRINを招きチケットは即ソールドアウト。 2018年3月の<サウス・バイ・サウスウエスト>に出演。ライブを観た現地関係者からのラブコールで急遽追加公演が決定するなど、当地でも反響を呼んだ。6月13日に新曲“Leilah”を配信限定リリース、この夏には<SUMMER SONIC 2018>や<SUNSET LIVE 2018>など大型フェスへの出演も行った。 STREET×STREET vol.02 FREEDOM MAGAZINE

Text:杉山 仁 Photos:横山 マサト

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インタビュー |謎に包まれたトラックメイカー PSYQUI(サイキ)の素顔に迫る

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クラブシーンで話題のトラックメイカー、PSYQUI(サイキ)。 彼とは古い友人関係なんだけど、これまで彼がバンドマン、サウンドエンジニア、コンポーザーと、徐々に表舞台から姿を消す姿を見てきた。とても“苦労”していたと記憶している。 2016年1月、「PSYQUI」名義の活動開始。同年末に開催された『BEMANI NEW FACE コンテスト』ではkz賞を受賞し、瞬く間に注目を浴びる存在となった。 今風の売れっ子トラックメイカー……だと感じる人もいるかもしれないが、今から約4年前、大衆酒場で顔を真っ赤にしながら、彼は以下のように話していた。 「別に音楽で固執してるわけではないんだよね。楽器が好きだし、音へのこだわりが半端いないだけで、ずっと辛いわ。自分にはこれしかないってのもあるけど」 彼は続けた。「自分はずっと裏方でいいと思ってるけど、正直どこにモチベーションおけばいいのか分からないんだよね」 (こんなの、本当に音楽が好きで活動している人が見たらFUNGAIするかもしれない……。) そして今年8月。そんなPSYQUIが、オリジナルアルバム『Your voice so…』を発表した。 これまでの“苦労”で得たであろう音楽性のエッセンスが随所に散りばめられていて、予測不能な展開に従い続ける楽曲が連なる。数年間で、彼の心境はどのように変化したのだろうか。 そしてなぜ、どん底のモチベーションから「PSYQUI」を立ち上げたのか。 8月31日。バンドマン時代に足繁く通ったという御茶ノ水駅前で彼を待った。

DTMのこと、「ドウテイ・チンチン・ミュージック」って呼んでる

——お待たせしました。お久しぶりです。 PSYQUI 久しぶり〜。 ——元気でした? PSYQUI うん、元気だったよ。 ——新譜の『Your voice so...』聴きました。巷ではFuture Bassと評されてますね。そもそもFuture Bassの定義が曖昧なので、最適な表現ができているか難しいですが。 PSYQUI 過去の多様なジャンルがクロスオーバーされてごった煮になったジャンル……というので「Future Bass(フューチャーベース)」。それが共通見解だと思う。今のところはね。 ——「Feature(フィーチャー)」ではないんですよね。ちなみに、日本のFutureBassの先駆者ってご存知です? PSYQUI Pa's Lam SystemさんRemixの“CAND¥¥¥LAND(tofubeats)”じゃないかな。これがネットでバズったことで、一気に広まった感がある。 ——なるほど。あと、つい先日配信開始した星野源の“アイデア”は、2番がジュークサウンドになったり。あれも言ってしまえばFuture Bassなのかなって。 PSYQUI 国内のFuture Bass界隈がジュークサウンドを引用することが多くて、あれが王道のFuture Bassだと認識する人が増えたって背景があると思うんだよね。 ——独特のリズムですよね。ドンッドンッドドンドッ、ドンッドンッドドドンドッみたいな(笑)。 PSYQUI そうそう。ジュークは確か、昔から一部で流行ってはいたよ。クラブサウンドとしてもっと盛り上がると思っていたんだけど、全然盛り上がらなかった。だから、今になって湧いてるんだと思う。 星野源 - アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino - IDEA
——なるほど。PSYQUIさんの掲げる曲も(月並みですけど)また独特ですよね。具材が豊富というか。 PSYQUI それは意識してるかも。Future Bassってある意味、ドウテイ染みた発想がある程度許される分野だと思うんだよね。 ——ドウテイ染みた発想?(笑) PSYQUI うん。「あれもしたい、これもしたい」って、いろんな要素を詰め込んでおけばカッコよく聴こえる錯覚的な。そういうの、ドウテイがやりがちだからさ。 ——あはははっ! PSYQUI 俺よく「ドウテイ・チンチン・ミュージック」って呼んでるんだけど。俺の曲がそうなんだけど、本当の意味のDTM。例えるなら、BPM早くて、煌びやかなサウンドで、カッコいいコード進行を詰め込みまくり。かと思ったら、次のセクションで情緒不安定かってくらいガラリと雰囲気が変わる。決してお上品ではない構成だよね(笑)。

長年温め続けたプロジェクト「PSYQUI」

——PSYQUIを立ち上げてからの反響をどう受け止めてますか? PSYQUI 好スタートがきれたかな。2016年末の『BEMANI NEW FACE コンテスト』も、公募に受かるとは思っていた。 ——何を基準にしていたんですか? PSYQUI 最近、クラブミュージック界隈でブイブイ言わせてる友人がいて、受賞した“Still Lonesome”が彼のキラーチューンに並ぶ曲だったから。その評価基準は、長年エンジニアをやってきて育った耳だね。客観的に自分の曲を評価できたと思ってる。
明らかに光量が足りなかった
——PSYQUIを立ち上げる前に、「俺はずっと裏方で〜」とか話していたじゃないですか。 PSYQUI 「PSYQUI」は5年前から企画していて、あのときはタイミングじゃなかった。絶対に売れてやる! と見切り発車で活動開始するよりも、冷静に確実に、「PSYQUI」が人目につくためのキャリアを積んだ方が得策だと思ってたんだよね。 ——かぁ〜、なるほど。 PSYQUI Future Bassがやりたくて、ずっとシーンを追い続けてたかな。それで一昨年、『BEMANI NEW FACE コンテスト』の楽曲募集の告知を見て、ピンと来た。今しかないって。 ——PSYQUIの曲は、“中の人”の人生の集大成でもあるわけですか。 PSYQUI そうだね。まだまだだけど。

従来のシーンをぶち壊したい

——今、PSYQUIなりにFuture Bassを体現できてます? PSYQUI どうだろう。まだまだ表現したい音楽としては練度が低いかな〜。 ——練度? PSYQUI 全然スマートじゃないんだよ。音数が多くて濁ってるとかではなくて、理想に届かない。なんだろうな〜……PSYQUIの曲ってアイディア勝負のところがあって。 ——サウンド面で? PSYQUI そうそう。サウンドデザインとか、理想の境地に辿り着く気がしない。根本的な話をすれば、シンセを作っているメーカーとか、プラグインソフトとか、そういった物理的な技術面ですら天井が見え始めていて。 ——だからオリジナリティ溢れるサウンドなんですね。それを深掘りしていくのがアーティストの使命なのかもしれないんですけど、今後理想のサウンドを体現することは……。 PSYQUI ないだろうね(笑)。 ——正解がなくて、半ばぬかるみのようなジャンルで、それでもPSYQUIが目指すものって? PSYQUI 従来のシーンをぶち壊したい。誰かが決めたジャンルの中で表現するのではなくて、誰もが音楽を楽しむシーンをつくりたい。 ——意外と、海外アーティスト的な思想なんですね。 PSYQUI うん。Mot ZoっていうUK出身のアーティストがいるんだけど、彼のことを、一生敵わないなっていうレベルで尊敬していて。彼も(きっと)アイディア勝負の人なんだけど、曲に対するサウンドデザインが外からみても完璧すぎるのよ。ジャンルもクソもない、本当のアーティストだと思う。
PSYQUI 俺もその壁を超えたい。もっともっとブラッシュアップしていい音楽をつくって、ジャンルの壁を超えたシーンとして、再構築したい。 ——なるほど。今はどんな風にブラッシュアップしてるんですか? PSYQUI あんまり面白くないかもだけど、適当な音を選んでる。どんな曲を作るにしても、まずワンセクション分のコードワークから作るんだけど、肉付けするにあたっていろんな音を当てはめてみる。シンセの音とか、サンプルとか、パズル的に組み立ててみる。 ——実は先日、作曲方法は「引き算」だと語るトラックメイカーの記事を書いたんですよ。10をつくって完璧な1にする引き算方式。でもPSYQUIさんは、0から1にする足し算方式で曲を作るんですね。 PSYQUI ああ〜、違うかも。足し算と引き算、両方同時にやってる感覚かな。コードワークという枠を作った段階で、いわゆる「1(100%)」の状態が見えてるんだ。そのなかで、どれだけ適当なパーツがハマるのかを吟味してる。今の状態だと、隙間が見えてしまっている。1は1でも、スカスカな1。または、1に限りなく近い0か2。 ——PSYQUIがバンドだったら即解散しそうですね。方向性の不一致という理由で。 PSYQUI そうかも。バンドやりたいなぁ。 ——割と網羅的に、一人でやってるんですよね。 PSYQUI うん。助力を仰ぐのは、女性にボーカルをお願いするときくらい。 ——素朴な疑問なんですけど、女性ボーカルが多い理由ってなんですか? PSYQUI ドウテイが喜ぶからだね。 ——ははは。それにしても、“Your voice so...”とか“ヒカリの方へ”とか、ボーカルの乗っかり方がすごい。キャッチーなメロディが、違和感なく歪なトラックにノッてる。 PSYQUI それ、こだわりポイントなんだけど、イントロのメロディができた時点でボーカルにお願いしてるんですよ。「これ、歌ってくれませんか」って。それに単純なトラックを投げるんじゃなくて、シティポップ的なメロウなオケを別で作って渡してる。“Your voice so...”の元オケとか、ブラックミュージックだった。 ——それはそれで聴いてみたい。 PSYQUI まだ渡せないけど、いつか公開しようかな。“Your voice so...”のBPMは174くらいなんだけど、歌録り用に作ったオケのBPMは140くらい。歌ってもらったら、それを早回しにしてノせる。だから、クラブサウンドにありがちな細切れボーカルってよりも、ちょっとメロウな雰囲気なノリ方になってるんじゃないかな。
——なるほど。日本のFuture Bass界隈でありがちなKAWAII系ボーカルではなくて、あえて低い声の女性ボーカルを採用している理由は? PSYQUI 外観的にも内観的にも、本物のFutere Bassがやりたいから。いろんなジャンルの音楽で、本物のサウンドをだしたくて。欲張りだね。 ——実はドウテイ? PSYQUI 気持ちはドウテイ。

フロアが盛り上がればそれでいい

——Future Bassというジャンルで、どうポジションを取っていこうと考えています? PSYQUI サウンド面でも立ち回り面でも孤立はしたいけど、さみしがり屋だからいろんな人を巻き込みたい気持ちはある。 ——ビジネスメンヘラですね。 PSYQUI メンヘラマインドでありたいよね。かといって、周りに足引っ張られるのは怖いから、独走態勢を保ちたい。 ——足を引っ張られる? PSYQUI 人としてよくないとかは当たり前なんだけど、シーンを大事にしすぎてる人たちが怖い。音楽をやり続けている人だと分かると思うけど、(悪い言い方だけど)邪魔になってしまう存在だよね。ブレイクスルーを許さない存在。そういう人たちをリスペクトできても、一緒にやってはいけない気がして。 ——あえて保守的な意見をしますけど、ブレイクスルーを許さないアーティストって、ファンがそうさせてることってあるじゃないですか。「メジャーデビューで遠くへ行ってしまった」と嘆く系の。 PSYQUI バンドにありがちだね。自分らしさを出そうと、変に海外サウンドにこだわって、日本ならではの良きエッセンスを失ってしまう光景を往々にして見かける。それが古いファンに伝わらない。 ——あるあるですね。 PSYQUI 俺たちトラックメイカーがバンドと違うのは、文化として成熟と衰退が早いのもあるけど、歌詞とか情緒を含む音楽を作っていないから、そこに感情が介入する余地がないことだよね。クラブサウンドが好きな人たちは、クラブサウンドが好きだから付いてきてくれてる。だから極端な話、俺たちがどうなろうが、フロアが盛り上がればそれでいいというか。

Listen to your voice so...

——ここまで話を聞いて思ったのは、プロデューサー力が高いな、ということです。 PSYQUI 才能なければ頭を使うしかないからね。PSYQUIを立ち上げてみて、ここまで育つのは、活動当初から計算していた。活動の仕方とPRの手法は変わらないんだけど、ハードウェア面で天井が見えてからは、アプローチの仕方ひとつで売れる/売れないが気がしてる。
資料を探すために通っていたヴィレッジヴァンガード
——よくタッグを組んでるSuchとはどういう関係なんですか? PSYQUI 昔からの音楽仲間だね。今から2年くらい前に、彼女から「本気で音楽やりたい」って連絡がきて。最後に声を聴いたときは、高くて黄色いような声で、今と全然違っていて。 ——それから、PSYQUIに必要な<声>になった。 PSYQUI そうだね。最初に作ったのが“Your voice so...”で、冒頭から<Plese tell me 声を>と言わせてるんだけど、あれはSuchに言わせてるよね。今のSuchの声を聴かせてほしいという思いがあって。低くてクールなキーで依頼したら、しっかりマッチした。 ——アルバムタイトルは、PSYQUI×Suchタッグの現在地を示すような意味でもあるんですね。 PSYQUI そうだね。それとSound Cloudの曲をTwitterでシェアしたとき、デフォルトで「Listen to」って文言が表示されるじゃん。最近だと「heve you heard」とか。 ——そうですね。 PSYQUI その仕様を裏手にとって、「あなたの声が聴いてる」とか「あなたの声を聴いた」になるような意味合いにもなるなと。 ——地頭いいなぁ……。 PSYQUI ははは。ドウテイぽいって言われるかと思った(笑)。

・PSYQUI(サイキ)

トラックメイカー。「MÚSECA」や「Arcaea」など各社音ゲーに収録実績を持ち、ニューカマーが引っさげる鮮烈Future Soundでフロアを揺らす。1st Album『Your voice so...』好評発売中。 sound cloud 詳細はこちら

撮影協力:ヴィレッジヴァンガ—ド お茶の水店

Interview&Text by 石川優太

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チャーチズと水曜日のカンパネラが対談!コラボ曲“OUT OF MY HEAD”で示した音楽の可能性

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水曜日のカンパネラチャーチズ(CHVRCHES)がコラボ曲“OUT OF MY HEAD”を発表した。 チャーチズは2013年にイギリス北部のグラスゴーからデビューし、すぐに<SUMMER SONIC 2013(サマソニ)>で初来日、フェスの常連でもある彼らは今年も<FUJI ROCK FESTIVAL’18(フジロック)>に出演するなど、日本でも高い人気を誇る3人組だ。 80’sを想起させるちょっと懐かしく、そこに新しさも含んだエレクトロニック・ミュージックに、甘い声ながら強い歌詞をぶつけてくるローレン・メイベリーの存在感は世界的に注目され、現在はニューヨークに移住している。 最新アルバム『ラヴ・イズ・デッド(Love Is Dead)』は、アデル(Adele)やベック(Beck)のアルバムを手掛けてグラミー賞最優秀プロデューサー賞を受賞したグレッグ・カースティンと制作し、話題沸騰中だ。一方、海外のフェスにも進出している飛ぶ鳥を落とす勢いの水曜日のカンパネラは、今年はコラボ・イヤーを公言。 フランスのバンドMoodoïdとのコラボ曲“マトリョーシカ”に続き、今回リリースされたチャーチズとの“OUT OF MY HEAD”は、3年前から始まった交流がようやく実を結んだ楽曲となった。

Interview:水曜日のカンパネラ×チャーチズ(CHVRCHES)

——まず、今回一緒に“OUT OF MY HEAD”で共演するようになった経緯を教えて下さい。 ローレン・メイベリー(以下、ローレン) 日本には何回も来ているけど、すごく早い段階から自分たちのことを受け入れてくれた国なので、とても日本を大事に思っていたのよね。それで「是非、日本で何か面白いコラボレーションをしてみたい」と日本のレーベルのスタッフに相談してみたところ、候補として送ってもらったのが水曜日のカンパネラの音楽だったの。そこからMVを観て、「彼女、わっ、めっちゃクールじゃない!」って思って、すごく大好きになった。そこで自分たちの音楽を送って聴いてもらったのが3年前かな? ——どの曲を気に入っていたか覚えていますか? ローレン 曲名はよく覚えていないけど、パフォーマンスしている動画を見せてもらったの。ファッションが素敵だと思った。あと、コムアイの動きや歌から感じられるエネルギーに私たちがやっていることと通じるものを感じた。コラボレーションをする上で大事なのは、クリエイティビティの部分や、その人が発するエネルギーや個性という部分で共感できるものがあることだと思っているから、彼女を見た時に、「彼女なら自分たちの意図をわかってくれるはず」と思ったし、共演したら楽しいだろうと思ったの。 コムアイ ありがとう。 マーティン・ドハーティ(以下、マーティン) 第一印象は、まず声がいいと思った。僕が一人のリスナーとして惹かれる声なんだよね。コムアイが歌うのを聴いて、彼女の歌い方なら自分たちが取り組んでいたトラックに、何か面白いものを持ち込んでくれるんじゃないかと感じてワクワクした。それに、ローレンとの声の相性が完璧だと思ったんだ。 ローレン 私たちの曲の多くは、歌のリズムだったり、シンコペーションだったり……が鍵になっている。だから他のボーカリストと共演する時は、そういう「自分たちらしさをうまく引き出すことができるか」ということを、まず考えるの。コムアイの歌い方は、声を楽器のように使っているところが私たちにピッタリだった。あともう一つ魅力的に感じたのは、声を聴いただけで瞬時に誰かわかる、そんな個性を声にも感じたの。 ——ケンモチさんはコムアイさんの声を活かすために、曲作りで意識しているのはどのあたりですか? ケンモチヒデフミ(ケンモチ) そうですね、コムアイ自身の声のいいところって、スピード感があるんだけど、柔らかいところだと思うんです。もしそのコムアイみたいな声の人を活かそうと思ったら、普通はその柔らかさをサウンドに馴染ませて、もうちょっとフォーキーでゆっくりとした曲にしようとすると思うんですけど、僕はそこを逆にわざとコムアイっぽい声の人がやらないような音楽と組み合わせて、水曜日のカンパネラという音楽性を作っています。 マーティン 対比の面白さだよね。そういう対比っていうのは真逆のもの。ローレンの声もすごくピュアだったり甘い声だったりするけど、そこのところをあえて甘々の音楽にするのではなくて、歌詞やプロダクションの部分で逆にすごくダークなものを持ってきたりとか、とんがったものを持ってきて組み合わせることで、すごく面白くなるんじゃないかなって思っている。それが自分たちのチャーチズの核にある部分でもあるんだよね。 ——水曜日のカンパネラの音楽は、歌詞の面では、人物を歌のタイトルや主人公にした、キャッチーな部分も日本では注目されているんですよね。 マーティン 今回書いてもらった歌詞も凄く好きだよ。今回のコラボレーションでとても面白いのは、それぞれ自分たちが背負っているカルチャーをしっかり曲に反映させているところなんだよね。 イアン・クック それに歌詞にはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)とか入ってるし。 コムアイ 清志郎(忌野清志郎)のことは知ってる? (わかりやすく説明するなら)日本のデヴィッド・ボウイのような存在で、彼は政治的だったり社会的だったりするメッセージをたくさん発言していて。彼も、ボウイのようにもう亡くなってしまったんだけど。私たち(日本人)も今ヒーローを失っているんです。 ローレン コラボレーションする時に「私たちはこれを書いたから、私はここを歌うからあなたはここを歌って」というのではなくて、「私たちはこういうのを書いたから、あとはここのところを自分たちで好きなようにやって」というのが本当のコラボレーションという感じがしているの。だから今回あなたのクリエイティビティと一緒にできて、本当にコラボレーションという感じでできて良かったなと思ってるわ。 ——水曜日のカンパネラの2人はチャーチズの音楽にどういう印象を持っていますか? ケンモチ チャーチズさんと水曜日のカンパネラがすごく近いな、と思う点は、1つの音楽のスタイルをこだわってやっているというよりも、いろんな音楽のスタイルにチャレンジして、ポップミュージックを作っているところ。あとシンセのサウンドがすごく新しいんだけど懐かしい感じがして、80年代の音楽、ニューウェーヴの影響とかを今の音や音楽の形でやっているのがすごいユニークだと思っています。 マーティン&イアン サンキュー! コムアイ 私は“My Enemy”が好きですね。今回のコラボの話をチャーチズから最初にもらったのは3年前で、その時はライブでの共演(対バン)という話だったと思うんだけど、普通にファンだったから凄く嬉しかったですね。チャーチズに関しては、言ったように幾つかの点で親しみや共感を覚えたし、ローレンは2つの強い正反対のポイントがあって、それは私にすごく重要な点で、私にも同じことが言えるんですよね。とてもピュアで、同時にとてもダークでアグレッシブだったり、ある種の強いバイオレンスだったり、もしくは牙のような……。 CHVRCHES (チャーチズ) 「My Enemy (feat. Matt Berninger)」
イアン ドラキュラみたいな牙ってこと? コムアイ そうそう。そんな感じもするし、同時にローレンには天使の羽根のようなものも感じる。  イアン それは言い得て妙だね。 コムアイ あと、私たちも3人組だし、彼らは私より10歳上だし、構成も似ていると思う。 ——お互い聞きたいことはありますか? コムアイ シンコペーションについて。歌うのが難しかったから。 ローレン マーティンが答えた方がいいんじゃない? “OUT OF MY HEAD”のボーカルのメロディはマーティンが書いたから。トラックのリズムに歌のメロディをしっかり乗せることがこの曲では大事で、私も難しいと思っているから、安心して(笑)。 コムアイ ありがとう。私、大丈夫だった? マーティン もちろん、すごく良かったよ。結構難しいことをちゃんとやっているよ。サビのところよりも、ヴァースのところの歌い回しの方が難しいんだよね。大満足だよ。 コムアイ 良かった(笑)。私もサビのパートが好き。 ローレン 私の方が簡単なサビのパートを歌わせてもらって、難しいヴァースを全部コムアイが歌ってる(笑)。 ——歌詞はどう分担したのですか? ローレン 私がサビ、コムアイがヴァースを書いたの。 ——どういう曲を作ろうとしたのですか? マーティン まだ曲になっていないもののインストの素材の中から、彼女の声に合っているような雰囲気のもの、エネルギーのもの、というところから選んでいった。完璧に出来上がった状態のものを送ってしまうと、せっかくのコムアイらしさが出ていないものになるから、やっぱり彼女らしさを出してほしいし、彼女のクリエイティビティをしっかり反映してもらいたいから、そこは慎重に選んだよ。そうじゃないとコラボレーションする意味がないじゃないからね。 ——コムアイさんが歌詞を書く時に意識した点は? コムアイ 確か2パターン提出したんだけど、採用したこれは、スタジオでレコーディングしている間に書いたもの。曲全体のアイディアをパッと瞬時に思いついて、その日のうちにレコーディングしたんですよね。凄く真っ直ぐで正直な歌詞だから。 ケンモチ 最初は『ウォーキング・デッド』っていうワードからだったはず。 コムアイ なんで『ウォーキング・デッド』を言おうとしたんだっけ? ケンモチ なんかゾンビたちの群。 コムアイ (チャーチズから)怒りやストレスや葛藤を表現してほしいというリクエストがあって、あとは私にとっての音楽の偉大なヒーローが思い浮かんで(笑)、あと、私はインスタキッズがとにかく嫌いで……(笑)。 マーティン (笑) コムアイ 私もインスタキッズなんだけど……(笑)。 全員 (笑) コムアイ あと、あなたたちの故郷であるグラスゴーを想って、カタカナで歌っている。聞き取れた? ローレン もちろん。そうやって引き合いに出しているものが、パーソナルなんだけど、普遍的にも感じられて、すごくいいと思った。 コムアイ そうなの、ありがとう。そこを私は気に入っていて。地球上にある二つの違う場所を歌っている。あなたたちは今グラスゴーにいないわけで故郷の外にいて、私にも故郷があって、今はそこに戻るタイミングではないと感じている。そういう思いを歌っているのが2番なの。私はまだ挑戦し続けたいと思っていて、今はそういう感覚を大事にしたいと思っているから。 マーティン いいね。 ——ケンモチさんはプロデューサーとして、このチャーチズとコムアイさんがコラボした“OUT OF MY HEAD”にどういう感想を持ちました?  ケンモチ 普段こんなにロック色の強い曲をやることってあまりないので、それがとても新鮮だったのと、シンコペーションのリズムがすごいユニークで、しかも曲の印象がサビのメロディに入る時に、「あっ、こういう曲だったんだ」ってまたガラリと変わって聞こえるような曲で、すごく面白いなと思いました。コムアイは怒りを出して歌うようなタイプではないのと、あと自分たちでメロディをつけていく部分はちょっと難しかったですけど。 ——今後の音楽の可能性など、どう感じていますか? ケンモチ 水曜日のカンパネラはこれまで日本国内での活動が多かったので、このコラボレーションを機にもっと世界中の人たちに聞いてもらえるような足掛かりになったらな、と思います。 ローレン 私たちも同じで、幸い日本で既に多くの人たちが私たちの音楽を聴いてくれているけど、さらに多くの人たちに自分たちの音楽が届いたら、それは最高なことだと思う。 コムアイ 今年は私にとってコラボレーション・イヤーなので、いろんな可能性があると思っています。去年の末に、「私はもっと変わりたいし、いろんなことにチャレンジしたい、やらなきゃいけない」と感じていたので、このオファーがあってラッキーだったと思っています。 マーティン 僕らは何に関してもオープンなので、本当に一緒にパフォーマンスできたら嬉しいな。 全員 是非! 詳細はこちら 水曜日のカンパネラ公式サイト チャーチズ公式サイト

text by Natsumi Itoh

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デビュー15周年を迎えた髭のフロントマン・須藤寿が振り返るバンドと共に過ごした15年間

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2003年といえば、日本のロックシーンには際立ったムーヴメントがなかった時期だ。ただし、チャットモンチーやOGRE YOU ASSHOLEがメジャーデビューしていたりして、カテゴライズが困難な孤高の存在は同期だったことがわかる。そう、が今年デビュー15周年を迎えたのだ。 ユニコーンに多大な影響を受けた須藤寿は、必然的に奥田民生経由でビートルズ(The Beatles)に出会うこととなり、00年代に20代を過ごした彼やバンドは、その影響の中でもサイケデリックな部分や、英国的なシニカルさやファニーな部分をオリジナルに昇華していった。危ういのに楽しい。変なのに可愛い。そして何よりライブが最高にドライブしていた。彼らの同世代にそんなバンドはいなかった。 今回、ニューアルバムでもあり最新作の『STRAWBERRY ANNIVERSARY』と、〈ビクター〉時代の全音源から当時のスタッフがA面的なベストと裏ベストからなる2枚組『STRAWBERRY TIMES(Berry Best of HiGE)』を編集し、同時リリースする。 この機に、フロントマンの須藤寿とマイペースに見える髭の15年を振り返ってみた。 ちなみになぜストロベリーか? については、自明なのであえて説明はしない。

Interview:須藤寿(髭)

——今回はデビュー15周年という機会なので、髭というバンドのこれまでを検証しつつ、最新作についてもお聞きしたいと思います。まず、そもそもどんなビジョンで結成したんですか? 僕は後から入れてもらったんで、後から入って自分の好きな趣味を推してったってことだと思うんですけど(笑)。 ——(笑)。最初は誰の色が強かったんですか? 最初は俺以外の斉藤(祐樹)と宮川(トモユキ)とフィリポ(川崎“フィリポ”裕利)の前のドラマーがやってたバンドだったんで、3人が曲も歌詞も書いてたんです。で、僕がボーカルとして呼ばれて「須藤も書けば?」ってやっていくうちに、少しずつ僕がメインになっていく感じだったんです。始めは大学のバンドだったから、彼らもどこまで本気だったかっていうとよく分かってなくて、うん。ぼんやり組んでいたものが単純にお客さんが集まってきて上手くいったって感じだと思うんですけど。 ——〈ビクターエンタテインメント(以下、ビクター)〉時代の2枚組ベスト『STRAWBERRY TIMES(Berry Best of HiGE)』はシングルやライブの代表曲メインで収録されていますが、今振り返ってみるとどのあたりが転機だったと思いますか? 転機……。バンドの転機は『PEANUTS FOREVER』とかなんじゃないの? なんか景色がガラリと変わった気がする。 ——アイゴンさん(會田 茂一)プロデュースで入って。 に、なったとか。確か、『Thank You, Beatles』とか『I Love Rock’n Roll』が2005年で『PEANUTS FOREVER』が2006年だから、その差1年ぐらいしかないけど、『PEANUTS FOREVER』に入った時に、なんかギアが変わった気がしたんだけどな。 ——良くも悪くも、かっこいいロックンロールで、「同じ髭」になりかけてたところにアイゴンさんがプロデュースで入って、いずれ加入しちゃうことになるじゃないですか。 そうですね。 ——ライブでもレコーディングでもトリプルギターでバリエーションを広げようとしてたのかな? と。 いや、そういうことでもなかったと思う。とにかくアイゴンさんには、バンドをまとめて欲しかったんですよ。バンドがあの時、分解しそうだったから、「やばいな」と思って。アイゴンさんには緩衝材として……やっぱ一人だけ大人だったし。僕たちは20代で、アイゴンさんがいればまとまるなっていう、精神的支柱だったんだと思う。だからライブではギターが3本もあるからダボついちゃうから、弾いてるようで弾いてない時とかいっぱいあったし。そういうのアイゴンさんは引くテクニック、自分が一歩下がるテクニックみたいなのはすごい上手というか、でも存在感はある、そういうのは感じました。 ——〈ビクター〉時代、実験的なこともやってたじゃないですか。アルバム全1曲の『Electric』とか。髭のダンスミュージック的なアプローチの時代。 うん。『Electric』はもう、斉藤のものすごい影響下で作ってましたね。なんか『Chaos in Apple』が終わったあたりに、しばらく会ってなくて斉藤の家に遊びに行ったら、ものすごいレコードが増えてて、全部ミニマルテクノで。聴かせてもらったら俺もハマっちゃって。髭っていうグループがこれから先、音の方向転換するのは全く見えなかったけど、それまではものすごく駆け足でアルバムを作ってたんで、ちょっと休憩しようって時だったから、サウンド的なトライアルとして、昔の曲を今の影響でリアレンジしたら面白いんじゃないか? って言ったのが『Electric』。だからあれは新曲じゃなくて良かったです。 ——このベスト盤の時以外にも転機だった頃といえば? でもその辺が転機かもしれないですね。それまではアンダーワールド(Underworld)とかエイフェックス・ツイン(Aphex Twin)とか、それぐらいの範囲で済んでたものが、世界的にもそうなんですけど、2007年、2008年ぐらいから、また大きく変わってきたというか、いろいろなものが開けて見えるようになってきたというか。それでいろんなものを聴いた記憶がありますね。いろんなフェスにも遊びに行くようになったし。それも一つ転機だったかもしれないですね。 ——2015年の『ねむらない』以降で、今回の15周年記念アルバムもそうですけど、マスタリングというか仕上がりの音像が変わったと思うんです。なので、それも転機なのかなと。今の20代で、サイケデリックなことをやってるバンドも多いですけど、USインディー以降とのリンクは『ねむらない』以降の特徴かなと。 ああ、そうかもしれないですね。 ——須藤さん自身はリアルタイムの20代の音楽というより、もっと全般的にオーセンティックなアメリカの音楽を聴いていたり? いや、全然聴いてないですよ。 ——じゃあそれはバンドの中で起こる化学変化? そうですね。何か常に聴いてはいるんでしょうけど。この『STRAWBERRY ANNIVERSARY』の参考になるような音源があったか? っていうと、全然そういうのはなくて「もう髭は髭でいいや」って感じになっちゃってるんで(笑)。何かを、それこそ前作(『すげーすげー』)の頃は、アラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)聴いてて、でも歌詞とか全然アラバマ・シェイクスっぽくないし。 ——いや、歌詞はならないでしょ(笑)。しかも『ねむらない』と『すげーすげー』は作品的には両極というか。 そうそう。『ねむらない』は自分の中ではやりたいことというか、かなり野心作だったんです。髭でベッドルーム・ミュージックというか、僕の中で寝ながら聴いて、そのまま落ちれるやつを作りたいなと思ってて、うるさくないやつを。それで本腰入れてやってたら、俺しか燃えてなかったというか、「やばい、これ、バンドじゃなくなってきてる」と思って作ったのが『すげーすげー』です。反動が出てる。「バンドにしなきゃダメだな」と思って。それで隣り合わせなんだけど両極端なアルバムができて。 ——なるほど。 で、『すげーすげー』のツアーが終わった後に来年15周年だということに気づいて。15周年のアルバムを出すんだったらインプットしてる時間はなくて、制作を始めてくれないともう間に合わないと言われたんで、割と『すげーすげー』からインプットなしに、そのまま地続きに来たっていうのが『STRAWBERRY ANNIVERSARY』なのかなっていう。なんか聴いてる暇はないというか、ゆっくりしてる時間はない感じでしたね。 ——両方に振り切った2枚の要素が今回のアルバムにはそれぞれの曲に落とし込まれてる感じがしました。“Play Limbo”のフェイドアウトが珍しいなと思ったり(笑)。 (笑)。解決しないっていうね。この“Play Limbo”って、リハしなかったんですよ。詞曲書いて、最後のレコーディングの時になんか今回のアルバム、物足りないな、もう一個、なんか予定調和にならない曲が欲しいなと思って。もうみんなに会う予定なかったんですよ、3日後に最終レコーディングなんだけど、リハも一回もなくて。時間がなくて2日目に、だったらその場でレコーディングしてみようと思って用意してた曲なんです。斉藤とはデモでちょこっと煮詰めてたんですけど、ベースとドラムは曲知らなくて「こんな感じで早いところと静かなところ、とにかくやってみよう、適当でいいよ」って言って。で、やってみたというのが“Play Limbo”です。 ——すごいなぁ。でも勢いの方のライブ感じゃなくて、様子を見ながらやってるライブ感がありますね。 ああ、そうそう(笑)。ドラムとベースは曲が分かってなかったと思うから。 ——面白い。でも分かってなくても形になるというか、むしろ「これ、こういうパターンね」って舐めてない感じがいいですね。 そうそう。「ほんとにこれでいいの?」みたいな感じでしたけど。 ——近年のUSのサイケデリックやフォーキーなアーティストに通じるものを感じて。例えばマック・デマルコ(Mac DeMarco)とか。 ああ、いいですね。マック・デマルコは僕もすごく影響受けましたね。大好きでしたね。 ——そういう感覚が数年前の髭とちょっと違うところかなと。髭っていうバンドの実年齢がどんどん分からなくなってきたとも言えるんですが(笑)。 ほんとですよね、確実におじさんなんですけどね(笑)。 ——(笑)。“きみの世界に花束を”は素直に名曲! って言いたい曲で。愛しかないですね、この曲は。内容もストレートだし。 この曲は今回のアルバムでもちょっとでき方が違うというか、歌詞もバッチリみんなに見せる前にはできてたし、まぁ、プライベートなこととかもかなり色濃く反映した楽曲だと思います。だいたい、髭の曲の場合は自分が例えば曲を書いて、その時までは鼻歌だったり、ある程度、重要なキーワードぐらいしかなくて。例えば“ヘイトスピーチ”でも、サビの《ヘイトスピーチ》の連呼しかないとか、そんなもんなんです。バンドがまとまって「あ、この曲はいいね」ってなっていったら、みんなにアレンジしてもらった後から、歌詞の肉付けをする。だから、割と歌詞は後付けだったり、曲先だったりするんで、その中で“きみの世界に花束を”は曲と歌詞が同時にできてて。まぁ他のメンバーの影響をあんまり受けてない曲だと思います。 ——それに『ねむらない』以降って、コーラスがすごく増えたなと思うんです。今回もしかりで。 そうそうそう。コーラスが好きになったんだと思います。コーラス考えるのが楽しいし。あと、最近の制作事情にも関わってると思うんだけど、スタジオで合わすよりも自宅で、お互いのデモで高めあえる環境になったから。でもドラムとかベースって全部打ち込みで作っちゃうから。で、スタジオ入った時に、みんなに好きにリズムつけてもらえばいいやっていうことで、ベースとかドラムはある程度のところまでしか作らないんですけど、そうなってくると作れるのって、ギターとコーラスぐらいで、コーラスはいくらでも自分で考えられるから。だからコーラスが増えてきたのかも。 ——“得意な顔”の無機質なサイケデリアもいいですね。 これはね、ベースラインをまず頭の中で思いついて。そのワンフレーズのみでベースは始まりから最後まで行ってもらって、あとは歌とギターで景色を変えてみようと思って。“得意な顔”は一発録りで、中盤の構成は小節数決めないでやったので、何テイクか録ったんですけど、全部長さが違って。結果的に一番はじめに録ったテイクをOKにした気がする。 ——いいですよね。決めてない感。 そうそう。最近思ったのが、レコーディングも、そういうふうに予定調和じゃない感じでした方が、あとあと日記として機能する、あまりに自分で作り込み過ぎて、バッチバチにアプリケーションで作りまくっちゃうと、何年後かに聴いた時につまんないなと思っちゃうんです。余白や予定調和じゃないのもが残ってると、何年後かに自分で聴いた時にそこにスリルを感じたり、この頃のこの音源、面白いなと思える。自分の15年やってきたキャリアとしてはそういう感触があって、作り過ぎないものの方が忘れた頃に楽しめる。一生懸命作り過ぎた曲って、後で聴くとつまんなかったりして。「あれ?」って感じがしちゃうんですよね。 ——デビューしてすぐの時代のレコーディングは今に比べるとかっちりしてるというか。曲自体は昔から自由だけど、仕上がりに今の方が余白がありますね。 そうですね。あの頃はアイゴンさんと南石(聡巳)さんのコンビだったんで、結構、〈ビクター〉の一番最後のあたりは僕たちも分かってなくて。どういう風に味付けされたのか、教えてくれなかったし。それはそれで今聴くととっても新鮮なんですけどね。最近のはどこまでも直せちゃう技術がすごくて、どこまでも直せちゃうから、直さないようにするのが難しいんです。女性の写真撮るアプリと同じで、できるだけ修正したい、めっちゃ顎とか尖らせたいし、目を大きくしたいし、できるんだけど、やっちゃうと自分じゃないんだよなみたいな。それを手にいれた時はそのテクノロジーを駆使して、すごい喜びに浸ってたんですけど、それを始めた頃の自分たちのトラック聴くと「誰でもいいんじゃない?」ってなっちゃう。理想の雛形みたいになっちゃって、最初は大満足なんだけど、もともと影響を受けたビートルズやヴェルベッツ(The Velvet Underground))の曲たちを聴いてみると、間抜けなとこばっかりで、「これすっぴんじゃないの?」みたいに感じる。 ——その時代は技術的にすっぴんにしかできなかったというのもありますけど。 自分はどんどんどんどんナルシスティックに直したいんだけど、人はナルシスティックなところを見たくない、その人のすっぴんの部分を見たい、特にロック、音楽とかアートというのはそういうものだと思うんですよ。その人のすっぴんを見たいものなんです。ビジュアル系も言葉を変えればすっぴんみたいなものだし、その人たちからすれば、あれが素顔だってことだし。なんかそう考えた時に、自分はもう……演歌歌手ぐらいうまく歌えるんならOKだけど直してしかそうならないなら直すなよっていう感じのところになってるんですかね。 ——もともと影響を受けたミュージシャンとは別に、今のミュージシャンだとどういう人たちが励ましになりますか? でも周りにいっぱいいるんだよね。ガタリ(須藤寿 GATALI ACOUSTIC SET)とかやってて、ガタリのメンバーはみんな励みになるなぁ。なんかすごいみんな面白いんだよな。ガタリのメンバーとのレコーディング、それも15年というキャリアの中では一つの転機になるというか。2012年ぐらいから知り合い始めたんです。長岡(亮介)とかケイタイモ(KEITAIMO)、ゴメス(中込陽大)、伊藤大地とか。やっぱりみんな直さないんだなと思って。レコーディングした時に「やっぱそうだよな」と。何も話さなかったんですけど、俺よりもみんなすっぴんで、すごいそれは励みになりましたね。でも実は、「ただうまかっただけなんだ、こいつら」と思いましたけど(笑)。 ——髭って60年代〜80年代のアーティストと並べてもおかしくないし、今の20代のバンドと並べてもおかしくないと思います。 あ、ありがとうございます。 ——CHAIやTempalayも髭、好きですもんね。 そう、Tempalayもびっくりした、こないだと大阪でライブした時、打ち上げで(小原)綾斗から話しかけてきて、「いやー、須藤さんのギターのステッカーの位置からバッジの位置から髪型から全部真似してましたよ」って(笑)。CHAIは褒めてくれ方も面白いし才能もあるし。3日前ぐらいに新宿LOFTでライブだったんですけど、久しぶりに踊って(ばかりの国)の下津(光史)に会えて。あいつも初めてあった時は“ブラッディ・マリー、気をつけろ!”とか聴いててくれてて。ちょうど一回りぐらい下なんですよね、みんな。民生さんと僕もその関係だから、やっぱ一回りすると好きなものも回るんでしょうね。 髭 - ブラッディ―マリー、気をつけろ!【MUSIC VIDEO(Short Ver)】
——ちなみにアーティスト写真には佐藤(謙介)くんも一緒に写ってますが、今、どういう状況なんですか? サポートですよ。そこが髭はゆるくてね。MVには映ってないしね(笑)。昔ほどそんなにバンドってことに固執してるわけじゃないし。でもだからいい感じの距離感で付き合えてるんだと思います。 ——メインソングライターとしてのプレッシャーはあると思うんですけど。 いや、全然ないですよ、全然(笑)。今回は15周年だし、みんなで書いた曲でやろうって言って作ったし。全然プレッシャーなんかないですよ(笑)。

RELEASE INFORMATION

髭BERRY BEST ALBUM「STRAWBERRY TIMES (Berry Best of HiGE)」

STRAWBERRY ANNIVERSARY

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インタビュー |トラックメーカー・KMが『FORTUNE GRAND』で表現する、ユース世代のUS感と日本語ラップのその先

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Interview:KM、KLOOZ、SHINTARO KUROKAWA

ここ数年、楽曲のクレジットに、あるトラックメーカーの名前を見ることが増えた。その名はKM。トラックメーカーであり、プロデューサーでもある彼は、kiLLa、BAD HOP、KANDY TOWN、SKY-HIなど、メジャーアーティストへの楽曲提供やRemixワークに加え、AbemaTVのオーディション番組「ラップスタア誕生」でのトラックを手掛けていることでも知られる。 2017年の末には自身初となるInstrumental作品集『lost ep』をリリース。そしてとうとう、満を持して9月19日(水)に、KM本人名義のアルバム『Fortune Grand』が発売された。本作はKMがトラック制作からミックス・マスタリングまでを総合プロデュースし、MCのKLOOZがボーカルディレクションを担当。 そして客演には、RENE MARS、ACE COOL、Weny Dacillo、Taeyoung Boy、Lui Huaといった若手注目株のラッパーから、kiLLaのYDIZZY、そして田我流までが参加している。 サウンド、リリック、MV、ジャケット……すべてにおいて、国産HIPHOPの新機軸を提示するかのようなこのアルバムについて、KM、KLOOZ、そしてアートワーク&MVディレクターを務めたSHINTARO KUROKAWAの3人にたっぷり話を聴いた。

KMのビートはラッパーからすると、“余白”を残してくれてる(KLOOZ)

——まず、アルバムのタイトルにもなっている『FORTUNE GRAND』。これにはどういった意味合いが込められているのでしょうか? KM そもそもアルバムを作ろうと思った時に、僕はプロデューサーなんで、歌い手さんを集めないといけないと。そこで「こんなイメージなんだよね」っていうのをKLOOZくんに伝えて、ACE COOLとかRENE MARSとか歌い手を選んで候補を出してほしいとお願いしたんです。あとは実際にデモが上がってきたら、「こういう歌い方の方が良いんじゃないかな」とか、ボーカルのディレクションもKLOOZくんにお願いしました。 KLOOZ 「レコーディングの方は俺に任せてよ」って言って。KMくんと連絡しあって、構成についても話し合ったり、コネクトさせてもらったりとか。 KM そうやってるうちに、2人でもいろいろできるねってなった。一応、今回のアルバムは僕名義でやってるんですが、そういう意味でFORTUNE GRANDっていうKLOOZとのプロデュースチームがだんだんと形作られていきました。 ——〈FORTUNE GRAND〉は訳した場合、どういう意味なんですか? KLOOZ 元々は自分を筆頭に立ち上がったレーベルで〈ForTune Farm〉っていうのがあって。Fortune自体は幸運や富って意味で、僕たちはTを大文字にしてるんですけどForTune Farmで“音楽のための場所”っていう意味にもなってて、ダブルミーニングのコンセプトがあるんです。それが先にあった上で、KMくんとは音楽でもっと世界を目指したいというか、世界に通用する音楽を作りたいねっていう想いから、壮大の意味を持つ“GRAND”にしたんです。 KM 最初、KLOOZくん間違えてましたよね。 KLOOZ そう。 一同 ハハハ! KM FORTUNE “GROUND”でイベント打っちゃってた。 KLOOZ 言うの遅いんだもん! KM 正しくはFORTUNE GRANDです。 ——間違えずに書いておきます。今回、制作はいつぐらいから始まりましたか? KM そもそもビートはすごい溜まってたんですよ。2017の4月ぐらいから……2016年もあるかな。そのころに作ってたビートを最初ラッパーに渡したんですけど、僕的に2016年のビートに飽きちゃってて。結局、ほとんどやり直したよね? KLOOZ うん、やり直した。 KM ビートを渡して、アーティストには最初「それはタイプビートだと思ってくれ」みたいに言いました。明らかにそれを作った2016年の時より、僕の中でできることが増えていたので。そういった意味では、制作期間は今年5月からなので3ヵ月くらいです。ビートの原型はもうあったんでわりと全体の構想はスムーズに進みました。 ——ではこの曲数、このメンツって固まったのはけっこう最近の話なんですね。 KM 8月に入ってからですね。しかも苦渋の決断で削ったりしてるんですよ。 KLOOZ そうだね。 KM 僕はマスターまで全部やるんですけど、いつも納期ギリギリまでやっちゃうんですよね。昨日は納得してても、朝起きたら「ちょっと違うな」みたいなことがけっこうあるので。
KM
——以前、粗悪ビーツさんと対談された記事を拝見したんですけど、かなり細かくビートを調整する性格だと仰ってましたね。 KM そうです。めちゃくちゃ細かいんですけど、徹夜続きの時とかは前日に作ったビートを朝に聴くと、疲れもあってかスネアの音色が違って聴こえたりするんですよ。さらに納品日に聴いたら「ちょっとこれ不協和音だな」みたいな。本当にギリギリまでご迷惑をおかけしました。この場をかりて。 一同 フフフ……。 ——「できることが増えた」っていうのは具体的にどんな部分ですか? KM まずここ最近だと、kiLLaはマスタリングもやって欲しいっていう依頼が多くて。だからボーカルのマスタリングっていうのは、kiLLaとやったことで特に自信を持ってできるようになったんです。chaki zuluさんに教えてもらったことを咀嚼しながら試行錯誤でした。2016、2017年はすごく勉強した期間でしたね。kiLLaはけっこう連絡してきてくれて、中でもYDIZZYとかはいつも突然で。 ——今回もYDIZZYさんは突然でしたか? KM 今回もまた突然です。「なんか降って来ました」みたいな感じで連絡きて。 ——田我流さんに関しては後ほど伺うとして、それ以外のメンツは、いわゆる今注目の若手がそろっていますね。 KM そうっすね。それはけっこうKLOOZくんが紹介してくれました。
KLOOZ
——MVが公開されている“Distance”は、Weny DacilloにTaeyoung Boy、そしてLui Hua。 KLOOZ 今しかできないんじゃないかなっていう。 KM この曲のビートはいろんな人に聴かせていて、一番人気があったんですよ。「これやりたい!」って勝手にラップ録ってくるやつとかもいて。 KLOOZ とりあえず、Weny Dacillo(以下、Weny)とLui Huaも勝手に書いてたっていう。 SHINTARO KUROKAWA そういうパターンなんだ。書きやすかったのかね? KM まあ僕はこのビートに一番時間かけましたね。というのもすごいシンプルなビートなんです。シンプルなのが一番難しい。 KLOOZ でもKMのビートはラッパーからすると、“余白”を残してくれてる感じなんですよ。無限の可能性というか。”Distance”のトラックは特にそれが強かった。 KM まあけっこう厳しいことも言いました。あれを録ったあたりから疲れが……。 KLOOZ Taeyoung Boy が最後に録ったんですけど、それが終わった時は2人ともホッとしたよね。肩の荷が下りたっていうか。 KM 俺もあとはKUROKAWAさんに任せようって。 SHINTARO KUROKAWA 聞いてなくてよかったなと思いました。あの曲はけっこうスケジュールが押してたのでヒリヒリしてましたから。 KM ヒリヒリしましたね〜。でもあの曲は奇跡的にできたと思うんですよ。一番早く書いたのがLui Huaで、Lui Huaは歌詞をその時点でWenyには送ってなかったんですけど、偶然2人のテーマが一致したという。 SHINTARO KUROKAWA そう聞くとすごいね。 KLOOZ すげー! みたいな。Wenyのレコーディングは鳥肌立ったっすね。「同じ空の下」っていうワードが出てきて、Lui Huaが「この声天まで届け」みたいなことを言ってて。 KM そうですね。そこはノーディレクションでした。

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ULTRA JAPAN2018出演のjonas blue(ジョナス・ブルー)来日インタビュー | LINE LIVEスペシャルライブレポ

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今年の6月にサービス開始3周年を迎えた音楽ストリーミングサービス、「LINE MUSIC」。洋楽・邦楽問わず幅広いジャンルの音楽を楽しめることに加え、LINEのプロフィールに設定できる「プロフィールBGM」や学生に嬉しい「学割」があることから若いユーザーを中心に絶大な支持を得ています。そんなLINE MUSICがユーザー限定で一夜限りのスペシャルイベントを開催! LINEファンが待ちに待った本企画の第一弾として、“Rise feat. Jack & Jack”が日本や世界で大ヒットを記録し<ULTRA JAPAN2018>にも出演した、ストリーミング総再生回数40億超のDJ/プロデューサー Jonas Blue(ジョナス・ブルー)が登場! 今回はそのイベントレポートとインタビュアーにセレイナ・アンを迎えLINE LIVEで放送されたインタビューの模様をお届けします。

Interview:Jonas Blue

セレイナ・アン(以下、セレイナ) それでは早速登場してもらいましょう、ジョナス・ブルーです、Welcome! 日本の来日は3回目だそうですが? ジョナス・ブルー(以下、ジョナス) もう故郷みたいで、来る度に嬉しいよ。 セレイナ 日本の好きなところは? ジョナス 一番はショッピングかな。もちろん食べ物もだけど。 セレイナ ショッピングが楽しみなんですね! ご飯は何を食べてますか? ジョナス なんでも食べるけど、日本のお寿司はおいしいよね。 セレイナ お寿司! ちなみに好きなネタは? ジョナス サーモンやマグロかな。 セレイナ 定番のものがお好きなんですね〜。では、ここからいろいろご質問していければと思います。今年ULTRA JAPAN初登場ということですが、どんなライブパフォーマンスに? ジョナス 正式に出演するのは世界初のULTRAだから、本当にすごく楽しみにしてたんだ。新曲から定番曲までやらせてもらった。 セレイナ 今、日本では“Rise”が大ヒットしていてLINE MUSICでは1位を6回も獲得しています。日本での大ヒットについてはどう思われますか? ジョナス 最高の気分だよ。“Perfect Strangers feat. JP Cooper”、“Mama feat. William Singe”も日本での評判は良かったようだけど、それよりも“Rise”がスーパービッグヒットになってることに興奮してる。イギリス人のアーティストとしてみんなが受け入れてくれてるのを感じていて、“Rise”がRISE(上に上がる)してることに対して興奮してるね(笑)。 セレイナ ダジャレを言ってくれました!(笑) その“Rise”ですが、この曲が生まれたきっかけを教えてくれますか? ジョナス 4月にロサンゼルスに行った時にジャック&ジャックがラジオのインタビューに答えていたのを聞いたのがそもそものはじまりなんだ。そのインタビューでは、若者の声がなかなか周りの人たちに理解してもらえないし届かない、そういった葛藤について話してて、それにすごく感銘を受けたんだ。実はその時は彼らのことを知らなかったんだけど、その後彼らがVINE出身のすごいスターなんだっていうことを知って。ロンドンに戻った時に、“Mama”を一緒に制作したチームとジャック&ジャックってアーティストのインタビューからインスピレーションを受けて曲を作りたくなったっていう話をした。いまのミレ二アル世代にはネガティブなところがある。でも自分は結構ポジティブな曲を書いているから、彼らのネガティブな部分をポジティブなものに変えられるんじゃないか、って。それから曲を作って、ジャック&ジャックに「君たちのインタビューにすごく感銘を受けてこの曲ができたんだ。なのでぜひ歌ってほしい」っていうメッセージを送ったんだ。 Jonas Blue - Rise ft. Jack & Jack
セレイナ ミュージックビデオが本当にかっこいいですよね。ポルトガルで撮影したというお話ですが? ジョナス ちょうどコーチェラ・フェスティバルの週末だったんだけど、彼らがコーチェラから戻ってきた翌日にはスタジオ入りしてくれて、すぐに歌入れをしてくれた。その次会った時はもうポルトガルの撮影だったよ。 セレイナ ラジオから感銘を受けて曲まで作るって本当に次元が違いますね。LINEユーザーの間でプロフィールに設定できるプロフィールBGMが大流行してますが、ジョナスがおすすめしたいBGMはありますか? ジョナス もちろん自分の曲もおすすめだけど(笑)、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)もいいよね、大ファンなんだ。もちろんブルーノ・マーズ(Bruno Mars)や、ハウス系だったらドン・ディアブロ(Don Diablo)とかもクールだと思うよ。 セレイナ ティーンのツボをおさえてますね! ちなみにLINE MUSICには「10曲でわかるJonas Blue」というプレイリストがあります。このプレイリストの楽曲の聞きどころを教えてください。 ジョナス まだアルバムを出してないから、僕を知ってもらうにはこのプレイリストが最高だね。サブリナ・カーペンター(Sabrina Carpenter)とのコラボ楽曲“Alien”やアーリッサ(Arlissa)との“Hearts Ain't Gonna Lie”といった他の人とのコラボも入ってるからいい。“Fast Car feat. Dakota”とか“By Your Side feat. RAYE”とかもね。1箇所でまとまって自分の曲が聞けるのは嬉しいな。 「10曲でわかるJonas Blue」プレイリスト セレイナ ちなみに3年前にリリースされた“Fast Car”が一番最初のシングルとのことですが、感覚としては猛スピードでスターの階段を駆け上がったイメージがあります。そのことについてはどう思いますか? ジョナス “Fast Car”をリリースした時、周りがどんなリアクションをするのか想像がつかなかった。でもこの曲のおかげで単なるイギリスのアーティストではなく世界のアーティストととして知られるようになったと思う。イギリスだけでなく、日本をはじめ世界中で聞いてもらえるようなアーティストになりたいと考えていたので、本当にありがたいよ。 セレイナ そんな今すごくアツいジョナスですが、今回の来日で初挑戦したいことはありますか? ジョナス 逆に行ってほしいところがあれば教えてほしいな(笑)。 セレイナ ショートトリップでスーパー楽しめるアクティブなところ、どこでしょう?(笑) さて、ここで皆さんからきている質問もお伺いします。日本で行きたいところは? ジョナス Five G(ヴィンテージ・シンセサイザー専門店)かな。あとはレストランに行きたい。 セレイナ 食とファッションと音楽、全部ですね! おすすめするところがない!(笑) ジョナス まあ、なんとなく行きたいところは決まってるかな(笑)。 セレイナ もうひとつ質問がきています。アルバムを作る予定は? ジョナス 実はもう制作は終わってるんだ。もうそろそろリリースされるよ。 セレイナ え〜!? それは寒い時期? 熱い時期? ……あ、地球上のどこにいるかにもよって変わりますね!(笑) ジョナス そうだね(笑)。もうすぐだよ。 セレイナ 楽しみです! 今回のLINE LIVEイベントには10代の若い子たちがたくさん来てくれましたが、どうですか? ジョナス 若いファンのみんなは全曲聴きたいと思ってるだろうけど、メインの曲はパフォーマンスするよ。みんなで歌ってほしいな。

LIVE PHOTO REPORT

当日のプレイリストはこちら!

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【対談】代官山T-SITEにてフリーライブに登場!Azumi×高岩遼、二人の共通点“Jazz”を語る!

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Azumi×高岩遼
この週末に東京・代官山T-SITE内GARDEN GALLERYにてフリーライブ<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>が開催! 10月13日(土)、14日(日)の2日間の予定で、1日目のテーマ<Swingin’ Night>には高岩遼とAzumiの二組、2日目のテーマ<Hit The Town>にはThe ManRay、Rei、Kan Sano(acoustic set)、の三組が出演が決定しており、プレミアムなライブをお届けする予定だ。 このイベントは先日発表されたハーレーダビッドソンの最新モデルFXDR™ 114と過ごす特別な週末<FREE[ER] WEEKEND>として9月22日から毎週末、全国各地で行われてきている。そして今週末に迫ったイベント開催を前に、初日に共演する高岩遼Azumiの二人によるスペシャルな対談が実現! wyolicaのヴォーカルとしてデビューし、2011年のソロ・デビュー以降はDJ、デザイナー、役者など多岐にわたる活動と並行して、ジャズ・シンガーとしても精力的な活動を行っているAzumi。SANABAGUN.、THE THROTTLE、SWINGERZの中心人物であり、10月17日にはビッグ・バンドを起用したソロ・デビュー・アルバム『10』をリリース予定の高岩遼。二人のヴォーカリストに、「ジャズ」をテーマに語ってもらった。 ジャズを愛する二人の話を聞けば、<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>をより堪能できるはずだ。

Interview:Azumi×高岩遼

——Azumiさんと高岩さんは10月13日(土)に行われるハーレーダビッドソンの<FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE>で、久々の共演となります。まずは、お二人の最初の出会いについて教えてください。 Azumi 昨年の4月に六本木でやったライブが初めましてだよね? 高岩遼(以下、高岩) そうですね。六本木のVARITというライブハウスでイベントをすることになって、ぜひ誰か女性のジャズ・シンガーを招きたいねという話をしていたんです。そこでライブハウスのスタッフさんから「Azumiさんがいいんじゃないか」という提案があって、自分も「Azumiさんだ!」ということでお声がけしました。 ——その時もジャズのイベントで、お二人でデュエットも披露したそうですね。 高岩 やりましたね。“Fly Me To The Moon”歌いました。キーをどうしようか、みたいな相談をしたのを覚えてます。 Azumi あと“You'd Be So Nice To Come Home To”も一緒にやったよね。 Azumi×高岩遼 ——どちらもジャズのスタンダードですね。デュエットする楽曲はすんなりと決まったんですか? 高岩 事前にメールで、「何やります? てか、遼くんは何を歌うの?」みたいなやり取りを少しして、あとは現場で少し合わせたくらいでした。でも、どっちかというと、「何着る?」みたいな衣装の話をしてましたね。「僕、セットアップは緑ですよ」って。 Azumi そうかも(笑)。今日も何を着てくるのかすごい気になったもん。 高岩 俺もどんな感じか、結構気になってました(笑)。 ——実際に共演してみて、お互いの印象はいかがでしたか? Azumi まずは声が素晴らしいと思いましたね。日本人で、フランク・シナトラのような唱法のクルーナーってなかなかいないじゃないですか。上の世代の大先輩には多いですけど、若い方ではあまりいない。私はその時初めてジャズを歌ってるのを聴いたんですけど、素晴らしかったです。 ——Azumiさんの印象はどのように変わりましたか? 高岩 それまではお会いしたことがなかったので、もっとフワフワした、フェミニンな方なのかなと思ってたんですよ。でも、実際に共演してみると男気があって。歌手として北海道の方から出てこられて、タフにやられてる。精神力の強さを感じましたね。 Azumi いやいや、ありがとうございます(笑)。 Azumi×高岩遼 ——今回の<FREE[ER] WEEKEND>は、それ以来久しぶりの共演になります。お二人が出演される10月13日(土)のステージは<Swingin’Night>ということで、ジャズ・セットを予定されていると思いますが、まずはお二人のジャズとの出会いについて教えていただけますか? Azumi 私はもともと10代の頃からブラック・ミュージックばかり聴いていて、70年代ソウルやファンク、90年代のアシッドジャズ、ヒップホップ、R&B、その辺にどっぷりハマった人なんです。例に漏れずローリン・ヒルになりたかったB-GIRLみたいな。 高岩 いやー、最高っすよね。 Azumi 私はローリンのつもりだったけど、アムラーって言われてた(笑)。 ——(笑)。確かに、そういう時代かもしれませんね。 Azumi その辺を聴いてるうちに、その影響元でもあるジャズとフュージョンの方に向いていって。一番初めに聴いたのがディジー・ガレスピーだったのかな。エラ・フィッツジェラルドや、ヴォーカリストも聴いてはいたんですけど、それよりも実はインストものが好きだったんです。中でもハービー・ハンコックが大好きで、LAでレコーディングがあった時にハービーの家を見に行ったり(笑)。 Azumi×高岩遼 高岩 マジっすか!(笑)。ヴォーカリストじゃないのは意外ですね。 Azumi そうなんですよ。自分はヴォーカリストなんだけど、聴くのはインストの方が多い。ドラムとベースとバッキング。リズムやコード感ばかりに耳が行ってました。 ——高岩さんはどのようにジャズと出会ったんですか? 高岩 俺は小学校3年生くらいの時に、スティーヴィー・ワンダーの『The Definitive Collection』っていうアルバムをずっと聴いてて。それこそ歌詞カードがグシャグシャになるくらい聴き込むほど大好きだったんです。その後、小学校6年生くらいでレイ・チャールズに出会って。 Azumi えー! 早熟! 高岩 “We Are The World”の一番最後のパートを歌ってるので、感激しちゃって。中学校に入るとヒップホップがやってきて、ヒップホップ、R&B、ソウル、ブルースみたいな。本当に黒人音楽至上主義みたいな脳みそのB-BOYでしたね。 ——十代の頃の音楽ヒストリーは、お二人ともどこか似てますね。 高岩 B-GIRLとB-BOYだったっていう。共通してますね(笑)。 Azumi そうですね(笑)。皆、やっぱり入りは「ブラック・ミュージック!」みたいなところあるよね。『ブルース・ブラザーズ』とか観るといまだに興奮します。 高岩 高校2年生くらいでブルースとかジャズを聴くようになるんですけど、その時はジャズとブルースの境目がまだ分からなかったんですよ。それで、ある時に手に入れたジャズ・ヴォーカリストの廉価盤コンピレーションに、一人めちゃくちゃ歌が上手い人がいて、感激して号泣しちゃったんですよ。それがフランク・シナトラだったんですよね。心に届くものがあると。最高で、そこからジャズのヴォーカルはずっと聴いてましたね。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんは、10月17日にソロ・デビュー・アルバム『10』のリリースを予定されています。このアルバムはどのような作品になっていますか? 高岩 シナトラのカバー3曲で、後は全部オリジナルです。フルでビッグ・バンドでレコーディングしたんですけど、僕の中のジャズ最先端になってます。僕のジャズ愛だけだったらシナトラの焼き直しとかレイ・チャールズみたいになってしまいそうだったんですけど、〈Tokyo Recordings〉のYaffleがプロデューサーで入ってくれて、今までチャレンジしたことがなかったような作品になりました。 ——今回ソロ・アルバムを作ったのは、どういうきっかけがあったんですか? 高岩 もともと岩手の田舎から「絶対スターになりたい」って思いで上京してくるときに、母ちゃんとか仲間に「俺が絶対にソロで出すときはビッグ・バンドでしかやらない」って話をしていたんです。それから音大で四年間ジャズを学んで、卒業してからSANABAGUN.とかTHE THROTTLEとか、SWINGERZって仲間たちが増えていく中でも、ソロの思いはずっと頭にあって。でも、僕が首謀者でバンドを作ってるんで、男としての責任があるじゃないですか。だから、まずはバンドを盛り上げていたんですけど、去年の4月くらいに、〈ユニバーサル〉のユウスケくんが、「遼くんソロやらない?」っていうのを恵比寿BATICAで言われて、「よし、じゃあビッグバンドでやろう!」って話したんです。 Azumi いい話ですね! Azumi×高岩遼 ——Azumiさんもソロでは、ジャズ・アルバムのリリースやジャズ・フェスの出演など、ジャズ・シンガーとしての自分を大切にされている印象があります。 Azumi 私もwyolicaをやってる頃から、ずっとジャズ・アルバムを出すのが夢だったんですよ。でもwyolicaの時は、創ることができなくて我慢してたんですけど、ある時自分で企画を立てたんです。 ——その企画はどのように発案したんですか? Azumi ジャズってなんで若い女の子たちが聴かないのかな? という疑問がずっと自分の中にあったんです。ジャズは敷居が高いし、難しい音楽みたいな印象があるから、私はその入り口を作りたいなと思って。それで、ジャズ・スタンダードやクラシックのメロディに自分で日本語詞を乗せるというコンセプトにしました。あとは、ジャズ・シンガーって夜のイメージが強いけれど、朝聴けるジャズにしようと。ジャズの間口が広くなって、ジャズを知るきっかけになれば良いなと、思っています。 ——ハーレーダビッドソンとの関連でいうと、毎年開催されているハーレー乗りの祭典<BLUE SKY HEAVEN>に、お二人とも出演されてますよね。全国から集まったハーレー・オーナーの前でのライブはいかがでしたか? Azumi 多分私のことを知っている人はほとんどいなかったと思うんですけど、なんか優しかったし、温かかったです。「良かったよ、ねーちゃん!」みたいな感じで(笑)。 高岩 みんな優しいですよね。 Azumi 見た目はみんなゴツいのに、優しい。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんはどうでしたか? 高岩 僕は二つのバンドTHE THROTTLEとSANABAGUN.で出演させて頂いて。ロックとヒップホップでリアクションも全然違って、面白かったですよ。ハーレーとロックは何か繋がるものがあるし、ハーレーとヒップホップは意外性が楽しめるということで、そういうのがお客さんの顔見てわかるというか。「懐かしいことやってるねぇ! サイン書いてくれよこのGジャンの後ろに!」みたいなおじいちゃんいたし(笑)。 Azumi (笑)。遼くんは、ヤンチャだったおじいちゃんとかに好かれそうだね。 ——今回の<FREE[ER] WEEKEND>は、ハーレーダビッドソンの最新モデルFXDR™ 114と過ごす特別な週末というイベントです。このFXDR™ 114を実際にご覧になった感想を教えてください。 Azumi すっごいオシャレ。フォルムが美しい。 高岩 確かに。ちょっとトランスフォームしそうですよね。形が変わって、喋りかけてきそうな雰囲気がある(笑)。 Azumi×高岩遼 ——高岩さんは昨年、大型自動二輪免許を取られて、今は実際にハーレーに乗ってらっしゃるんですよね。 高岩 そうです。僕とSANABAGUN.のギターの隅垣元佐が免許取らせてもらいました。 Azumi そうなんだー、すごい! でも、むちゃくちゃ似合いますね。 高岩 去年の夏に、かっこいいところを地元の奴に見せたいから、1800cc近い、デカいハーレーで地元の岩手県宮古市に凱旋帰省したんですよ。僕のママも拍手してましたよ。「あんた、頑張ってるね」って(笑)。 Azumi かっこいい! 車とかバイクって、親への効力は大きいですよね。「こんなバイク買えるなんて、頑張ったんだね」みたいな。 高岩 間違いないですね。 Azumi×高岩遼 ——今回のライブは、どういったセットを予定されていますか? Azumi 私はピアノ・デュオで、SWING-Oさんにピアノを弾いてもらいます。曲は自分のソロの楽曲やカバー、昔のユニットの曲をやるつもりでいます。 高岩 おー! それはバキバキの二人で、楽しみですね! 僕は若手ジャズマンのコンボで歌いますよ! ——―曲目はソロ・アルバムからやる予定ですか? 高岩 いや、多分スタンダードしかやらないですね。 Azumi スタンダード楽しみですね。私もスタンダードで何かやろうかな。対抗して。 高岩 やめてくださいよ!(笑)。 Azumi×高岩遼

Text:青山晃大 Photos:真弓 悟史

EVENT INFORMATION

FREE[ER] WEEKEND PREMIUM LIVE SHOWCASE

2018.10.13(土)、14(日) 代官山T-SITE GARDEN GALLERY 出演 13日 高岩遼、Azumi 14日 The ManRay、Rei、Kan Sano (acoustic set) 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

Azumi presents Love Lounge

2018.12.17(月) Blues Alley Japan 詳細はこちら

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映画『ここは退屈迎えに来て』橋本愛×渡辺大知インタビュー |ほんとうは何者でもないわたしたちのために

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山内マリコが2012年に発表した処女小説『ここは退屈迎えに来て』がついに映画化される。主演は橋本愛。東京に出たが、夢を諦めて地元に戻った27歳のフリーライター「私」を演じる。共演には門脇麦、成田凌、渡辺大知、柳ゆり菜、村上淳など。 本作には、「何者かになりたい」と願う切実さと、何者にもなれなかった悲しさ、そして青春のあとに残る小さな希望が描かれている。鑑賞後には、独特の重さを持った痛みが残るだろう。しかしその痛みは、主役を演じた橋本愛が言う通り、「心地良い」ものでもある。 橋本愛はこうも語る。「何者でもないことを自覚することの方が大事」「何者かになりたいという欲望を引き剥がすことを心がけている」。また、渡辺大知は、「何者かになりたいと願うことが正しいとは思わない、でもその欲求はすごく純粋なもの」だという。橋本愛と渡辺大知のふたりに、この作品が持つ痛みや希望について語ってもらった。 10/19公開 映画『ここは退屈迎えに来て』予告

「どうしようもなく痛んでしまうが、心地良い痛み」(橋本愛)

渡辺大知、橋本愛
——完成した映画を観て、率直にどう感じましたか? 橋本愛(以下、橋本) 安心した、という気持ちが大きいです。というのも、わたしはこの原作小説『ここは退屈迎えに来て』を読者として読んでいて好きだったので、作品を傷つけたくないという気持ちがいちばんにあったんです。だから、良い映画になっていて原作の核を守れたことにほっとしました。あとはフジファブリックさんの音楽ですよね。 渡辺大知(以下、渡辺) 音楽、本当に素晴らしかった。 ——フジファブリックによる主題歌“Water Lily Flower”は本当に素晴らしいですよね。これだけ素晴らしい音楽を持ってこられると、渡辺さんはミュージシャンとして嫉妬するんじゃないですか?  Water Lily Flower
渡辺 嫉妬? ……嫉妬は、してないですね……。なんでだろう。良いものにたくさん出会いたいし、才能ある人たちにいっぱい会えると嬉しいからかなあ。そもそも音楽が好きでやっているので、良い音楽があるのに「クソ!」みたいな気持ちにはあんまりならないですね。 橋本 わたしは、この映画を90分観たあとにこの主題歌が聴こえてくるという、その時間の体験がすごく尊いものに感じられました。あの頃に戻りたいと強く思ってるわけでもないし、いまがあの頃より輝いてないと思ってるわけでもないけど、この映画を観ると、どうしようもなく心が痛んでしまう。そしてその痛みは結構、心地良いものだったんです。不思議な感覚になりました。 渡辺 原作や脚本を読んだ時に僕が感じたのは、鬱屈とした生活のなかにあるきらめきのようなものでした。今回の映画では、それが見事に映像化されている。淡々とした映画ではあるし、特別な事件が起きるわけでもない。でも登場人物や街の景色がみずみずしく目に飛び込んでくる。なんでもないことのなかに潜んでいるきらめきみたいなものが、うらやましく思えてくるんです。だから心にモヤモヤを抱えた人の救いになるんじゃないか。この映画は、退屈であることが良いとも悪いとも言っていないと思います。でもそれは大事なことなんだと思える。

「等身大の寂しさが出せた」(渡辺大知)

——おふたりともアラサー(現在)と高校生(過去)という、10歳も差のある役を演じられました。難しかったことは? 橋本 「10年もいたしね」というセリフがあるんですけど、その10年は自分にない10年なので、難しかったです。わたしにとって10年前は小学校の高学年になってしまうので……。セリフとリンクできる経験が自分にないから、想像で補うしかなかった。 渡辺 でもあのセリフには橋本さんが演じる「私」の10年がたしかに見えましたよ。僕は、「自分が高校生に見えるのかな……」ということが心配でした。 橋本 (笑)。 渡辺 僕はいま28歳で、高校を卒業してから10年経つので、作品内の現在のパートの人物たちと同い年なんです。20歳くらいの頃は、高校生活ってまだ近い過去のものだったから、思い出したり懐かしんだりするような感覚はなかった。でも28歳になると、高校生活というものがすごく遠くにある感じがして、切なくなる。あんなに鮮明に頭に浮かんでいた高校生の頃の記憶をちょっと忘れ始めている。それが寂しい。そういう意味では、等身大の寂しさが出せたかなという気がしています。役柄として難しいという感覚はあまりなかったけど、だからこそ、この作品に合った自分の消化の仕方をすごく考えました。 ——舞台となるのはどこかの地方都市。撮影は富山県だそうですね。おふたりの地元の風景とはどれくらい似ていますか? 橋本 わたし、富山の景色がすごく好きなんです。地元の熊本と似ているんですけど、ひとつ明らかに違ったのは、夕日。熊本の夕日は、まぶしくて見ていられない。でも富山の夕日はきれいでずっと見ていれられる。どうしてなんだろうって原作者の山内マリコさんと話していたら、「富山の空はグレーがかってるからね」って言われて(笑)。気候のせいなのか、空気の違いでフィルターがかかるのかわからないけど、夕日が本当にきれいでした。本来は目にやさしいものが好きだし、太陽より月のほうが好きなので、これまで夕日を特に好きだと思ったことはなかったんですけど。 渡辺 たしかに、橋本さんは月が好きそうだし似合うよね。月が似合う女、橋本愛。その女が愛した太陽のある街、富山。 ——東京の夕日はどうですか? 橋本 東京の夕日は、ビルに反射してまぶしいですよね。夕日というより「西陽」というイメージ。 渡辺 僕の地元は神戸の山奥なんですけど、この映画のようなまっすぐな道はなくて。神戸は坂が多い町なんです。 橋本 チャリ漕ぐの大変そう。 渡辺 そう、だからチャリは漕がない。それで地元にいた頃、夕日が真っ赤に染まる瞬間を見たことがなかったんです。山に囲まれていると、日が沈む頃にはもう太陽が山に隠れてしまっていて。空はオレンジがかってるけど、夕日自体が赤くなるところを見たことがなかった。初めて東京に出てきた時、夕日が赤くて、それを見て泣きました。 橋本 フジファブリックだ〜! 渡辺 あっ、ほんとだ“茜色の夕日”だ。……いや、これいま思い出したことなので仕込みじゃないですよ(笑)。だから初めて東京の丸くて赤い夕日を見た時は、すごくかっこいいと思いました。その光景はいまだに脳に焼き付いていますね。僕のなかでの東京は、あの丸い夕日と東京タワーのイメージ。 橋本 じゃあ東京は赤い街なんだ。面白いなあ。

「“何者でもない”ことを自覚することが大事」(橋本愛)

——おふたりは以前に映画『大人ドロップ』『渇き』(ともに’14)などで共演されていますが、当時は一緒に撮影するシーンは少なかったと思います。今回、本格的に共演してみて、お互いどのような印象を持ちましたか? 橋本 今回の役柄のせいもあるけど、中性的な印象がすごく強いです。ニュートラルという言葉の意味そのままの人だと思う。何を入れてもいろんな形や色にしてくれるから、他の作品を見てもまったく違うキャラクターになっているし、オーラも役によってまったく違う。ミュージシャンをやりながらここまで演じられるのはすごいなって、圧倒されます。 渡辺 ……やばいですね、ちょっといま、照れてしまって橋本さんの目を見られないです。橋本さんは、その佇まいというか、圧倒的な存在力。セリフを言う前からセリフが始まっているような感覚なんですよね。ミュージシャンでもたまにいるんです、歌う前からかっこいい人が。その人がステージに出てきただけで泣けちゃうという。たとえば、僕はハナレグミの永積タカシさんを初めて見た時にそう感じました。そういう力を橋本さんは映像で出せる人なんです。現場で、切り返したカメラに橋本さんが映った瞬間、もう何かが始まっている。そう思わせてくれる人は映画にとってすごく大事ですよね。いち映画ファンとしても、橋本さんが映画界にいてくれていることはありがたいと思います。お芝居がうまい方はたくさんいらっしゃいますけど、橋本さんにしかない魅力はそうした佇まい、存在力だと僕は思います。 ——本作で描かれる人物は「何者かになりたくて、何者にもなれなかった人物」です。そういう悶々とした時期というのは、おふたりにはあったんでしょうか? 橋本 わたしは「何者かになりたい」と思ったことがないかもしれません。仕事を始めたのが早かったので、自分探しをする前にその船に乗っていたという感じ。だから「何者かになること」が正しいとも思っていないし、むしろ「何者でもない」ことを自覚することの方が大事だと思う。確かに、自分が弱っている時や、何かひとつのことに集中しすぎていると、そういう浅はかな欲望が出てくることもあります。だから逆に、それを打ち消す作業を頑張っている。たぶん、「大きくなりたい」と思うから「何者かになりたい」と願うんだと思うんです。でもそれに固執すると、自分がどんどん小さくなっていくという予感がする。そういう矛盾を引き剥がすことを心がけています。 渡辺 僕もまったく同じ回答でお願いします(笑)。というのは冗談で、僕はこれまで「何者かになりたい」という感情が浮かんだことがなかったんです。音楽も役者も、「やりたいなあ」と思う前に、気付いたらもうやっていた。でも最近ふと「あれ? 自分はなんでこれをやってるんだっけ?」って初めて考えたんです。そうしたら、自分のなかに「何者かになりたい」という気持ちが実はあったんだと、ようやく28歳になったいま気付きました。「何者かになりたい」と願うことが正しいとはいまでも思っていないけど、その欲求はすごく純粋なものだから、そう思っちゃったということを大事にしたいです。

「退屈だということを忘れさせるのではなく、向き合わせてくれる」(渡辺大知)

——この映画に希望はあると思いますか? 橋本 あると思います。たしかに痛いまま終わる映画だけど、すごく何気ないもので持ち上げられる感じがしていて。出来事というよりも、何かを読んだり見たり、良い意味で自分にとって都合の良いものをピックアップして、そうしてなんとか前向きに生きていく。それがこの映画の本当に小さい、けれどもたしかな希望だと思いました。 ——終盤で、東京に出たある人物が「超楽しい」と言うシーンがあります。あのシーンをどう解釈しましたか? 映画のテーマ的には、皮肉とも解釈できると思うのですが。 橋本 最初に脚本を読んだ時は、その人物が無理やり言っている感じがしました。でも映画を観たら、表情や東京の街並みの美しさから、人物の心が満たされている感じがして。それはいつか終わるものなのかもしれないけど、美しい瞬間だとは思います。 渡辺 僕は、先のある「超楽しい」だなという感じがして、それが切なく感じました。東京に行ったり、地元に戻ったり、残ったり、いろんな生き方があると思うけど、みんな不安や退屈を抱えて生きている。退屈だということを忘れさせるのではなくて、ちゃんと向き合わせてくれる。それがあのセリフだと思いました。 ——「超楽しい」と言った人物は、あの数年後に「私」になるかもしれないわけですよね。 渡辺 構造的にはそうですよね。でも、そうならないかもしれない。 橋本 ならないでほしいですね(笑)。 渡辺 でも、東京にいようが地方にいようが、どこにいても変わらないんだと思います。みんなそこそこ楽しくて、そこそこ退屈で。それを悲観的に捉えてしまったら終わりという気がする。橋本さんが言った「何者にもなれない、ということを自覚する」という言葉に近いけど、「楽しくないとやばい」とは思わない方がいいと思う。そもそも「退屈だ」と思うことは生きている証だと思うし。そういうことも受け入れさせてくれる映画だと思います。

映画『ここは退屈迎えに来て』

10月19日(金) 全国公開

出演:橋本愛 門脇麦 成田凌 / 渡辺大知 岸井ゆきの 内田理央 柳ゆり菜 亀田侑樹 瀧内公美 片山友希 木崎絹子 / マキタスポーツ 村上淳 原作:山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」幻冬舎文庫 監督:廣木隆一 脚本:櫻井 智也 制作プロダクション:ダブ 配給:KADOKAWA ©2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会 詳細はこちら

text & interview by 山田宗太朗

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Qetichub Vol.05 – メイリ

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PROFILE

メイリ

北海道出身、色白の道産子グラドル。週プレボイン番付大関&美巨乳美巨尻番付張出横綱。2018年2月にDVD『愛のつづき』、5月に『Sweet Vacation』を発売。タレントとしてAmebaTV「お願いランキング」や「モヤモヤさまぁ〜ず2」配信オリジナルコンテンツに出演。
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インタビュー | UKの歌姫アン・マリー来日スペシャルライブに潜入!再生回数3億回超えの歌声とは?

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2016年にリリースされデジタル配信再生回数3億回越え、CD売上400万枚以上と驚異的なヒットを打ち出したクリーン・バンディット(Clean Bandit)の“Rockabye”に参加し脚光を浴びたイギリス出身のシンガーソングライター、アン・マリー(Anne-Marie)。スティーブ・マック(エド・シーラン)やナナ・ローグス(ドレイク)、マシュメロなど豪華プロデューサーが集結したデビュー・ソロアルバム『スピーク・ユア・マインド(Speak Your Mind)』や、そのうちのシングル“2002”が10代を中心に日本でも爆発的人気となったりと今最も注目のシンガーソングライターです。今回はなんと、そんなアン・マリーがLINE LIVE限定のスペシャルアコースティックライブを敢行! QeticではLINE LIVEで放送されたインタビュー&ライブの模様をお届けします。

Interview:アン・マリー

——日本へようこそ、アン・マリー! こんにちは〜!(日本語) ——「こんにちは」って言葉も覚えてくれたんですね。前回の来日はのことは覚えていますか? もうすごい昔のことのように感じてるわ。日本に戻ってこれてすごく嬉しい! ルディメンタル(Rudimental)と来た時は本当に賑やかな旅って感じでワイワイキャーキャーした感じだったけど、今回はひとりで自分の曲をみんなに聞いてもらえるのがすごく嬉しいの。 ——私たちも嬉しいです。今回プロモーションでの来日ですが、日本でやりたいことはありますか? なかなか時間がないんだけど、やりたいことはぜんぶやりたい(笑)。時間が許す限りいろんなところに行ったりして、とにかくここにいることを実感して楽しみたいわ。 ——4月にリリースされたニューアルバムはUKだけでなく世界的ヒットとなりました。実感はありますか? 本当に精魂込めて、気持ちを100%入れて作った大切な大切なアルバムなので、たくさんのみなさんに聞いてもらいたいです。気に入ってもらえたら嬉しいな。 ——“2002”は日本の女子高校生を中心に大ヒットしています。音源を使って踊った動画をSNSに投稿するのがブームになってるんですが、それはご覧になりましたか? まだ見てないわ。知らなかった! そんな風になってるなんて……すごく嬉しい! すぐにチェックするわね。 Anne-Marie - 2002 [Official Video]
——見てみてください! さて、次のシングル“perfect”はどんな曲なのでしょうか? 本当に大切な一曲よ。いかに自分のことを愛したり好きになったりするのが大切かっていうようなメッセージを込めました。これももちろんたくさんの人に聞いてもらいたいわ。 ——これまでキャリアの中でたくさんの方々とコラボレーションをしてきました。“2002”はエド・シーランとの共作でツアーも一緒に回ったり、デリック・メイやマシュメロとのコラボなど、さまざまな共演から何かインスピレーションは受けたりするのでしょうか? コラボするたびにたくさん刺激を受けてます。特にルディメンタルとコラボは印象深かった。それまでの私の楽曲は結構スローだったりゆったりしたものが多かったんだけど、彼らと出会ってからはもっと動かなきゃ!とかテンポアップしたい!とか思うようになりましたね。そういった面で自分の音楽に本当に大きな影響を与えられました。 ——日本のファンの印象は? 日本のファンのみなさんは本当に最高! それに歌が上手い! 私が歌ってる時にみんなが歌ってくれたけど、上手すぎてなんだか気まずいわ(笑)。私の見え方が悪くなるんじゃないかな?って心配しちゃうぐらいよ。 ——ここからは視聴者からの質問にうつります。髪を染めるとしたら何色がいいですか? う〜ん。結構クレイジーな色に染めるのが好きだからピーチ、桃色とかがいいかな。今度私を見る時が来たら桃色になってるかもね。もしかしたら! ——気分を上げるために聞いてる曲はありますか? いろんな曲を聴くけど、ルディメンタルの“RUN”。タイトルの通り、聴くと走りたくなったり外に行きたい気分になったりするの。気分を上げたいときはよく聞いてるわ。 ——好きな日本語は? 一番のお気に入りは「じゃあね」。別にバイバイを言いたいわけじゃないけど、じゃあねって響きが可愛いから気に入ってる。習いたいなと思ってるんだけど、きっと難しいよね。 ——ぜひレパートリー増やしてもらいたいです! 続いて、何歳から歌手を目指しましたか? 5歳の時に歌っていて歌楽しい!大好き!って思った記憶があります。どんな歌を歌っていたかは覚えてないけど(笑)、なんでもハミングしたり鼻歌したりしてたわ。 ——中学生の視聴者からの質問で、中学の頃は何にハマってましたか? とにかくスポーツ、体を動かすことにハマってた。もちろん空手もそうだけど、バスケットボールも結構やってたの。 ——ファッションで影響を受けているひとはいますか? ちょっと難しい質問ね。私は結構着心地がいいものを着るっていう信念があって。例えば、すごくイケてるすてきなひとがいて、あのファッションやってみたいなって思う時が来ても必ずしもそのファッションが自分に似合うかはわからないから、誰かを真似したりフォローしたりはしない。あえて言うなら、グウェン・ステファニー。彼女みたいにクレイジーな服を着たりするのは私もすごく好きだし自分の見せ方でやりたいことを見せられる人はすごくかっこいいと思う。自分のままを表現できる人のすごさを彼女を通して感じるので、本当に素敵だと思うわ。 ——さて、最後となりましたが、インタビューとは別でアン・マリーさんには今のお気に入り曲のプレイリストを作ってもらいました。今回、どんな楽曲を選びましたか? 5曲選んだんだけど、全てに通じて特に歌詞がすばらしくて。私は音楽を聴くとき歌詞のメッセージ性だったりに注目しながら聞いてるの。今回は比較的ヒップホップやダンス系のアーティストが多いけど、普段は特にジャンルにこだわって聞いたりすることはないし、幅広いジャンルの音楽を聞いてるわ。今回のプレイリストは少し多めにそういう曲が入ってるかもだけど。元気になれる曲を選んだの!ぜひ聞いてみてね。今日はこんな機会をいただけて本当に嬉しかったです。私もすごく楽しませてもらったわ。みんな、本当にありがとう! プレイリストをチェック アン・マリーの楽曲はこちら

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感動のあまり涙を流す観客を抱きしめるアン・マリー

アン・マリー × あいつ

アン・マリーの楽曲はこちら

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コウキシン女子の初体験Vol.10安倍乙:浅草

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コウキシン女子の初体験

肉食/草食を始めとして、サブカル系女子、森ガール、青文字/赤文字、はたまたマウンティング女子なんてものまで……。こんなもはや根拠も脈絡もないカテゴライズに嫌気が差している人も多いはず。でも「好奇心(コウキシン)女子」っていうのはどう?

古今東西、“好奇心”がある人は誰でも素敵なはず(男女問わずにね)。

そんな括り方があれば良いなと思い、ある女の子に「今一番、行きたい場所/やってみたいこと」を“初体験”してもらおうじゃないかと思い、スタートしたのが本連載『コウキシン女子の初体験』。

第10回目となる今回は登場していただいたのは、秋元 康プロデュースの「劇団4ドル50セント」に所属しドラマ『おっさんずラブ』にも出演するなどモデル・女優としても幅広く活躍している安倍乙さん。

今回、“初体験”してもらうのは、海外からの観光客も多く、普段から賑わいを見せている観光名所、浅草。浅草の定番スポットである浅草寺や花やしき、浅草射的場での射的や浅草きんぎょでの金魚すくいなど浅草ならではといった場所を巡った。日本有数の観光名所で見せた安倍乙さんの様々な表情を捉えることに成功。今回はどんな“初体験”が待っているのだろう。

コウキシン女子 安倍乙

コウキシン女子の初体験
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安倍 乙

秋元 康プロデュースの「劇団4ドル50セント」に所属しドラマ『おっさんずラブ』にも出演するなどモデル・女優としても幅広く活躍中。劇団4ドル50セント8/11(土)~9/14(金)の毎週金曜、土曜、日曜に週末定期公演Vol.2『夜明けのスプリット』Keystudioにて絶賛公演中!
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